世界を終わらせるもの【完結】   作:畑渚

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先日404小隊+αが夢に出てきたんすけど、内容がエグくて泣きそうになりました(謎報告)
活動報告に上げとくので興味ある方はどうぞ


he..lose

「随分とじめじめとしているねえ」

 

「シャワーでも浴びたらスッキリするんじゃない?昨日、9が水の使える家を見つけたって聞いたわ」

 

「それは本当かい?それじゃあ少し行ってくるとしようか」

 

 男はプログラムを入れたカバンと着替えを入れた袋を持って部屋から出ていく。

 

 45のことを疑っている様子は無かった。

 現に彼の端末はベッドの側のテーブルに無造作に置かれている。

 

 

 45は窓の外を眺める。下の階にいる9に場所を聞いたのだろう、ちょうど男がこの家から出ていくところだった。

 

 男の端末を手に取り、電源をつける。

 標準的な起動シーケンスが始まり、ログイン画面へと移行した。

 

 思い当たるパスワードを適当に打ち込むが、どれも該当しない。さすがに男の情報が不足していた。電子戦に強い彼女でも、ノーヒントでパスワードを当てる技術はない。

 

「まあ想定内だけど」

 

 そう呟いて45は自分の端末を開き、男の端末と接続する。ハッキングプログラムは作動し、男の端末の情報を抜き取ろうと端末は加熱する。

 

「あとは待つだけね」

 

 コーヒーに口をつける。さすがは完璧を謳う416が淹れただけあって、味に詳しくない彼女でも随分と美味しいということがはっきりと理解できた。

 

 数分経った後に端末の画面へと目線を戻す。

 

「……おかしいわね」

 

 進捗はまったくと言っていいほどに進んでいなかった。スペック不足やハッキングミスではない。単純に45の端末のプログラムが男の端末のセキュリティを突破できていないのだ。

 

 自分の端末を操作して、全てのログを表示する。膨大な量のログのすべてを、45は理解した。

 

「随分と手の混んだことをしてくれたわね」

 

 そこには、標準的に見せかけた独自のOSと、45ですら見たことのない特殊なセキュリティが幾重にもかけられているということが書かれていた。

 

 

 ログを読み漁り突破口を探そうとするが、玄関の扉の音で現実へと思考が戻ってくる。416とG11は休眠中、9は外に出ていないことを考えればそれが男の帰宅を示すことは明らかだった。

 

 すぐに端末を操作してハッキングを終了する。隠蔽工作には慣れたもので、記憶領域をさかのぼり男の外出前とまったく同じ状態に戻した。人形であればまだしも、人間である男は違和感すら感じないであろう。

 

「おっと45君、まだいたのかい」

 

「ええ、ここは日当たりがいいからくつろいでいたのよ」

 

 窓の側でコーヒーを啜る。

 

「いやはや、助かったよ。おかげで目が覚めた」

 

「それはなによりね」

 

 男は端末へと近づいていく。

 

「そういえば行きがけにね、人形の腕が落ちていたんだ」

 

 バクバクと心臓が飛び跳ねそうなくらいの鼓動が聞こえていた。

 

「気味が悪いね。あれは確か鉄血製の戦術人形の腕だね。こんな住宅地でも戦闘があったのかな」

 

「そうね」

 

 男が端末に触れる。何も疑うことなく彼は端末を操作する。

 

「45君」

 

「えっ何かしら?」

 

 平静を取り繕う。システムは正常に作動し、いつもどおりのUMP45を彼女は演じる。

 

「その……いつまでいるつもりだい?」

 

「あ、ああ。ごめんなさいね。あなただって男だもの」

 

「ちょっと待ってくれそれは誤解だ」

 

「悪かったわ。この通りよ」

 

「だから誤解だ。てっきりなにか僕に用事があるのかと思ったんだが、そうでもないみたいだからどうしたんだろうと思っただけだよ」

 

「用事……そういえば一つあったわね」

 

 45は思い出したかのようにそう呟いた。

 

「私、あなたに興味があるの」

 

「……そういう誤解を招く言い方はやめてくれないかい」

 

「あら?誤解じゃないわよ。私はあなたに興味があるわ」

 

「そうかい?僕は何の面白みもない男だよ」

 

「そんなことないわ。随分と謙遜するのね」

 

 男は端末をいじっていた手を止める。そして真剣な眼差しで45を射抜く。

 

「逆に聞きたいんだが、僕の何に興味があるんだい?」

 

 返答は考えなければいけない、そう直感で感じた。人形に直感があるのかという疑問の解を見つける余裕は、45にはなかった。

 

「あなたは控えめに言ってもシステム開発の天才でしょう?そういったことに特化して私はつくられているの」

 

「なるほど、つまりは僕のプログラム談義を聞きたいと」

 

「まあそう言っても差し支えはないわ」

 

 嘘である。あわよくば男の個人情報を聞き出そうとしていた45は見当違いな方向に話が進んでいることに気がついた。

 

「まずプログラムに関してはね、僕は……」

 

 しかし専門分野を語り始めた男を止める言葉を、45は見つけられなかった。その後9が朝食に呼びにくるまで、45は延々と男の話を聞き続けることになった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「そういえば私たち、あなたの名前も知らないんだよね」

 

 食卓を囲んだ団らんの中、9はそう言った。

 

 もちろんこの話には45が絡んでいる。404小隊のコミュ力化物、いつの間にか友達が増える子、いつの間にか話が弾む子と名高い9を使い、45は彼の個人情報を聞き出すことにした。

 

 もちろん9もノリノリである。

 

「名前?それくらい調べれば……出てこなかったのかい?」

 

「この任務はG&Kの指揮官直々の極秘任務よ。本来はこういった詮索も禁止されているのだけど」

 

 真面目なことを言う416であるが、止める気はないようである。彼女も男の情報を知りたい側であった。

 

「こんなのはどう?」

 

 9はいきいきと手を挙げる。皆が9に注目する。

 

「なにか勝負をして負けたほうが個人情報を言うっていうのは?」

 

 各々は納得したような反応を見せる。あとは男がどう答えるかだった。

 

「なんだい突然。これはドッキリかなんかかい?」

 

 疑っているというよりかはただ驚いているようだった。

 

「まあでも楽しそうなことに変わりはなさそうだね。その話、のった」

 

 男は腕まくりをして、不敵な笑みを浮かべた。

 

「さて、誰が最初だい?」

 

「じゃあ私からいい?」

 

 最初に手を上げたのは、珍しくもG11だった。普段は無気力そうで、こういった話題よりも睡眠を好みそうな彼女が一番槍を務めるとは、彼はおろか彼女の仲間たちでさえ予想だにしてなかった。

 

「よし、それじゃあ何で勝負するかい?」

 

「うーん、じゃあ射的で」

 

 明らかに男にフリである。さすがにそれはと416が止めようとするが、その声を男が遮った。

 

「わかった。それじゃあ外に出ようか」

 

「うん」

 

 G11は彼の後に続いて、家の外へと出ていった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

閑静な住宅街跡に、男性と少女が佇む。

 

「的は……あの車にしようか。運転席の窓ガラスの中心を狙うということでどうだい?」

 

「うん、良いよ。先手は譲ってあげる」

 

 G11は自分の半身でもある銃を、男へと手渡した。

 

「まさかコイツを撃てる日が来るなんて思ってもみなかったなぁ」

 

 嬉しそうに銃を触る男に、早くしてという目線が突き刺さる。

 

「よし、まずは一回目だ」

 

 男は引き金を引き切る。バースト射撃によって飛び出た複数の弾は、車にすら命中しなかった。

 

「やっぱり難しいね。ほら、次はG11君の番だ」

 

「うん」

 

 G11は銃を受け取り、無造作に車に狙いをつける。

 

 男は、一度銃口が定まった後に少し左へとズラしたのを横目で見ていた。

 

「2発が目標に命中、残りも後部座席の方のガラスに命中……さすがだね」

 

「人形としては失格よ。まったく寝てばかりだからよG11」

 

 416の言葉にG11は口を尖らせる。

 

「いいんだよこのくらいで~。それで、まだ続ける?私はどっちでもいいけど」

 

「いいや、やめておこう。一年練習したとしてもG11君には勝てそうにない」

 

「そう……じゃあ私の勝ちだね」

 

「そうだな、個人情報か……G11君は知りたいこととかあるかい?」

 

「それじゃあ……すきなお昼寝場所は?」

 

 小隊全員が心の中でズッコケた。G11に期待しただけ無駄だった。

 

「お昼寝場所かい?うーん……あえて言うなら自宅のソファかな」

 

「ふーん。それじゃあ私は終わりね。それじゃあおやすみ~」

 

 そういってG11は家の中へと入っていく。この時間帯はリビングに陽があたり昼寝の絶好の時間であることは、想像に難くなかった。

 

「それじゃあ次は私が行くわ」

 

 そう名乗り出たのは、45だった。

 

「45君かい。君は何で勝負するつもりだい?」

 

「プログラミングで勝負するのはどう?」

 

「いいね、それは僕も得意分野だ」

 

 男は機嫌を良くしながら、45と詳細を話し合った。

 

「それじゃあ明日までにお互いセキュリティを用意して、先に相手のセキュリティを突破した方の勝ちね」

 

「ああ、これなら僕にも分がありそうだ」

 

「ちょっと45!」

 

 416から横槍が入る。それも当然だ。彼には勝ち目はないはずだった。いくら天才とはいえ、電子戦を専門とする戦術人形に人間が勝てるわけがない。

 

「おっと416君。これは僕と45君の勝負だ。僕も条件に納得している。水は差さないでくれないか」

 

「でもあなた……本当に勝てると思っているの?」

 

「当たり前だろう?それに僕には奥の手があるんだ。もちろん45君に危害を加えるつもりはないから安心してくれ」

 

「フフッ、いつまでその余裕の顔が続くか楽しみね」

 

「それはこっちのセリフだよ45君。窮鼠猫を噛むと言うだろう?せいぜい気をつけたまえ」

 

 二人は不敵な笑みを浮かべて、お互いを睨み合った。

 

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