インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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70話

湖水浴へと向かう翔介たち。

あれからも道中で住人に会う度に差し入れを貰い、出発した時よりも倍近く荷物が増えていた。

それぞれ一人一つ荷物を持って湖へ向かっていると、途中ピタリとラウラが足を止める。

 

「どうしたの、ラウラ?」

 

「これは何だ?」

 

問い掛けるシャルロット。ラウラは道端に建てられた墓石を見ていた。

石で作られた墓石は苔むしており、随分と古いもののようだ。

 

「お墓みたいね。でもどうしてこんなところに?」

 

周りを見渡しても他に墓石も見当たらない。この墓石だけがぽつんと佇んでいるのだ。

そんな彼女たちの様子を見た翔介が歩み寄ってくる。

 

「それは無縁仏ですよ」

 

「ムエン、ボトケ?」

 

聞きなれない言葉に首を傾げる海外組。

無縁仏とは亡くなった後も供養してくれる縁者のいない人のことを言う。縁者のいない人だけでなく、人知れずなくなってしまった人や行き倒れの人などもこれに当たる。

 

「僕も詳しいことはわからないんですけど、凄い昔にここでお侍さんが行き倒れになってたんだって。荷物も何も持ってなくて結局身元が分からなくてここにお墓を建てたんだって」

 

その後は町の人間全員で墓石は手入れしているようなのだが、今でも素性はわからないままであるようだ。

翔介は墓石の前に膝をつくと手を合わせる。

他の友人たちもそれに倣う。

どこの誰かもわからない人物の墓だが人知れず誰にも弔ってもらえないなんてあまりにも寂しい。

だからこそ少しでも寂しさがまぎれればと思い、ここを通るときはこうやって手を合わせていた。

 

「さて、行こうか。湖までもう少しだよ」

 

一分ほど手を合わせていた一同は改めて湖へと向かうのだった。

 

 

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『おーー‼ 海、もとい湖だーーーー‼」

 

 

湖に到着した途端、テンションフルマックスの一同。

 

「来る途中でも見えたけど綺麗だな!」

 

「よっしゃあ‼ 一番乗りぃ!」

 

「させるか! 行くぞ、シャルロット!」

 

「もう、鈴もラウラも転ぶと危ないよ」

 

到着するなり真っ先に湖へ駆け出す鈴。それを追いかけるラウラ。そしてそんな二人を諫めながらも湖へと向かうシャルロット。

 

「水は結構冷たいから気を付けてねぇ」

 

翔介は持ってきたレジャーシートを敷いて、休憩場所を作る。

 

「もう鈴さんたちは急ぎ過ぎですわ。紫外線はお肌の大敵ですのに」

 

セシリアは呆れながらバッグから日焼け止めクリームを取り出し、翔介と一緒に砂浜にパラソルを差している一夏にスススッとすり寄っていく。

 

「い・ち・かさん。そういう事ですので日焼け止めを塗ってくださりませんか?」

 

「お、俺が? まあ、別にいいけ…」

 

「そうか、日焼け止めなら私が塗ってやろう」

 

一夏が言い終わる前にセシリアの手からクリームを奪い取る箒。

 

「ああ、何をしますの! わたくしは一夏さんに!?」

 

「まあまあ、遠慮するな」

 

文句を言うセシリアだが箒に強引にクリームを塗りたくられていく。

 

「相変わらず仲が良いわねぇ」

 

パーカーを脱ぎながらキャイキャイと騒ぐ箒とセシリアを見ている楯無。

そしてそのままキランと簪の方へと視線を向ける。

 

「さあ、簪ちゃんも日焼けしないようにしっかり保護しましょう!」

 

楯無はクリームを手に簪に迫る。

 

 

 

「翔介の家で塗ってきたからいい」

 

 

 

あっさりと断る簪。

あまりのショックにクリームを取り落とす楯無。

 

「それにお姉ちゃんの手つきがやだ」

 

さらに愕然として地に伏す楯無。

この妹、容赦がない。

 

「あはは、更識さん。ちょっとくらい優しくしても良いんじゃない?」

 

苦笑気味にフォローに入る翔介。

 

「いいの。あんまり甘やかすと調子に乗るから」

 

そんな厳しい一言。どちらが姉なのか分かったものではない。

 

「翔介はやっぱり泳がないの?」

 

話を切り替えるように簪が問い掛ける。

翔介は少し悩みながらも頷く。

いつまでも苦手のままにするわけにもいかないがトラウマというものはなかなか克服できるものでもなかった。

 

「僕は大丈夫だから気にしないで遊んできて」

 

「でも…」

 

「簪ちゃん」

 

翔介一人を置いていくことに抵抗のある簪に楯無が優しく遮る。

 

「じゃあ翔介君。荷物の番は任せるわよ?」

 

「はい!」

 

彼の返事を聞くと楯無は簪たちを連れて湖の方へと向かっていった。

簪や一夏は一人残る翔介を気にしながらも楯無に着いていった。

翔介からしてみれば楯無が彼らを連れて行ってくれてホッとした。

元々、故郷に一夏たちを招待したのは臨海学校の埋め合わせをするためであった。それなのにまた自分のために思う存分遊べないのでは元も子もない。

そんな自分の気持ちを察してくれた楯無には感謝しかない。

 

翔介はレジャーシートの上に腰掛ける。

視線の先には湖で楽しそうに遊ぶ友人たち。

どうやら今回の招待は成功だったようだ。

 

何もないこんな田舎の故郷だが楽しんでくれているのなら招待した甲斐があるというものだ。

 

 

 

「おお、すげぇ空いてるじゃねえか!」

 

 

そんな静寂を騒がしい声がかき消してくる。

思わず声の方を振り向く。

 

「なんだガラガラじゃん! めっちゃ穴場ぁ!」

 

「もうここでいいんじゃね?」

 

そこにはガラの悪い四人の男女がずかずかと砂浜に入り込んでくる。

ここは四季家の私有地であり、一般の人は許可がない限り侵入することは許されない。

四人の男女はどう見ても翔介の知り合いではない。

湖で遊んでいる一夏たちもその騒ぎに気付いて怪訝な表情をしている。

 

流石にそのままにすることはできない。

翔介は立ち上がると男女に近づいていく。

 

「あ、あの…」

 

「あぁ?」

 

恐る恐ると声をかける。

既に砂浜に座り込んで酒を飲み始めていた男が不機嫌そうに翔介を睨みつける。

 

「こ、ここは私有地です。入り口のところにも許可なく入らないでくださいって看板ありましたよね?」

 

「ハア? お前らも遊んでるじゃん」

 

「それは僕たちがちゃんと許可を得てるからで…」

 

翔介がなんとか立ち退くように声をかけるが、男女は全然聞き入れない。

 

「別にいいじゃんか。誰に迷惑かけてるわけでもないだろ?」

 

「でも…」

 

聞き入れない男女たちにそれでも、と話しかける翔介。

いよいようざったく感じたのか一人の男性が立ち上がり、翔介を見下ろしてくる。

 

「なに、なんなの? お前すげぇ鬱陶しいんだけど」

 

男性はそう言って翔介を威圧してくる。

かつての翔介であればそれだけで委縮してしまっていたかもしれない。だが、これまで修羅場を乗り越えて成長した翔介はそれでも引くことなく男性に立ち向かう。

 

「し、私有地に許可なく入るのは犯罪です。もしここで遊びたいならちゃんと許可を…」

 

威圧しても一歩も引かない翔介に痺れを切らした男性が彼のパーカーの胸ぐらを掴む。

 

「うぅっ…!」

 

「ああっ!? うぜえな! 犯罪だからなんだ? そんなに言うなら警察でも連れて来いよ!」

 

「翔介!」

 

不穏な空気を察して湖から上がってきた一夏たちが駆けてくる。

このままでは男性が手を上げる可能性もある。

 

 

 

 

 

 

「うちの従弟に何してくれてんのかねぇ?」

 

 

 

 

 

 

すると男性の横合いから女性が翔介の胸ぐらを掴んでいた腕を引き剥がす。

その拍子で翔介は砂浜に尻餅をつく。そこに一夏たちが駆けよってくる。

翔介は顔を上げ、自分を助けてくれた女性のを顔を見る。すると、その表情がパッと明るくなる。

 

「継姉さん!」

 

「よう、お帰り翔介」

 

「姉さんって…」

 

そう、翔介の危機を助けた女性。

彼女こそもう一人の従姉妹。四季継実である。長歌の妹に当たるが、短く揃えた髪型に褐色の肌。ノースリーブのシャツにパンツスタイルと姉と違い活動的な印象を受ける。

 

「な、なんだ、お前!?」

 

「正論言われて手を上げるとか大人として恥ずかしい奴だのぉ」

 

「う、うるせえ!」

 

男性は継実の腕を振り払う。

 

「この子の言う通り私有地に無断で侵入するのは法律違反に当たる。建物とかなくても立ち入り禁止の表記があるところに許可なく入るのは不法侵入になるからな」

 

「だから法律違反っていうならすぐにでも警察連れて来いよ! まあ、こんな田舎じゃすぐに警察なんて来ないだろうがなぁ!」

 

理路整然と継実に説かれるもあくまで強気に出る男性。

しかし、継実は話が通じないとわかるとポケットから何かを取り出す。

 

 

 

「ウチがその警察なんじゃが?」

 

 

 

そう言って見せつけたのは警察手帳。

翔介の従姉である四季継実は警察官である。現在はこの町から離れて都会の方で勤務している。

まさか散々煽ってきた相手が当の警察本人とは思わなかったのか目を白黒させる四人。

 

「今はプライベートだけど現行犯であれば誰にでも逮捕権がある。なんだったら署の方でゆっくりとお話してもいいんじゃが」

 

継実の迫力に気圧され始める。

 

「も、もういい! こんなところ二度と来るか‼」

 

形勢不利と感じたのかガラの悪い四人はそそくさと砂浜から立ち去っていく。

 

「まったくテンプレな捨て台詞だのぉ」

 

継実はフンと鼻を鳴らしながら翔介たちに向き直る。

 

「大丈夫か、翔介?」

 

「うん! ありがとう、継姉さん」

 

「あんたが友達と一緒に遊びに来たって聞いて来てみれば絡まれてるんだからのぉ。あんたは絡まれやすいんだから気を付けろって言ったでじゃろ」

 

継実は笑いつつも翔介の頭をワシワシと撫でる。

翔介は照れ臭そうにしながらも大人しく撫でられている。

 

「で、そっちがお前の友達か?」

 

「うん!」

 

「それなら改めて名乗るかのぅ。ウチは四季継実。翔介の従姉じゃ。従弟が世話になってるのぅ」

 

継実が名乗ると友人たちも名乗りながら頭を下げる。

すると継実はじーっと友人たちを吟味するように眺めていく。

 

「ほう、流石はIS学園の生徒。なかなか腕っ節が強そうなのが揃っているのぅ」

 

そう言ってニヤリと笑う。

 

「え、えぇ…」

 

そんな継実に困惑気味の一夏たち。

 

「まぁ、楽しみは後に取っておくとして。そろそろ昼餉にするとしよう。肉を持ってきたから皆遠慮せずどんどん食べると良い!」

 

そう言っていつの間にか用意したのかバーベキューコンロの上に肉や野菜が焼かれている。

 

「そうだね、皆お昼にしようか」

 

継実に促され、翔介たちは継実の用意した肉や長歌のお弁当を食べながら楽しい時間は過ぎていった。

 

 

 




本日はここまで。
これで今年の投稿は最後となります。

そしてお気に入り登録も、400件突破!
爆発的に増えて嬉しいを通り越して、困惑すら覚える今日この頃です。

今年はこんな拙作を読んでくださりありがとうございました。
来年もどうぞ宜しくお願いします。

湖水浴を楽しんだ一行。

帰り道、出会ったのは…?
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