あと数話、頑張って完結させます!
休憩前とは変わって、放置車両で回り道をするようになり始めた頃。9が急にブレーキを踏んだ。
「ど、どうしたんだ9?」
男はいそいで辺りを見回す。商店街の区域に入ったらしく、小売店が立ち並んでいる。しかし、敵はおろか動く者すら見当たらない。
「本当に突然どうしたんだい?」
「ん?ああいや、ちょっと寄っていっていい?」
まあいいかと男がうなずくと、9は鼻歌混じりに車を停めた。
「それじゃあちょっと見てくるね〜」
「……ちょっと待ちなさい9!」
416の制止も聞かぬまま、9は近くの宝飾店に入っていった。
「はぁ、どうするのよ」
「どうもこうもないだろう?運転手が休憩を求めてるんだ」
「そうね、このくらいのわがままは聞いてあげないとね」
男に続いて45までも、同調しはじめる。
こうなれば416には止める方法がなかった。9に続いて車を降りていく二人を見てため息をつくと、となりで未だに眠るG11を叩き起こした。
=*=*=*=*=
「見て!45姉!」
店の奥から出てきた9の手には、イヤリングがのっていた。
「作戦の邪魔になるわ。それに耳なんてすぐに吹き飛ぶのだから」
「うーん、そうだね。それじゃあ小さいネックレスとかならドッグタグと一緒に」
「いいわね。どこ?」
45もノリノリで9のあとについていく。そんな様子を遠目から眺めていた男は、アーキテクトが店のカウンターをへばりつくように見ていることに気がつく。
「アーキテクトも何か気になるのかい?」
「うん、ちょっと探しものかな」
アーキテクトがいるのは結婚指輪の場所だった。まるで宿敵を見るかのようで、男はおそるおそる話しかけた。
「気になる相手でもいるのかい?」
「いや!そういうわけじゃなくてね!?……いやそうとも言うのかな?」
「なんだいその曖昧な返事は」
「いやーすでにいるというかさ?なんというか……いずれ話すから!この話はやめ!」
「まあ話したくないというなら深くは聞かないさ」
「うん……心の準備ができたら……ね?」
「何かいったかい?」
「ううん!なんでもない!それよりコレとかどうかな!似合う?」
アーキテクトは慌てて近くにあった指輪をつけてみせる。
「ダイアモンドか。うん、似合っているよ」
「えへへ、そうかな」
「こんなのもどうだい?」
男が手にとったのは真っ赤に光るルビーのネックレスだった。外から差し込む光を反射して、鈍く光り輝いている。
「そ、それじゃあそれももらおうかな」
「ん?待ってくれもらうって」
男がそういった瞬間、バーンと大きな音をたてて奥の扉が開く。ちょうど9と45が向かっていった方向だ。
そこには、黒いバッグを膨らませた9と45が出て来くる。ふたりとも、宝石の埋め込まれたサングラスをしていた。
「えっと……45君、それは?」
「今回の戦利品よ」
「9君、万引って知ってるかな?」
「私は捨てられたものを拾っただけだよ」
「416くん……」
「だめね、ああなるとあの姉妹は聞かないわ」
最後の砦の416にすがるも、諦めているようで首を横に振った。しかし男は見逃さなかった。彼女の服のポケットは不自然に膨らみ、耳には見覚えのないイヤリングまで付いている。
「416君……君もかい」
そうつぶやきながら、男はとぼとぼと外に出た。
=*=*=*=*=
再び車に乗り込んだが、その足はすぐに止まった。
「9君、こんどは何だい?」
「いや、アレ見て。ガンショップでしょ?」
「なるほど、それじゃあ補給していきましょうか」
404の皆は慣れた手付きで荷物を整理しながらガンショップへと入っていく。
「私たちも行こうか」
「そうだね。拳銃の一丁でも持っていたほうが良いだろうし」
アーキテクトに付き従うようにして、男も車から降りた。本日二度目の、ショッピングの時間である。
「9は弾を確保、416は榴弾ね。G11は……」
「どうせ売ってないだろうし私は適当にアタッチメントでも見とくよ」
「そう。それじゃあ30分後に出発するわ」
小隊は行動を開始する。その間に、45は通信機のチェックをしていた。
「ねえねえ、地下に射撃場があるらしいよ?」
「アーキテクトそう急かさないでくれよ」
目の前を二人が通り過ぎていく様子を眺めながら、45は通信機の周波数を調整し始めた。
=*=*=*=*=
集合時間に最後に来たのは、地下に行っていたはずの男とアーキテクトだった。男は少し厚めのコートを白衣の更に上に羽織っており、アーキテクトはカウボーイハットを指でくるくると回していた。
「さて、補給はばっちりみたいね。先を急ぎましょうか」
ダッフルバッグを肩にかけて、車へと向かう。9や416もそれに続いた。G11は先に車へと戻っている。
「……、45姉気になるの?」
「いえ、私達には関係のないことよ。先を急ぎましょう?」
一つの店の前で、45は一度足を止めた。しかし、再び歩き始めてしまった。
「へえ、45姉もウエディングドレスとかに興味があるんだね」
「意外ね。それとも元からそういう乙女でしたっけ、隊長さん?」
9の言葉にのって416もくすくすと笑う。
45は困った顔をしながら、UMP45のセーフティを外した。
「待って待って!冗談だって45姉!」
「あら、図星なの?」
「416~!」
9の決死の制止も効かず、45は416に銃を向けた。
場を緊張感が満たす。誰かの喉がゴクリと音を鳴らした。
「それで、撃つのかい?45君」
「そんなわけないでしょ」
45はセーフティをかけて銃口を下ろす。416も、右股のホルスターに伸びていた手を戻す。
「弾の無駄ね」
「あんたに撃つのは最後でいいわ」
肩をすくめる45に416は首を横に振った。
「ところであなたは銃はどうなの?」
「僕かい?まあ、一応隠し持っておくことにするよ」
男は白衣のポケットに手を突っ込むと、小さめのリボルバーを取り出す。何の変哲もない、強化もない銃だ。
「火力不足じゃないの~?」
「9君もそう思うかい?でも僕にはこれくらいじゃないと扱いきれないからね。それにこれだけあれば十分だよ」
「十分?」
「人形なんかの相手は君たちに任せるからね。本当に頼むよ?」
「任せて!全部なぎ倒しちゃうんだから。45姉が」
「えっ私?」
「火力不足ね」
「そうね、じゃあ次の戦闘では全部416にまかせて置いていきましょうか」
「そんなことしたら車に榴弾を撃ち込むわ」
「まってくれよ416君、それだと僕も死んでしまう」
「はぁ、じゃあ死ぬ気で飛び降りなさい」
「無茶を言わないでくれよ」
一行は車に乗り込む。9がキーを回すと、エンジンが好調に身体を震わせる。
「それじゃあ出発するね!」
9はアクセルを踏み、静かな町並みをエンジン音が切り裂いた。
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