インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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36話

翔介はセシリアと鈴が運び込まれた保健室の扉を開ける。

 

「二人ともだいじょう……ぶ?」

 

思わず言葉が尻すぼみになる。

 

というのも。

 

「織斑君!」

 

「デュノア君!」

 

『よろしくお願いします!』

 

保健室の中では数名の女生徒たちが一夏とシャルロットに手を差し出していた。

困惑する二人にベッドに寝ているセシリアと鈴が凄い形相をしている。

 

「どうしたの、二人とも?」

 

「いや、俺たちが聞きたいというか…」

 

「こいつら一夏たちと組みたいっていうのよ!」

 

ベッドで寝ていた鈴が声を上げる。しかし、傷が痛むのか「ぴぎっ!」と悲鳴を上げて倒れ込む。

だけどそれで得心がいった。

学年別トーナメントがタッグ戦となったことが周知されたようだ。

恐らくは専用機持ちである二人のどちらかと組めば学年別トーナメントでも良い成績を収める可能性がある。また、それを機にあわよくばお近づきになれるチャンスと見たのだろう。

 

「ま、待って待って! 皆、怪我人がいるからあんまり騒いじゃ駄目だよ」

 

騒ぐ女生徒たちに翔介が慌てて止めに入る。

 

「でもトーナメントまで時間ないんだから早くパートナー決めないと!」

 

「そうそう、これも学校行事のためなのよ!」

 

どうにも言ったところで退いてはくれなさそうだ。

これは元を何とかしなければいけないだろう。

 

翔介は一夏とシャルロットに近寄る。

 

「ねえ、二人とも早くパートナー見つけた方がいいんじゃない?」

 

「だけどもしシャルロットが誰かと組んだらマズいじゃないか」

 

「ああ、確かに…」

 

一夏の言わんとすることも分かる。

もしシャルロットが誰かと組めば何かの拍子で彼女の秘密が明るみに出る可能性がある。そうなれば彼女は学園にいることができなくなってしまうかもしれない。

 

「それなら…織斑君がデュノアさんと組む?」

 

「俺が? お前はどうするんだ?」

 

「僕は…もう少し探そうかなと思って。それにこの騒ぎを止めるためにもタッグを組むのは織斑君の方が良いと思うんだ」

 

一夏とシャルロットの二人が組めば女生徒たちのパートナー争奪戦は止めることはできる。それに男性同士と思われているならば波風も立たないし、彼女の秘密も守ることもできる。

 

「なるほどな」

 

一夏は納得したように頷く。

 

「悪い! 俺、シャルと組むことにしたんだ!」

 

一夏がそう言うとベッドに横たわる二人がガタッと反応する。だが、すぐに痛みでベッドへと逆戻り。やはり二人は一夏とタッグを組もうとしていたようだ。

 

「そっか、それならまぁ」

 

「他の女子と組まれるよりはいいしね」

 

一波乱あるかと思ったが、女生徒たちはあっさり引き下がってくれた。

案外聞き分けがいいというか、引き際がいいというべきか。

タッグの相手がわかると女生徒たちはぞろぞろと保健室を出て行った。

 

ようやく保健室に静寂がやってきた。

 

「一夏」

 

「一夏さん」

 

と思ったがあっさり引き下がった女生徒たちと違い、二人はまだ納得していないようだ。

 

「あんた! 組むならあたしと組みなさいよ!」

 

「いいえ! イギリスの代表候補生たるわたくしと組むべきですわ!」

 

「代表候補生ってんならあたしもそうよ!」

 

熱い火花を散らす二人。

しかし、そこに割り込んできた女性の声。

 

「駄目ですよ」

 

入ってきたのは真耶だった、

どうやら二人の様子を見に来たらしい。

 

「凰さんの甲龍とオルコットさんのブルーティアーズはどちらも大破。オーバーホールしないといけません。ですので今回の学年別トーナメントには出場できません」

 

『ええ! そんな!』

 

二人が悲鳴のような声を上げる。

 

「仕方ありません。それに故障した状態で無理に動かせば後が怖いですよ?」

 

真耶の言葉に二人は返す言葉もないようだ。

ISは使用者の癖や傾向を元にその形態を変化させていく。早い話が装着者が扱いやすいように成長していく、という事らしい。

だがそこで不調などをほったらかしにすると悪い癖がついてしまうようだ。

 

「それならしょうがないね」

 

「二人ともしばらくは養生しないと」

 

シャルロットと翔介に諭され、何とも言えない表情をする二人。なんだか随分とトーナメントに対する意気込みが強い気がする。

 

「そもそもどうしてこんなことになったの?」

 

ただの模擬戦でここまでの事態になるとは考えにくい。

 

「そ、それは…」

 

なにやら言いにくそうにどもる二人。

もしや二人から喧嘩を仕掛けたのだろうか。

 

「二人から喧嘩を仕掛けようとするとも思えないし。ボーデヴィッヒさんと何かあったの?」

 

「べ、別にあいつに喧嘩売られたから買ってやったまでよ」

 

「え、ええ」

 

そう語る二人だが視線が一夏へと向かう。

それだけで何となく察することができた。

最初の自己紹介の時、勘違いとはいえ翔介を一夏と間違え平手を食らわせるといった行動からも彼女が一夏に対してあまりいい感情を持っていないことは間違いないだろう。

想像ではあるがラウラが一夏を貶め、それに二人が激怒。あの騒動へと発展したのだろう。

 

好意を抱く相手が貶されて、黙っていられる二人ではないのは想像に難くない。

 

しかし、そうなると別の疑問が浮かんでくる。

 

そもそもラウラが何故こうも一夏を敵対視するのか。

それに先日の千冬と彼女の会話も気になる。

 

「翔介、あんたまた何か考えてるでしょ?」

 

鈴が翔介をじっと見てくる。

 

「え? 何を?」

 

「何をじゃないわよ。どうせあんたのことだからまたお節介なこと考えてるって顔してるわよ」

 

「そんな顔してた?」

 

翔介が尋ねると鈴だけでなく他の三人もそう頷く。

お節介な顔ってどんな顔なのだろうかとペタペタと顔に触れる。

 

「はあ…周りが言わないからあたしが言っておくわよ」

 

鈴がため息を吐きながら翔介を見やる。

 

 

 

「翔介、あんたが他人に優しいのは良いことだけど程々にしておきなさいよ」

 

 

 

「え?」

 

「え、じゃないわよ。他人の事ばっかり気にしてると自分のことが疎かになるって言ってるの。他人の事考えるのも良いけど、たまには自分のことも考えなさいよ」

 

鈴に諭され、考え込む翔介。

翔介本人はけしてそんなつもりはなかった。いや、だから鈴にこう言われたのだろう。

鈴の言い分も最もであるだろう。

だがこれは翔介にとっての性分でもあった。

 

「はいはい、お話はそれぐらいにして今日はもう遅いですから織斑君達は寮に戻ってください」

 

真耶に促され、今日は退室することになった。

 

 

 

「………」

 

保健室を退室した三人は寮へと歩を進めていた。

その間翔介はジーッと黙っていた。

 

「なあ、翔介。そんなに考え込むことねえって」

 

「うぅん、凰さんが考え無しにあんなこと言わないよ」

 

そう言って翔介は足を止める。

 

「二人とも、先に戻ってて」

 

「でも…」

 

「大丈夫、少し考え事したいだけだから」

 

首を振る翔介に一夏とシャルロットは後ろ髪を引かれながらも寮へと戻っていった。

それを見送ってから翔介は近くに座れる場所を探しに歩き始めた。

 

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翔介は座る場所を探し、フラフラと学園敷地内を歩いていた。

やがて学園の中庭へとやってきていた。ここならベンチもあるし、静かに考え事をするにも丁度いいだろう。

 

「…あれ?」

 

すると中庭のベンチに既に先客が座っていた。

銀色の髪に左目を覆う眼帯。

 

 

「…ボーデヴィッヒさん?」

 

ラウラだった。

噂をすれば影とはまさにこのことか。

 

「む…貴様は…」

 

ラウラの方も気づいたようだ。

 

「ボーデヴィッヒさん、こんなところで何してるの?」

 

「貴様こそ何をしに来た」

 

「いや、少し考え事を…」

 

「……そうか、ならば失礼する」

 

そう言ってラウラは立ち去ろうとする。

 

「あ、ちょっと待って!」

 

「なんだ…?」

 

慌てて引き留めたが、そしてどうするのか全く考えていなかった。

ついさっき鈴から他人の事ばかり気にするなと言われたばかりなのに。

 

しかし、あのアリーナで見た寂しげに見えたあの背中。

 

その姿が脳裏から離れない。

 

 

 

「三分間だけ話さない?」

 

 

 




本日はここまで。

ラウラと対峙した翔介。

彼は一体どんな会話をするのか?


最後の台詞、分かる人にはわかるはず。
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