僕は何回か虫歯になったことがあるんですけど、未だに麻酔の注射が怖いです。
お昼時、俺とココアはチノとリゼにパンを試食してもらうためにパンを焼いていた。
「うん!今日もいい出来だね!」
「ココアはパンを作るのだけは上手だよな。」
「だけって何!?だけって!」
ココアがプンスカ怒ってきた。
「うそうそ、料理も上手だよ。」
「本当に?」
「ああ、特にシチューが好きかな。味がしっかりしててまろやかで、母さんから料理を教わる前と比べたら全然違うよ。」
「そ、そうかな?」
「そうだよ、だからもっと上手になって俺にいろんな料理を食べさせてよ。」
「.....////パ、パンが冷めちゃうから早く持って行こう////」
「そうだな。」
ココアは少し頬を赤くしながらパンを持って行った。
「2人とも、パンができたよ!」
ココアはチノとリゼに完成したパンを持ってきた。
「今日も試食してくれるかな?お兄ちゃんも手伝ってくれたからすっごくおいしいよ!」
「「.......」」
「2人ともどうしたの?」
「今日は食べたい気分じゃないんだ。」
「え!?」
「私もです。」
「え?なんで?私にはもう飽きちゃったの!?」
「変な言い方するな!」
「うわ~ん。2人とも私に冷たいよー!」
ココアはそう言いココアの部屋に行ってしまった。
「2人ともなんで試食しないんだ?何かあったのか?」
「何でもない。」
「気にしないでください。」
明らかに何かを隠しているように思えたが俺はそのまま仕事を続けた。
翌日、午前の授業が終わり昼食になったのでココアとチヤと一緒にお昼にすることにした。
「最近チノとリゼが何か隠してるみたいなんだ。」
「そうなの?何か悩み事でもあるのかしら?」
「きっと私のパンに飽きて他の店のパンを食べてるんだよ。」
「それはないと思うぞ。ココアの作るパンは美味しいから。」
「そうよ。だから自分の作るパンに自信持って!」
「.....うん////」
褒められることになるとは思っていなかったのだろう、俯いたまま顔を上げようとしない。
「もしかしたらチノちゃん虫歯なんじゃないかしら?」
「虫歯....か。」
確かにそれはあるかもしれない。チノは結構我慢する子だからな。
「だとするとリゼは何だろう?」
「そうね~、高校2年生だしダイエット?体重を気にしてるのかしら?」
確かに、俺と同じ16歳だし体重を気にする年ごろだよな。
「でも別に体重を気にしなくてもいいと思うけどな。」
「女の子にとって体重の増加は生命の危機と同じくらいなのよ。」
「大袈裟すぎないか?」
「お兄ちゃんは女の子のことが分かってないね。」
そういえば昔、母さんに太った?って聞いたら鬼のような形相で怒られたことがあったな。女性にとって体重の数値は大事というわけか。
「とりあえず帰ったら2人に聞いてみるか。」
昼食を終え、そのまま午後の授業を受けた。
学校が終わりラビットハウスで仕事をしている中、俺はチノに虫歯があるかどうか確認してみることにした。ちなみにココアはまた補習だ。
「なあチノ、ちょっと口開けてくれないか?」
「何でですか?」
「虫歯チェックだ。ほら、口開けて。」
ちょっと恥ずかしそうにチノは口を開けた。虫歯らしきものは見当たらなかった。
「ふ~ん、特にないな。それにしてもチノの歯って小さくてかわいいな。」
「え?虫歯検査じゃないんですか?」
「そうだけど、歯が小さくてかわいいかったからさ。」
「は、はぁ。そうですか。」
次はリゼに体重について聞いてみることにした。
「なあリゼ、お前もしかして体重気にしてる?」
「はあ!?何だよいきなり。別に気にしてないけど女の子にそんなこと聞くなよ。」
「ごめん、悪気があったんじゃないんだ。気に障ったらごめん。」
俺はこの時、ある疑問が脳によぎった。チノは虫歯が無いのに菓子パンを遠慮した、そしてリゼは体重のことは気にしてないのに菓子パンを遠慮した。
「......もしかして。」
俺はチノに確認をとることにした。
「なあチノ、悪いけどこの冷えた水を飲んでくれないかな?」
「は、はぁ。いいですけど。」
チノはなんの躊躇いもなく水を飲んだ。
「やっぱりか、ありがとう、チノ。」
次はリゼに確認をとることにした。
「リゼ、このキンキンに冷えた水を飲んでくれないか?」
俺はわざとキンキンというところを強調して言ってみた。
「え!?な、なんで?」
「今日少し暑いだろ?喉渇いてるんじゃないかなって思ってさ。」
「い、い、いや、別にいいよ。今あ、あ、あんまり喉か、か、渇いてないしさ。」
めっちゃ動揺してる、間違いないな。
「チノ、自分は太ってるんじゃないかって思ってるでしょ?そしてリゼ、お前虫歯だろ?」
「「ど、どうしてそれを!?」」
見事にハモりながら2人は驚いていた。
「そういう事だったのか。」
話を聞いてみると、どうやらチノはココアによくモフモフしてて抱き心地が良いなどと言われ自分は太っていると思ってしまったらしい。そしてリゼは数週間前から虫歯になってしまったみたいだが歯を削る音が怖いらしく未だに行けないでいるみたいだ。
「まずチノ、チノは全然太ってないからダイエットする必要はないよ。無理にダイエットすると免疫力が低下して病気になるかもしれないからな。それに今のままのチノが一番かわいいよ。」
「そ、そうですか////」
チノは顔を赤くしながらお盆で顔を隠した。
「.........そしてリゼ!」
「は、はい!」
俺はこっそりと部屋から抜け出そうとするリゼを見逃さなかった。
「病院.......今から行くぞ。」
「えっと、明日でもいいんじゃないか。」
「ダメだ!そんなこと言ってたらいつまで経っても行かないだろ!」
俺はリゼの腕を掴んで引きずった。
「チノ、悪いけど暫く店任せてもいいか?」
「大丈夫ですよ。」
「悪いな、さあリゼ行くぞ!」
「いやだーー!助けてーーー!」
俺はリゼの叫びを無視して病院へ無理やり連れて行った。
「--さん、治療台へどうぞ。」
俺たちは今、待合室で順番が来るのを待っていた。
「.......」
待っている間、リゼはずっとそわそわしていた。
「リゼ、もう観念しろよ。」
「なあリョーマ、やっぱり今度にしないか?」
「ダメだ!早く治療しないと余計悪化するし、受付も済んだんだ。今更キャンセルなんかできないよ。」
待っている間リゼの順番が近づく度にリゼの顔が青ざめていた。
「次、天天座さん。治療台へどうぞ。」
「ほら、リゼの番だ。行くぞ。」
「いやだ。怖い。」
「後の人が待ってるんだ。早くしろ。」
「いやだ!歯を削るあの音が怖いんだ!」
「高校2年生になった人がこんなことで駄々こねんな!」
「だ...だって...うっ....怖い...ひぐっ....んだ。」
駄々をこねた挙句泣いてしまった。
「はぁ~まったく、しょうがないな~。」
俺はそう言いリゼを抱きしめた。
「大丈夫、俺がそばにいてあげるから。」
「本当に?」
「もちろん。」
「じゃあ、手.....握っててくれ。」
「いいよ。じゃあ行こう。」
俺はリゼと手を繋ぎながら治療台へ向かった。向かう途中、周りの人から若いわね~とか小声でひゅ~ひゅ~と言われたのは聞かなかったことにした。
「天天座さん、こちらに座ってください。」
「リョーマ、ちゃんと手繋いでてくれよ。」
「わかってるよ。」
「ふふ、大変ですね。」
「すみませんお手数かけて。」
「大丈夫ですよ。治療を怖がられるのは慣れてますから。」
「そ、そうですか。ではお願いします。」
「はい、わかりました。では天天座さん、麻酔をするので口を開けてください。」
歯科医の先生が麻酔の注射をしたとたん突然。
「痛たたたたたたたたた、リゼ!手、力入れすぎ!」
リゼは注射の痛みに耐えるために、繋いだ俺の手をものすごい力で握っていた。
「痛いってリゼ!潰れる潰れる!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
これはリゼの治療より俺の治療が必要かもしれないと思った。
リゼの治療が終わったのでラビットハウスに向かっていた。
「はぁ~手痛かった。」
「それは悪かったよ。でもおかげで虫歯を治せたよ。ありがとうリョーマ。」
「役に立ったようで良かったよ。これから早く虫歯を治すようにな。」
「そ、その時はまた手を繋いでてくれないか?////」
「......握りつぶすくらいの力を出さないんだったらな。」
「........ぜ、善処するよ。」
これは俺がまた痛い思いをするんだろうなと悟った。
ラビットハウスでの残りの仕事を終え今はチノの部屋へお邪魔し、チノが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。
「やっぱりチノが淹れてくれたコーヒーは美味しいな。」
「/////......あんまり飲みすぎると虫歯になりますよ。」
「毎日しっかりと歯を磨いてるから大丈夫だ。」
「........コーヒーばっかり飲んでると太っちゃいますよ。」
「それも大丈夫だ。今朝体重測ったけど、ここに引っ越す前とまったく変わってなかったよ。」
そう言ってチノを見ると前髪が邪魔で表情が見えず、何やら赤色のオーラを纏っているように見えた。
「....リョーマさんの。」
「あ、あのチノさん?」
なんかやばい気がする。
「リョーマさんのバカーーー!!!」
チノはそう言って枕を持って俺に振り回してきた。
「うわ!危ないって!やめろチノ!」
「リョーマさんなんか知りません!」
この後俺は、チノから逃げるために30分以上家中を走りまわった。傍から見たらただの鬼ごっこに見えただろうな。
to be continued
今回はここで終わりです。
最近なんだか歯が沁みるんですよね。
また歯医者に行くことにならないように心の底から祈ります。