蝉の鳴き声が聞こえてきましたね。
これぞ夏って感じですね。
夏は嫌いですけど。
あ、ありのまま今起こったことを話すぞ。チノが欲しいクリスマスプレゼントが決まったというので何かと思ったら妹にして欲しいと言ってきた。何を言っているのかわからないと思うけど俺も何が起きたのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだった、頭を撫でてとかハグをしてとかそんな甘えてくるような類では断じてない。頭に電撃が走るような驚きを味わったよ。
「えっとチノ、なんで俺の妹になりたいんだ?」
みんなかける言葉が見当たらないようなので俺が聞くことにした。
「リョーマさんがこの街に来てから一緒に過ごしていくうちに、リョーマさんみたいなお兄ちゃんがいたらいいなって思うようになったんです。だから.....その.....クリスマスプレゼントは......おn、お兄ちゃんが欲しいです!」
ここから見てもチノが全力の勇気を出して話しているのがものすごく伝わってくる。これは応えないわけにはいかないな。
「そうか、よしわかった!じゃあ今日からチノは俺の妹だ!」
「ほ、本当に!?いいんですか!?」
あっさりと承諾してくれたからなのかまだ信じきれていないような様子だった。
「うん!だからこれからはいっぱい甘えていいよ!」
俺がそう言うとチノは嬉しさのあまり少し泣きそうになっていた。そしてチノはそのまま俺を抱きしめていた。
「ありがとうございます!じゃあえっと......これからもよろしくお願いします!.......お、お兄ちゃん!」
こうしてチノも俺のことをお兄ちゃんと呼ぶようになった。
チノが俺のことをお兄ちゃんと呼ぶようになってから、チノが俺に対する甘えが一気に上昇するようになった。ある時は。
「お兄ちゃん!今日もお仕事頑張りました!褒めてください!」
「うん!今日も頑張ったな!偉いぞチノ!」
「えへへ////ありがとうございますお兄ちゃん!」
そしてある時は。
「お兄ちゃん!今日も一緒に寝ましょう!」
「今日も!?最近毎日一緒に寝てないか?」
「もちろんです!私はお兄ちゃんの妹なんです!一緒に寝るのは当然です!」
さらにある時は。
「もーチノちゃん!最近お兄ちゃんに甘えすぎだよ!」
「別にいいじゃないですか!ココアさんはこの街に来る前からお兄ちゃんにいっぱい甘えてたと聞きました!私にもいっぱい甘える権利があります!」
「だからってくっつきすぎだよ!お兄ちゃんから離れて!」
「嫌です!ココアさんが離れてください!」
チノが妹になってからよくこの状況になることが多くなった。今のチノは甘え過ぎというか暴走しているのに近いような感じがした。今までずっと我慢してきたんだな。
「ココア、チノはずっと我慢してきたんだから少しくらい甘えさせてやってくれないか?」
「ヤダ!最近はチノちゃんばっかり甘えてて私は全然甘えれてないもん!」
「モフモフ券もう1枚でどう?」
「うっ!?.......し、しょうがないな〜、じゃあそれで許してあげる。」
動揺を悟られたくないのか、平然を保っているつもりかもしれないが、すっごい棒読みになっている。
「お兄ちゃん!今日はお休みですから一緒にどこかに出かけましょう!」
「いいよ、どこに出かけたい?」
「まずはフルールに行きたいです!」
「よし!じゃあ準備しようか!」
「はい!」
こうして俺とチノはフルールに向かうことになった。
「こうしてチノと2人で歩くのって散歩の時以来だな。」
「そういえばそうでしたね。あの.....お兄ちゃん?」
「どうした?」
「手.......繋いでもいいですか?」
「もちろん!はい。」
俺がチノに手を差し出すと喜んで手を繋いできた。
「お兄ちゃんの手、あったかいですね!」
「そうか?ありがとう。じゃあこのままフルールに行こうか?」
「はい!」
俺はチノと手を繋ぎながらフルールに向かった。フルールに向かう途中、すれ違う人達に兄妹に見られることが多かった。以前のチノならそれでよく恥ずかしがっていたが今のチノは逆に喜んでおり、とても機嫌が良く見えた。
「シャロこんにちは!」
「あ!先輩いらっしゃいませ!チノちゃんもいらっしゃい!」
「こんにちはシャロさん!」
「あら!手なんて繋いでチノちゃん良かったわね!」
「はい!お兄ちゃんの手すごくあったかいです!」
「もうすっかり先輩の妹ね!じゃあお席の方へどうぞ。」
俺たちはシャロに席へ案内され、席に座るとシャロにメニューを渡された。
「チノは何にする?」
「お兄ちゃんと同じのがいいです!」
「俺と同じ?」
「はい!お願いします!」
となるとチノが飲みやすいカモミールの方がいいかな。
「じゃあカモミールとクッキーをお願いできるかな?」
「わかりました。少し待っててくださいね。先輩って優しいですね!」
カモミールが飲みやすいことはシャロには当然わかっているのだろう。シャロはそう言って去って行った。
「あ!そうだ!お兄ちゃん、今日の夕食はハンバーグが食べたいです!」
「チノは本当にハンバーグが好きだな。じゃあ今日はハンバーグにするよ。」
「ありがとうございます!すごく楽しみです!」
そう言ってチノは椅子に座りながら床に届いていない足をぷらぷらと揺らしながら待っていた。
「お待たせしました。カモミールとクッキーです。」
「ありがとう。いただきます。」
俺たちはそのままカモミールティーを飲んだ。
「久しぶりに飲んだけどやっぱり美味しいな!」
「コーヒーとは違う美味しさです!」
「ありがとうございます。そういえばチノちゃん、先輩がお兄ちゃんになってからどう?」
「すごく楽しくて幸せな気分です!もっと早くこうしていればよかったです!」
シャロの質問に即答で答えられると、さすがに少し恥ずかしい。
「先輩はどうですか?」
「ああ、俺もすごく楽しいよ。まあそのせいでココアが最近拗ねることが多くなってしまったけど。」
「そ、そうですか。先輩も大変ですね。」
シャロはそう言って苦笑いをしていた。
ココアにもちゃんと構ってやらないとあのままじゃずっと拗ねたままになってしまうな。
「ごちそうさまでした。すごく美味しかったよ。」
「ありがとうございます!先輩!また来てくださいね!」
俺はシャロに挨拶をして店を出た。
「さてと、チノ次はどこに行きたい?」
「あの、お兄ちゃんとお揃いの物が買いたいです!」
「お揃いか。じゃああの店だな。」
「?どんな店なんです?」
「アクセサリーの店なんだけど、前にチノが1人でスコーンを作っていた時にココアと一緒に行った店なんだ。あそこなら多分良い物が見つかると思うよ。」
「じゃあそこに行きましょう!さあ早く早く」
俺はチノに急かされたままアクセサリーの店に向かった。店内に入ると以前と変わらず色んなアクセサリーが置いてあった。
「わぁ〜!綺麗なアクセサリーがいっぱいです!これなら見つかりそうです!」
俺はチノとお揃いの物を探し始めた。
「お揃いか〜。髪留めはできないな。ブレスレットは仕事中邪魔になりそうだし。う〜ん、どうしたものか。」
悩みながら歩いているとコーヒーカップの形をしたバッヂが目に入った。
「チノ!このバッヂはどうかな?コーヒーカップだし、ラビットハウスにも合うと思うよ。」
チノに見せるとコーヒーカップのバッヂをジーっと見つめ、目をキラキラしていた。
「はい!これがいいです!」
「本当にこれで大丈夫?他のはいいの?」
「お兄ちゃんとお揃いなら何でも大丈夫です!」
「そうか、じゃあこれを買おう!」
俺はコーヒーカップのバッヂを2つ買い店を出た。チノはバッヂの入った袋を嬉しそうにギュッと抱きしめていた。
「お兄ちゃんありがとうございます!あの.....これ早速着付けてもいいですか?」
「うん!いいよ。じゃあ俺も今付けようかな。」
俺もバッヂを付けるとチノはお揃いのバッヂを付けれて、嬉しそうだった。
「えへへ////お揃いですね。お兄ちゃんがそばにいるみたいです!」
「喜んでくれて俺も嬉しいよ。さてと、もう夕方だしそろそろ帰るか。」
「はい!お兄ちゃん手を繋いで帰りましょう!」
俺はチノと手を繋ぎながら夕日に照らされている道を歩きラビットハウスに戻った。
「ただいま!」
「あ!お兄ちゃんお帰り!」
「ただいまです!」
「チノちゃん!お兄ちゃんとお出かけどうだった?」
「とても楽しかったです!」
ココアと話をしているとココアは俺とチノがつけているコーヒーカップのバッヂが目に入った。
「あれ?そのバッヂどうしたの?」
「これか?この前ココアと一緒に行ったアクセサリー屋で買ったんだ。」
「お兄ちゃんとお揃いです!」
そう言うとココアはぷくーっと頰を膨らませた。
「チノちゃん!お揃いなんてずるいよ!」
「ココアさんはその髪留めを買ってくれてたじゃないですか!だからずるくないです!」
「もー!お兄ちゃん私にもお揃い買って!」
「おいこら!そんなに揺らすな!」
「買って!買って!買って!」
妹が増えると楽しいことがたくさんあるが、その分大変なこともたくさんあるな。ココアはお揃いが欲しいとずっと駄々をこねていたが、今日はずっとハグしていいよと言うと一応それで許してくれた。いつかココアにもお揃いの物を買ってあげようかな。
To be continued
今回はここで終わります。
今回の話、自分で執筆しておきながら少しにやけている自分がいました。
もう病気ですかねこれ?