世界を終わらせるもの【完結】   作:畑渚

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とうとう25話まで来ましたね……


end_of_storm

「ただいま!45姉の様子は!?」

 

 45よりも先に起きた三人は、急いで男の向かっている端末へとかけよる。

 

「モニタリングはしているよ。今の所、異常はないね」

 

 男は端末の画面を見ながら、温めたなおしたコーヒーをすする。

 

「45はなおったの?」

 

 G11は男にすがるような視線を向ける。

 

「直った……とは断言できないよ。僕の腕をもってしてもね」

 

「あんだけリスクをおかしたのよ?」

 

 人形の中に入り込むというのは、下手をすると自我を壊しかねない。そのリスクを負ってまで、三人は45の記憶を取り戻そうとしたのだ。

 

「416君、僕だって完璧じゃないんだ。ただ、最善は尽くしたよ」

 

「へえ。それにしてはやけに遅かったじゃない」

 

 416から鋭い言葉が飛んでくる。男は目を瞑ってそれを受け止める。

 

「……手こずったんだよ。思った以上にね」

 

 それ以上言及されることはなかった。誰もが作業の難易度を理解していたからだ。たとえ天才級の人材を揃えたところで、ブラックボックスばかりの人形の中身に隠されたファイルを探し出すのは至難の技である。そのはずだと、三人は認識していた。

 

「あなたでもそんなことがあるんだね?」

 

「当たり前だろう?僕は不完全な人間だよ」

 

「あはは、そうだね」

 

「……9君、そこで肯定するのは違うだろう?」

 

「さすがにこんだけ一緒にいればわかるよ~」

 

 9はそう言いながら笑ってみせる。明らかに無理をしている笑い方に、男は顔を曇らせる。

 

「それで、成功したの?」

 

「それはなんとも言えないよ」

 

 男は416の問いにそう答えた。体重を椅子に預けて、軋ませる。

 

「45君が起き上がるまで、わからないんだよ」

 

 男の視線の先には、進捗状況を示すダイアログボックスがある。速度は遅くないものの、時々思い出したかのように止まる時がある。

 

「手は尽くしたつもりだよ。あとは祈るだけだね」

 

「祈る?私たち人形が誰に祈れっていうの?」

 

「さあね。僕だって、祈る相手はいつも決まってないさ」

 

 男はそう言いながら、再び椅子を軋ませた。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「45姉!」

 

 45の身体が起き上がっていく。9は抑えきれずに45に駆け寄っていく。

 

「45!どう?私のことわかる!?」

 

「ええ、大丈夫よ9、ありがとう」

 

 誰からともなく、安堵のため息がでた。その意思のこもった目は、紛れようもなく45のものだった。

 

「私たちには何もなし?」

 

 半分笑いながら、416も近づいていく。G11もその後ろに続いて、45へと近寄った。

 

「ありがとう。おかげで助かったわ」

 

 そういって素直に頭を下げた。45にしては、珍しいという言葉では言い表せないほど、考えられないような言動だった。

 

「もっと私を労って~。そして寝てても許して~?」

 

「任務中以外は許してあげる」

 

「ほんと?やったー!それじゃあおやすみ~」

 

 G11は部屋から出ていく。仮眠室の方向へと向かう様子をみながら、男は先程とは違った意味で、ため息をついた。

 

「あれ?416、どうしたの?」

 

「……9、この人形は本当に45なの?」

 

「ちょっとどういう意味?場合によっては私だって怒るよ?」

 

「だって……」

 

 416が顔を下げて言いよどむ。

 

「素直に感謝するとかあいつらしさのかけらも無いじゃない」

 

 

 

 

「……っぷ、あははは!416君も随分と酷いことを言うね!ついつい笑っちゃったよ」

 

「まったく、私にどんな印象があるのよ……。私だって感謝をのべるときくらいあるわ」

 

 男は腹部を抱えながら笑う。それにつられクスクスと45が、いつも通り明るく9も笑いはじめる。

 

「ちょっと笑うことはないでしょ!?」

 

「416は考えすぎだよ。少しは45姉を信じてもいいんじゃない?」

 

「無理よ。こんな人形を信じるなんて」

 

「でも本当は、記憶が戻ったのか不安になるくらい、私のことを思ってくれているんでしょう?」

 

「そんなことないわよ!」

 

「416君も素直になりなよ」

 

「あんたに言われたくないわ!」

 

 先程まで静まりかえっていた部屋は、すぐに笑い声で埋まりつつあった。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 カチャリカチャリと食卓に音が響く。しかし、話し声がそれをかき消していた。

 

「それでね、45姉ったら大声あげちゃって……」

 

「あはは、うちのゲーガーも昔ね?」

 

 とにかくたくさん話し続けているのは、9とアーキテクトだ。それぞれお互いの身内の話しを肴に盛り上がっている。その親密さはまるで友達か、それ以上だ。見た目の年齢も同じくらいであるので、姉妹と言っていいかもしれない。

 

「ゴホン……。9、それくらいにしてくれるかしら?」

 

「あっうん。ごめんね45姉」

 

「みんなも聞いて。今後のことよ」

 

 45は端末の画面にイメージ図を映し出す。

 

「これはシミュレーターで作った天気図の予想よ。見てわかる通り……明後日には止むと思われるわ」

 

「それはなによりだね。あまりにも進めないと、せっかくリスクを犯して通信を届けたのが無駄になりかねないからね」

 

「そう、これは朗報ね。けれどまだ伝達事項があるの。ほら、G11、起きて」

 

「えっう~ん。わかったよぉ~」

 

 眠そうな目をこすりながらも、G11ですら45の話に耳を傾ける。

 

「それで、悪い方の知らせもあるの。鉄血が動いているわ」

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 416は45の言葉を遮る。

 

「何?」

 

「こいつが原因じゃないの?」

 

 そういう416が目線で刺すのはアーキテクトだ。アーキテクトはあっけらかんとして、乾パンを頬張っている。

 

「その可能性は低いわ」

 

「どうして?」

 

「だってこの嵐じゃアーキテクトだって通信は不可能のはず。そうでしょう?」

 

「うん。私はいま鉄血のネットワークからは切断されてるよ」

 

 アーキテクトのその言葉に、嘘はないようだった。

 

「いまはその言葉を信じることにするわ。それに、私も知らなかったもの」

 

「ちょっとまってくれ45君」

 

「今度はあなたね。何?」

 

「その情報源はどこだい?」

 

「……内緒よ」

 

「この際だからはっきり言おう。君にも外部との連絡は不可能なはずだ。どこでその情報を?」

 

「だから内緒よ」

 

「……わかったよ。それじゃあ続きを聞こうか」

 

「それで鉄血なのだけど……こっちにまっすぐ向かっているみたいね」

 

「45姉、それってこっちの場所がバレてるってこと!?」

 

「まあ大体の原因はつかめているわ」

 

 45の視線が男の方を向く。

 

「僕かい?」

 

「あなた以外にある?」

 

「まあそうだろうね。でも、メールの送信には十分に気をつけているんだが……」

 

「あなたが気をつけていても、人形にとっては丸見えよ」

 

「なるほど。電子戦特化型なら確かに可能かもしれない」

 

 男は端末を起動させ、なにやらカタカタと打ち込む。

 

「いや……?通信厨に侵入や妨害の痕跡はない……。つまりは受信側の問題か?」

 

「とりあえずそこはいいわ。今後の予定だけ伝えたいから」

 

 再び視線が45へと集まる。

 

「出発は明後日よ。少し足早に行軍することになるわ」

 

「わかったよ。荷物は最小限にしておこう」

 

「食料も削るけどいい?」

 

 416の言葉に異議を申したてたのはアーキテクトだった。

 

「えー、あんたが持てばいいじゃん。パパは人間なんだよ?十分な食事を取らないと」

 

「じゃあ、あんたが持ちなさいよ」

 

「あいにくと私の両手はパパで埋まってるから」

 

「はぁ。あんたを理解するのは、45以上に骨がおれそうだわ」

 

 416はため息をついて、そうつぶやいた。




このまま嵐が永遠に続いてくれれば良かったのに……
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