インフィニット・ストラトス -光の約束-   作:メビネク

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7話

訓練が始まり、翔介はISに乗り込む。

適性検査はコアに触れるだけであり、他の生徒が行った教官との戦闘も経験しなかったためこれが初めての搭乗だった。

 

「さあ、まずは歩いてみましょうか」

 

「は、はい」

 

楯無に言われ、足を動かそうとする。

しかし、足は前に動いてくれない。

 

「あ、あれ?」

 

「焦らない。しっかりイメージしなさい」

 

イメージをしろと言われたが、やはり打鉄は歩いてくれない。

歩くイメージと言われてもISの乗ると手足が伸びたような奇妙な感覚のせいで歩けないようだ。

 

「……それなら歩く動作を一つずつ分解してみなさい」

 

歩く動作を分解。

まずは足を軽く上げる、体を少し前に倒し重心を移す、踵から地面につける、足底を地面全体に付ける。

簡単に分解してみるとこんなものだろうか。

翔介は一つ一つをイメージする。

 

するとググッと今まで動かなかった足が一歩前に出る。

 

「う、動いた!」

 

「その調子よ。じゃあ、今度はもう片方も動かして歩いてみなさい」

 

「は、はい!」

 

今度も同じように頭の中で分解しながらもう片方の足も動かそうとし。

 

 

「あ、あれ、あ、ちょっと!」

 

 

何故だか両足が前に動き、

 

 

「どわぁっ!?」

 

 

当然のことながらバランスを崩した打鉄は仰向けに倒れこむ。

 

「あー! た、立てない!? 助けてぇ!?」

 

仰向けのままもがく翔介。

その光景はひっくり返された亀そのものだった。

 

「これは時間がかかりそうね」

 

もがく翔介を見ながら楯無は呟いた。

 

 

 

時間は流れ、朝の訓練が終わる。

翔介はというとアリーナの地面にぐったりと倒れこんでいた。

 

「つ、疲れた……」

 

「これくらいで疲れてたらこの先大変よ」

 

楯無は倒れる翔介を見下ろしながら笑う。

訓練初日からこれでは確かに苦労するかもしれない。

 

「今日から朝と放課後に訓練をやっていくわよ」

 

なかなかスパルタであった。

でも四日という短い時間で試合ができるくらいまで操縦できるようになる必要があるのだから仕方ないのやもしれない。

 

「よ、よろしくお願いします、楯無先輩」

 

よろよろと立ち上がる。

すると楯無は何やら思案し始める。

 

「どうしました?」

 

「なんだか距離を感じるわねぇ」

 

「距離ですか?」

 

「そう、先輩以外に何か良い呼び方ないかしら?」

 

彼女の持つ扇子には『募集!』と書かれている。

良い呼び方と言われても何がいいのやら。

 

「じゃあ…楯無さん?」

 

「うーん、特別感がないわね」

 

もっと特別かつ親しみのあるものを、と注文される。

 

「お姉さん?」

 

「あー…それはちょっと…」

 

今度は微妙な表情になる。

何か思うところでもあるのだろうか。

自分のことはお姉さんと呼ぶのだが、他人に言われるのは何か抵抗があるのだろうか。

その後も色々と案を出すもののなかなかお気に召すものが出ない。

 

翔介はうーんと頭をひねる。

人の愛称などなかなか考えられるものではなかった。

こんな時、あのほわほわとした同級生だったらどんな愛称をつけるだろうか。

 

「………師匠…?」

 

「お、なんかいいわね」

 

食いついた楯無。扇子には『もう一声』と書かれる。

もう一声、もう一声とさらに頭を捻り。

 

「お師匠さま?」

 

「それよ! 他の人には当てはまらない特別感! それでありながらどこか親しみを覚える響き!」

 

『お師匠さまをよろしく』と書かれている。

さっきからずっと思っていたが扇子に書かれる言葉が毎回違うのだが、いつ書いているのだろう。

 

 

「それじゃあ放課後に続きをしましょうか。よろしくね、道野翔介君」

 

そう言ってクスクスと笑うのだった。

 

 

余談だが、ISの片づけをしていたら危うく朝食の時間を逃しかけた。

 

 

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時間は流れて放課後。

今朝の疲れで授業中眠くて仕方なかったが、千冬の授業であったため居眠りなどできる訳もなく必死に睡魔と戦うことになった。

 

朝と同じように体操服に着替え、アリーナで待つ。

ISは自身で準備するように言われていたため保管庫から台車で運ぶ。一人で運ぶにはなかなか重かった。

 

準備をしていると楯無がやってくる。

 

「ちゃんと準備してたわね、感心感心」

 

「あ、楯無先輩」

 

「あら、もう忘れたのかしら?」

 

翔介の頬を扇子でぐりぐりする。

 

「しゅいましぇん、お師匠しゃま」

 

よろしい、と言って扇子を離す。

 

「さあ、放課後の部始めましょうか」

 

翔介は朝と同じように打鉄に乗り込む。

もう一度歩行練習かと思われたが、どうやら違うようだ。

 

「さて、歩く前にもう一つ重要な練習をしましょうか」

 

「重要?」

 

「武器の装備よ。ISとの試合ならこれもできなければ話にならないわ」

 

言われて初めて気づく。

このISには武器らしいものがついていない。

 

「外には付いてないわよ。武器は基本的には量子化されてISの中のデータ領域に入ってるの。ただ容量には制限があるから持てる武器には限りがあるけどね」

 

 

楯無が説明するも目の前の少年の頭の上にはハテナが浮かんでいる。

どうやら半分も理解できていないようだ。

 

「見えてない鞄があって、その中に荷物が入ってるってイメージすればいいわ。それでバッグがパンパンになるとそれ以上物が入れられなくなるの」

 

「おお、なるほど」

 

「それじゃあ近接ブレードを出してみましょうか」

 

言われるままに武器を探してみると、目の前に移るディスプレイに装備が映し出される。その中から『葵』と書かれた刀のような武器を選ぶ。

 

打鉄の手に刀が現れる。

 

「八秒…まあ、スピードは後で慣れるしかないわね」

 

「これが武器…」

 

打鉄の手に握られる葵をじっくり見る。

刃毀れもない刀身がギラリと光る。

それを見ているとゾクッと背筋が凍り、ズシリと腕が重くなる。

 

「どうしたの?」

 

「いや…その、怖いなって…」

 

「そう、怖いっていう感想が出るのね」

 

「はい…」

 

四日後にはこれを使ってセシリアや一夏と戦うことになるのだが、いざ本当の武器を手にすると恐怖が頭をもたげる。

これは人を傷つけるもの、それを人に向けることに対して恐ろしくなった。

 

「なるほどね…」

 

楯無は彼の言葉を聞き、少し目を閉じる。

 

「翔介君、包丁は何のために使う?」

 

そして唐突にそんな質問をしてくる。

 

「え? それは…料理をするためです」

 

「そうよね。じゃあ、車は?」

 

「移動するため、ですか?」

 

楯無は翔介の言葉に首肯する。

質問の意図がいまいち見えないと首をかしげる。

 

「包丁も車も本来の使い方は翔介君の言った通りよ。でもね、どちらも人を傷つけることもできるわ」

 

「それは正しく使えば……」

 

「その通り。どちらも使う人によってその意味は大きく変わるものよ。それは確かに武器。でも翔介君が徒に振り回さない限り誰かを傷つけることはないわ」

 

「僕次第…ということですか?」

 

「そういうこと。それを教えるのがIS学園の役目よ」

 

自分次第。どんな道具も凶器になり得る。それを正しく使うこと。それは恐らくとても簡単なことであり、難しいことなのだろう。

 

「まあ、専門的に言うとISには絶対防御っていう操縦者を守る機能があるわ。IS同士ならお互いを傷つける心配はないわ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「これは初歩中の初歩だからしっかり覚えておきなさい」

 

「は、はい」

 

楯無の言葉で少し安心する。

すると、でもと楯無が続ける。

 

「その怖いという気持ち、忘れちゃ駄目よ」

 

そういう楯無はとても大人びていながら、優しい表情をしていた。

 

「さあ、質問はないかしら? なければビシビシと訓練してあげるわ。覚悟しなさい」

 

「はい!」

 

 

試合まであと四日。

翔介は楯無の師事を受けていくのだった。

 

 

 

そして、遂に試合当日の日がやってきた。

 

 

 




本日はここまで。


翔介の訓練風景はいかがだったでしょう?
彼はまだまだIS操縦者のセンスがありません。これから徐々に成長していくことになります。
強い主人公を望む人にはなかなか受けないかもしれませんが、こんな彼の成長をどうか見守ってあげてください。
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