インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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11話

セシリアとの試合から一日が経った。

 

保健室から寮に戻り、すぐにベッドに横になった。

ゆっくり眠れたお陰で疲労はだいぶ抜けていた。

 

「おはよ…」

 

「なんでだよぉおおお!?」

 

教室に入るや否や一夏の叫びが響く。

 

「ど、どうしたの!? いきなり叫んで」

 

「どうしたもこうしたも!」

 

興奮気味の一夏。

 

「なんで俺がクラス長になるんだよぉ!?」

 

「ええ? 織斑君がクラス長?」

 

聞いた話によれば今回の試合の勝者は全勝したセシリアだ。

最初の話であればこの試合の勝者がクラス長になるということだったはず。

 

「それはわたくしが辞退したからですわ」

 

金髪を揺らしセシリアが前に出る。

 

「辞退ってどうして?」

 

翔介が尋ねるとセシリアはバツが悪そうに告げる。

 

「ええ、まあわたくしもあの時は頭に血が上っていたと言いますか…」

 

どうやら本当に反省したらしい。

本当に初対面の頃のツンツンとした性格が鳴りを潜めている。

 

「ですので、クラス代表は一夏さんにお譲りいたしますわ」

 

「だよね~、折角の男子なんだからバンバン前に出していかないとね~」

 

「わたしたちは貴重な経験をし、他のクラスには情報を売る。まさにwin-win」

 

「なら別に俺じゃなくても!」

 

助けてと言わんばかりに翔介を見る一夏。

 

「僕は全敗してるし」

 

そもそも翔介は今回のクラス長云々に関しては全く関係ない。彼は頭に血の登ったセシリアに巻き込まれただけなのだ。

 

「う、嘘だろぉぉ…」

 

ガクリとうなだれる一夏。

逃げ道がなく観念したようだ。その様子を見ていると可哀想に見えてくる。

考えても見れば一夏も望んでこうなったわけでもないだろう。

 

「お前たち、いつまで騒いでいる。SHRを始めるぞ、席に着け」

 

うなだれる一夏をよそに今日も授業が始まるのだった。

 

 

授業も終わり放課後。

先日楯無に言われた通り、諸々の手続きのために翔介は生徒会へと向かうことにした。

鞄を持って教室を出ようとすると、彼を呼び止める声が。

 

「あ、ミッチー。ちょっと待って~」

 

呼び止めたのは静寐、清香、本音の三人組だった。

このクラスになって一週間くらいだがミッチーという愛称もすっかり慣れた。

 

「どうしたの?」

 

「この後織斑君のクラス代表就任パーティーすることになったんだけど」

 

「僕も行っていいの?」

 

「友達なんだから当然だよ~」

 

友達。

その響きが少しくすぐったく感じる。

 

「わかったよ。ただ今から生徒会に行かないといけないから少し遅れちゃうけど大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫」

 

「それでは待ってますね」

 

そう言うと翔介は生徒会室に向かった。

就任パーティー。故郷にいた頃は友達と騒ぐようなこともほとんどなかったから楽しみだ。

 

 

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「えっと、生徒会室は…ここか」

 

教室からしばらく歩いて生徒会室へと到着した。改めてだがこの学園はとても広い。ここに来るまでに随分と歩いた気がする。

扉も近代的な自動ドアが多いIS学園だがここだけは木製の重厚な扉でどこか厳かな雰囲気がある。

少し緊張する。

 

フーッと息を吐き扉をノックする。

 

「はい、どうぞ」

 

「失礼します」

 

少し落ち着いた声で返事が返ってきた。

 

中に入るとここもまた他の教室と違い大きな木製のテーブルに革張りの椅子が設備されており、小学校の校長室を思い出す。

そして部屋の中には眼鏡をかけた知的な女生徒が待っていた。

 

「ようこそ、生徒会へ。ご用件は伺っていますよ、道野翔介さん」

 

「は、はい。えっと…生徒会長さんですか?」

 

「私が?」

 

翔介の問いかけにクスリと笑う。

 

「私は布仏虚です。生徒会では会計をしています」

 

どうやら生徒会長ではないらしい。随分と落ち着いているからてっきり会長かと思ってしまった。

それよりも。

 

「布仏?」

 

ついさっき教室で別れたクラスメイトを思い出す。

 

「ええ、妹とは同じクラスでしたね。あなたや織斑一夏君の話は聞いていますよ」

 

やはり姉妹だった。布仏なんて珍しい苗字だったからもしかしてとは思っていたが。

よくよく見ると顔立ちは似ている。しかし、受ける印象は随分と違う。

 

「それでは早速ですがいくつか書類を書いていただいても良いですか?」

 

「はい」

 

打鉄の専用貸し出しなどの書類に記載をしていく。わからないところは虚が教えてくれる。

 

「では記入する書類はこれで全部です。後は会長に提出していただければ完了です」

 

「生徒会長さんはどこに?」

 

「会長ならそこに」

 

そう言って生徒会室の一番奥にあるリクライニングチェアを指差す。どうやらずっと生徒会室にいたらしい。ずっと椅子が背を向けていたからわからなかった。

 

しかし生徒会長とはどんな人物なんだろうか。

 

「あの書類お願いします」

 

「はいはい~、待ちくたびれたわよ~」

 

凄く間延びした声。

それも凄く聞き覚えのある声だ。

 

リクライニングチェアがくるりと回る。

そこには空色の髪を持つ女生徒が紅茶を片手に優雅に座っていた。

 

「お、お師匠さまぁ?」

 

「はいはい、あなたのお師匠さま。楯無お姉さんよ~」

 

「お師匠さまがどうしてそこに?」

 

「どうしても何も理由は一つでしょ?」

 

生徒会長の椅子に座っていた楯無。

答えは一つしかない。

 

「お師匠さまが生徒会長!?」

 

「そういうこと。それじゃあ改めて…」

 

扇子をパッと開く楯無。

そこには『我こそ生徒会長!』と書かれている。

 

「IS学園生徒会長の更識楯無よ。よろしくね」

 

「な、なんで言ってくれなかったんですか!?」

 

「敢えて言うなら…」

 

ニヤリと笑う。

 

「翔介君の驚く顔が見たかったからよ」

 

「あ、悪趣味…!」

 

この楯無という人物は人をからかうのが好きらしい。

 

「あれ、更識?」

 

こちらもどこかで聞いた名前だ。

 

「お師匠さまももしかして妹さんいますか?」

 

「……ええ、いるわよ」

 

妹の話題を出すと意地悪そうな笑みが曇る。

虚の顔色も変わる。

 

「翔介君、簪ちゃんのこと知ってるのかしら?」

 

更識簪。間違いないようだ。

 

「はい、ルームメイトです」

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

「ふわっ!?」

 

たった一言。一言だけなのにとんでもない威圧感が翔介を襲う。

こんな楯無は見たことがない。

 

「翔介君」

 

「は、はい!」

 

ゆらりと立ち上がり、翔介に近づいてくる。

その姿、さながら幽鬼のよう。

そして見えないスピードでグワシッとその肩に掴みかかる。

 

「……てないわよね?」

 

「え?」

 

「手、出してないわよね?」

 

ここで台詞を間違えたら確実にやられる。

翔介の本能が警告を鳴らす。

 

「し、してません!」

 

 

 

「うちの簪ちゃんは手を出す価値もないっていうのかしら!?」

 

 

 

どうしろというのか。

 

暴走する楯無に振り回される翔介。そしてそれを止める虚。

 

楯無が落ち着きを取り戻したのはそれから五分後の事であった。

 




本日はここまで。


楯無のシスコン発動。
原作以上にシスコン度が高くなっているかもしれません。

そして気付いていた方も多いかもしれませんが、翔介のルームメイトは更識簪となっております。
まだちゃんとした出番はないですが、どうぞ今後をお楽しみに。
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