インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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30話

「どうかしら、翔介君。新装備の着け心地は」

 

時間は放課後。

翔介と楯無は早速新しい装備を打鉄に装備していた。

そして今日は簪も訓練を見に来ていた。

 

科特研の虎の子であるロケットに興味があるようだ。

 

「あまりいつもと変わらないですね、動きにくい感じもないですし」

 

そもそも装備をつけているのは打鉄の方だ。

動きづらさなどを感じることもないだろう。

 

翔介が纏う打鉄にはハイドロジェネレードロケットである『星の翼』。

右腕にはワイヤー装置『絡み蔦』

そして左腕には可変式の大型楯『重ね畳』

 

「凄い…小型にしたのに出力がこんなに…」

 

簪は速田たちが残していったデータを見つめながら呟いている。

自分でISを作り出そうとしている彼女にとっていい刺激となるのだろう。

 

「ああ…タブレットと睨めっこする簪ちゃん可愛い…」

 

楯無は楯無で簪を見つめてにやけている。

箸が転んでも面白いとはこういうことだろうか。

 

「お師匠さま」

 

「あ、ああ、そうね。それじゃあ早速始めましょうか」

 

まずは普通に浮かぶ。

そしてしばらくは通常通りに飛行する。

 

『随分と慣れてきたんじゃないかしら?』

 

通信画面が開き、楯無の声が聞こえてくる。

確かに最初のころと比べれば随分と安定して飛べるようになった。

相変わらず戦闘のセンスは上達しないがそれ以外の事であれば自分でも自覚できるほどには上達している気がする。

 

それでもこれで満足してはいけない。

努力はし続けることに意味があるのだから。

 

『さてウォーミングアップはこれくらいにして本命といきましょうか』

 

ついに星の翼の実践だ。

翔介はディスプレイから星の翼を選択し起動させる。

背中、腰、足に付けられたロケットに徐々に火が灯っていき。

 

 

ドンッ!

 

 

「へあっ?」

 

 

気付けば翔介は地面にめり込んでいた。

一体何が起こったのか。翔介は目を丸くして固まっている。

 

「翔介君、大丈夫?」

 

楯無が地面にめり込む翔介に近寄ってくる。

 

「あ、あの…今何が起きましたか…?」

 

「ロケットが起動したと思ったらそのまま地面に突っ込んでいったよ」

 

後からやってきた簪が教えてくれる。

どうやらロケットの加速に対応しきれず墜落したようだ。

 

「これはなかなかのじゃじゃ馬ね」

 

「今度は出力を弱めて使ってみた方が良いんじゃないかな?」

 

更識姉妹が対応を考えている横でじたばたと地面でもがく翔介。

 

「もう一度やってみましょうか。今度は出力を五十%、いや二十五%くらいに絞ってみましょう」

 

「は、はい…」

 

よろよろと立ち上がりながらもう一度空に飛び立つ。

今度は楯無に言われた通り出力を二十五%に抑える。

 

グンッと体に一気に負荷がかかる。

ISスーツはあらゆる障害から装着者を守るものだが、それを通しても体に衝撃が走る。

 

「うわわわわっ!?」

 

すぐに迫ってくるアリーナの壁に慌ててロケットの出力を切る。

それでも慣性で前に飛んでいく打鉄。

翔介はハッと左腕の重ね畳を展開する。楯を下にし衝撃に備える。

 

ガガガガッと激しい音を立てながら地面を滑る。

やがてアリーナの壁にぶつかって、ようやく止まった。

 

「…これはじゃじゃ馬どころじゃないわね。これは怪獣だわ」

 

「四分の一でもこれだけの出力がでるなんて…」

 

「あだだ…」

 

「やっぱり科特研の面々は凄いもの作るわね」

 

フラフラと立ち上がる翔介。

打鉄や装備を見やる。どうやら壊れている部分はなさそうだ。

重ね畳も傷一つついていない。

ロケットばかりに気を取られていたが他の装備の性能もなかなかのもののようだ。

 

「じゃあ翔介君。もう一度行ってみましょうか」

 

「は、はい…」

 

 

 

結果としてアリーナの地面をえぐること数十回。

もはやアリーナの地面は大きなモグラが通ったのではないかと思うほどボコボコになっていた。

 

「結局五%が今操作できる限界みたいね」

 

ようやく操れるようになったとは言ったものの一回ロケットを吹かしたらすぐに止めて、さらにもう一度吹かして止めるといった断続的な使用方法だ。

正直、ガクンガクンと機体が動いて気持ち悪い。

 

「でもこれって織斑君も使ってた…」

 

「ええ、瞬間加速と同じ要領ね」

 

ロケットを断続的に起動させたりすることにより一夏も使う瞬間加速を疑似的に真似ることになった。

 

「とはいえこれじゃあ使いこなしたことにならないわね」

 

「そもそもこのアリーナじゃ小さすぎるんじゃないかな?」

 

簪の言う通りこのアリーナでは星の翼を全力で起動させるには些か手狭であった。

手狭といっても翔介の故郷の校庭と比べれば倍近くの広さはあるのだが。

 

「そうねぇ、これはもっと広いスペースで訓練する必要がありそうね」

 

「でもその前に少しでも使いこなせるようにならないと」

 

最悪真っ直ぐ飛ぶだけならまだなんとかなるだろう。

だが実際は細かい制動が要求される。

五%でようやっと動かせている彼にはまだまだ課題が多く残っている。

 

「この調子だと学年別トーナメントに間に合わせるのは難しそうね」

 

「学年別トーナメント?」

 

「あら、まだ聞いてなかったかしら? 今月末くらいに始まる…そうね、ISの試験みたいなものと言えばいいのかしら」

 

楯無の話を聞く限りこういう事らしい。

学年別トーナメントとは文字通り学年それぞれで生徒一人一人を対象に行われる試合の事だ。

全校生徒を対象にするため一週間と長い期間を要する。

目的は学年事に代わり、一年生はそこで改めてISランクの決定がされ、二年生と三年生には外部からのスカウトが目を光らせに来るようだ。

勿論有望であれば一年生の時からスカウトがやってくることもあるようだ。

 

「へぇ…結構大きな行事ですね」

 

「ええ、特に三年生には企業側にアピールする良い機会だから気合いの入り方が違うわ」

 

人によっては将来に影響を与える行事。

それは熱が入ると言うものだろう。

 

「でもそれまでに星の翼を使いこなすのは難しそうね」

 

「使いこなせれば間違いなく強みになると思うんだけど…」

 

「僕もすぐには使いこなせるとは思ってなかったし…まだまだこれからだよ」

 

翔介は打鉄から降りながら告げる。

元々これはISように作り出された装備ではない。本来であれば宇宙を飛ぶジェット機に取り付けられるものだった。だからこそ、そんな簡単に使いこなせるとも思ってはいない。

 

 

ただ想像以上の性能でやや怖気づいたのだが。

 

翔介の答えに楯無は満足そうに笑みを浮かべる。

 

「その通りよ。どんなことも何度も試して、経験して初めて自分のものになるのよ」

 

「はい!」

 

楯無の言う通り、どんなことでも始めからできるわけではない。

だからこそ何度も何度も失敗しながら上達していくものなのだ。

 

色々とアレなところもあるがやはり楯無は師匠として頼もしい。

 

「そう、どんな経験もね。あーんなことや、こーんなこともね」

 

「お姉ちゃん!」

 

 

本当にこういうところを除けば完璧なのだが。

いや、完璧なだけでは駄目だからあえてこういう性格をしているのだろうか。

 

「さて、あまり根を詰めすぎてもいけないし今日はこれくらいにしましょうか」

 

「はい、ありがとうございます。じゃあ僕はこのアリーナを片付けていきます」

 

アリーナの地面はボコボコ。

 

「で、でも大変じゃない? 手伝おうか?」

 

簪が声をかけてくる。

星の翼の訓練で散々っぱら地面にたたきつけられたのを見て心配になったようだ。

 

「大丈夫だよ、ISを使えばそんなに時間はかからないし」

 

それに使ったものは使った人が片付ける。

これも小さい頃から教えられてきたことだった。

 

「簪ちゃん、こういう時は男の子に花を持たせてあげましょ」

 

「う、うん…」

 

「それじゃあ片付けお願いね」

 

「はい、ありがとうございました」

 

そう言って翔介が見送る中、更識姉妹はアリーナを後にしていった。

簪は最後まで気がかりだったようだが。

 

 

「さぁて…」

 

 

翔介はアリーナの惨状を見やる。

 

 

「夕食までに終わるかなぁ…」

 

 




本日はここまで。

また少し間が開きましたが投稿できました。

そして気付けばお気に入り登録が95件。
さらに評価がまさかの☆10に!

こんな拙作に評価をいただけて嬉しい限りです!

これからもこれを糧に投稿していきますのでよろしくお願いします。
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