インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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76話

町内会議から一日が明けた。

翔介たちは昨夜の作戦会議の通りに侍幽霊の正体に迫るべく調査を開始する。

とはいえ手掛かりとなるのは壊された墓標と昨日幽霊と遭遇した場所の二か所だけだ。

 

話し合いの結果、それぞれ手分けをして調査をすることになった。

 

鈴、セシリア、シャルロット、そしてラウラは侍幽霊に襲撃された場所へと来ていた。

しかし、一日が経過しており手掛かりと呼べるようなものは杳として見つからない。

 

「いざ手掛かりと言っても何かあるようには見えないわね」

 

鈴は道端の草むらをかき分けながらごちる。

 

「でも今はどんな小さなことでも手掛かりが欲しいところだよ」

 

「まあ、そうなんだけど…っていうか…」

 

鈴はすくっと立ち上がり、ラウラの方を見やる。

 

「あんた、何よその恰好!」

 

「私の格好が何か変か?」

 

惚けるでもなく素でそう返すラウラ。

そんな彼女の出で立ちはインバネスコートに鹿撃ち帽といかにもな探偵ルック。

かなり浮いている。

 

「ラウラ、どうしたのその恰好」

 

さっきからずっと気になっていたシャルロットもラウラに尋ねる。

四季家の屋敷から出発した時からこの探偵スタイルだったのだが本人が至って自然にしているものだから聞きそびれていたのだ。

 

「うむ、事件の調査ならやはりこの格好だろうと長歌殿からな」

 

「なんでそうなるのよ…」

 

「何事も形から入るってことかな」

 

そう言いながら苦笑するシャルロット。

ラウラはうむうむとコートのポケットからパイプを取り出し口にくわえる。ラウラがプーッと吹くとシャボン玉が飛んでいく。

 

「はあ、まあ好きにしなさいよ…」

 

呆れかえったように再度草むらの中を捜索し始める鈴。

ラウラはポケットから更に虫眼鏡を取り出す。これもまた長歌の仕込みだろう。

 

「任せろ、この名探偵が見事に見つけ出してみせよう!」

 

そう言って虫眼鏡であちこちを調べ始める。

ドイツ少女、ノリノリである。

 

「ラウラ、あの格好気に入ってるのかな?」

 

「それでやる気になるのならよいのではないですか?」

 

「そうだね。僕たちも探そうか」

 

イキイキと周りを虫眼鏡で探し回るラウラを見ながら二人も周囲を探索し始める。

 

「そもそも探すって言っても何を探せばいいのかわかってないのに格好変えただけでそう簡単に見つかるわけ…」

 

 

 

「むっ、皆来てくれ」

 

 

 

「…何か見つけたみたいですわね」

 

「マジか…」

 

唖然としながら自分たちを呼ぶラウラへと近づく。

するとラウラは虫眼鏡越しに地面から拾い上げたものを見つめている。

それは随分と古びているが金属でできた十字架。

 

「それは…十字架ですの?」

 

「首から下げる鎖が切れてるわね」

 

「でもこれがその侍の幽霊の物なのかな? なんだかあまり繋がらないような…」

 

「だがこの町でこのようなアクセサリーをするような人物はいないだろう。それにこの鎖の劣化具合を見る限り随分と古めかしい。何かしらの手がかりになるやもしれん」

 

ラウラはそう言うと十字架を取り出した布に包んでコートのポケットにしまう。

 

「まだはっきりとは手掛かりかはわからないけど、こうやって手当たり次第に探し回るのは無駄じゃないってわかっただけお手柄ね」

 

「うん、もっとこの周辺を探してみよう」

 

シャルロットの言葉に三人が頷き返す。

今はどんな小さな手掛かりでも欲しい。四人は今一度周囲の探索を始める。

 

「一夏たちの方はどうなってるかしらね」

 

 

 

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一方、翔介と一夏と更識姉妹、箒は酔った男たちに破壊された墓標を調べにやってきた。

墓標はすっかり壊されており、数日前に見た姿は見る影もない。

 

「酷い…」

 

「故人が眠る場所を足蹴にするなど許せん」

 

その惨状に悲しげに呟く簪と憤りを顕わにする箒。

とはいえ墓標を破壊した男たちは既に警察に捕まっているわけだが。

 

「怒るのは後にしましょう。今は少しでも何か手掛かりを見つけましょう」

 

「でも調査のためとはいえ墓荒らしみたいで気が引けますね」

 

「そこは割り切りましょう。幽霊が現れたなんて異常事態なんだから」

 

楯無はそう言って率先して崩れた墓標を調べ始める。

やや躊躇しながらではあるが他の四人も崩れた木材などをひっくり返しながら探索する。

しかし、侍幽霊の手がかりになりそうなものは杳として見つからなかった。

 

「何もないわね。お墓っていうくらいだからもっと何かしらその人を特定するものがあると思ったのだけど」

 

「道野、ここに眠る人物のことは本当に何もわからないのか?」

 

「うん…昔に行き倒れていたお侍さんだってことくらいしか…」

 

幼い頃より統子から伝え聞いた話では詳しい素性はわからなかった。物知りの祖母も知らないようでは翔介もその正体を知り様がなかった。

 

 

 

 

シャリン…。

 

 

 

 

しかし、突如として金属音が耳朶を打つ。

はっとして一同が振り向くとそこには編み笠をかぶった人物が立っている。

その瞬間、全員の肌がぞわりと粟立つ。

 

目の前にいる人物。間違いない、彼こそが侍幽霊だ。

 

「また子供か…だが関係はない…」

 

侍幽霊はゆらりと刀を抜き、近づいてくる。

 

「ま、待ってください! 話を…!」

 

会話を試みる翔介だが侍幽霊は足を止めることなくじりじりと迫る。

彼の前に楯無が立ちはだかる。

 

「翔介君、簪ちゃんと一緒に下がってて」

 

楯無の横に一夏と箒も並ぶ。それぞれ木刀を構えている。

 

「あなた、初対面の相手に刀向けるなんて侍的に無礼じゃないかしら?」

 

「どこに連れて行った…! どこに…!」

 

侍幽霊はズンッと地面を蹴り刀を振りかざす。

楯無は刀を鉄扇で受け止める。だが、ISの装甲すら切り裂いたという刀の一撃。

当然、鉄扇では受け止める事は叶わず刃が食い込む。

楯無は体を翻し、侍ごと受け流す。

 

「やれやれ、お気に入りの一品だったのだけどね」

 

「問答無用という訳か!」

 

侍幽霊はすぐさま態勢を整えて、刀を振るってくる。

箒と一夏は防御は不利と考えたのか刃から身を躱す。

 

「一夏!」

 

「おう!」

 

二人は侍幽霊に向けて木刀を叩き込む。

箒の木刀は肩を打ち据え、一夏の木刀は刀を持つ腕を打つ。

 

「いいコンビネーションよ! 一夏君、箒ちゃん!」

 

二人の連撃に怯んだところに楯無がその懐に潜り込む。

侍幽霊の胸ぐらを掴み、その足を払い地面へと投げ飛ばす。

そのまま流れるような動きで腕を拘束し、相手の動きを封じる。すかさず一夏も侍幽霊を抑える。

 

「幽霊なのにこうやって拘束できることに違和感はあるけど…さて、あなたの目的は何かしら?」

 

「…なせ…」

 

「何ですって?」

 

 

 

「放せええええええ!」

 

 

一夏と楯無に抑えられているにも関わらず、凄まじい力で押し返し始める。

 

「なっ!? おい、なんだよこの力!?」

 

「抑えきれない!?」

 

「ぐおおおおおっ‼」

 

侍幽霊が信じられない力で二人を押し返し、弾き飛ばす。

二人は地面に投げ出され、転がる。

 

「一夏‼」

 

「お姉ちゃん!」

 

「簪ちゃん、来ちゃ…ぐぅ!」

 

駆け寄ろうとする妹を制止するが、その細い首に侍幽霊の手がかかる。

 

「童と言えど…邪魔をするならば…」

 

憎しみのこもった言葉と共にギリギリと締め上げていく。

 

「お前! 楯無さんを放しやがれ!」

 

一夏と箒が楯無を救出するために挑みかかる。

だが激情した侍幽霊は二人を足蹴にする。

 

「一夏君…箒ちゃん…がふっ!」

 

「お姉ちゃん!」

 

簪の悲痛な叫びが木霊する。

その時、その横から影が飛び出す。

 

「お師匠さまを放せ!」

 

「小賢しい…!」

 

飛び出した翔介を侍幽霊は一夏たちと同じく蹴り飛ばす。

容赦のない一撃にのけぞる翔介。だが、諦めることなく逆にその足に掴みかかる。

 

「放さんか!」

 

侍幽霊は身をよじり、翔介を強引に引き剥がそうとする。

それでも尚その足に必死にしがみつく。

 

「くっ…! 鬱陶しい!」

 

侍幽霊の手が楯無の首から離れる。地面に崩れ落ちる楯無にすぐさま簪が駆け寄る。

翔介はその瞬間を見逃さなかった

 

「このぉ‼」

 

翔介は足を踏ん張り、力いっぱい侍幽霊を押す。

不意の衝撃にその身体がよろめき、楯無から遠ざかる。

 

「おのれぇ!」

 

不意を打たれた怒りから今度は翔介に標的を変える。

しかも今度は刀を振りかざしてくる。

 

「しょ、翔介君…!」

 

侍幽霊の刃が翔介に襲い掛かる。

しかし、その瞬間彼の胸から下げられたお守り袋がカッと輝く。

 

「なにっ!?」

 

「うわっ!?」

 

あまりの眩さに目をつぶる。

すると翔介の頭の中にイメージが流れ込む。

 

 

 

時代劇で見るような街並み。

そこに佇む二人の男女。夏祭りなのか空には花火が上がっている。

一人は着物と腰には刀が差してあり、今目の前にいる侍幽霊なのが分かる。女性とは親密な様子だ。

ただ少し変わっているところと言えば女性の髪が美しい金髪でその瞳は青い。一目で外国人であることが分かる。

 

やがて女性は侍に何かを手渡す。

それはとても金属製の十字架。侍はそれを受け取り力強く何かを告げると女性は嬉しそうに頷き返す。

 

 

イメージが映し出されたのはそこまでであった。

気付けば翔介は地面に横たわっており、目の前には侍幽霊がよろよろと立ち上がっているところだった。

 

「うぅ…童、一体何をした…」

 

「今のは…あなたの…?」

 

「道野‼」

 

そこへ箒たちが彼を庇うように立ちふさがる。

 

「くっ…!」

 

侍幽霊はさらに襲い掛かることはせず、そのまま霞のように消えていった。

 

「逃げた…?」

 

「わからないわ。でもなんとか凌いだってことでしょうね」

 

「翔介、大丈夫…?」

 

簪が心配そうに翔介の顔を覗き込む。

 

「だ、大丈夫だよ…僕は…」

 

心配かけまいと立ち上がろうとするが身体に力が入らない。さらに急激に眠気が訪れ、ゆっくりと目を閉じていく。

最後に彼が目にしたのは驚いて自分の名前を呼ぶ友人たちの姿だった。

 

 

 

 




本日はここまで。

最近何かと大変なことになってきましたね。
拙作で少しでも気がまぎれるように頑張りたいと思います。

そういえば新しいウルトラマン発表されましたね。
今年も例年の如く放送が楽しみです。
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