インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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16話

ざわざわと騒がしいアリーナ観客席。

今日はついにクラス代表戦。

学園に入学してから約半月。まだまだISの操縦など覚束ないだろうがアリーナ内は熱気であふれている。

 

それもこれも全ては食堂デザートのフリーパス半年分のためである。

 

今、翔介はクラスメイト達と一緒に観客席に座っていた。

生徒会の仕事は大体終わったため、虚からも観客席で観戦するといいと言われた。他にも仕事はないかと聞いたが他の操縦者の戦いを見ることも勉強だと断られた。

 

確かにISでの試合はしたが、他のIS同士の戦闘はまだ見たことがなかった。

前回のクラス長決めの試合も公平を期すためにと一夏とセシリアの試合は見ていなかった。

 

「いきなり専用機持ちとの試合とは一夏の奴大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですわ、なにせこのわたくしが指導したのですから」

 

「指導したのはお前だけではないだろう!」

 

「あら、あんなズバーッとかグワーッとなんて説明が指導だとでも?」

 

箒とセシリアが火花を散らす。

その間に挟まれている翔介の心境たるやいかほどか。

ただでさえ色んな意味で居た堪れないというのに。

 

「ま、まあまあ。二人ともそろそろ始まるよ」

 

そう言うと丁度アリーナの両ピットからISが飛び出してくる。

一つは白いIS。一夏が乗っている。白式と呼ばれる機体だ。ISの実技で何度か見たが実際に戦う姿を見るのは初めてだ。

そういえばいつか一夏が話していたが装備が刀一本しかないという。

 

もう一つは赤み掛かった黒のような機体。

名前は確か甲龍と言っただろうか。出場者リストの中に書かれていた。

 

アリーナの空中で二人が対峙する。

 

『逃げずに来たわね、一夏』

 

『逃げるわけないだろ』

 

『一夏、本気で来なさいよ』

 

『当たり前だ。絶対に負けない』

 

睨み合いながら会話を続ける二人。

 

『自信があるって訳ね。なら賭ける?』

 

『賭け?』

 

『勝った方が負けた方に何でも一つ命令するってのはどうよ?』

 

 

「「はあああああ!?」」

 

両隣の箒とセシリアが悲鳴を上げる。

翔介の心中は穏やかではない。なにせこれを提案したのは翔介なのだから。

 

一夏には比喩的表現や遠回しな表現をしても斜め方向な解釈をされる可能性がある。

だから単純明快に勝負事を挑み、正々堂々と勝利すれば要求も望んだとおりになりやすいのではと考えたのだ。

 

「あ、あの編入生何を言っているのだ!」

 

「図々しいにも程がありますわ!」

 

さらに言うとセシリアに一夏の指導をつけると言ってみてはどうかと言ったのも翔介だ。

前回助言した通り、一夏に改めて謝罪し仲直りできたようだ。

その後ももっと仲良くなるにはどうしたらいいかという相談を受け、それならと提案したのだ。

しかし、まさか一夏に元々指導していたのが箒とは思わなかった。

 

そしてその箒にも相談を受けた。

相変わらず一夏の失言で怒ってしまったそうだ。前回と同じようにそれは一夏にも悪いところがあると宥めながら愚痴を聞かされた。

その上で一夏に対してはあえて広い心で受け止めてみてはと助言した。

 

結果として嫉妬の感情はなかなか抑えられるものでもないようで。

 

翔介のお腹がキリキリ痛む。

 

 

『それじゃあ…』

 

『行くぜ!』

 

試合開始のブザーとともに二人が激突する。

一夏は刀剣を素早く呼び出し鈴へと斬りかかっていく。あれが白式の唯一の装備である『雪片弐型』のようだ。

対する鈴も反りのあるの二振りの巨剣を呼び出す。

『双天牙月』と呼ばれる青龍刀だ。

 

二人の剣がぶつかり合い、火花が散る。

接近戦はほぼ互角だろうか。いや、手数の多い鈴の方がやや優勢のように見える。

 

一夏が立て直しのために距離を取る。

 

『逃げても無駄だっての!』

 

鈴が双天牙月を連結させ投げつける。

あの武器は投擲武器としても使用することができるようだ。

 

『そんなもの!』

 

一夏が雪片で双天牙月を弾く。

しかし、一夏の身体に衝撃が走る。

 

『うおっ!?』

 

 

 

「今織斑君、攻撃躱したはずなのに」

 

「ああ、だが何故?」

 

観客席から見る翔介たちからは急に一夏が弾かれたように見えた。

しかしセシリアは冷静に状況を分析していた。

 

「あれは衝撃砲ですわ」

 

「衝撃砲?」

 

「その名の通り空間を圧縮し、衝撃を砲弾とする武器ですわ。衝撃を砲弾とするだけあり砲身も砲弾も目に見えないという特徴があるわ」

 

またその特徴のためか射程角度の限界も存在しないという。

 

「そんなものどうやって避ければいいのだ?」

 

これは本当に鈴が勝ってしまいそうな勢いだ。

一夏は一体どうするつもりだろうか。

 

 

ピピピピ

 

 

二人の戦いに固唾を飲んで見守っていると翔介の携帯が鳴る。

いつもは放課後までロッカーの中で保管しているのだが、今日はいつでも連絡できるようにと所持しているようにと言われていた。

画面には布仏虚と表示されていた。

 

「はい、もしもし?」

 

『道野君ですか?』

 

「はい、どうしました?」

 

『申し訳ないのですが少し頼まれてもいいですか?』

 

「緊急ですか?」

 

「いいえ、そういうわけではなかったのですが」

 

虚の話によれば格納庫の方に出場者の資料を置いてきてしまい、次の試合以降にも必要となるので取ってきてほしいらしい。

虚は他の業務で手が離せないようだ。

 

「わかりました、すぐに行きます」

 

『すいません、他の試合を見るのも勉強の内と言っておきながら』

 

「大丈夫ですよ、僕も生徒会の一員ですから」

 

虚はもう一度すみませんと言って切れた。

 

「それじゃあ僕少し離れるね」

 

「お忙しいですわね」

 

「あまり無理はするなよ?」

 

「ありがとう、それじゃあ行ってくるね」

 

翔介は席を立ち、格納庫へと向かう。

後ろでは一夏と鈴が激闘を繰り広げている。後ろ髪を引かれるが、自分の仕事はしっかりやらなければ。

 

 

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格納庫には人はおらず真っ暗だった。

格納庫内には訓練用の打鉄やラファールが並んでいる。

そして一体の打鉄が整備されている。

 

それは翔介に専用貸し出しされることなった打鉄だ。

セシリアとの試合で使った打鉄だ。初めて使ったということもありそのまま専用で貸し出しされることになった。

今は貸し出し前の整備ということで回されているようだ。

 

「これからよろしくね、打鉄」

 

整備されている打鉄を撫でる。

 

「さて、こんなことしてる場合じゃなかった」

 

虚に言われた用事を済ませようと格納庫のデスクの上を探す。

果たしてデスクの上には紙の資料が置かれていた。

資料にはISの点検表など挟まっており、そこにはチェックが無数につけられている。

 

このIS学園は操縦だけでなく、整備のための勉強もすることができる。虚もその整備科に所属している。

この学園のISは整備科の課題のためもあり、生徒が中心になって整備をしている。

クラス代表戦本番まで整備科の生徒たちは大忙しだったようだ。

この資料も遅くまで整備をしていたため置きっぱなしになってしまったのだろう。

 

ちなみに翔介が使うことになった打鉄は虚が整備してくれている。

生徒会の仕事然り、ISの整備然り、虚には頭が上がらない。

 

そういえば楯無は用があって学園から離れているというが、一体どんな用なのだろう。

かれこれ二週間くらい毎日のように顔を合わせていたが実をいえばそれほど彼女のことを知らない。

知ってるのはこの学園の生徒会長であり、妹がいるということくらいだ。

後は凄く悪戯好きだということだろうか。

 

たまに聞いてみようかと思うのだが、その度にはぐらかされるため本人もあまり話したがらないのかもしれない。

とはいえ彼女にも随分と世話になっている。

楯無の指導がなければいまだ歩くことすらままならなかっただろう。

 

近々なにか二人の先輩にお礼でもしなければと考えつつ、資料を虚に持って行く。

 

 

 

ズウンッ‼

 

 

翔介は激しい振動に襲われる。

 

「な、なに!? 地震!?」

 

慌てて格納庫から出ようとすると何故か扉が開かない。

 

「あ、あれ?」

 

いつもなら自動的に開くのに引っ張ってもビクともしない。

どうしたのかと何度か試しているとまた虚から携帯が鳴る。

 

「あ、先輩、すいません。今まだ格納庫で」

 

「道野君、今はそこから出ないでください!」

 

通話口から聞こえてくるのは切羽詰まった様子の虚の声。

普段冷静な彼女からは想像できないその様子は異常事態が起こっていることを示していた。

 

「な、何かあったんですか? もしかしてさっきの地震が?」

 

 

 

「現在IS学園は謎のISに攻撃を受けています」

 

 

虚から告げられた事実は想像以上の非常事態であった。

 




本日はここまで。

原作一巻クライマックスの何故のIS襲来。

格納庫に閉じ込められた翔介。
一体どうなるのか。
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