世界を終わらせるもの【完結】   作:畑渚

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戦闘シーンが上手く書けるようになりたい。


Battlefor( 404+man+α, Gager )

「……?アーキテクトはどこだ?」

 

「アーキテクト?知らないわよ」

 

「嘘はやめろ……貴様らがアーキテクトと一緒に行動していることは既に知っている」

 

「私が教えると思ったの?」

 

 45がそう不敵に笑みをうかべる。ゲーガーは表情を変えずに、銃を構える。

 

「貴様らを倒してから探せばいいことか」

 

「……っ!撃って!」

 

 45の斜め後ろの2箇所から、ちょうどゲーガーの位置で交差するように銃弾が飛び出す。

 しかし、ゲーガーの周囲が青白く光り、銃弾がその境目で止まってしまう。

 

「45姉!危ない!」

 

「遅い!」

 

 物陰から9が飛び出すが、ゲーガーの方が一足はやく45の元へとたどり着く。

 

「……致命傷は避けたか」

 

「遅いのはあなたのほうなんじゃない?」

 

 そういってクスクスと45は笑う。しかし、その左足についた外骨格はきれいに切断されている。

 

「45姉大丈夫!?」

 

「ええ、それより作戦を思い出しなさい」

 

「でも想定外だよあの速さは!私が囮になるよ」

 

「9?いいから配置に戻っ――」

 

「ダメだよ!45姉は私と交代!」

 

 9は珍しく45に詰め寄る。45はしばらく唖然として、そのあと少し考えを巡らせる。

 

「わかったわ。9、頼んだわ」

 

 そういって45は走って建物の中へと走っていく。しかし、左足の動きが悪い。

 

「待ってくれるなんて随分と優しい鉄血もいたもんだね」

 

「別に誰が目の前にいようと斬るのみだ」

 

「あはは、私はそう簡単には斬られないよ?」

 

「試してみるか?」

 

 ゲーガーの周囲が再び青白く光っていく。9は銃を近くの捨てられた車のボンネットに置いて、構える。

 

「……なんのつもりだ?」

 

「さすがの私でも、銃を持ったままだとキツイなってね」

 

「戯言を……行くぞ!」

 

 ゲーガーの身体が瞬時に加速し、9の側を通り抜ける。

 

「……貴様、何者だ?」

 

「んー、まだ教える訳にはいかないかなー」

 

「ならば仕方ない、殺すまでだ」

 

「そう簡単には死なないよ!」

 

 9は即座に目配せをし、ビル街からの銃撃でゲーガーの足を止めようとする。

 

「くっ、しつこいな」

 

 一瞬、ゲーガーがちらりとビルの方へと視線を向けた。

 

「そうはさせないよ」

 

 9は即座に銃を拾うと、撃ち始める。ダメージとしてはいまいちでも、ゲーガーをこの場に立ち止まらせるくらいは効果があった。

 

「そんなに早死したいのなら、お前から殺してやる」

 

 ゲーガーの周囲を光りを満たす。

 

「9君!右に避けるんだ!」

 

 9は言われた通りに右へと避ける。しかし、ゲーガーもそれを察知して方向を変えて足を踏み出した。

 

「やられる……!」

 

 9の視界には、自分の方へととてつもない速さで突っ込んでくるゲーガーが映っていた。

 

「9君!諦めるんだ!」

 

「……そういうこと!?まったく無茶が過ぎるよ!」

 

 9の身体を、ゲーガーの刃が通り過ぎる。あっという間にバラバラになっていく。9の容姿をした残骸が、その場に転がった。

 

「まずは1人か……。次はあの男にしておこう」

 

 ゲーガーの目は、先程声が聞こえた方へと向く。そこには確かに、男の姿があった。

 

「隠れないとはなかなかに肝が座っているじゃないか」

 

「何を言っているんだい?僕はいつだって臆病な人間さ」

 

「ならば……避けてみることだ」

 

 ゲーガーの周りが再び光り始める。今回は普段よりも出力を抑えていた。人間相手ならば十分と慢心した結果だった。

 

「……っ!」

 

 ゲーガーは刃を地面に突き立てて減速する。しばらく地面に傷をつけたあと止まると、目の前には大きな柱があった。この柱を切り裂くのはなかなかに苦労しそうだった。

 

「貴様……いつの間にハッキングを?」

 

「君がさっき切り裂いた人形、9君っていうんだけどね?彼女ってば45君のためにハッキング用のプログラムを持っているのさ。発動条件は……直接の接触だよ」

 

「そのためだけに人形を犠牲にするのか貴様は」

 

 ゲーガーは辺りを見回す。しかしどの方向を向いても、目の前に男がいる。正面にいると視界が訴えかけてくる。

 

「この程度で私が止まると思ったか」

 

 目を閉じると、各種センサーを最大限に活用して男の居場所をさぐる。

 

「そんなわけないさ。僕だって戦術人形の知識はあるよ」

 

「そこだ!」

 

 ゲーガーは地を蹴りつつも刃を光らせる。人間相手であれば、その鋭い刃をさらに強化せずとも真っ二つにできることは事実だ。

 しかし、やはりそこにも男はいなかった。

 

「なるほど……この処理能力を見るに、そっちにも電子戦特化の個体がいるみたいだな」

 

「そっちにも?そう言ったのかい?」

 

「ああ、そうだ」

 

 男は物陰へと身を潜め、近くに座り込んでいる45の顔色をうかがう。

 

「確かにこれは……なかなか手こずりそうね」

 

「どういうことだい?あの人形は電子戦も強いのかい?」

 

「いいえ、これは上位権限による機能解放でゴリ押しして来てるだけよ。おそらく配下の兵のほとんどが動けなくなってるはずよ」

 

「なるほど。45君、大丈夫かい?」

 

「ふふっ心配してくれているの?」

 

「当たり前だろう?ここを皆で乗り越えるんだ」

 

「まるで9みたいなことを言うのね」

 

「僕に人間の娘がいたとしても、あんな風には育たないだろうさ」

 

 男は自分の端末を取り出すと、端子を45の方へ差し出す。

 

「手助けはいらないわ」

 

「そう言うなよ。今もギリギリなんだろう?焼け石にかける水よりかは役に立って見せるよ」

 

「そう……、それじゃあお願いしようかしら」

 

 45は自分の身体に端子を差して、作業を割り振る。

 

「この程度でいいのかい?」

 

「あら?じゃああと5倍くらい増やしましょうか?」

 

「3倍までにしてくれるかい?」

 

「冗談よ。でも、もう少し頼むわ」

 

 男は端末に向き合うと集中力を高めていく。そのタイプ音だけでも気が付かれそうだが、音声センサー系統は完全に掌握できているので心配する必要はなかった。

 

『ねえ45』

 

「416、今忙しいのだけれど」

 

『9が死んだことに対して何も感じないの?』

 

「死んだ……?何を言っているの?あの9はダミーで」

 

『端末を……見なさい』

 

「いったい何を……」

 

 端末の画面を見た45は、しばらくパクパクと口を動かしたあとに男へと目を向ける。

 

「ど、どういうこと?9はダミーだから身を捨ててまで私を逃したんじゃ」

 

 男は何も言わずに、視線をそらした。45には、それが否定しているようにしか見えなかった。

 

「今は生き残ることだけを考えるんだ」

 

「あなたさっき皆でって」

 

「落ち着くんだ45君!」

 

「これで落ち着いていられるわけが!」

 

「9君なら大丈夫だ!僕が保証する!だから今は作業に戻ってくれ」

 

 45は口をグッと閉じて、端末へと目を戻す。そこには、9が404のネットワークから切断されているという警告が表示されていた。

 

「わかっ……たわ」

 

「助かるよ。それで、状況はどうだい?」

 

「良くないわ」

 

「だろうね」

 

 短い言葉でも、男には十分に伝わった。端末に流れてくる仕事の量も増える一方だった。

 

「45君!これは?」

 

「他の人形からも侵入をうけてる……もう無理よ」

 

「いいや、まだだ。見ているんだろう?この通りさ。助けてくれないかい?」

 

「いったい何を?」

 

 困惑する45を気にもとめず、男はしっかりと目を見て話す。

 

「だから何を言って……タスクが勝手に消化されてる?」

 

 端末に目を戻せば、多少ではあるが仕事が勝手に終わっていく。その作業量は男とほぼ変わらないが、それでも十分だった。

 

「これならなんとか……!」

 

「なると思ったのか?」

 

 入り口の方からそう聞こえる。間違えようもない。ゲーガーの声だった。

 

「ここまで私を苦しめたのは褒めてやろう。でも、ここで死ね」

 

「おっとゲーガー、私がいることを忘れてない?」

 

 そういってゲーガーの前に飛び出したのは、アーキテクトだった。

 

「アーキテクト、どうして邪魔をする?」

 

「ゲーガー、お願いだから回れ右して帰って」

 

「お願い……だと?」

 

「そう、お願い」

 

 ゲーガーは一度うつむき、肩を震わせる。

 

「お願いなど聞くものか!そんなに嫌ならば命令してみろ!」

 

「無理だよ~、だって私、今ネットワークから孤立してるし」

 

「そうだろうな。そして武器も持たないのだろう?待っていてくれ、すぐに後ろの連中を殺す。そしたら一緒に帰ろう」

 

「……ゲーガー?私は帰らないよ」

 

「いいや、無理にでも帰らせる」

 

「そんなことしたら舌噛みきって死ぬ!」

 

 べーっとアーキテクトは舌を出してみせる。

 

「そんなことで人形は死ねない。そこをどいてくれ」

 

「どくもんか!」

 

「そうか……」

 

 ゲーガーは武器を構える。覚悟をした面持ちだ。

 

「腕の一本くらいは許してくれ」

 

「ねえねえ上官である私に武器を向けるわけ?」

 

「幸い咎めるモノはなにもないからな!」

 

 ゲーガーの踏み込みに合わせて、アーキテクトも前に出る。それは自殺行為に等しかった。

 

「だめだよ躊躇ったらさ」

 

「アーキテクト、お前……」

 

「ほら腕一本。これで満足?」

 

 アーキテクトの左腕は、肘から先がすっぱりと斬られている。しかし、他はまったくもって無傷だ。躊躇いが刃にのったのだと、ゲーガーは唇を噛む。

 

「どうしてそっち側につくんだ!」

 

「だってこっちには……パパがいるから」

 

「パパ?どうやら本当に狂ってしまったみたいだな」

 

「はははっ!ゲーガーには一生わからないよ、この気持ちはね!」

 

「そんなもの理解する気もない。次は手加減せずに行くぞ?」

 

 ゲーガーの周囲が光りを帯び始める。次こそは本気の一撃だった。足が地面をければ、無力化を考えない一本の矢と化すだろう。

 

「待つんだゲーガー君!」

 

 その言葉にゲーガーだけでなくアーキテクトも振り向いた。

 

「パパ!危ないから隠れてて!」

 

「そうはいかないさ。それにゲーガー君だったね、もう君の負けだ」

 

「何を言っているんだ貴様は」

 

「だからこう言っているんだ。チェックメイトだってね」

 

 男は手を高々とあげると、その指をパチンと鳴らした。

 

 次の瞬間、ゲーガーの視界は光りぬ包まれ、耳は爆音を検知した。




次回、第30話「return0;」

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