なんでも言うことを聞いてくれる椿ちゃん 作:フィリップ・モリス
羽丘女子学園の一年生は遅くとも四時には放課となる。生徒達の自主性を重んじるという校風のおかげで勉強は自宅学習がメインとなり、羽女は進学校でありながらそれなりに終業時間が早いのだった。
当然のことながら、放課後をどう過ごすかは生徒によりけりである。真面目くさって勉学に励むものもいれば部活に勤しむ者もおり、また社会勉強と称して街へ遊びに繰り出す者もいる。みなが思い思いの時間を過ごすのだ。
蘭を含むAfterglowの少女たちは、五人揃って帰らんとしているところだった。そこそこ大きなライブを終え、数日間は休養をとろうということになり、珍しく練習の予定が入っていなかったのである。
久方ぶりの休暇に家路を急ぐこともなく、談笑しながらゆっくり歩を進める幼馴染の五人組。そんな五人の前に現れたのは他でもない、椿だった。
「姉さん、せっかく練習が休みなんだしデートにでも行こう!」
澄み渡る晴れ空の下、椿は高らかにそう謳った。小鳥はさえずり花は小さく揺らいでいる。そんな平和な日常の一コマにあって、少し照れ臭そうに顔を赤らめている椿と額に青筋を立てている蘭のコントラストが印象的だった。
そうして、葉っぱにへばりついたカタツムリが端から端まで移動し終わるくらいの時間が経過したのち。
「嫌に決まってんでしょ、バカ椿」
言い放った蘭はそそくさとその場を去った。あとに残されたのは椿と、Afterglowの蘭以外の四人。
椿は一瞬だけ落ち込んだ様子になったものの、次の瞬間には「そんな冷たい姉さんもクール! かっこいい! 愛してる!」とかなんとか言ってたのでたぶん復活した。
「なんていうか、よく椿も懲りないよね……」
呆れた顔で呟くひまり。椿は見ていなかったが、他の三人も同じような顔をしていた。
というのも、蘭と椿の幼馴染である彼女達にとってこの光景は日常茶飯事。下手すれば同級生の告白よりもよく目にするものだった。
初めの方こそ面白がっていた四人だったが、中学校に上がる頃にはもうこの光景に飽き飽きしていた。
一日に何度でも、椿は息をするように姉に告白するのだ。傍から見ていて飽きないわけがない。
「甘いね、ひまり! これは懲りるとか懲りないとかの話じゃないんだよ! 私の愛が姉さんに伝わるまで私は諦めないからね!」
「たぶん一生伝わらないんじゃないかな~。ま、夢を持つのはいい事だと思うよ~?」
「ほら、モカもこう言ってるじゃん! 諦めなければ夢は叶うんだよ!」
「いやそんなこと言ってなかっただろ!?」
フォローにならないフォローをするモカと、トンチンカンな椿に突っ込みを入れる巴。そんな二人の声も、『如何にして姉を攻略するか』を考えるのに忙しい椿にとっては馬の耳に念仏。
自分と姉の恋路にとって都合の悪い話など聞こえない。今の椿はまさしくポンコツだった。じゃあいつもはしっかりしているのかと言うと、これまた微妙ではあるが。
「わ、私は椿ちゃんのこと応援してるから! きっといつか蘭ちゃんも振り向いてくれると思うよ! ……たぶん」
「やーんつぐみありがと〜! やっぱりつぐみは天使だあ!」
「ひゃあ!?」
奇声を上げながらがばっとつぐみに抱きつく椿。幼馴染の頭を撫でくり回すその姿は酔っ払ったおっさんによく似ていた。セクハラ椿である。
「決めた! つぐはもう私のお嫁さん確定だね!」
「お、お嫁さん!?」
「私のお婿さん枠は姉さんしか入れないからあげられないけど、私がつぐみの婿になって姉さんの嫁になればなんの問題もないよね!」
「大有りだってばこのバカ椿! 勝手に人を婿にするなっ!」
調子付いていた椿に、いつの間にやら引き返してきていた蘭が鉄拳制裁を下す。ゴン、と鈍い音が辺りに響いた。
椿は蘭の一撃を喰らい潰されたカエルのような声で呻いた。拍子でつぐみからも離れ、涙目になりながら蘭を見やる。
「姉さん……痛い……」
「あんたがふざけたこと言ってるからでしょ。つぐも迷惑がってたじゃん」
だいたいあんたはいつも云々。まともな人間として云々。本格的に説教の姿勢になった蘭を見て、四人はまたかと苦笑する。この流れも、既に飽きるほど見た光景なのだ。
見かねたつぐみが助け舟を出した。つぐみはどこまでも天使だった。
「蘭ちゃん、そんなに怒らなくても……。私は別に気にしてないから」
「ダメだってつぐみ、この馬鹿を甘やかしちゃ。すぐ付け上がって調子に乗るんだから」
そうして説教を再開しようとする蘭。それを見た巴とモカが顔を見合わせてニヤついていたことに気づいたのはひまりだけだった。
「付け上がって調子に乗る……おうおう、どこかの誰かさんとそっくりだな」
「あ〜、それは言えてるかも〜。あの髪がちょっと赤い誰かさんだよね〜。この前のライブ終わりも湊さんのこと煽りに行ってたあの人〜」
巴が冷やかすような声で茶々を入れると、モカもそれに同調する。怒りに染まっていた蘭の顔がにわかに動揺の色を現した。
「なっ……! あ、あたしのことはいいでしょ別に! 今は椿の話をしてて……」
「心外だなあ。アタシたちは誰かさんとだけ言ったんであって、蘭のことだなんて一言も言ってないぜ?」
「そーそー。誰も蘭のことなんて言ってないもんね〜」
ニヤニヤ笑いを一層強めた二人を前に、蘭はただただ歯噛みするしかなかった。というのも、巴たちの発言には多分にして思い当たるフシがあったからだ。
「大体さあ、蘭も正直に言っちまえよ。『実は椿に構ってもらえなくて寂しかった』って」
「ちょ、そんなことから! 適当なこと言わないで!」
「だったらなんで引き返してきたんだ? ほっときゃ勝手に帰る性格の椿だってお前が一番よく分かってるだろ?」
「それはほら、つぐみが絡まれてて……」
「椿の絡みなんてそれこそいつものことじゃな〜い? ほらほら〜、ゆー言っちゃいなよー、椿から袖にされて寂しかったってさ〜」
椿のことを叱りつけていたはずが、いつの間にやらおちょくられている蘭。慌てふためく彼女のことをみな可笑しそうに見つめている。
妹に対して気丈に振る舞っていた時の凛とした雰囲気は消え失せ、そこに居たのはどうすればいいか分からないといった体で混乱する歳頃のオンナノコだった。
そんな姉の姿を見て、この女は。
「え、何? もしかして姉さん受けもいけるクチなの……? こわ……うちの姉のポテンシャルが高すぎて怖いわ……。てことは私が攻め……それは解釈違いな気も……。いやでも他のナオンに抱かせるくらいならいっそ私が攻めになって……さすがに姉さんで寝取られは無理ですごめんなさい……。
ていうかそもそも姉さん×男って構図がもうダメだよね。うんそれは絶対にそう。百歩譲って姉さん×どこぞの女が成立したとしても姉さん×男だけは絶対にありえないから。あーでも姉さんが満面の笑みで彼氏を紹介しに連れてきたら私はきっと無碍にはできないし姉さんがモカとか巴とか湊さんとかを恋人として連れてきたら性別と好感度の壁クリアしちゃってるからもうそれは認めざるをえないしそうなると私と姉さんは結婚できなくてうごごごご……!」
「ストォーップ椿! 勝手に戦慄して葛藤して絶望して悶絶しないでよぉ!」
この世の終わりを見たかのような顔で発狂し、魂を抜かれたようにぐったりとへたり込む椿。そのインパクトは凄まじすぎて、『幼馴染にからかわれた結果ものすごくあたふたとしていつものクールさが微塵も感じられなくなった美竹蘭』というそこそこレアな光景が霞んで見えるほどだった。
こうなるとストッパー役のひまりもてんで手が出せなくなる。呪詛を撒き散らし、死にたいので帰りますとか言い出してもおかしくない様子の椿に対して彼女ができることと言えば、せいぜい背中をさすってやることか慰めの言葉を送ってやることだった。もっとも、後者に関しては焼け石に水も甚だしい。
「だいたいこの世界は間違ってるんだよ……。私たち双子ぞ? 誰よりも長く連れ添ってきたんやぞ? そんなのもう結婚するしかないじゃん……逆に結婚しない方が不自然だし失礼でしょこれ……。双子の姉妹は一つになるってWIXOSSにも書いてあったよ……?」
「あーもう、椿が完全におかしくなっちゃった……」
「うぃくろす? えっと、雑誌の名前か何かかな?」
「つぐ、あの状態の椿が言ってることは無視していいぞ。たいてい支離滅裂だから」
「ちょっとしたら直るしね〜」
「なにバカなことやってんの……ほら、帰るよ」
そうして一行は椿を加えて歩き出した。が、椿は校門をくぐった後も依然として絶望に暮れたままである。がっくりと肩を落とし、背を曲げて歩く姿はホラーゲームのゾンビに見えないこともない。撃てば50点くらいは貰えそうだった。
「……ちょっと、誰か椿のことなんとかしてあげなよ!」
「そーゆーのはひーちゃんの役目だとあたしは思うので〜す。ほらリーダー、ふぁいと〜」
「こんな時ばっかりリーダー扱いされても嬉しくないから! ……まあ、確かに放っておけば回復するんだろうけどさ……」
実際、椿が落ち込むことは大して珍しくもなかった。蘭に手酷く振られた時の椿は大体いつもこうだった。そしてその経験からみな椿は放っておいても勝手に復活するということを学んでいた。誰も椿のことを慰めないのは薄情だからではなく、有り体に言ってしまえば余計な手間にしかならないからであった。
よっていつもならこの状態のまま放置していてもなんの問題もなかった。そう、いつもなら。
「あら、美竹さんじゃない」
「え? あ、ホントだ! やっほーみんな!」
現れたのは、蘭たちの先輩にして、ライバルであるバンド『Roselia』のリーダー、湊友希那だった。友希那の幼馴染にしてベーシストである今井リサもその隣にいる。
思わぬ人物の登場に、蘭は明らかに顔を渋くした。
「湊さん……何か用でも?」
「見かけたから声をかけただけよ。会うのはこの前のライブ以来かしらね」
「またあたし達をおちょくりに来たんですか?」
「あのときライブ終わりに突っかかってきたのはあなたの方だったじゃない」
そんな蘭の様子を見ても表情ひとつ変えない友希那。彼女にとって蘭が不機嫌そうな顔をしてくるのは、蘭にとって椿が求婚してくるのと同じようなものであった。つまりはできるだけやめてもらいたいということである。
「そうそう。この間は忙しくて言いそびれていたけれど、あなた達の演奏、良かったわよ。観客も盛り上がっていたわ」
「……まあ、そうなるように練習したんですから」
「あんなのを見せられちゃ、私たちもうかうかしていられないわね」
それでも蘭のしかめっ面は、そんな友希那の一言で少し緩む。美竹蘭にとって湊友希那とは腹が立つ先輩であり超えなければならない壁であり一種の憧れの的であるから、そんな存在から実力を認められたとあらば喜んでしまうのも致し方ないことだろう。
一方、蘭を除いたAfterglowの四人は背筋に悪寒が走るのを感じていた。いつもなら蘭と友希那の小競り合いなど微笑ましいものでしかなかった。大型犬に吠えてかかるチワワを見るような気分だった。
だが今日は違う。今日はすぐそこに、特大の怨念が渦巻いているのだ。もしその負のオーラに質量があったのなら人間一人くらい簡単に押し潰せそうなくらい強大な怨念である。そんな呪詛の発生源が、この光景を目撃したらば一体どうなるか。
「これはゆき×らん……古より伝わりし人類を照らす光……。ああもうこんなの私が勝てるわけないじゃん憧れの先輩相手とかさあ……。なんだよ姉さんのあの顔キュートすぎか? いつもは湊さんのこと異常に敵視してて牙剥き出しにしてるくせにいざ褒められたらすーぐぽっと頬を染めちゃってさあ……。笑顔に殺傷力があるならもう致命的な致命傷食らってるところだよ? 治癒不可能であの世へゴーだよ笑えないよ……。でもあの笑顔が私に向けられることはないんだ……やっぱり私なんて姉さんと結婚できないんだ……やむ……」
案の定、爆発した。
「……ねえひまり、あれ何?」
「一応は蘭の妹なんですけど、気にしたら負けです……」
リサは椿の存在を人づてには聞いており、彼女が極度の姉好きであることも知っていた。だがまさかここまで酷いとは予想だにしていなかった。それが真っ当な一般市民の想像力の限界だった。
ゆえにこの椿に対してどうやって関わればよいか分からなくなり、一番常識人そうなひまりに声をかけたのだ。ただ一つ誤算だったのは、常識人であればあるほど椿の思考を理解しづらくなるという点である。
友希那と蘭が話しに没頭している間、ひまりたち四人はリサに対して椿のことを軽く紹介してやった。その間も椿は発狂しっぱなしである。
解説を聞き終わったリサはドン引きした。四人は、真っ当な反応だなと思った。事実、それは実に適切なリアクションだった。
「あはは……変わった子だね……」
「違うんです、普段はもっと常識的なんです……。ただ姉が絡むと気持ち悪……情熱的になるだけなんです……」
「トモちん本音漏れてるよ〜?」
「で、でも椿ちゃんは本当に優しいんですよ? ギャップが大きいのは否定できませんけど……」
「ギャップ……姉さんのギャップ……普段ツンツンしてるけどいざ認められたら急にデレデレしだす……ああダメだこれじゃどうしてもゆき×らんから抜け出せない……」
つぐみの「ギャップ」という単語に耳ざとく反応し更なる負の連鎖へと落ち込んでいく椿。彼女にまとわりつくドス黒いオーラは徐々に強まっていき、もはや夜に出会ったら大の男でも逃げ出してしまいそうなレベルの雰囲気にまで沈んでいた。
可視化された怨念。今の椿を言い表す言葉として、これ以上に妥当なものはない。
「ねえ、さっきから椿が言ってる『ゆきらん』って何?」
「ええと……簡単に言えば、友希那先輩と蘭ちゃんが両想いになる……ってことで合ってるのかな?」
「ダイタイアッテマス……」
「あ、その状態でも意思疎通はできるんだ。……うーん。友希那と蘭は確かにいいライバルではあるけど、椿が思ってるような関係じゃないと思うよ?」
「なるほど〜。あくまでもあの二人はただの先輩後輩の関係に過ぎないと〜?」
「うん。だから少なくとも友希那に関しては椿も安心していいんじゃない?」
「……本当に? 本当にゆき×らんはないんですか?」
リサの言葉を聞いて少しだけ元気を取り戻す椿。リサからすればそれのどこが喜ばしいことなのかまるで分からなかったが、まあ落胆してるよりかはいいのかなと思って考えるのをやめた。これ以上踏み込むと六面ダイスが手放せなくなってしまいそうだった。
「そ・れ・にー、友希那はアタシのだからねー!」
「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない」
「わ、友希那。もう蘭との話はいいの?」
「ええ、構わないわ。伝えておきたかったことは言えたのだし」
そう言って友希那が蘭の方を見ると、蘭はひどく居心地悪そうな顔でそれに応じた。
ただまあ、険しい顔をこそしているものの、内心友希那から褒められたことをそこそこ嬉しがっているので、ただの照れ隠しでしかないのだが。
「……ん。リサ、あの子は?」
今気づいたというふうに椿のことを見止める友希那。リサは苦笑いしながら、
「蘭の妹の椿ちゃん。お姉ちゃんのことが大好きなんだってさー」
「へえ、美竹さんの……」
興味深そうにジロジロと全身を見回されながら、椿もまた友希那のことを観察していた。彼女にとって友希那は恋敵になるやもしれない女なのである。
リサの言葉をまるで信用していないわけではない。ただ椿の、蘭が絡んだ時の警戒心は異常であるというだけの話だった。
「美竹さんたちと同じ色の制服……ということはあなたたち双子? それにしてはあまり似てないのね」
「二卵性なので似らんのですよ」
「やっぱり、蘭と顔が似てなくて残念だったりするの?」
渾身の駄洒落をスルーされたことに落ち込む椿。心なしかしょげた様子でリサの質問に答えた。
「……残念でもあり、残念でもなしって感じですかね。姉さんと瓜二つの顔っていうのもそそられますけど、同じ顔じゃ忌避感が生まれるかもしれないので」
「お、意外。そんなこと考えてたんだ」
「はい。私は全く構わないんですけど、末永く共同生活を送っていく上で同じ顔というのもストレスが溜まるかと……。それに、顔なんて自分で選べるものじゃありませんから」
「そりゃそうだよねー。自分で顔を選んで産まれてこれるわけでもないし……ん? 共同生活?」
「はい! 私、将来の夢は姉さんに嫁入りす」
「……っ!」
終わりまで言い終わらぬうちに振り下ろされる蘭の拳。本日二度目となる衝撃が椿を襲った。
「ったあ……姉さん、手加減……」
「あんたが変なこと口走るからでしょ! 人の先輩に妙なこと聞かすな! まったく、何回怒られれば気が済むんだか……」
「でも姉さんからの愛のムチなら何度だってバッチコイ!」
「引くなっ!」
ニコニコ笑って楽しそうな椿とぷりぷり怒る蘭を見て、幼馴染四人はああまたかと呆れ返った。先輩たちもいるというのに、何を見苦しい諍いをしているんだ、と。
しかしその先輩たちは呆れるどころか、むしろ不安げな様子でさえあった。いつもは身内以外の人間にあまり関心を抱かない友希那ですら少し心配そうである。
「……ねえモカ。あの二人、止めなくていいの?」
「あ〜。あれはただじゃれてるだけなので〜、ほっとけば収まりますよ〜」
「じゃ、じゃれてる? あの蘭が?」
「……そう言われてみれば、美竹さんもなんだか楽しげね」
「でしょ〜? ああやってつっけんどんに振舞ってますけど、蘭も椿のこと大好きなんですよね〜」
蘭はきっ、とモカを睨みつけた。しかしその顔は羞恥と照れとで真っ赤である。迫力もなにもあったもんじゃなかった。
「モカ! 余計なこと言わないで!」
「モカ! もっと言ってやって!」
二人の真逆な主張を聞いたモカは、リサたちに向かってくつくつと笑ってみせた。
「ほら、仲良し〜」
「あっはは、ホントにね!」
「分かっていただけますか!? 私と姉さんの仲の良さを!」
「椿はちょっと黙って!」
椿は悪びれもせず、リサと友希那に自分たちの仲の良さを語って聞かせる。その度に蘭は必死の形相で止めにかかり、面白がったモカや巴がまたそれを制止するというなんとも間抜けなシステムが完成していた。
「なんたって、姉さんは私のこと大好きですからね!」
「だから違うってばあ!」
蘭の絶叫が虚しく響き渡る。
そんな仲の良い姉妹を見て、幼馴染と先輩たちはニマニマとした笑いを零すのだった。
「それで姉さん、結局デートは?」
「っ……! あーもう! 買い物くらいなら付き合ったげる!」
「やったあ! 姉さん好き好き大好き超愛してる!」
「そんな恥ずかしいことを大声で叫ぶな!」
頬を染めた蘭ちゃんに「……ん!」とか言われながら手を差し出され、そのまま手を繋いで歩く……そんな青春を送りたかった……やむ……