まだ寒さの残るころ、ひとつの『事件』があった。テロリスト集団の立てこもり。彼らは複数人の人質をとり、政府へ要求を突きつけた。無論警察がその要求を飲むことは出来ず、かといっても迂闊に手を出せない。このまま膠着状態が続くかに思えた…。
しかし事件は意外な展開を見せる。人質の一人によってテロリスト集団は壊滅したのだ。警察が乗り込んだとき、20代前半男性の死体と気絶した12名の実行犯が倒れ込んでいたという。
逮捕後、聴取で犯人の1人はこう供述した。「あいつの『覚悟』が俺たちを敗北者にしたのだ。」と。
死者1名 重軽傷者11名
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「お前の生前の功績を称え、褒美を授ける。」
気づいた『時』、それは現れた。全体的にぼやけたモヤのような存在。自分の最後の記憶と、現在の状況を照らし合わるがここに至る過程が想像できなかった。ならば…そう。
「死んだか、無様にも」
結論はひとつ。であるなら、現代社会に「生きた」ものとして現状を把握した。
「要求は…そうだな記憶を持ったままの転生。」
いや違う、もう一度を望むならこれは要らない。
「いや、訂正だ。『覚悟』を持ったままの転生。そして出来るなら……を貰い受けたい。」
自分のことながら、少しばかり幼稚な願いだったと思う。普段はそれらの類をあまり好んでいなかったのに。
モヤが、鼓動を打つように光を強くしていく。
「では、褒美を授ける。」
そこで俺は意識を失った。
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「力也《リキヤ》!朝よー!ご飯できてるから、ちゃんと食べてから学校行くのよ!」
相変わらず、朝から元気な母親だ。
「……了解」
俺は朝が苦手だ。なぜなら朝はゼロだからだ。無論物理的な意味は無い、精神的な意味だ。起きた瞬間には『意志』がない。何かをなそうとする意志が、だから嫌いだ。
「起床後、洗顔、食事、着替え、登校。」
意思を「充填」する。準備は出来た、行動開始。
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「あ、りーくん!おはよう!」
視界に入ったのはもじゃもじゃ緑色の髪。
「なんだ、朝から元気だな出久。いいことでもあったか?」
「もしかして見てないのりーくん!昨日のオールマイト特集!あれは…で、…だったけど、…の点では…」
返答を失敗した。こうなると出久は長い。適当に聞き流すか...。
「おいクソナード!俺の前歩いてんじゃねぇ!」
朝から、騒々しい。この近辺でこんな口の悪いやつはアイツだけだろう。
「勝己、ヒーローを目指すならいい加減その口を直したらどうだ。」
「うるせえ!ロボット野郎!てめぇこそ、その気持ち悪ぃ喋り方辞めたらどうだ!」
この言葉は許容できない。この喋り方のどこが可笑しいのか。
「俺の喋り方のどこが気持ち悪いと?簡潔に説明出来たら半殺しで辞めてやる。」
言葉使いが理知的でも子供は子供、彼も人のことは言えず、存外切れやすかった。
「てめぇも、人の事言えねぇじゃねえか!上等だやってやる!」
「ちょっとかっちゃん!りーくん!辞めてよ!」
「「ちょっと黙ってろ」」
「は、はいっ!?」
これが彼らのいつもの光景である。