インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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34話

突然だがIS学園はISについて学ぶための施設だ。

当然ながらISの知識、技術を学ぶがそれと同時に普通の高等学校と変わらない授業も行っている。

 

「本日はここまでとする。各自、予習をしておいてください」

 

教員がモニターに映し出された数学の授業内容を消去しながらクラス中にそう告げる。

クラス中の空気が一斉に弛緩していく。

これが千冬であれば最後まで気は抜けないのだが。

 

「ふぅ~…」

 

翔介もそんな中の一人であり、教科書をしまいながら息を吐く。

 

元々あまり理数系が得意ではない彼にとって数学の時間は気の抜けない授業の一つだ。

苦手ではあるからこそしっかり授業は受けておきたいのだ。

だがやはり苦手というのはなかなか克服できるものでもなく、授業が終わると今のように膨らんだ風船が一気にしぼむように気が抜ける。

 

気の抜けた翔介が視線を動かしクラス中を眺め、最後はシャルロットの方へと視線が向いた。

今日も今日とて男装の麗人を続けている。

見ている限りではいつもと変わらない様子だが、その内心はよくわからない。

 

今更ながら余計なことしたのではないかと不安になってくる。

というよりも昨日の自分の蛮勇振りが今更ながら怖くなってくる。

そもそも相手が相手だ。

落ち目とは言っていたがそれでも世界三位のシェアを誇る大企業の社長が相手だ。できるだけ失礼のないように言葉を選んだはずなのだが本当に大丈夫だったのだろうか。

 

「道野」

 

いや、そもそも携帯越しとはいえ初対面であった相手にあそこまでずけずけと物を言うのは失礼極まる行為ではなかっただろうか。

 

「道野?」

 

だがあの場面でひたすら黙っていることもできなかったのも事実。

一夏ほどではないにしても翔介もまたデュノア社長の言い分に怒りを覚えていたのだ。

 

「おい! 道野‼」

 

「ふわっ!?」

 

いきなり目の前で名前を呼ばれ思わず変な声が出る翔介。

考え事をしていて気が付かなかったようだ。彼の前には箒が立っていた。

わざとではないにしても無視してしまったせいか、その眉がキュッと吊り上げている。

 

「何度も呼んでいたのだぞ?」

 

「ご、ごめんね、篠ノ之さん。何か用事?」

 

「う、うむ、実は少し話があってな…」

 

そう言って箒はチラリと一夏の方へと視線を送る。

それだけで一夏絡みの話なのはすぐに分かった。

 

「わかった、じゃあ場所移そうか?」

 

翔介の言葉に箒も大人しくそれに従う。

この時間帯であれば屋上はほとんど人がいないはずだ。

 

二人は教室を出て、屋上へと向かっていった。

 

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「それでどうしたの?」

 

「うむ、実は相談したいことがあってな」

 

屋上にたどり着くとさっそく相談を受けることになった。

 

「道野は今度の学年別トーナメントの話は聞いているか?」

 

「ああ、うん。知ってるよ」

 

まだ正式に公表されていないが既に学年中に知るところとなった学年別トーナメント。

翔介も楯無から既に聞き及んでいた。

 

「道野、私はこの学年別トーナメントで優勝したら…」

 

うんうんと箒の言葉を聞く。

 

 

「私はこのトーナメントに優勝したら一夏に告白する」

 

 

「おお…」

 

思わず声がこぼれる。

 

「相談って言ったけどもう決めてるんだね?」

 

「う、うむ。だが相談はここからでな」

 

箒は頬をポリポリと掻く。

少し照れくさそうな表情は少し珍しかった。

 

「道野、トーナメントのタッグパートナーを一緒に組んでくれないか?」

 

「タッグパートナー?」

 

「なんだ、それは知らなかったのか?」

 

彼女の話によれば今年のトーナメントから個人戦からタッグ戦に変更になったらしい。

今年は例年に比べ新入生が多く、さらに専用機持ちの代表候補生も多いことから時間短縮のためにタッグ戦で一試合四名でやることになった。

 

現在は水面下で生徒間でパートナー探しが行われているらしい。

 

「でもどうして僕なの?」

 

それこそ一夏と組めばいいような気もするのだが。

一夏とタッグを組み、見事に優勝。そしてその流れから告白。

うん、実にドラマチック。

 

「私は一夏と戦って勝ちたいんだ。その上であいつに告白したい」

 

「戦って勝ちたい、か…」

 

彼女にとっては一夏と共に戦うより彼に勝つことが重要らしい。

 

「そういう事なら…」

 

特に誰とも組むことは決めていなかったため彼女の頼みを受けようとすると、なんと彼女からストップがかかった。

 

「いや、待ってくれ。答えはすぐじゃなくていい」

 

「え、でも僕は特に組む人とかいないしすぐの方が良いんじゃない?」

 

「そうなのだが…私の頼みだからと言ってすぐに受けてもらうのは少し気が引けてな…」

 

「気が引ける?」

 

どういうことなのかと首をひねる翔介。

 

「今回のトーナメントはいわばISの中間試験のような重要なものだろう? 私と組んで結果が振るわないというのは申し訳ない。だからお前が組みたい相手ができたらそっちを優先してくれ」

 

「それでいいの?」

 

「頼んでいるのは私の方だ。それに組む相手がいない時は抽選で決まるみたいだしな」

 

出場できないわけではないから問題ないと笑う箒。

できればすぐにでも返事をするべきなのだろうが、彼女の申し出も一理あるのだろう。

 

「パートナーの登録期限はまだ先だからな。それまでじっくり考えてみてくれ」

 

「うん、わかったよ」

 

「話はこれで終わりだ。パートナーの件、よく考えてみてくれ」

 

そう言って箒は屋上から出て行った。

翔介はその背中に手を振りながら見送った。

 

「パートナーかぁ…」

 

学年別トーナメントの話は聞いていたが、タッグ戦になっていたのは知らなかった。

個人戦であれば自分の力量を磨くことが大切だが、タッグ戦はそれだけでは駄目だ。

 

いつかの訓練の時に楯無が言っていたことを思い出す。

タッグ戦は個人の技量だけでは成り立たないという。大切なのは個人同士の技量を融和させる技量だという。

 

「もし組むのなら…?」

 

そう言って知り合いの顔を思い出していく。

誰と組むにしても足を引っ張らないくらいには個人の技量が欲しくなるだろう。

 

そうなるとやはり心配なのは星の翼だろうか。

未だまともに動かすことが出来ないのでは宝の持ち腐れもいいところだ。

 

だが、初めて試した時のようにフル稼働で使おうとすれば墜落する姿しか思い浮かばない。

 

「お師匠さまに相談してみようかな…」

 

頼りっぱなしもいけないと思うが、下手な考え休むに似たりとも言う。

こういう時は先人の知恵を借りる方がいいだろう。

 

そうと決まれば今日の放課後にでも相談してみるとしよう。

そう考え、翔介も屋上を後にした。

 

それと同時に。

 

自分でも誰とパートナーになるか少し考えてみようと歩き出した。

 

 




本日はここまで。

前回33話を上げたらすごい勢いでお気に入りやしおりが増えて少し驚いてます。

そして今更ながら今年のウルフェスが発表になりましたね。
今年も行けたらいいなと思いながら書いております。


パートナーを探すことになった翔介。

このまま箒と組むことになるのか、それとも?
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