世界を終わらせるもの【完結】   作:畑渚

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最近洋画を見るんですが、やはり想像力が刺激されて良いですね。2作くらいプロット書きました。今後余裕がでたら投稿していきたいです
そしてとうとう来ますね、王子前線……


Two_Families

「9、通信網の監視はどう?」

 

「特に動きはないよ45姉」

 

「おかしい……まさかエリート級は本当に単騎で来てるの?」

 

「そうとしか考えられないよ。移動してるなら部下に指示するために通信するはずでしょ」

 

 9の言う通り、通常であれば通信をしないというはずがなかった。考えられるのは、エリート級の敵が、単騎で、しかも本部との連絡なしで近づいてきてるということだ。

 

「45君、通りすがりということはありえないのかい?」

 

「まずもってありえないわ」

 

「それはどうしてだい?」

 

「……これを見て」

 

 45は端末で地図を表示する。

 

「ここが最初に検知した場所、次にここ、そして最後にここよ」

 

「ふむふむ」

 

 男は45の言葉にうなずく。

 

「ここ、2つ目と最後のだけど、幹線道路から離れた私たちを追うように敵も曲がっているでしょう?」

 

「なるほど、よくわかったよ」

 

「そう、なら良かった」

 

 45は端末をしまおうとする――

 

「つまりは敵の目的地に僕が45君たちだね」

 

――その手が止まった。

 

「……何を言ってるの?」

 

 振り返った45の目には、倒れていく男の姿が映った。

 

「ちょっと45!あんたいったい何を!」

 

「わ、わたしは何も、ええ何もしてないわ」

 

 416が45に詰め寄る。

 

「じゃあどうして倒れたっていうのよ!」

 

「わたしだってわけがわからないわ!」

 

「まあまあ45姉も416も落ち着いてよ」

 

 声をあららげる二人の間に、9が割り込む。

 

 未だ45を睨む416をそのままに、9は倒れた男の側に座る。そして男の首に手を当てる。

 

「体温がちょっと高いみたい、汗も出てないし……熱中症みたいだね」

 

「9、これ。水」

 

「ありがとうG11」

 

 G11が水を取り出し、9はそれを受け取り男の首筋に当てる。

 

「416、家の中に運ぶから手伝って」

 

「え、ええ。わかったわ。45、疑って悪かったわね」

 

「き、気にしなくていいわ」

 

 素直に謝る416とそれを簡単に許す45、珍しいものを見たとG11は珍しく眠たげな目を細めた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「……あれ、ここは?」

 

「あっ起きた!」

 

「9君、いったい何があったんだい?」

 

「覚えてないの?」

 

「ああ、歩いていて、45君に話しかけたのは覚えているんだが……」

 

「あなた、熱中症で倒れたんだよ」

 

「そうか、水はしっかり取ってたつもりだったが」

 

「今日は湿気がすごく高いからね、汗がうまくでてなかったみたい」

 

「なるほど……また、迷惑をかけてしまったね」

 

「気にしないで、私たちもペースを見誤ったから」

 

 男は側にあったペットボトルの水を一気にのみ干す。

 

「よし、もう大丈夫だ。すぐに出発できるのかい?」

 

「えっあ、うん。大丈夫だよ」

 

「ん?どうしたんだいそんなにもじもじして」

 

「それ、私の」

 

 9の指は男の持つペットボトルを指していた。よくよく考えてみれば、いままで寝ていたのに飲みかけのペットボトルが側にあるのは不思議な事だ。

 

「……その、すまないね」

 

「ううん、いいの。それよりもう出発しよっか」

 

「ああ、そうだね」

 

 男は荷物を持つ。

 

「45君たちはどこだい?」

 

「45姉はすこし先に行ってるよ。もう少しで日も暮れるからそこまではがんばってね」

 

「ああ、頑張ってみるよ」

 

 男は玄関の扉を開く。夕焼けで静かな街が赤く染まっている。その色は男に、血の色を思わせた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「逃げて!」

 

「でも9君!」

 

「私のことはいいから!45姉と早く合流して!」

 

 9は目の前の敵に銃を撃ち続ける。しかし、9の弾丸はほとんど無効化されている。

 

「くっすまない9君!」

 

 男は走り出す。後ろは振り返らない。

 

 9を見捨てるつもりではない。彼にできることは、いち早く45にこのことを伝えることだ。

 

 

 しかし、敵はエリート級の人形だ。加えて9は今ダミーを持っていない。たとえ足止め目的だとしても、1対1で稼げる時間など、たかが知れていた。

 

 

「パパ、捕まえた」

 

 その声はすぐ後ろから聞こえた。腰にガバリと抱きつかれ、そのまま前に倒れる。

 

「ぐっ君は……謎の少女A?」

 

「そういえばそんなことも言ったっけ」

 

 うつ伏せの状態から仰向けになると、目の前に少女が立ちはだかっている。その血色の悪そうな肌色は、彼女が鉄血工造のエリート級人形であることを物語っている。

 

「それで、僕に何の用かな」

 

 そういいながら、男は手榴弾に手をかける。もう片方の手にはプログラムのはいったカバンを持っている。

 

「ちょっとまってよ、私はそんなもののためにここまで来たわけじゃないよ!」

 

「……どういうことだい?」

 

「わたしはそのカバンの中身に興味はないよ」

 

「そういえば君はさっき”パパ”と言ったね」

 

「あっ、口滑らせちゃった。でももういいかな。はじめまして、あなたの娘のアーキテクトだよ!」

 

「娘?僕には人形どころか人間の娘もいないよ」

 

「嘘ばっかり。それで……ママはどうしたの?」

 

 アーキテクトは笑みを浮かべる。その笑みは、残酷さが垣間見える。

 

「話を……聞こうか」

 

 男は無意識に、左手の薬指をさすった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「はい、お茶」

 

 てきとうな家にはいったあと、二人は勝手にダイニングを占拠した。カセットコンロで湯まで沸かして紅茶を淹れている。

 

「ああ、ありがとう」

 

 そうは言うが、男は紅茶には口をつけなかった。

 

「そんな警戒しなくてもいいじゃん」

 

「どこであの人のことを知った?」

 

「あの人って……ママのこと?」

 

 男は無言でうなずく。

 

「ママのことはなんでも知ってるよ。それこそアーキテクトとして生まれたころからね」

 

 アーキテクトは紅茶をすする。それにつられて男も一口飲んで見れば、随分と飲み慣れた味がした。

 

「紅茶、おいしいでしょ。ママ直伝なんだ」

 

 まるで本当に娘かのようにアーキテクトは笑う。男が険しい顔をしていなければ、父娘の一コマにすら見えたかもしれない。

 

「あの人は――」

 

「死んだ、でしょ?しってるよ。なんで死んだのかもね」

 

「なぜ知っているんだい」

 

 男の声は冷たい。いつもは言葉に含まれている余裕が、今はなかった。

 

「ママが私の中に残してくれたの。わざわざ硬いセキュリティをかけてね」

 

「残した?」

 

「いつまでしらばっくれるつもりなの?もしかして覚えてない?」

 

「何をだい?」

 

「パパとママが共同開発したAIを流用して作られたのが私。だからパパとママ」

 

 男はアーキテクトの顔を見つめる。そのペラペラと回る口が嘘を言っているようには見えなかった。

 

「それは……本当かい?」

 

「うん、嘘じゃないよ」

 

「そうか……」

 

 男は紅茶をすする。高級ではなくとも、口に合う親しみやすい味だ。

 

「いやまってくれ、君は死因も知っていると言ったね」

 

 今までペラペラと動いていたアーキテクトの口が閉じる。

 

「なぜ死因を知っているんだい?死んでしまったなら誰が君に残すっていうんだい」

 

 アーキテクトは窓の外へと顔を向ける。ちょうど男に背を向ける体勢だ。

 

「それに僕にはそういう相手がいたことも無いし、前にも言ったとおり人形づくりにも関わったことはないよ」

 

 男は立ち上がる。

 

「どうやら君は誰かと勘違いしているみたいだ」

 

 二人の間に沈黙が流れる。

 

 

 しばらくして静かに振り返ったアーキテクトは、目に涙を浮かべていた。

 

「ううん、まちがいなく私のパパだよ。そしてパパは間違いなく、ママと結婚してた」

 

「僕は君のいうパパではない」

 

「どうして!どうしてそんなひどいこと言うの!?」

 

 アーキテクトは男に詰め寄る。

 

「パパは私のことも、ママのことも忘れたっていうの?」

 

「忘れたんじゃない、元から知らないんだ」

 

「じゃあ思い出させてあげる」

 

 アーキテクトの手がそっと男の首にふれる。

 

 その細い指からは考えられないほどの力で、的確に絞めてくる。

 

「僕を殺すのかい?」

 

「いったでしょう?思い出させてあげるって」

 

 数十秒で、男の意識はなくなる。アーキテクトは成人男性軽々と持ち上げ、リビングのソファに寝かせる。

 

「フフフ、パパ。私はここだよ。ママと一緒にここにいるよ」

 

 男の頬をなでながら、アーキテクトはそう呟いた。

 

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