インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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40話

アリーナの観客席は満員になっていた。

学年別トーナメント最初の試合という事もあり、この熱気はセシリア戦以上だ。

 

控室でISスーツに着替え出番を待つ翔介だが、そわそわと落ち着かない。

 

「緊張しているのか?」

 

パートナーであるラウラもISスーツに着替え、準備万端だ。

そわそわしている翔介に声をかける。

 

「う、うん。緊張もあるけど…」

 

それ以上にそわそわしている原因は対戦相手にあった。

篠ノ之箒と更識簪。

どちらも翔介のパートナーの候補だった二人だ。気まずさというよりはいきなり仲のいい人物たちと当たるとは思わなかったのだ。

それに箒は抽選でタッグが決まるかと思ったが、いつの間に簪と組んだのだろうか。

 

「まさかこんな早く当たるなんて…」

 

実を言えば箒とぶつかるのはもっと先と勝手に思い込んでいた。

彼女の覚悟を知っている身としてはなんとも言えない気持ちだ。

 

「私たちは今日まで訓練をしてきた。その成果を出せばいい」

 

「うん…」

 

「時間だ、行くぞ」

 

ラウラに促され、翔介は自身の打鉄に乗り込む。

こんな気持ちで向かうことに抵抗はあるが、行かないわけにはいかない。

 

「道野」

 

「え?」

 

ラウラに声をかけられ振り向く。

するとラウラのISの大きな手が目の前にある。

驚いてラウラを見やる。

 

「ん…」

 

ラウラは目を恥ずかしそうに逸らしながら拳を突き出す。

始めこそその意図がわからなかったものの、恥ずかしそうに突き出されたその拳を見て思い至る。

 

「頑張ろう、ボーデヴィッヒさん」

 

「ああ」

 

翔介はその拳にコツンと拳を突き合せた。

 

---------------------------------------------

 

控室を飛び出した二人。

それとほぼ同時に反対側の控室から箒と簪の二人が飛び出してくる。

どちらも打鉄を纏っている。

 

「篠ノ之さん、更識さん…」

 

アリーナの地面に降り立ち、対峙する四人。

 

「二人と戦うことになるなんて…」

 

「前に言っただろう、いつかはぶつかるかもしれないと」

 

いまだ戸惑いを拭い去れない翔介に対し、箒は毅然と答える。

 

「そうだけど…篠ノ之さんだけじゃなくて」

 

視線は隣に立つ簪へ。

一番謎なのはどうして彼女が箒と組んでいるのか。

簪と箒は以前の更識姉妹仲直り作戦以降、交流を深め友達となっている。

その為、この二人自体が組むことはおかしくはないのだがそれでもどうしていきなり二人が組んだのだろうか。

 

「それは…」

 

簪が口を開こうとするとそれを箒が手で制する。

 

「それは今でなくてもいいだろう。ただ一つ言えることは…」

 

 

 

「私たちは同じ目的をもってここにいる」

 

 

 

「同じ目的…?」

 

同じ目的とは。

もし言葉通りの意味であれば『一夏への告白』という事になるのだろうか。

しかし、簪まで一夏に懸想しているとは思いもしなかった。

 

「……何か勘違いしているようだが『アレ』ではないぞ」

 

察したように箒が告げる。

どうやら翔介の想像しているものとは違ったようだ。

 

「さて、これ以上話しても時間の無駄だろう」

 

「……」

 

「翔介」

 

浮かない表情の翔介に簪が声をかける。

 

 

「本気で来て」

 

 

その言葉に目を丸くする。

簪も翔介と同じようにバトルジャンキーという訳ではない。

しかし、今の彼女の瞳には確かな闘志が宿っていた。

 

「……わかった」

 

ここまでの覚悟を見せられてそれ以上の言葉はなかった。

 

四人の視線が交差する。

 

 

ブーッと試合開始のブザーが鳴り響く。

 

 

「ハアアッ‼」

 

試合開始と同時に弾かれたように飛び出したのは箒だった。

打鉄の近接ブレード・葵で斬りかかる。

その刃は真っすぐに翔介へと向かってくる。

 

「フッ!」

 

迫りくる刃に真っ先に対応したのはラウラ。

プラズマ手刀でそれを受け止めると素早く振り払う。

振り払われた箒は後ろにバックステップで距離を測る。その瞬間、ラウラ目掛けてライフルの銃弾が飛んでくる。

 

「むっ!」

 

不意打ちの銃弾に身構えるラウラ。

今度はそこに翔介が割り込む。可変型大型楯『重ね畳』を起動させる。

ガインっと金属音を立てて銃弾が弾かれる。

 

「道野、訓練通りに行くぞ」

 

「うん!」

 

まず動いたのはラウラ。

両肩のワイヤーブレードを射出し、後方で射撃を続ける簪へと向ける。簪は射撃を止めると、横に避けていく。

ワイヤーブレードは彼女のいた場所に突き刺さる。すかさずラウラは新たなワイヤーブレードでそれを追いかける。

 

「隙有り!」

 

簪に集中しているラウラへ箒が斬り込んでくる。

 

「僕がいるよ‼」

 

斬り込む箒に翔介が葵で立ち向かう。

ギンッと刀同士がぶつかり合う音が響く。

 

「フッ!」

 

しばらくの唾競り合いの後に箒が呼吸と共に翔介をlSごと押し退ける。

 

「うわっ!」

 

力任せに押しやられ、バランスを崩しながら後ずさる。

それを見逃さず更に箒が追い討ちをかける。

流石は剣道全国大会優勝者。その一撃一撃が非常に重い。

右から来た太刀筋を防いだかと思えば、すぐさま別方向からの太刀筋が襲ってくる。

やはり元々剣道で鍛えているためか、地力の差は大きかった。

 

「はああああっ‼」

 

下段から打ち上げるような太刀が翔介に襲い掛かる。

なんとか刀で受け止めるもののその衝撃は翔介を後方の地面に尻餅をつく。

打鉄の空間ディスプレイに表示されるシールドエネルギーの数値が減少する。

箒はさらに追い打ちをかけるために飛び掛かる。

 

しかし、飛び掛かる箒の身体が急にガクンと空中で停止する。

まるで時が止まったかのように固まってしまった。

 

「こ、これは…!?」

 

突然の出来事に驚愕の表情を浮かべる箒。

翔介が振り向けばそこには左腕を彼女へとかざすラウラがいた。

これがシュヴァルツェア・レーゲンの特殊武装の一つである『AIC』。慣性停止結界と呼ばれるものだ。

その名の通り、対象を任意に停止させる強力な武装だ。一対一であれば無類の強さを誇るだろう。その代わり使用には多大な集中力が必要になる。

 

「道野、今だ!」

 

箒が停止結界に阻まれる中、翔介は素早く態勢を立て直す。

それを見届けると同時にラウラがAICを解除すると同時にワイヤーブレードで箒を薙ぎ払う。当然ながら回避することができず、箒はワイヤーブレードに薙ぎ払われる。

 

「ごめん、ボーデヴィッヒさん」

 

「気にするな、それよりもサポートを頼むぞ」

 

「うん!」

 

二人の作戦。

それは単純に言えば役割分担であった。

個人戦と違い、タッグ戦はそれぞれに役割分担をすることが大事である。一方が攻撃役、もう一方が防御役とそれぞれに得意分野で連携を図ることがベターだ。

経験や武装から鑑みても攻撃役はラウラだ。

 

「こっちにもいる!」

 

すると二人目掛けて簪が小型ミサイルを放つ。

翔介は重ね畳を展開し、小型ミサイルをその大盾でラウラごと守り切る。

どうやら簪の打鉄は標準装備以外にもいくつか武装を増やしているようだ。

 

「ボーデヴィッヒさん、やっぱり二人とも強いでしょ」

 

「ああ、一気に畳みかけるぞ」

 

二人が頷き合うと翔介は盾を構えたまま、簪へ。ラウラはプラズマ手刀を発動し箒へと向かう。

簪はライフルや小型ミサイルで迎撃するが、彼の持つ盾の防御を崩すのは難しいと判断したのかライフルから薙刀に変更する。

それに応戦するように翔介も盾から刀へと武装を変更し、二つの刃がぶつかり合う。

 

「くっ…!」

 

「うぅ…!」

 

一進一退の攻防。

ISの操縦に関していえば簪に軍配が上がるだろうが、接近戦であれば二人とも五分五分の実力であり箒と戦うよりはまだ対抗できていた。

 

「翔介、強くなってるね」

 

「まだまだだよ、更識さんや他のみんなと比べたら全然」

 

「「でも」」

 

 

 

「「負けない!」」

 

 

二人の声が重なる。

ギインと刀と薙刀が火花を散らす。

最初に距離を取ったのは翔介だった。簪の薙刀を弾くとそのまま後ろに飛び退る。

簪はそれを追いかけようと前進してきた。

 

来た!

 

翔介は刀を装備したまま楯を展開。そして、両足のロケットを一気に起動させる。

起動したロケットの推進力で翔介は楯を構えたまま前に飛び出す。

 

「‼」

 

追いすがろうとしていた簪からすればそれは予想外の動きだった。回避を試みるが一足遅かった。

翔介は展開された楯でロケットの推進力を受けたまま彼女に衝突する。

 

「うっ…!」

 

その衝撃に地面を削りながら吹き飛んでいく。

ISを身に纏っているからこそ繰り出せた技だが、これが生身の相手であればトラックにはねられるくらいの威力があるだろう。

それを思うと背筋が少し冷たくなる。

よろめきながらも立ち上がる簪を見て安堵する。

 

しかし、今は試合。安心している場合ではない。

今がチャンスだ。

 

グッと翔介は葵をぎゅっと握りこんだ。

 

 

 

一方、箒と相対するラウラ。

葵を振るう箒に対してラウラはプラズマ手刀で応戦していく。

戦況はラウラが優位に進めている。

剣の腕が立つ箒だが、やはり訓練機と専用機。第二世代と第三世代の差は大きい。

 

それにも関わらず箒はラウラへと喰らいついてくる。

優勢であるラウラではあるが、その執念に少なからず気圧されていた。

箒の振るう葵を弾き、その身を吹き飛ばされようともすぐさま立ち上がり向かってくる。

 

「まだまだだ!」

 

「くっ…!」

 

振りかざされた刀にプラズマ手刀で受け止める。

 

「貴様…! 何故そうまでして向かってくる!」

 

「私にも退けない理由があるからだ!」

 

倒れても倒れても刀を手に立ち上がる。

 

「ボーデヴィッヒ、あいつと一緒にいてわからぬわけではないだろう」

 

「……!」

 

あいつ。

それは今、自分の後ろでもう一人と戦っているラウラのパートナー。そして、初めての友達。

ひたすらにお人好しで、だけど誰かのために親身になれる少年。

 

 

 

「私はあいつと約束した。このトーナメントに優勝すると。だから、私はその約束を違えるつもりはない! 例え、私より強いお前が相手でも。あいつが相手でも‼」

 

 

箒が刀を構え、立ち向かってくる。

 

 

「……道野。お前は…」

 

ラウラはキッと顔を引き締める。

箒の渾身の力を込めて振りかざした刀を受け止める。

 

「ならば私も負けん! 私の友のためにも!」

 

プラズマ手刀で刀を押し返し、全てのワイヤーブレードを射出する。

箒はそれを後ろに飛び退く。迫りくるワイヤーブレードを刀で一つ、二つとはじき返すが全てを躱すことは難しかった。

 

「しまった…!」

 

ラウラのワイヤーブレードが箒の四肢に巻き付く。

 

「道野!」

 

 

 

ラウラの呼ぶ声が聞こえた。

翔介は星の翼を起動させ、一足飛びに簪の横を横切る。

簪は銃口を向けるも星の翼の加速度には追い付けない。

ガリガリとアリーナの地面を削りながら簪の背後を取る。

 

「今だ!」

 

右腕からワイヤー装置『絡み蔦』を射出する。

絡み蔦は勢いよく飛び出し、簪の胴体部分へと引っかかる。

そのまま彼女を軸にぐるりと回転していく。絡み蔦はそのまま巻き付いていく。

 

「ボーデヴィッヒさん! 行くよ!」

 

抵抗する簪を力任せに投げる。

それに合わせるようにラウラが箒を投げつける。

二人は空中でぶつかり合う。

 

「これで決まりだ!」

 

ラウラの大型レールカノンが二人を捉えた。

銃口から放たれた銃弾が重なり合った二人に直撃。

 

ズウンと轟音と爆炎に包まれる箒と簪。

 

 

 

『試合終了。勝者、道野翔介&ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

 

試合終了のアナウンスが鳴り響いた。

 

 

 




本日はここまで。

今回も遅くなって申し訳ありません。
戦闘シーンはやはり難しいですね。できる限り、想像しやすいように簡潔に描写するように心掛けていますが見苦しい部分があるかもしれませんがご容赦ください。

戦闘シーンを書くときはウルトラシリーズの戦闘BGMや防衛チームのテーマソングを聞いています。
戦闘BGMなら夕日に立つウルトラマン、ネクサスのHeroic。
防衛チームのテーマならUGMが好きです。


見事に箒と簪のタッグに勝利した翔介とラウラ。

次なる試合の前に少し休憩することに…。
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