インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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31話

「思ったより時間かかっちゃったな…」

 

ようやくアリーナの整地も終わり着替えを済ませた。

時間も随分とかかってしまった。夕食の時間には何とか間に合いそうだ。

ロッカーから荷物を取り出す。

すると携帯電話がチカチカと明滅している。

どうやらメールが来ているようだ。

 

メールを開いてみると差出人は一夏だった。

 

『訓練どうだ? もし終わったなら俺の部屋に来ないか?』

 

一夏からの遊びの誘いだった。

彼は部屋替えがあり、今まで同室だった箒からシャルルに変わっている。

ちなみに翔介のルームメイトは変わらず簪のままである。

ただ最近はなにかと楯無が遊びに来ている。

 

一応寮のため消灯時間などは決められているのだが男子同士で親交を深めるのも悪くない。基本的に校則は守る性格だが、だからと言って変に縛られる性格でもない。

 

翔介はすぐに了解の返事を送る。

 

 

その前に夕食を食べようと食堂へと向かうことにした。

アリーナを出ると夕日が空を赤く染めていた。随分と日も長くなってきた。

それが夏の到来を思わせる。

 

「いけない、こんなことしてる場合じゃなかったや」

 

急いで夕食を摂って一夏の部屋に行かなければと考え、駆け足で寮へと戻る。

 

 

『何故ですか!?』

 

 

アリーナを出て、中庭に差し掛かったところですごい剣幕が聞こえてきた。

思わず足を止めてしまう。

あまり立ち聞きなど褒められたものではないがこっそり覗き見る。

 

見ればそこにはドイツからの転校生であるラウラ・ボーデヴィッヒと千冬だった。

 

「あなたほどの人物がなぜこんなところで教師など!」

 

「何度も言わせるな、私には私の都合がある。それだけだ」

 

ラウラが千冬に何か言い募っている。

転校初日のあの様子から見ても二人が以前からの知り合いのようだ。

 

「このような辺鄙な土地でどんな役目があるというのですか!」

 

千冬の素っ気ない返事にラウラの激情がさらにヒートアップしていく。

 

「お願いです! ドイツに戻ってもう一度ご指導を! ここではあなたの能力の半分も活かされない!」

 

「ほう…それで?」

 

「そもそもこの学園の生徒はレベルが低すぎる! ISをファッションか何かと勘違いしている! そのような程度の低い…!」

 

「そこまでにしておけ、小娘」

 

千冬の凄みのある声が彼女の言葉を遮る。

自分に向けられている訳でもないのに背中がゾクッと凍る。

先程まで激情に駆られていたラウラも黙り込む。

 

「その歳で選ばれたもの気どりか? 随分と偉くなったものだな」

 

「私は…」

 

「そろそろ帰寮時間だ、さっさと戻れ」

 

千冬にそう言われラウラは下を向いたまま中庭を離れる。

そのまま翔介の方へ。

 

「あ…」

 

慌てて隠れようとするもそんな場所はなく鉢合わせする。

 

「貴様は…」

 

「えっと…」

 

キッと翔介を睨むラウラ。それ以上は突っかかってくることはなく寮の方へと戻っていった。

 

「悪いことしちゃったな…」

 

そんなラウラの背中を見送りながらバツが悪そうに頭を掻く。

 

「ああ、そうだな。盗み聞きとはいい趣味だな、道野?」

 

「ひゃい!?」

 

いつの間にやら背後に千冬が立っていた。

 

「お、織斑先生…!」

 

「まったく、お前は面倒ごとに首を突っ込むのが趣味なのか?」

 

「いや、そんな…」

 

そんなことはない筈なのだが。

ただこの学園に来てから既に何度も問題に直面している時点であまり言い返せない。

 

「あ、あの…織斑先生とボーデヴィッヒさんってお知り合いだったんですか?」

 

「まあな。昔ドイツで少しな」

 

「ドイツ…?」

 

「あまり女性のことを詮索するものではないぞ」

 

そう言われるとこれ以上何も聞けない。

 

「そら、お前もそろそろ戻れ。帰寮時間を越したら反省文だ」

 

「は、はい!」

 

千冬に急かされ一夏との約束を思い出し、千冬に一礼すると寮へと駆け出す。

 

「道野」

 

しかし千冬に呼び止められ、振り向く。

 

 

「門限は守れよ。時間までには部屋に戻れよ」

 

まあ、と言葉を続ける。

 

 

「バレなければ問題はないがな」

 

 

まるでこの後の予定を知っているかのような口ぶりだった。

だがその一方で一夏たちの部屋に遊びに行くことを止めるような素振りはなかった。

 

この言葉をどう受け止めるかはともかくとして。

 

「わ、わかりました」

 

素直に今は頷く方が良いだろうと考え、翔介は寮へと走っていった。

 

 

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夕食を食べ終え、一度部屋に戻ってから一夏たちの部屋へと向かう。

簪に一夏の部屋へ遊びに行くと伝えておいた。

前までは彼の名前を出すだけで不機嫌になった彼女だが、更識姉妹の仲直り作戦以来随分と仲良くなったようだ。

 

元々仲のいい友達がいなかった簪としては良い傾向だろう。

 

そんな事を考えながら、こそこそと一夏たちの部屋をノックする。

するとすぐさま一夏が扉を開く。

 

「よお、遅かったな。まあ、入れよ」

 

一夏に誘われ部屋に入る。

 

「お邪魔します」

 

部屋に入ると既にお菓子や飲み物が用意され、ベットの上には三人で遊べるテーブルゲームが準備されていた。

 

「あれ? デュノア君は?」

 

「ああ、シャルルなら俺が帰ってきたらシャワー浴びてたみたいでさ。今も入ってるんじゃないか?」

 

すぐに終わるだろうし、先に始めていようということになり二人で飲み物とお菓子をつまみながら待つことになった。

 

「どうだ、訓練の方は?」

 

「いや、結構大変だよ。作ってもらったロケットもなかなか使いこなせないし。織斑君はどう? 今は篠ノ之さんたちと一緒にやってるんだよね?」

 

「ああ、まあ…」

 

なんとも言えない表情の一夏。

というのもこの三人は他者に教えるという事が極端に下手だ。

 

箒は『バーッと行って、ガッとする!』なんて抽象的な表現が多い。

セシリアは『ここで右斜め上方向に五度ほどずらします』など細かすぎる。

鈴は元々理論より感性派のようで『感覚よ、感覚。わかるでしょ?』とそもそも説明自体をしない。

 

そんな三人の指導を受けているのだから翔介とはまた別のベクトルで大変だろう。

 

そういえばそんな三人について聞きたいこともある。

これだけ一緒にいるのだから少しくらいは何か特別なリアクションがあっても良い筈だ。

 

「織斑君はあの三人とよく一緒にいるけどどう思ってる?」

 

少し直球な質問だが、恐らくは問題はないだろう。

 

「どうって? まあ、俺の訓練に付き合ってくれるんだから良い奴らだよな」

 

「まあ、そうなるよね…」

 

大体予想通りの答えだった。

これを聞いたら三人がガックリと項垂れる様子が容易に想像できる。

 

だがけして悪印象はないのだから悪い状況ではないだろう。

特にセシリアなんかは始めの印象が喧嘩腰だったのだから尚の事心配だったが大丈夫のようだ。

 

「それがどうかしたか?」

 

「うぅん、これからも仲良くしてあげてね」

 

「ああ。それは勿論だが」

 

二人はお菓子をもしゃもしゃとつまむ。

その後は何気ない会話が続く。

 

するとふと一夏が思い出す。

 

「あ、ヤバい。そういえばシャワー室のシャンプー切れてたんだ」

 

「それなら今ならまだ間に合うんじゃない?」

 

「そうだな、よっこら」

 

一夏はそう言うとシャワー室にシャンプーの替えを届けに行く。

 

翔介は彼が帰ってくるまでお茶を口に含む。

 

 

 

「えええええっ!?」

 

「うわあああああ!?」

 

「ぶふっ!?」

 

 

 

唐突に聞こえてきた二つの悲鳴に思わずお茶を吹き出す。

 

「何っ!? どうしたの!?」

 

慌ててシャワー室に駆け込む翔介。

 

「あっ!? 翔介、待った!」

 

 

そこにいたのは何かを隠そうとする一夏。

 

 

 

そして。

 

 

 

「あわわわわ…」

 

 

一糸まとわぬ金髪の美少女が口をパクパクさせていた。

 




本日はここまで。

シャルルの正体が発覚。

唐突な出来事にどう対処するのか。
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