「禁忌目録違反だけど愛さえあれば関係ないよねっ!」「えっ」   作:練れば練るほど色の変わるお菓子

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 SAOのスピンオフ漫画『ガールズ・オプス』にて『ルクス』という女性キャラがいることを知って失踪したくなりました。

 幸い漫画の絵柄は作者好みでなく(好みだとそちらを汚したくないから続けなくなる)、スピンオフに気を遣ってなんていられないのでスルーで。プーとかいうラスボスと同じ名前の主人公で進めてる人いるしへーきへーき。



 当話で右目の封印編はお終い。次回から金木犀の騎士編、騎士長ベルクーリ編に入ります。騎士と囚人編?デュソルバート?ファナイティオ副騎士長?知りませんよそんなもん。……あー、でも。あの方は登場する予定だったり。



 合言葉は
 システム権限<愛の力



※ここから下怪文書が続きます。苦手な方というか、読んだらここのお気に入り外したくなるなと思う方は【ここから前書きを飛ばしてください】


 作者が書いてるのは、実は作者が一番読みたい理想の小説です。つまるところ、作者の作品が作者の中ではナンバーワンなわけです。まぁオンリーワンじゃないので他に好きな作品なんかはいくらでもあるんですけど、でも自分の小説って自分の子供みたいなもんですしやっぱりかわいいじゃないですか。お気に入り増えると嬉しいですし高評価も感想も励みになりますし。

 でもそれはそれとしてやっぱりもっと人気出たいなぁなんて欲が出ちゃうから日間ランキングに乗りたかったりして。まぁ作者の各作品とか性癖の詰め合わせディスペンパックみたいなもんだから読む人を選ぶわ内容がくどくど鬱陶しいわで読みにくい上ヒロインがマイナーで人気でないのが当たりなんですけど。

 でも。

同じSAOの二次創作を書いてる人に抜かれるのは我慢ならなぁぁぁい!!!!

 しかも当作より面白かったり設定が緻密ならまだわかるが原作に全く沿って無かったり面白味がいまいちよくわからないやつに抜かれるのはめちゃくちゃ胃が痛くなる。そんなに魅力ないかなぁ当作!?特にアリシゼーション系ッッ!!神聖語をバンバン使うわルールを平気で破ろうとするわ禁忌目録の内容把握してないわっておまっ!原作ちゃんと読みな!?もしくはアニメ版の菊岡比嘉キリトの説明ちゃんと聞け!!読む分にはいいが二次創作するならせめて作るものへのリスペクトを込めてくれ文句が言いたくなる!!修正してほしくて感想書こうとしてでもそれはランキングに載る手伝いするから嫌だなぁと思って三十分近く感想送信ボタンと格闘して結局押さなかったよ!低評価つけてエタっちゃうのもそれはそれであれだなぁと思って何もできずにトボトボ帰ったわ!!もう修正したくてたまんぬい!!

 要するに我が子という小説が可愛すぎて人気出したいので日間ランキングに乗りたい。モチベのためにみんな感想とか高評価してね!とかいう。欲望だだ漏れのそういうお話でした。ちなみに作者はもう一作品小説書いてますが、そっちの方がわりかし本命だったりするのでそちらもお願いします。(というか作者が推しがいなかったため自力で錬成した変態作品です)ただしそちらの感想欄で当作の話をしないでください。テンションが違いすぎる上、作者が恥ずかしくて死にます。




 はい。以上作者の汚い愚痴でした。いい加減飽きられたと思うので、本編をどうぞ。


ルクス君の最速秘奥義!相手は死ぬ!9(終)

 

 

 

 人界歴三百八十年。ちょうど、六月になった日。その日は、前日の大雨があってか、びっくりするほどの快晴だった。

 

「あ〜……よく寝た……」

 

「あのねぇ……こんな懲罰房の中でぐっすり眠れるのはキリトぐらいだよ」

 

「いや、ここ凄く居心地よかったじゃんか。長年使われていない割には綺麗だしさ」

 

「まぁ、それはそうだけど……」

 

 相棒の呆れたような声を受けながら、言葉とは裏腹にコキコキと首を鳴らす。

 

 ここは、修剣士寮に備え付けられた懲罰房。ライオス達を斬った俺たちは、その日のうちにアズリカ先生にここへと連れてこられた。

 

「………にしても、罪人にしちゃ、随分いい待遇だよな。飯も普通だったし」

 

「……もしかしたら、ルクスが何か口利きをしてくれてたのかも。僕らがライオス達を斬ったって知っても、全然態度が変わってなかったし」

 

「あぁ、それだ。……ったく。お人好しだよなぁ、あいつは」

 

「全くだ」

 

 ここにはいない灰色の修剣士を思い浮かべながら、クスリと笑う。上級貴族にいい印象を持ったのは、リーナ先輩達を除けば彼ぐらいかもしれない。昨日は元気のなかったユージオも、今はいつもの調子を取り戻して朗らかに笑っている。

 

 そんなことをしていると、不意に扉が三度ほどノックされた。そして、ガチャリ。と鍵の外れる音。……鍵を外してないのにノックをする几帳面のような間抜けには、一人だけ心当たりがあった。

 

「おはよう。昨日はよく眠れた?二人とも」

 

「「ルクス!?」」

 

 そこには、ちょうど噂をしていた主席修剣士殿の姿があった。腰には昨日とは違い、いつも通り白金樫(シラカネガシ)の木剣が下げられている。どうやら、昨日の《輪廻の剣》はお休みらしい。まぁ、実剣を普段から帯剣しているやつなんてそうはいないし、普通だったか。

 

「ど、どうしてここに!?」

 

「えぇっと。……とりあえず、外に出ようか。話は、歩きながらしよう」

 

 そう言って、ルクスは締め切られていた扉を開け放った。小窓から刺していただけの光が視界一杯に広がり、一瞬だけ目を細める。

 

 二人して外に出ると、ルクスは俺たちの背後の扉を閉め、徐に歩き始めた。……ついてこい、ということなのだろう。まともな拘束具すらつけられないのは、正直なところ意外だった。

 

「……今、整合騎士が到着した。二人を、セントラル・カセドラルに連行するって」

 

「………そう……か。にしては、随分おしゃべりで甘い連行人だな」

 

「あはは……ホントは、アズリカ先生が見送り役をする予定だったんだけどね。無理言って変わってもらったんだ。主席修剣士の肩書きを利用したのは、これが初めてだよ」

 

 後ろに組まれたルクスの手には、二人分の手枷が握られていた。……恐らく、本来はこれをつけて俺たちを連行する予定だったのだろう。今ルクスがそれをしないのは、信頼か。あるいは───

 

「………あのさ。僕、少し寝不足なんだ」

 

 こちらを一切振り返ることなく、ルクスは言った。

 

「………へぇ?」

 

「……昨日のこともあってさ。すごく、ぼうっとしてるんだ。だから、ついうっかり(・・・・・・)二人に手錠をかけ忘れてる。………ぼんやり歩いてるから、例え君たちが後ろで逃げ出したとしても、気がつかないよ」

 

「ルクス……君は……」

 

 どこまでも、優しい青年だった。

 

 彼は言っているのだ。今のうちに逃げろと。見て見ぬふりをしてやるから、さっさと逃げてしまえ、と。……例え、その責任が自らに降りかかってきたとしても。

 

「罪人に肩入れするのは、禁忌目録違反じゃないのか?」

 

「そりゃあね。『公理教会への叛逆』に該当するだろうし。……でも、ただうっかりするだけなら何の違反でもない。婉曲解釈(そういうの)は、僕ら上級爵士の常套手段でしょ?」

 

「違いない」

 

 これは一本取られてしまった。随分と皮肉の効いた一言に、再び相棒と共に笑い合う。

 

「ルクス。何度も言うけど、これは俺たちの問題だ。お前が気にすることじゃないし、寧ろ俺たちは助けられたと思ってる」

 

「うん。ルクスがいなかったら、ティーゼたちを無傷で助けることはできなかったと思う。本当に、ありがとう」

 

 それは、本心からの言葉だった。言葉に出した分もそうだが、それ以上に。きっとあのまま続けば、俺かユージオが、あの二人のどちらかを斬り殺さなければならなかっただろう。根拠はないが、そんな漠然とした予感があった。

 

 そしてそうなれば、一番傷を負っていたのはユージオだろう。例え直接手を下したのが俺だとしても、彼は自分のことのように気に病んだはずだ。

 

 北の国の小さな田舎でひっそりと暮らしていたユージオに人殺しという重い十字架を背負わせずに済んだのは、(ひとえ)にルクスのお陰だ。

 

 灰色の剣士は、俺たちの言葉を聞くと、突然ピタリと立ち止まった。手に持った拘束具が、割れんばかりに握り締められる。

 

 不意に、ルクスが振り返った。……その顔は、昨日のように悲しみでくしゃりと歪んでいた。

 

「でも………でもさ!!僕、君たちに行って欲しくない……!僕の、大切な友達なんだよ、君たちは!それを……それを、たった一つ過ちを犯したくらいで連れて行くなんて……!あんな、しょうがないことで!そんな、そんなのって……!」

 

「ルクス。これでいい。いいんだ」

 

 出てくるであろう次の一言を、肩を掴むことで止める。これ以上は、本当にルクスまでセントラル・カセドラルに連行されかねない。

 

「なにも、お前まで禁忌目録を犯すことはないだろ。それにお前には俺たちと違って、ロニエみたいに守ってあげなくちゃいけない奴がいるじゃないか」

「いや別にロニエは僕が守らなくても充分……」

 

 哀しみが籠もった表情を一瞬陰らせて何かをボソボソと口にするルクス。よくわからないが、きっとこちらを心配する言葉かなにかなんだろう。

 

「とにかく、このままじゃお前まで大罪人になる。そんなの、俺達は望まない。……ほら、拘束具をつけてくれ。罪人が手枷の一つもしてないと、示しがつかないだろ?」

 

「キリト………」

 

 俺の訴えに思うところがあったのか、ルクスは悲しみの表情を堪えて暫く逡巡した後、ごめん、と一言謝ってから俺たちに拘束具をつけ始めた。

 

 丁寧かつ慎重で、拘束されているはずなのに妙にくすぐったい。恐らく、天命は1たりとも減っていないだろう。

 

 そうして、俺とユージオは両手を後ろに回す形で拘束された。だが、どうにも緩い。自然に脱げることはなさそうだが、その気になってしまえば腕力で抜け出してしまえそうな気さえする。

 

「ルクス、お前なぁ……」

 

「………キリトのことだし。どうせただじゃ転ばないでしょ?君たちが何を為すのか、僕にはわからない。でも、これだけ言わせて。僕は、きっと君達の力になる。その時まで、きっと待っててね?」

 

 いつかの夜のようにニコリと微笑んだルクスは、こちらに背を向けて歩き出した。そうして、整合騎士へと俺たちを連行するまで、一度たりとも振り返らないのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「………随分と時間がかかりましたね。して、貴方は何者か」

 

「………失礼、騎士殿。北セントリア修剣学院が主席修剣士にして一等爵士、ルクス・ブラッディと申します。拝謁の機会を賜り、心からの感謝を……」

 

「御託はいりません。世辞も結構です」

 

 俺たちを出迎えたのは、黄金に青の入った鎧を纏った騎士だった。未だその姿は背後を向いており、顔が見えることはない。……強烈な既視感と、締め付けられるようなもどかしさ。揺れる金髪、光る蒼い鎧を見るたびに、何故かその思いは強くなっていく。

 

 どこかで。この青色と、金の組み合わせを、俺は、どこかで──

 

「私は、セントリア市域統括、公理協会整合騎士。アリス・シンセシス・サーティーです」

 

 その疑問は、振り向き様に宣告された、その名前を聞いた途端に吹き飛んだ。

 

 ………アリス。容姿も、ユージオから聞いていたものと一致する。…………では、目の前の整合騎士は、まさか。本当に?

 

「………アリス………?君なのか……?」

 

 ユージオが、譫言のように彼女の名前を口にしながら、ふらふらと近づいていく。止める間も無く、ユージオの手は目の前の彼女へと触れんとし……

 

 バキッ、という。何かが折れるような音が響いた。

 

「………ほう。私の剣を止めますか」

 

 それは、剣帯ごと取り外された金色の鞘に収まった剣に、ルクスの白金樫(シラカネガシ)の木剣が、叩き折られる音だった。

 

 位置は、ちょうどその剣がユージオの頬を捉える数セン前。もしもルクスが木剣で防がなければ、ユージオに命中してその天命を一割は減らしていただろう。

 

 木の中でも最上級レベル硬いはずの白金樫は、ただの一撃でその天命を全耗させ、青い光となって消滅する。しかし、そんなことは気にも留めないというようにルクスは金色の騎士へと頭を下げた。

 

「………申し訳ございません、騎士殿。罪人とはいえ、修剣学院にて暴力沙汰は容認致しかねます。こちらのものにはキツく言い聞かせますので、この場は平に御容赦を」

 

 ルクスが、ユージオを手振りで軽く下げさせる。あまりのことに困惑していたらしい相棒は、少しだけ状況に頭が追いついたのか、数歩ほど後ろへと下がった。

 

 ユージオと俺にだけ聞こえる小さな声で、ルクスはヒソヒソと声を出す。

 

「……ユージオ君。あの子は、君の知ってるアリスじゃない。体は同じでも、少なくとも彼女は君の知ってる彼女とは違う。今は何も知らないフリをしてて。この場は、僕がなんとかする」

 

「ルクス……」

 

 こちらを微かに見遣った主席修剣士は、再び金色の騎士へと向き直る。騎士……アリスは、見るからに不機嫌そうな顔でルクスを睨んでいた。

 

「……私はたった今、不敬を行った罪人へと正当な裁きを下そうとしました。それを防ぐとは、整合騎士の何たるかがわかっていないようですね」

 

「………仰る通りでございます」

 

「………ルクス一等爵士、でしたか。貴方も貴族の頂点に立つものならば、その意義を弁えてはどうですか。……といっても、あなた方にそのような風格など、求めても無意味でしょうか」

 

「…………大変正しい意見に思います。ですからどうか、怒りをお鎮めください」

 

 どこか刺を含んだ口調で、アリスは淡々とルクスを追い詰める。ルクスは頭を上げることなく、その言葉を粛々と受け入れていた。何とか宥めようとしているようだが、アリスが止まる気配はない。

 

 ……この流れは、あまり良くないかもしれない。

 

「失礼、騎士殿!これは……」

 

「黙りなさい。今私はこの男へ話しているのです。度々考えていました。今の貴族社会には、協会の権威を正当に受け止めていないものが多すぎる。この機に、その性根を誅するとしましょう」

 

 口を挟もうとするが、聞く耳を持ってもらえなかった。このままでは、それこそルクスが罪人として連れて行かれかねない。

 

「そもそも、貴族という学のある立場にありながら、整合騎士の意向へと楯突くとは何事ですか。一部の貴族は貴族裁決権とやらを有していると耳にしますが、それで思い上がりましたか?」

 

「……滅相もございません。全て、私の不徳の致すところであります」

 

「おい、ルクス!」

 

 一方的に攻められるルクスに声をかけるが、彼は頭を下げたまま何かすることはない。というより、目を瞑っている。……何かを願うように、祈るように、目が閉じてしまっているではないか。

 

「そもそも、あなたは私の言に意見できるほど偉いのですか?先ほど私の叱責に容赦などを求めましたが、そもそも私の言葉を止めることそのものが教会への叛意と取られてもおかしくないでしょう」

 

「………返す言葉も、ございません」

 

 高説するアリスの位置から見えることはないだろうが、ルクスは必死に何かへと念じるかのように、強く目を瞑っていた。眉間にはかなり深いシワが寄っている。

 

 そして、その祈りが届いたのか。或いは、ルクスが何かをやったのか。

 

「では、貴方の不敬には、………うっ!?」

 

「あぁぁ………(絶望)」

 

 突如、毅然とした態度をとっていたアリスが、頭痛に悩まされるかのように額を抑え始める。額には脂汗まで浮かんでおり、つい先ほどまでの印象からは予想できないような狼狽っぷりだった。

 

「………お前、何を…………?」

 

 当然、アリスはルクスへと疑いの目を向けた。なおも額を抑えながら、なにやら気の抜けたため息を吐き続けるルクスへと食ってかかる。

 

 だが、そんな反応を予測していたのか、ルクスの対応はめっぽう早かった。

 

「い、いえ!滅相もない!私には何の心当たりも!騎士殿はどうもお疲れの様子!宜しければ、本日は暖かくしてお休みください!それでは!」

 

「あ、おいお前!待ちなさい!話はまだ………!うぐっ………」

 

 早口でそれだけ言って、ルクスは脱兎のように逃げ出した。というより、全力で疾走した。…………秘奥義もかくやという目で追うことすら難しい速さで。

 

 整合騎士のアリスの静止に止まらなかったということは、静止が聞こえるより前に逃げたということなので、一体どれだけの速さなのか見当もつかない。

 

 というか。

 

「俺たち、放置………?えぇ………?」

 

「あはは……なんだか、ルクスらしいね……」

 

 両手を拘束された俺たちと、未だ頭痛がするのか、頭を抑えて蹲りかけている整合騎士。

 

 ………いや、この状況でどうしろと?

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「ローニーエーー!!!」

 

「ひゃあっ!ご、ごめんなさい先輩ぃぃ……」

 

 空をかける飛竜すら追い抜かんとするスピードで駆け出した僕は、即座に修剣士寮へとダイナミック入室を果たし、窓からこちらを観察していたロニエを捕まえた。

 

 とりあえず本人はなんでもないような表情で僕を迎えて自覚症状がなかったようなので、必殺頭拳骨グリグリを食らわせているところだ。

 

 というか、猛烈な既視感がある。キリトの時にも同じようなことにならなかったか。

 

「…………ちなみに!今回は何の神聖術だったの!?」

 

「………あの女狐が作ったシステムが気に入らなくて作ったのなんですが、とりあえずいい感じの実験台があったので、シンセサイズを解除してみようかと。いい感じではありましたが失敗しましたけど……」

 

「バカじゃないの!?」

 

 さまざまなツッコミが内部で飽和して、ボカンとはじけた。……ちなみにシンセサイズというのは、教会のトップである最高司祭がかけた洗脳のようなものである。整合騎士には全てこれが施されており、これによって彼らは記憶を失って偽の情報を植え付けられているのだが。

 

 いや、シンセサイズって解けたのか。というか、いつの間にそんな術式を。

 

「…………もしかして。今朝方噂になってたけど、アンティノスやジーゼックが急に寮の清掃に精を出し始めたのって……」

 

「はい。あれはシンセサイズの真似事ですね。今までの人格を完全に封印して、新しく模範的な一般市民の性格を適当に…………痛いっ!痛いです先輩っ!」

 

「…………僕の頭と胃も痛んでる。我慢して」

 

 ふぅっと意識が飛んでいきそうになるのを、ぐりぐりを強めて堪える。ほんと何でもありですねこの子。

 

「それにしても、なんでこんなことを…………って、わかりきってるか………はぁぁぁぁっ……」

 

「はい!元老よりちょっと高等なだけのお人形さんの癖に、先輩に説教垂れるとか絶対に許せんで……あっ先輩!めり込んでますめり込んでます!先輩に無茶苦茶にされるのはばっちこいですがこういう方向性は……あっ!凹んじゃいますぅ!」

 

「凹んでないじゃないか!!ちゃんと反省しなさい!!」

 

「キリト先輩のことで反省したから今回はシンセサイズの解除を試みるに留めたんじゃないですかぁ!」

 

「あれ以上があるの!?」

 

 ……いい加減ツッコミ疲れたので、ロニエを腕の中から解放する。その場に尻餅をついたロニエは、頭を押さえてうんうんと唸っている。

 

「……ごめん。痛くしすぎた?」

 

「…………あぁ、いえ。この程度なら平気ですが。それとは別に、ちょっと考え事を」

 

 しばらく悩んだ末に、ロニエはうってかわって悪戯っぽく微笑み、懐からいつぞやのように水晶を出して歌うように神聖術の式句を唱える。

 

「システム・コール〜」

 

「ちょっ!待っ!!」

 

 ロニエのやろうとしていることを瞬時に理解し、その口を塞ごうと両手を翳す。

 

 だが、それすらも読まれていたのか。僕の両手は、ロニエの小さな手によって完全に封殺される。

 

 そして、なんとか抜け出そうと焦っている間に、無抵抗になった口へとロニエの顔が近づいてきて………

 

「〜〜〜〜!?!?!?」

 

 そのまま、唇を奪われる。言葉を発することも出来ず、口の中の酸素ごと引き抜かれるような長いキスに、抵抗の意思が無くなっていく。

 

「ふぉふぉふはふ、ふぁふる、ふりすはる、いへんほ」

 

 そしてあろうことか、ロニエはそのままの状態で詠唱を続けた。

 

 ペチャペチャという淫らな水温と共に、ロニエの甘ったるい声が脳へと浸透していく。堪らなく下品なはずのその状態が、妙に熱っぽくて。目が回って、何か考えることすらできなくなる。

 

(……これ、息かかって………ダメ……)

 

 脳すら融けてしまいそうな熱の中で、ロニエの詠唱はどんどん進んでいく。そして、あやふやな発音のくせして、その神聖術は正しく発動した。

 

「ふぉーふぃへーほ。ふぃふひゃーじ」

 

「誰が、誰に女を紹介するだって!?おい!!それは、僕の許嫁(いいなずけ)を愚弄する言葉だ!彼女(ロニエ)以上の女性なんて僕にはいないし、必要ない!そもそも、金で他人(ひと)をどうこうしようとする時点で、君達は救いようがなさすぎる!!」

 

「んんっ!んんんん〜〜!?!?」

 

 そこから大音量で流れたのは、当然昨日の僕の醜態だった。

 

 ロニエが少しだけ手加減しているおかげで思考能力が戻ってしまったのが災いし、今度は体を焼くような羞恥が全身に巡る。

 

 しかもご丁寧なことに今回はループらしく、僕の告白紛いのセリフが延々と垂れ流し続けられるという罰ゲームのような内容になっていた。

 

 そして、もう一つ。ロニエは、指でくいくいと外の窓の方を指し、僕と体勢を入れ替えて外を見えるようにする。

 

 そして外を見た途端、僕はロニエの真の目的を悟った。

 

「………んん!?ん、んんっ!!ぷはっ!は……離して……ロニエ!今、外……んぷっ!?」

 

 有無を言わせず、ロニエは僕の口を自らの口で塞ぐ。そしてそれは、《婚前の口づけ》という、明確な(・・・)禁忌目録(・・・・)違反(・・)だった。

 

(………あぁ、み、見られてる……?)

 

 そう。たった今、外ではアリスがキリト達を連行するところ。窓からは、整合騎士……禁忌目録の審判者とも呼べる存在が見えていた。

 

 つまり、ロニエの目的はアリスの目の前で禁忌を犯すことで、僕の醜態を見せつけることなのだ。たとえ実際に見られていないとしても、その緊張感は普段とは全く違う昂りを僕に植え付ける。その上、水晶からはずっと僕の告白のような言葉が流れ続けているのだ。

 

「……はぁっ……やらっ……とめっ!とめて……見られて……!」

 

「はい。見られちゃってるかもしれません。あーあ、先輩、どう思われるんでしょうね。『変態』?『傍付きの女の子に無理やり手を出す鬼畜』?こんなに水晶が大きい音を出してるなら、キリト先輩達だって、もしかしたら気付くかも……?」

 

「や、やだっ!やめて!やめてよぉっ!」

 

「嫌で〜す。はい、ちゅ〜」

 

「んむうっ!?」

 

 そうして、また強引に口づけされる。魂ごと吸われるような脱力感に、どれほど抵抗しようとしても、あられもない姿を窓から外へと晒してしまう。

 

 そして、この光景がもしあの三人に見られるかもと思うだけで………

 

「〜〜〜〜ッ!!」

 

 ゾクゾクと、背中に走るものがあった。それは恐怖だ。恐怖のはずだ。友情が壊れるかもしれない、軽蔑の目で見られるかもしれない。そんな想像に対する、恐怖のはずだ。

 

 なのに、どうしてこんなに──

 

「……ぷはっ………興奮、しちゃいますか?」

 

 息継ぎがわりに口を離したロニエとの間に、いやらしく糸の橋が繋がっている。それを見るだけで、頭が真っ赤になるほどの熱に犯されて。そんな自分が情けなくて、思わず涙まで浮かんでくる。

 

「やだっ!嫌なのに……!ごめん!ごめんなさい……!」

 

「謝っても変わりませんから。いっぱい見せつけましょう?整合騎士が見えなくなるまで、ずっと……あっ!ティーゼ達が来て地上に戻るみたいです!先輩、もう一回できますね!」

 

「嘘っ!やだっ!やなのにっ!」

 

 手で目の前を塞いでも、どうにもならない。ロニエに力ずくでこじ開けられて、再び羞恥の顔が隠せなくなる。

 

「あっ!そうだ!ティーゼ達の顔が見れたら、もっと恥ずかしくなりますよね!あっちからは見えませんが、いっぱい映してあげますね!」

 

「やっ!違う!違うのに……!やめてぇっ!」

 

 止めることすらできず、ロニエが何度か詠唱すると……壁一面が、まるでガラスになってしまったかのように透明になる。そして、周囲の光景がティーゼ女史達のいる場所へと変わる。

 

 学院の中庭。広がる草の芝生の上。ティーゼやユージオ君達が集まっている広場が、周囲には映し出されている。

 

 幻。幻の、はずなのに。あまりにも、目の前の光景にはリアリティがありすぎた。

 

「はい、先輩。見せつけちゃいましょう?」

 

「やめて……恥ず………んぁっ……」

 

 紅葉のように茹で上がった体が、再び際限なく温度を上げていく。体の輪郭が分からなくなるほどの高温に魘されて、自分という存在が曖昧になっていく。

 

 そして──

 

「もう、無理ぃ………」

 

「あれ?先輩?センパーイ?………倒れちゃった」

 

 意識が、暗転した。

 

 




「所詮貴族など、騎士に比べればごっこ遊びの敗北者じゃけぇ……」
「………ハァ……ハァ……敗北者……?取り消せよ、今の言葉!!」
「乗るなロニエ!戻れ!」
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