もう11月ですね。
今年ももうすぐで終わりですね。
「ん?着いたか。」
目を覚ますとちょうど目的地の終着駅に到着したところだった。ココアは未だに爆睡中で俺の服を掴みながら眠っていた。
「ココア着いたぞ、起きろ。」
「えへへ〜お兄ちゃんがいっぱいだ〜。」
どんな夢見てるんだよ。いくら揺すっても起きる様子はなかったので仕方なくあの方法で起こすことにした。
「ココア、今起きたら思いっきりハグしてあげるぞ。」
「ほんと!?.....あれ?」
ココアの耳元で囁くと一瞬で飛び起き辺りを見渡していた。そして窓に映る終着駅を見ると既に到着していることを理解した様子だった。
「もう着いたんだ。」
「早く降りるぞ、車掌さんに迷惑がかかるからな。」
「それよりお兄ちゃん!ちゃんと起きれたからハグさせて!」
そういうところはちゃっかりと覚えてるんだな。それを是非とも勉強に活かして欲しいものだ。多分言っても聞かないだろうなと思いながら約束通りハグをしてあげると満足そうにしながら電車を降りていった。
「お兄ちゃんどうしたの?なんだか私の家に行くのが嫌みたいな顔だけど。」
道を歩いているとココアが不思議そうな顔で俺を見てきた。別に俺はココアの実家に行くこと自体が嫌なわけではない。問題なのはこいつの姉だ。この前ラビットハウスにやってきた時しばらく会えなかっただけであの狂気さだ。あの時から既に数ヶ月経っている、いったいどんな目にあわされるかを考え始めるとキリがない。
「......狂気のモフモフが怖いって言えばわかるか?」
「.......何も言わないでおくよ。」
さすがの補習ばかりしているココアでも察したようで、それ以上は何も言わなくなった。俺が唯一恐れているものだということはココアも重々承知している。しばらく俺は無言になり重くなった足を運びながらココアの実家へ向かった。
「着いたー!」
ようやくココアの実家に到着した。ココアは少しウキウキした様子でドアを開けるとおばさんが出迎えてくれた。
「おかえりなさいココア!リョーマ君もおかえりなさい!」
「お母さんただいま!」
ココアは荷物を床へ手放しおばさんに子供みたいに嬉しそうに抱きつきに行った。おばさんはココアを愛でるように頭を撫でていた。ちなみに俺はさっきからモカの姿が見当たらないので周りを警戒していた。
「ねえおばさん、モカはどk..........!!!」
モカはどこにいるのか聞こうとした瞬間背後から狂気の気配を感じた。俺は冷や汗をかきながら振り向くとそこには満面の笑みのモカが立っていた。
「おかえりリョーマ君!」
「た、ただいま。」
「久しぶりだね!リョーマ君に会えてすっごく嬉しいよ!さあリョーマ君今から何したい?ご飯作ってあげようか?お風呂沸かしてあげようか?それともモフモフがいい?リョーマ君がしてほしいことならなんでもするよ!一緒に寝てホしイなら一緒にネテアゲルし、甘えタイナラ私がいっぱいアマエサセテあげるし、ヒザマクラシテホシイナラヨロコンデシテアゲルヨ?ナニガイイ?ナニシテホシイ?リョーマクンナニガイイ?ネエナニガイイ!?」
俺が少し後ずさりをするとモカも近づいてきた。大きく後ずさるとその分大きく近づいてきて、俺の心臓の鼓動は増すばかりだ。喋れば喋るほど狂気さが増していき、俺は怯えずにはいられなかった。
「いや、今はいい!ていうか近すぎ!」
「エンリョシナクテイインダヨ?ココアノメンドウヲミテバッカデツカレテルデショ?ワタシガイヤシテアゲルカラコッチニオイデ!」
後ずさりをし続けた俺は壁を背にしてしまい、逃げ道を失ってしまった。そしてモカは両手を俺の顔の横にある壁に突き出した、いわゆる壁ドンというやつだ。
「モカ落ち着きなさい!」
「お姉ちゃんしっかりして!」
「ハッ!.....ごめんねリョーマ君、お姉ちゃんちょっとどうかしてたみたい!」
「いや全然ちょっとどころじゃないから!」
俺は当然のツッコミをした。俺の予想通りかなり狂っていたみたいで、ちょっと会わなかっただけでこの状態だ。次会った時はどうなっているのやら。考えると震えが止まらないのでやめておこう。
「さあ2人とも疲れたでしょ?おやつ作ってあるから休憩にしましょ?」
「やったー!おやつだ!」
おばさんの得意なおやつはクッキーだ。小さい頃はよくココアと一緒に遊んで家にお邪魔した時によく作ってくれた。あの頃はよくお互いに食べさせあいっこをしたのが懐かしい思い出だ。俺がテーブルに座るとモカは当たり前のように俺の隣に座り、それを見たココアは頬を膨らませていたが姉のモカには勝てないと悟ったのか黙って俺の向かいに座った。
「リョーマ君あ〜ん♪」
「やめてくれよ甘兎の時といい、もうそんな歳じゃないんだから。」
モカは俺にクッキーを食べさせようとしてきた。おばさんは微笑ましそうに見ていたがココアは頬を膨らませながらジッと見ていた。こんな状況でこんなことできるわけない。
「そういえば2人とも向こうでどんな事があったの?」
おばさんに聞かれた俺たちは様々なことを話した。みんなと一緒にクリスマスパーティをした事、チノが俺の妹になってめちゃくちゃ甘えん坊になった事、山奥でみんなとキャンプをした事などを話した。そして最後にココアは俺にとって一番言って欲しくない事を言い出した。
「お兄ちゃんったらリゼちゃんとデートしたんだよ!挙句には2人っきりで旅行までしたんだよ!」
ココアがそれを言った瞬間、紅茶を飲んでいたモカの手がピタリと止まった。恐る恐る見ると笑顔の仮面を被ったモカがいた。
「へぇ〜リョーマ君ってばリゼちゃんとデートしたんだ〜♪へぇ〜それは嘸かし楽しかっただろうね〜♪ふ〜ん♪」
「いやあれはリゼが演劇の練習のために付き合って欲しいって言われただけだから!ていうかなんでモカが怒るんだよ?」
「何言ってるのリョーマ君?ぜ〜んぜん怒ってないよ!リョーマ君もそういう年なんだな〜って思ってるだけだよ!だから怒ってないよ!本当に怒ってないからね!」
怒ってる!何故かはわからないが絶対怒ってる!だってオーラが狂気の笑顔の時と同じだから。
「そうだわ!この後お得意さんの所にパンを届けないといけないんだけど、モカ行ってくれるかしら?」
「それじゃリョーマ君も一緒に行こうよ!
するとココアがいきなり文句を言い始めた。
「ヤダ!お兄ちゃんは私と遊ぶんだからお姉ちゃん1人で行って!」
「う〜ん、もし一緒に行かせてくれたらリョーマ君に後でココアをモフモフさせてあげるように言っておいてあげるけどどうかな?」
「........お兄ちゃん!お姉ちゃんと一緒にお使いに行ってきて!」
「おい5秒前のお前はどこに行った?あとモカ、なんで勝手に決めてるの?」
今更何言っても聞かなさそうだったからそういうことで決定し、モカと一緒にパンを届けることになり、玄関を出る頃にはモカはもうウキウキ状態だった。
「ちょっと腕組まないでくれ。いや恋人繋ぎもダメだって!」
家を出て少しした後、モカがいきなり俺の腕を組み始め、さらには恋人繋ぎまでしようとしてきた。挙げ句の果てには俺の肩に頭を寄せようとしてきた。
「え〜いいじゃない減るもんじゃないんだし。」
「だからって限度があるだろ?俺たち恋人じゃないんだから、周りの人たちが誤解するだろ。」
モカはケチだのヘタレだのブーブー言っていたのでしょうがないなと思い普通に手を繋いであげることにした。モカは手を繋いでるというのをしっかりと感じ取るためか少し強めに握っていたが俺は気にすることなく道を歩いた。
お得意さんにパンを届け終えた俺たちは少し休憩することになり、少し離れた所にある大きな木の木陰に座りサンドイッチを食べていた。
「サンドイッチ美味しいね!」
モカはじっくりとサンドイッチを味わいながら感想を述べていた。それにしてもこの辺りは全然人がいない。人が通る気配が無ければ車が通る気配も無い。誰もいない秘境の地にいるのと錯覚してしまいそうになってしまうほどだ。
「すごく静かでしょ?この辺りは人が全然いないから休憩にはもってこいなんだ!私のお気に入りの場所だよ!」
俺が不思議に思っていたことにタイミングよく答えていた。確かにここは休憩には良い場所で俺もすっかり気に入っていた。ココアがいたら逆に騒がしくなるだろうけど今はモカしかいないので静かな気分でサンドイッチを食べ終えた。
「ん〜!やっぱりリョーマ君といると落ち着くな〜!」
モカは伸びをしながら俺にとって少し恥ずかしいことを言ってきた。そしてモカは俺の心情を察したようなニヤニヤとした表情で詰め寄ってきた。
「おやおや〜?そんなに顔を赤くしてどうしたのかな〜?周りには私しかいないから恥ずかしがることないよ!」
「わかった、わかったから近すぎだって!」
「えへへ〜リョーマ君は恥ずかしがり屋さんだね!リョーマ君、せっかくだしここで少しお昼寝していこうよ!」
何を言い出すかと思えばお昼寝をしたいと言い出してきた。ここは確かに静かで昼寝にも適している場所だ。実際俺は眠い状況だった。
「うーん、まあそうだな。俺も少し眠くなってきたしちょっとだけ寝ようかな。」
「うん!そうこなくっちゃ!じゃあリョーマ君、手繋いで寝てもいいかな?」
この時すでに半分寝てしまっている状態の俺は、お願いされたことをすんなりと受け入れ手を繋いだ。モカはそのまま木にもたれながら俺の肩に寄り添った。
「リョーマ君おやすみ。」
「ああ......おやすみ。」
「リョーマ君ったらぐっすりお休み君だね!」
数十分後、ずっと寝たふりをしていたモカは目を開け完全に眠っている俺の顔を眺めていた。時には頬を突いたりして俺の反応を窺って楽しんでいた。
「向こうではずっとココアの面倒見てるし、最近はチノちゃんが妹になってリョーマ君にベッタリって言ってたし疲れてたんだね。」
そしてモカは俺の顔に両手を添え、まるで愛おしいもの見つめるかのような顔をしていた。
「それにしてもリョーマ君は鈍感だな〜。あんなにサイン出したのに私の想いに気付いてくれないんだなんて。鈍い男の子は嫌われちゃうぞ〜。」
モカは不満そうに言っていた。モカも人間の女性だ、想い人のことを思うのは当然のことだろう。それに何度もサインを出しているのに全然気づいてくれずに不満になってしまうのも当然だろう。
「.......このままキスしても.....大丈夫かな。」
想い人に触れたい、しかし起きてしまうのではないかという不安がモカの欲求を抑えている。だが不安要素より触れたいという欲求の方が遥かに勝っていた。モカは起きてしまわないように慎重に唇をそっと近づけた。
(.....起きないで.......起きないで。)
だがモカの願いは叶わず、すんでのところで目覚めてしまった。しかしモカはその事に気付かず顔を近づける。
「ん〜.....ん?モカ、何してるの?」
「ふわぁ!!リョーマ君いつ起きたの!?」
「いやたった今だけど、それより何してたの?」
「ゴ、ゴミが付いてたから取ってあげてたんだよ!」
ゴミを取ろうとしただけであの慌てよう。一体どんなゴミが付いてたんだろう?でも昼寝のおかげですっきり目が覚めた。時刻も夕方に差し掛かろうとしている頃だ。そろそろ戻った方がいいだろう。
「さてと、そろそろ夕方だし帰るか?」
「.....うん、そうだね..........バカ....。」
ものすごい小声で何か言っていたが全然聞き取れなかった。何故か少し落ち込んでるような様子だ、元気付けた方がいいかな。
「なあモカ.....腕組みながら帰るか?」
「え?いいの?」
「なんだか元気無いから、その方が良いかなって思って。嫌だったか?」
「ありがとうリョーマ君!やっぱりリョーマ君は優しいね!」
さっきの落ち込みは嘘だったかのように喜んで腕を組んできた。何があったかは知らないけれど元気が出て良かった。帰り道、腕組みだけでは足りないのかお使いの時と同じ恋人繋ぎをしてきたが、それはさすがに勘弁してもらいそのまま家に戻った。
To be continued
今回はここで終わります。
ここ最近一気に寒くなってきましたね。
風邪には気をつけてください!
by風邪をひいてしまった人より。