インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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セシリア戦も終わり、少しばかり日常へ。


10話

「頑張りましたね、道野君。土壇場とはいえ飛べるようになるなんて」

 

「ああ」

 

スクリーンに映る目を回して気を失っている翔介を見る。

この様子では一夏との試合は無理そうだ。

心配そうに見ているセシリアの横で他の教師陣に保健室へと搬送されていく。

 

ISの絶対防御のお陰で大した外傷もないようで目を覚ますのを待つだけだろう。

 

「更識、道野に見込みはありそうか?」

 

後ろで試合の行方を見守っていた楯無に問い掛ける。

 

「それは今回の試合を見ていただければわかるかと」

 

四日間という短い期間ではあったが翔介の適性はわかった。

彼は戦闘が強いタイプではないだろう。恐らくそれは生来の性格によるところが多い。

 

「彼の成長スピードはけして早い方ではないと思われます。ですが、一歩ずつでも前に進もうとする向上心があります」

 

「長い目で見る必要があるか」

 

「はい」

 

そもそも入学してから一月と経っていないのだ現段階で細かく評価する必要もないだろう。

 

「道野への対応は後手にしか動けていない。恐らくは織斑と同じようにとはいかないだろうな」

 

実際専用機の有無や各種備品の準備に関しても一夏の次になりがちだ。

学園側で色々と対応する必要がありそうだ。

 

「それでは私は弟子の様子でも見てきましょう」

 

「更識」

 

千冬が退室しようとする楯無を呼びとめる。

 

「頼めるか?」

 

「仰せのままに」

 

短い会話だが、お互いが言わんとすることを理解したようだ。

楯無が退室するのを見届け、千冬と真耶は後片付けをすることにした。

 

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「ん…あれ…?」

 

目が覚めるといつの間にかベッドの上にいた。

セシリアと試合をし不意を打ったものの結局返り討ちに合ったところまでは覚えている。

 

「あぁ…気を失ってたのか…」

 

そう言いながら自分の身体を確認する。レーザーやミサイルに当たったがどうやら怪我はないようだ。楯無の言っていた通り絶対防御というものはしっかり操縦者を守ってくれるようだ。

ただ少しボーっとしてしまうのは疲れが出ているからだろうか。

 

「……負けちゃったか」

 

翔介は窓から見える景色を見ながら、改めて実感する。

試合を始める前からこうなることは予見していた。どうやっても経験の差やISの差を埋めることは難しい。

 

わかってはいた、わかってはいたが…。

 

「………っ」

 

目頭が熱くなり、鼻の奥がツンとする。

喉もキュッと詰まる。

 

 

「あら、意外と元気そうね」

 

 

急に声をかけられビクッと体が震える。

いつの間にか隣の椅子に楯無が座っていた。

 

「お師匠さま」

 

「まずはお疲れ様。まさか飛行を土壇場で出来るなんて思わなかったわ」

 

「いえ…でも結局負けは負けでしたし…わかってはいたことですけど」

 

そういう翔介だがその表情は明らかに沈んでいた。

 

「仕方ないわ。全てにおいてセシリアちゃんの方が上回っていたから」

 

「そう、ですよね…」

 

師匠である楯無から見てもそうだったのだ。

 

「でもこれからよ。まだ入学して一週間。ゆっくり成長していけばいいわ」

 

先は長い。

この三年間でどれほど成長できるだろうか。

恐らく自分だけでは限界がある。

 

なら。

 

「お師匠さま、試合前の約束覚えてますか?」

 

「ええ、覚えてるわ」

 

勝ち負けに限らず翔介のお願いを一つ叶える。

それが試合前にした楯無との約束だ。

 

「それじゃあ何がいいかしら? 頭ナデナデする? ギュッとする? それとも添・い・寝?」

 

扇子で口元を隠し笑う楯無。

しかし翔介は至って真面目な顔で続ける。

 

「これからも僕に訓練をつけてください」

 

「…理由を聞いてもいいかしら?」

 

「僕、今まで誰かと争うなんてしたことなかったんです」

 

翔介の故郷に子供はほとんどいなかった。子供の数は年々と減り、小学校と中学校は併合。彼は故郷にとって最後の子供であった。

その為、運動会やテストなど競い合うような機会が一切なかった。

 

「初めてでした。誰かと競い合ったのは」

 

そして負けた。初めて競い、負けた。

 

「負けるのは分かってました。どうやっても勝てないって」

 

だが少し、一瞬だけ。

セシリアのスターライトmkⅢを弾いた時。あの時少しだけ一矢報いることができる。そう思った。

しかし、結果は返り討ち。

結局負けるのはわかってはいた。予想通りの結果になった。

 

だけど。

 

 

「悔しかったんです」

 

 

悔しい。初めて悔しいと感じた。

 

「そう…」

 

「悔しくて、情けなくて…だから…」

 

 

「もっと強くなりたいって」

 

 

翔介の真剣な眼差しが楯無を見つめる。

 

「だからお願いします。僕に訓練をつけてください」

 

「…理由は分かったわ」

 

「じゃあ…」

 

「約束したからね。ただしこの前以上に厳しくいくわよ。強くなりたいのならそれくらいの覚悟あるわね?」

 

「…はい!」

 

 

強くなる。何のために強くなるかはわからないけど、今はただ強くなりたい。

 

 

「さて、それなら色々準備が必要ね。翔介君」

 

「はい?」

 

「明日の放課後。生徒会室に来てくれるかしら?」

 

生徒会室。学園案内に載っていたが縁がない場所だと思っていた。

 

「生徒会室ですか?」

 

「そう、翔介君は色々待遇が不利なの。だから打鉄を専用貸し出しとか色々手続きが必要になるからその為にも来てちょうだいね」

 

「わかりました」

 

「それじゃあ今日はゆっくり休みなさい」

 

楯無はそう言うと椅子から立ち上がる。

 

 

「あ、そうだ。翔介君」

 

「はい?」

 

 

 

「今日、胸を張って精一杯やったって言える?」

 

 

 

「……はい」

 

「そう、それなら良かった」

 

そう言って笑う楯無の顔はとても朗らかな笑顔だった。

 




短いですが、本日は二話掲載。

正式に師弟関係となった楯無と翔介。

次回以降は日常を挟みながら原作一巻ラストへと向かっていきます。


ではこれからもよろしくお願いします。
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