インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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22話

科特研での顔合わせも終えて、二人は建物を後にしていた。

契約に必要な書類に関しては後々学園経由で届けられるとのこと。

そこまでの手続きをしてくれた楯無には感謝してもしきれない。

 

今は少し遅めの昼食を街中のカフェで摂っていた。

 

「翔介君どうだった? 科特研は」

 

「凄かったです。凄いと同時にカッコよかった」

 

翔介の正直な感想に楯無がうんうんと頷く。

 

「そう言ってくれたのなら探した甲斐があったわ」

 

楯無は翔介に打鉄を専用貸し出しすることが決まってから、訓練をしながらも探し回ってくれていたらしい。

 

「そういえばどうして科特研を僕に紹介してくれたんですか?」

 

ISの企業と言えば国内でも大小の規模を除けば相当数がある。

その中でも何故科特研を紹介したのか。

 

「あなたは世界でも二人の男性操縦者。そうなれば色々な企業があなたに接触してくる。その為にも既に企業と提携してることにした方が何かと良かったの」

 

既に企業に属しているとなれば他の企業があれこれちょっかいをかけてくることもなくなる。それが狙いのようだ。

 

「あそこなら間違いなく翔介君と気が合いそうだったからね」

 

それには素直に頷く。

科特研の面々とは宇宙へと羽ばたこうという思いを同じくする者同士。気が合うというのはこういう事だろう。

 

「科特研はこの業界の中でも特に評判のいいところでね。翔介君にはガチガチに戦闘用装備ばかり作っている企業よりこういうところの方があってると思ったの」

 

「確かに…」

 

武器ばかり紹介されても困ってしまう。

 

「まあ、これからは科特研の方たちとも長い付き合いになるでしょうから仲良くしなさい」

 

そう言って楯無は紅茶を啜る。

ゆっくりと味わうとカップを置く。

 

「うん、ここの紅茶もなかなかね」

 

「そういえばお師匠さまは生徒会室でもよく紅茶飲んでますね。お好きなんですか?」

 

「紅茶が好きと言うよりは虚ちゃんが淹れる紅茶が好きっていうのかしらね」

 

そんなにおいしいのだろうか。

少しだけ興味が出てくる。

ちなみに翔介は日本茶派である。故郷にいるときはたまに飲んだ抹茶なんかも大好きだ。

 

「そういえば…布仏先輩って三年生ですよね? なんでお師匠さまは名前で呼んでるんですか?」

 

楯無が仲のいい相手にはあまり畏まらない性格なのは良く知っているが、それとは別の気安さを感じる時がある。

 

「ああ~…えっと虚ちゃんとは子どもの頃からの知り合いで。そのせいかなぁ」

 

なんとも曖昧な感じの答え。

玉虫色の答えとはこういう事だろうか。

 

「へぇ…」

 

「さ、さあそんな事よりこの後はどうする?」

 

「この後って?」

 

今日の予定は科特研に翔介を引き合わせることだったはず。

他にも予定があっただろうか。

 

「言ったじゃない。今日はデートだって」

 

「え、あれって本気だったんですか!?」

 

てっきりいつもの軽口だと思っていたのだが。

 

「あら、男と女が二人で出かける。それはもうデートと言っていいのよ」

 

ドヤァと告げる楯無。

やはりいつもの軽口かもしれない。

 

「まあ、冗談はさておき。翔介君、まだ街の中を歩いたことなかったでしょ? いきなり一人で歩くのも大変だろうから案内役も兼ねてってことでね」

 

「案内ですか…」

 

「そう、どこか行きたいところはあるかしら?」

 

行きたいところといざ言われてみると思いつかない。

都会は故郷とは違って何でもある場所だ。

むしろ何を見ればいいのかわからない。

 

「悩んでるわねぇ、なら一通り回ってみましょうか?」

 

「それでお願いします…」

 

「わかったわ。それじゃあ洋服屋とか後は…」

 

そう言って楯無はあれこれとピックアップしていく。

その様子はとても楽しそうだ。普段から生徒会長なんて忙しい身なのだからこういう時ぐらい息抜きしたいのだろうと翔介は一人納得する。

 

余談ではあるがこの時の楯無は重要な仕事を虚に丸投げしてここに来ていた。

後々どんな目に合うかは火を見るよ明らかであろう。

 

 

 

あれから洋服店や文具屋、本屋などを回った。

改めて都会の利便さと言うか、物の多さを実感した。

今は色とりどりの看板が目立つ街へとやってきていた。どちらを向いてもアニメや漫画のイラストが目に入ってくる。

 

「ここは今でこそこういう町だけど昔は電気街でね。いろんなお店があるから掘り出し物なんか見つかるかもしれないわね」

 

楯無の話を聞きながら通りから見える店を眺めていく。

するとある一店舗に目が留まる。

その店はヒーロー物を専門に扱っているようで、つい先日に簪と一緒に観たアニメも棚に並んでいる。

 

「あら、翔介君。そういうの好きなの?」

 

「小さい頃によく観てました。それに僕がというよりは更識さんが喜びそうだなと思って」

 

そこまで言ってハッとする。

 

「そう…簪ちゃんも好きだったわね…」

 

やはり楯無のテンションが下がってしまった。

妹である簪の話をするとどこか思いつめるような表情をする。

 

他の家庭内事情に深く突っ込むのは褒められることではないと思うが、どうにもモヤモヤしてしまう。

それに日頃から世話になっている楯無に少しでも恩返しがしたいという思いもあった。

 

「あの…更識さん、妹さんとは、その…あまり話さないんですか?」

 

出来る限り言葉を選んで問い掛ける。

以前の楯無の様子を見る限り、彼女が簪を嫌っているという線はないはず。むしろ大好きすぎるという域にいるとすら思える。

それなのに二人が一緒にいる姿を見ないのは何か原因があるのではないのだろうかと翔介は考えたのだ。

 

「…そうね、あまり話さないというか話せないというか…」

 

「どうしてですか?」

 

「…ちょっとどこかに座りましょうか」

 

話が長くなると考えたのか楯無は近くのベンチを指差す。

流石に踏み込み過ぎかと思ったが話してくれるようだ。

 

 

どれほど力になれるかわからないが、楯無の話を聞くことにした。

 




本日は短いですがここまで。

ようやく語られる更識姉妹の確執。

翔介はその確執にどう向かい合うのか。

原作二巻に入る前に更識姉妹とのオリジナル展開となります。
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