世界を終わらせるもの【完結】   作:畑渚

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This_doll_is_broken

「それじゃあ9、あとは頼んだわよ」

 

「うん、まかせて45姉」

 

「それじゃあ、寝てる間に私にイタズラはしないでよね」

 

「僕がすると思うのかい?」

 

「ええ。だってあなただって男でしょう?」

 

「しないさ」

 

 男はそっと左手の指輪をなぞった。

 

「ふふっ、冗談よ」

 

「わかっているよ。もう君の嘘にはなれたからね」

 

「あら、残念。それじゃあ行ってくるわ」

 

「任せたよ45君」

 

 45は端末と自身をコードでつなぎ、椅子で作った簡易ベッドに寝転がる。

 

『よし、接続成功よ』

 

「こちらでも確認しているよ。45君、気をつけてくれ。そこはすでに軍の掌握している回線だからね」

 

『わかっているわ。防壁はしっかり張っているから大丈夫』

 

「防壁かい?」

 

『ええ、さっきあなたに教えてもらったもの』

 

「僕がかい?いったいなにを」

 

『侵入している時に私は無防備すぎるんでしょう?』

 

「ああ、それかい?でもこの数十分で対処できたのかい?」

 

『半分はできたわ』

 

「半分?」

 

『私の力じゃ半分しかできなかった。だから残りの半分はあなたに託すわ』

 

 そういってモニターにウィンドウが表示される。それは、ウイルス撃退システムであった。しかし、それは手打ちの入力が必要なものだ。手間はかかるが、確かに確実な方法だ。

 

『それじゃあお願いね』

 

「僕で良いのかい?人形の電子戦に間に合うといいんだが……」

 

『あなたならできるわ。そうでしょう?』

 

「わかった。出来うる限り努力しよう」

 

『その言葉で十分よ』

 

 そういって45の声は途絶えた。ハッキングにリソースを集中させたのだろう。

 

「随分と45姉に信用されているんだね」

 

「そうかい?むしろ信用されていないと思うんだが」

 

「だって……」

 

 9が端末のキーボードにふれる。

 

「待て!9君、そのキーを押すんじゃない!」

 

「ね?これをしないって信用してるから、45姉はあなたに監視を任せたんだよ」

 

 9はヘラヘラと笑いながら、そう言って端末から離れた。

 

「9君、いま君がなにをしようとしたのかわかっているのかい!?」

 

「うん。ちょっと45姉のシステムを消去しかけたんだよね」

 

「わかっているのかい?システムは例え一部だったとしても、二度と戻らなくなる可能性だって――」

 

「うん、わかってるよ」

 

 9はそう笑ってみせた。

 

「45姉は誰にも……、ワタシにすら渡さなかった生殺与奪権をあなたに与えた。それはすごく重大なことなんだよ?」

 

「それは……」

 

「それに私が45姉を殺すなんてこと、本気ですると思った?」

 

「……それもそうだね。9君が45君を殺すなんてね」

 

「そういうこと。さっきのはちょっとしたイタズラ!」

 

「まったく、肝が冷えるからやめてくれよ……」

 

「あはは、意表をつけたのならよかったかな~」

 

『ほら、雑談ばかりしてないで仕事をしなさい』

 

「は~い」

 

「45君、首尾はどうだい?」

 

 45はしばらく考え込んで、返事をする。

 

『良い……わ。順調すぎるくらいにね』

 

「それは何よりじゃないか。なにか心配事でもあるのかい?」

 

 男の言う通り、45の言葉は歯切れが悪かった。

 

『順調に行き過ぎよ。まるで最初から道が用意されていたみたい。気味が悪いわ』

 

「なるほど……気をつけてくれ。君を超える電子戦特化の人形がいないことを願うよ」

 

『あんたのような研究者にも願う神がいたのね』

 

「ひどいなぁ。僕を何だと思っているんだい」

 

『マッドサイエンティスト』

 

「ひどくないかい!?なあどう思うよ9君」

 

「いや、マッドサイエンティストって……ふふふっ、ダメだ笑いをこらえきれない」

 

 9はお腹を抱えながら笑い転げている。

 

「そんなに笑うほどのことかい?」

 

「だってそのとおりだと思わない?」

 

「なぜだ……わからん」

 

『……っ!ふたりとも、敵よ!』

 

「なにっ!大丈夫かい!」

 

 いそいで画面に目を戻すと、45が交戦していた。

 

「攻撃は大丈夫そうだ。45君!防御はまかせてくれ!」

 

『わかった、お願いするわ!』

 

 45がそういった瞬間、コマンドラインにとてつもない数の警告が流れ込む。それはすべて違うIPからの侵入攻撃だった。

 

「この程度なら対処できる!」

 

 男は今までにない速度でタイピングをしはじめる。人形である9ですら、この速度を維持するのは難しいだろう。

 

「よし、だいたいは自動で切断できるな、あとは攻撃がうまくいってくれていれば」

 

『あたりまえでしょ』

 

 画面には目の前に屍の山を築いている45が写り込んでいる。

 

「さすがだね、45姉!」

 

『ありがとう、9。そっちはしっかりと警備できているかしら?』

 

「うん、416とG11も起きてるし大丈夫だよ」

 

『そう、それはなによりね』

 

「まかせといてよ!」

 

 ドンっと9は自分で自分の胸をたたいた。それとほぼ同時に、ガッシャーンとガラスの割れる音がする。その音は、確かに玄関の方から聞こえた。

 

「9君、今のって……」

 

「もしかしてもしかしなくても……敵だよねぇ」

 

 男と9は、お互いの顔を見合わせて苦い顔をした。

 

『私は先に進まずに防御に専念しておくから、先にそっちの問題を片付けて』

 

「了解!それじゃあ45姉、行ってくるね!」

 

「まってくれ9君、僕もいくよ」

 

「えー、足手まといになりたいの?」

 

「違うよ。敵の目的が僕だった場合、別働隊がいるかもしれないだろう?」

 

「なるほどね。ということは416たちと合流するまでは私ひとりで護衛か……」

 

「任せたよ、9君」

 

「しょうがないな~。いいよ、守ってあげる」

 

「さすが9君、頼もしいね」

 

「おだてても何もでないよ~」

 

 9はそう言いながら、男を守りつつ廊下へと飛び出していった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「416!状況は!」

 

 入り口に近い通路で、416とG11が銃を構えていた。

 

「9!それに……なんであんたまで来てるのよ!」

 

「だってここが一番安全だろう?」

 

「何を言ってるのよ!」

 

416と男の間に9が割り込む。

 

「まあまあそれくらいにして!それより状況!」

 

「状況もなにも、見たとおりよ」

 

 通路の先……玄関には、一体の人形が立っていた。その人形は男の姿を視認すると、無邪気に笑顔を浮かべた。

 

「やっほー、来ちゃった」

 

 珍しく9の笑顔が崩れる。

 

「……狙いはこの人だよね?」

 

「まああんたたちに興味はないよ」

 

「……416、G11、撃っていいよ」

 

 再び9は笑顔を浮かべながらそう言った。

 

「いや待つんだ9君!」

 

「そうだよ待ってよ」

 

 アーキテクトはヘラヘラしながら、両手を上に上げた。

 

「私に戦う気はないからさ……ちょっと休ませて」

 

「そんなことを言って殺す気でしょう?」

 

「私が?パパを?ははっ」

 

 アーキテクトは笑顔を豹変させる。殺意のむき出しになった視線で、9をにらみつける。

 

「冗談は寝てから言って。じゃないと苦しみながら死ぬことになるよ?」

 

「うっ……」

 

 アーキテクトの言葉は、9が気圧されるほどの迫力を秘めていた。しかし、9も引き下がるわけにはいかなかった。

 

「でも45姉の命令だから……」

 

 9も銃を構える。アーキテクトは動く気はないようだった。

 

「落ち着いてくれ9君。彼女は丸腰で、しかもびしょ濡れでボロボロだ」

 

 確かに、アーキテクトのボディは外の暴風雨を強行突破してきたことを物語っている。

 

「自分の娘だから?」

 

 男の顔を見て、9はそう絞り出すように声に出した。

 

「なにがだい?」

 

「……いいや、何でもないよ?それより、45姉に聞いて見ようか。私には手が余るみたい」

 

「そんなわけないでしょう!?相手は鉄血の人形よ?」

 

「416、お願い。今は従って……」

 

「……わかったわ」

 

 416も銃をおろし、G11もそれに続く。

 

「よかった。パパの前でこんな情けない姿をさらすことになるとは思ってなかったけどね」

 

「アーキテクト、君は何が目的でここにきたんだい?」

 

「んー簡単に言うなら……パパに会いたくて」

 

「なぜ僕に……?」

 

「それは、他の子がいる前では話せないかな~」

 

「ダメだよ。あなたは私たちの保護対象なんだから危険な目にあわせるわけにはいかない」

 

 男の視線を、9はズッパリと切り捨てる。

 

「とりあえず45姉に指示を仰ごう。話はそれからだよ」

 

 9は416とG11に銃を向けさせながら、アーキテクトを45のいる部屋まで連行した。

 




文章に納得がいかなくなってきている……
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