世界を終わらせるもの【完結】   作:畑渚

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those who don't...

 男が鉄血に捕まった事件から数日が経った。随分と都市に近づいているようで、彼らを取り巻く環境は森から住宅街へと変化していた。

 

 住宅街とは言うものの、そこ人が住んでいるわけではない。誰もいないゴーストタウンだ。

 

「今日はベッドで寝れそうね」

 

「ほんと?やった~」

 

 45のつぶやきにG11は嬉しそうにそう答える。どこでも寝る彼女でも、寝具は重要な問題であるのだと男は認識を改めた。

 

「見てみて!かわいいのがたくさん!」

 

 空き家から出てきた9の両手には大量の服が抱えられていた。416は呆れた様子で首を横にふる。

 

「9、任務中なのよ?」

 

「まったく416はわかってないなぁ~」

 

 9は持ってきた服を見比べながらそう言った。

 

「ほら!これとか416にピッタリじゃない?」

 

「なによ!何も隠せてないじゃない!」

 

「せっかく良い身体してるんだから少しは露出しないと」

 

「だからといってそれはないでしょうそれは!」

 

 416は9の手からスケスケのベビードールを奪い取って遠くへと投げ捨てる。

 

「ふふふ、やつは四天王の中でも最弱!次はこれだよ!」

 

 416は9の繰り出す服を奪っては捨て奪っては捨てを繰り返す。

 

「楽しそうだね9君」

 

「うん、楽しいよ。だってこんなことなかなかできないんだもの」

 

 そういう9は既にいつもの服ではなく、物色したであろう服を着ている。

 

「あまり浮かれないのよ?」

 

「わかってるよ45姉。あっこれとか45姉に似合うと思うんだけど」

 

「あとで着替えるからそこに置いといて」

 

「りょうか~い」

 

 45の近くに服を置いて9は他の家へと侵入していく。45は驚いた様子でこちらを見る男にため息をつき、作業の手を止めた。

 

「なにかしら?」

 

「いや、素直に驚いているんだよ。45君がそういう服を着るとは思わなくてね」

 

 そこにはまだ世界が平和だったころの雑誌に載っているような、若々しい服が置かれている。落ち着いた雰囲気の45に似合うとは、男は思わなかった。

 

「別に私も好き好んでこういう服は着ないわよ」

 

 45は作業を再開し、そう答える。

 

「ただ9が私に似合うって言ったんだもの。きっと似合うに違いないわ」

 

「9君のことを信頼しているんだね」

 

「この隊で私と一番長くいるのは9よ。9は私以上に私のことを知っているわ」

 

「そこまでかい?」

 

「ええ、9ほど私を見てるものは人間にも人形にもいないわ」

 

「ふふ、姉思いの妹を持ったんだね」

 

「まったく、私にはもったいないくらいよ」

 

 男の言葉に苦笑いをしながら、45は端末を閉じた。突然上着を脱いだかと思うと、今度はスカートまで脱ぎ始める。

 

「ちょ、ちょっとまってくれよ45君!どうしたんだい服なんか脱いで!」

 

「えっ?着替えようかと思って」

 

「僕の目の前で着替えなくたっていいじゃないか」

 

「あら?もしかして私に欲情しているの?」

 

 45はからかうようにクスクスと笑った。

 

「ああ、もちろん。僕だって男だからね」

 

 

 

 

 45は笑顔のまま、フリーズを起こしたかのように止まった。そんな様子を気にもとめず、男は言葉を続ける。

 

「君たちは人形とはいえ見た目は年頃の女の子なんだから気をつけてくれよ」

 

「え、ええ……そうね」

 

 45は上着と服を手繰り寄せると、そそくさと一軒の家の中へと入っていった。

 

「あれ?45姉は?」

 

 入れ違いのように9が別の家から出てくる。両手にはさらに服を抱えている。

 

「そっちの家に入っていったよ。着替えるみたいだった」

 

「ありがとう!あっあなたにもこれあげる」

 

 そう言って投げ渡してきたのは、白いシルクハットだった。

 

「どうだい、似合うかい」

 

「うん!似合ってるよ!」

 

 9が45の後に続いて空き家に入っていくのを見ながら、男は頭の上のシルクハットを手に取る。

 

「白い……シルクハット。これも運命なのかな」

 

 そう呟きながら手でホコリを払い、再びかぶり直した。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

「今日の晩ごはんは随分と豪華なんだね」

 

「調理器具がそろっているからこのくらい当然よ」

 

 416は鍋の中身を混ぜながら、機嫌が良さそうにそう言う。

 

「こうしてみると本当に416がママみたいだね~」

 

「ななな何を言ってるのG11!」

 

 リビングのソファでG11は寝転がっていた。こちらも随分と機嫌が良さそうである。

 

「ほら、できたわよ」

 

「じゃあいただきます。……うん!さすがは416君だね、美味しいよ」

 

「あたりまえでしょう?人間の味覚については完璧に熟知しているもの」

 

 食卓を1人と4体で囲む。電気は断線してしまっていたため、食卓を照らすのはランタンの灯りである。薄暗い灯りでも、まるで家族のような明るい団らんの時間がそこにはあった。

 

「こうしてると家族みたいだね!」

 

「G11が手のかかる末っ子ね」

 

 9の冗談に珍しく45がのっかる。

 

「それで私と45姉が双子の姉妹で~」

 

「「416がお母さん!」」

 

「誰がお母さんよ!」

 

 9と45の軽口に416がそう大声を張り上げる。

 

「そうだね、416君はお母さんというよりも……たよれる三女って感じだね」

 

「さ、三女!?」

 

「ということは僕はお父さんかな」

 

「4人も娘がいるなんて随分と盛んなのね」

 

 45のツッコミに全員が明るく笑う。

 

 本当の家族のような明るさが、廃墟の住宅街に一日だけ復活した。

 

 

=*=*=*=*=

 

 

 目を覚ますと見知らぬベッドの上だった。それも当たり前だ。適当な家で寝たのだから見知らぬ風景が広がっていてもなんの不思議でもない。

 

 男は端末を開き、ネットワークにつなぐ。

 

 メッセージソフトを立ち上げパスワードを打ち込み、メッセージを書き始める。

 

 しかし、あっという間に書き終え、送信した後に端末を閉じる。

 閉じたのとほぼ同じくらいのタイミングで、部屋の扉が開いた。

 

「あら、もう起きていたの?」

 

「ああ45君、おはよう」

 

「ええ、おはよう。コーヒー淹れてるわよ」

 

「ありがとう。いただこうかな」

 

 45からカップを受け取り、そっと啜る。

 

「おっ随分と美味しいね」

 

「正真正銘の本物の豆よ。希少なんだから味わってね」

 

「ほう、これが……。飲んだのは何年ぶりだろうか」

 

「以前にも飲んだことがあるの?」

 

「ああ、昔の知り合いにコーヒーが好きな子がいてね。よくわからない説明を長々と聞かされたものさ」

 

「あなたの過去って本当に不思議ね」

 

「45君たちには言われたくないね」

 

「あら、私達の存在は極秘よ」

 

「そうだね。本当に君たちは僕たちと似ている」

 

「……僕たち?」

 

「おっと、失言だった。聞かなかったことにしてくれ」

 

「今はそういうことにしておくわ」

 

「助かるよ」

 

 男は再びコーヒーを啜る。

 

「うん、やはり美味しい」

 

「それは良かったわ。本当にね……」

 

 45の視線は、男の閉じた端末の方へと向いていた。

 




p.s.そろそろ他作者様の作品を読みに行きたい
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