皆さんの初恋はいつでしたか?
僕は小学6年生でした!
まあ.......何も発展しませんでしたけど。
「お兄ちゃん助けて~!」
数日後の朝、ココアの実家は朝から大忙しだ。開店前にパンを捏ねる、焼く、店に並べる。簡単そうに見えるが作る数が多くて全然簡単じゃない。実際ココアが音を上げて俺に助けを求めている。俺は木組みの街の高校に転校する前、というより中学生の時からよく手伝いをしていたので別に苦ではなかった。それに比べてココアはいつも寝坊して手伝いに遅れることがしょっちゅうだった。なので高校生になった今、俺はココアを叩き起こして店の手伝いをさせている。
「いつも夜更かしするお前が悪い。ほらつべこべ言わず手を動かす!」
「うぅ.....お兄ちゃんの鬼!」
ココアは少し涙目になりながらパンを捏ねていた。しばらく放っておいた状態で準備をしていたが、時折チラっとココアを見ると少し辛そうにしていた。ぐっすり眠っていたところを叩き起こして無理やり手伝いをさせたことを思い出すとさすがにやりすぎたと思い、パンを捏ねていたココアの腕を掴みギュッと抱きしめた。
「ふぇ!?どうしたのお兄ちゃん?」
「考えたらやりすぎたかなって思ってな、ごめんなココア。」
頭を撫でながら抱き締めていると最初辛そうにしていた表情が一瞬で安心したようなほんわかとした表情をした。そしてもっと甘えたいのか嬉しそうに抱きしめ返していた。俺ってやっぱり妹に甘いのかな?
「おや!ココアったらリョーマ君にハグされて嬉しそうだね!」
「今は私がお兄ちゃんとハグしてるんだからお姉ちゃんはダメ!」
店の入り口の掃除を終えたモカが俺とココアを羨ましそうに見ているとすぐさまそれを察したココアは俺を抱きしめながらモカから守るような大勢を取った。
「そんなこと言わずにモフモフさせてよ~!今日はまだしてないんだからさ!」
モカは手をワシワシしながら少しずつ近づいてくる。ココアはハグを奪われないようにするのに必死だったが、俺はモカのモフモフが怖かったので今のココアがありがたかった。もうあんな数時間のモフモフは嫌だ!
「ほら3人とも、もうすぐ開店だから準備して。」
タイミングよくおばさんが現れて、なんとかモフモフされずに済んだ。モカは不満そうにしていたが仕事となればいつまでもこんなことはしていられない。仕事に取り掛かろうと抱きしめていたココアから離れるとココアも不満そうにしていたが、代わりに頭を撫でてあげてから店を開店した。
「いらっしゃいませ!」
開店直後、大勢の人たちが一気に店内に入ってきた。準備している時から人の声はしていたのだがこんなに大勢とは思わなかった。お客さんの数も中学生の時より遥かに増えていた。
「あら!リョーマちゃんじゃない!少し大きくなったわね!」
俺が中学生の時からよく来てくれるお客さんに声をかけられ大きくなったと言われた。そういえば最近ココアがほんの少し小さく見えるようになった。小さく見えたのはそのせいか。
「あ!リョーマお兄ちゃんだ!」
声のする方を見ると、親子連れの子供の方が俺のとこに駆け寄ってきた。この親子も中学生の時からよく来てくれる人だ。
「ねえリョーマお兄ちゃん!前みたいに頭撫でてよ!」
「ああ、いいよ!」
「え!?お兄ちゃん他の子達にもそんな風にしてたの!?」
「そうだけど、ココアがよく寝坊してたから知らなかっただけだよ。」
「お兄ちゃんの浮気者!!!」
「なんでそうなる!?」
頭を撫でただけでこの言われよう。本物の浮気だったらそう言うのはわかるけど、なんで撫でただけでここまで言われるんだろう?おばさんにちょっと苦笑いしながら見られたぞ。いくら話しかけても無視される一方だったので今は仕事に集中することにした。
「モカ、手伝うよ。」
「ほんとに?ありがとう!」
レジの横に立った俺は、パンの袋詰めをすることにした。もうすでに大行列ができており、ちょっと気を抜くと袋詰めの方にも列ができてしまいそうになるほどだ。そういえば昔、モカが袋詰めは3秒以内にとか言ってたっけ。
「リョーマ君は手際がすごくいいね!前より良くなってるよ!」
「そうか?むしろ遅くなってるような気がするけど。」
手際が良くなっているというより遅くなっているんじゃないかと俺は思っていた。ラビットハウスではこんなに忙しいことは滅多になかったからな。まあ、鈍っていないようで良かった。
朝のラッシュが終わり一段落ついた後、最後に並んでいたお年寄りのおばあさんが話しかけてきた。
「モカちゃんはいつもすごいね〜。毎日大忙しの中頑張って。」
「ありがとうございます!すっかり慣れちゃって全然平気ですよ!」
「でも気のせいかね〜?なんだか今日は人一倍元気だったような気がするけど。久しぶりのリョーマちゃんに会えて嬉しいのかね?」
「はい!リョーマ君がいると何でもできる気がするんです!」
モカはそう言って嬉しそうに俺の腕を組んで抱きついてきた。他人の前で抱きつかれるのは慣れていないので結構恥ずかしかった。おばあさんに微笑ましく見られ、俺は言葉が思い浮かばず喋ることができなかった。
「それにしてもなんだか2人を見てると新婚夫婦みたいに見えるよ。」
「え///....ふ、夫婦///」
いつもは恥ずかしがらないモカがこの時は珍しく恥ずかしがった。夫婦という言葉がよほど効いたのか顔を真っ赤にして抱きしめていた俺の腕を離していた。しかも時折チラッとこっちを見てくる。
「はっはっは!若いのはいいね〜。それじゃ私は失礼するよ。また明日来るからね〜!」
おばあさんは元気よく笑い店を出て行った。お客さんがいなくなった今、俺とモカは取り残されたような感じだった。そしてさっきから一言も喋らないモカはずっと俯いて立ったままだった。
「お客さん.......いなくなったな。」
「うん.......そ、そうだね///」
「「.............。」」
「......えっと......休憩にするか?」
「.......うん////」
そこから俺たちは無言でおばさんとココアがいるリビングに向かい、昼休憩をすることにした。休憩中ぎこちない俺たちを見たおばさんとココアはものすごい不思議がっていたが休憩が終わる頃にはいつも通りのモカに戻っていた。
「ありがとうリョーマ君、夕食手伝ってくれて。」
仕事が終わった後、俺はおばさんと夕食の準備を手伝っていた。ココアがどうしても俺が作ったハンバーグが食べたいと言っていたので今はハンバーグを作っているところだ。
「向こうでいつも作ってるから気にしなくていいよ。」
「それにしても随分と上達したわね。昔は卵焼きも作れなくていつも焦がしてばかりだったのに。」
「........それ前にモカにも言われたから言わないで。」
昔はよく料理を焦がしていたことを思い出すとなんだか恥ずかしい気持ちになる。確かに昔は焦がしてばかりだった。いつも隣で母さんが指導をし、失敗した時はいつも『料理ができない男の子はモテないわよ!』って言われてた。まあその指導のおかげでここまで上達したわけだけど。
料理のやり甲斐を実感できるのは料理を美味しく食べてくれた時だ。いつもココアとチノが俺の作った料理をとても美味しそうに食べてくれる。それだけでもっと上手になろうと思えるようになる。
「今日作るハンバーグは絶対美味しいと思うから楽しみにしててよ。ココアとチノもすごく美味しいって言ってくれるから。」
「よほど自信があるみたいね!じゃあ楽しみにしてるわね!」
俺はそのまま夕食の準備に取り掛かった。準備中ココアが5分ごとにキッチンに来てハンバーグはできてるか見に来ていた。おとなしく待ってるように言っても何回も見に来るので頭を撫でておとなしくさせ、少し急いで準備に取り掛かった。
「まあ!リョーマ君の作ったハンバーグ美味しいわね!後で教えてもらおうかしら!」
「でしょ!お兄ちゃんのハンバーグすごく美味しいんだよ!チノちゃんもお兄ちゃんが作るハンバーグが大好物なんだよ!」
夕食、ハンバーグを一口食べたおばさんは驚きのあまり手で口を抑えていた。なんと言ったって俺の一番の得意料理だからな。それ相応の自信はある。
「前に街のみんなとピクニックに行った時のハンバーグサンドより美味しくなってるよ!上達したんだね!えらいえらい!」
「お、お兄ちゃんがいつもとは逆に撫でられてる!写真撮ろう!」
「おいモカやめろ!あとココア、すぐに消せ!」
この後俺は頭を撫でられるだけじゃなくさらには抱きしめながら頭を撫でてきたので身動きが取れなかった。ココアはそれを良いことに写真を撮りまくっていた。しばらくココアを追いかけ回していたが、ようやく捕まえた頃には写真はロックされていた。
「皆に見せるんじゃないぞ。」
「わかってるって♪それにしてもお姉ちゃんに撫でられてるお兄ちゃんってなんか可愛い!」
「おいココアやっぱり消せ!」
俺は軽くココアの頬をグリグリしながら言ったが、頑なにココアは写真を消そうとしなかった。おばさんに別に気にすることじゃないと説得され俺は渋々諦め、そのまま夕食を続けた。
「明日には帰るのか。なんだかあっという間の1週間だったな。」
ベッドの上で寝転びながら俺はここでの1週間を振り返っていた。それにしてもこの1週間やたらとモカが俺にベッタリだった。何かをする時はいつもモカが横にいたし、その度にココアが割って入って来てすぐモカと言い合いばかりだった。向こうに帰ったらココアたくさん甘えさせてあげよう。
「リョーマ君起きてる?」
ノックもせずに、モカがひょこっとドアから顔だけを出してきた。ココアがいたらまた何か言い出しそうな感じだが、当のココアは明日に備えて爆睡中だ。
「起きてるけど何か用か?」
「2人とも明日帰っちゃうでしょ?だから今日はリョーマ君と2人でお話したいなっと思って。ちょっとだけいいかな?」
向こうに帰ったら次はいつ会えるかわからないからな。今はモカの誘いに乗ろう。
「ああ、いいよ。少しだけだぞ。」
「えへへ、リョーマ君ありがとう!」
俺はそのままモカと一緒にリビングに向かった。おばさんは別の部屋で今日の売り上げの集計中だったので誰もいなかった。席に座っておくように言われた俺は椅子に座りモカを待った。そして手に何か持っていたのでよく見て見るとボトルワイン2本とワイングラスを持っていた。
「おい何持ってきてるんだよ!俺未成年だぞ!」
「大丈夫。片方はホットワインだからリョーマ君が飲んでも大丈夫だよ。」
そう言ってモカは席に着きボトルを開け、グラスに注いだ。そしてホットワインの方のグラスを俺に手渡すと乾杯の合図をされた。
「えへへ、なんだか本当にお酒飲んでるみたいだね!」
「まあ俺の方はホットワインだけどな。」
誰もいない部屋で2人っきりで飲む、そして手に持っているのは液体が入ったワイングラス。傍から見たら完全に酒を飲んでいると誤解されるだろう。
「それよりあまり飲み過ぎるなよ。引っ越す前のココアの木組みの街の高校の入学祝いで飲み過ぎて部屋まで運ぶの大変だったんだからな。」
「わかってるよ。ほどほどにするから。」
俺はモカに酒の注意をしてそのまま話を続けた。しかし話に夢中になりすぎてモカが飲み過ぎていることに気付けなかった。気が付いた頃にはボトルを1本空けており、顔は真っ赤で頭をゆらゆらと揺らしていた。
「きいれよりょーあくん!このあえおかあひゃんっひゃらてくいけあしえあいのいよういんいいうっえいっえうひょういあんあお!ひおいおおおあない?(聞いてよリョーマ君!この前お母さんったら手首怪我してないのに病院に行くって言って嘘ついたんだよ!ひどいと思わない?)」
「そ、そうだな。大変だったな。」
「ほんろうだお!ぷんうあおええひゃんあお!(そうだよ!プンスカお姉ちゃんだよ!)」
見ての通り、今のモカは呂律がまとも回らず、宥めるので精いっぱいだった。そういえばモカは酔った時は愚痴を言いまくるタイプだったな。しばらく会ってなかったせいですっかり忘れていた。
「りょーあくん!もうもうさえへ〜!(リョーマ君!モフモフさせて!)」
モカは全体重をかけて俺に抱きついてきた。ほぼ泥酔状態のモカは遠慮ができず力任せに抱きしめてくる。予想以上の力に俺はびっくりし、慌てて引き離そうとした。
「モカ!ちょっと痛い!離れて!」
「やら!もうもうしあい!(ヤダ!モフモフしたい!)」
なんだか今のモカはココアにすごく似ている。顔を俺の胸に埋め駄々をこねる、愚痴を言いまくるだけでなく精神年齢も下がるのか?
「モカ少し落ち着け!酔いすぎだぞ!」
「..........。」
「モカ?」
「.......う〜ん。」
さっきまで駄々をこねて喚いていたのに、一瞬で眠りについていた。やっぱりモカに酒は飲ませすぎない方がいいな。次からは確認の頻度を増やした方がいい。頑張り屋のモカが酒を飲んでこんな風になるんだったら、俺が大人になって飲んだらどうなるんだろう。少し楽しみでもあるし不安でもあるな。
「しょうがないな。少しこのままにするか。」
抱きついたままで寝られてしまったので30分ほどこのままにしておきホットワインを飲んだ。夢の中で俺に甘えているのか時折俺の胸に頬ずりすることがあったが、今はそっとしておくことにした。
「う~ん.....あれ?」
「やっと起きたか。」
目を覚ましたモカはゆっくりと体を起こし時計を見ていた。30分のつもりだったが結局1時間ほど経っていた。泥酔ではなくなったが、まだほろ酔い状態のようだ。そろそろ寝る時間だし部屋へ連れて行った方が良いだろう。
「そろそろ部屋へ行こう。立てる?」
「ありがと~。なんだかリョーマ君がお兄ちゃんみたいだね~。」
肩を貸し、半分寝ぼけてるようなモカを連れ2階へ上がった。あと少しでモカの部屋に着こうとした時、突然俺の寝室の前でモカが立ち止まった。
「ねえリョーマ君、もう少しお話しようよ?」
「いやもうやめとこう。早く寝ないと明日がきついよ。」
「お願い~!少しだけだから!お願い~お願い~!」
俺を思いっきり抱きしめ再び駄々をこね始めた。一応ココアの姉なんだよな?酔っているせいかもしれないが、今誰かにこの光景を見られたら100%妹だと思われるぞ。
「わかったわかった、少しだけだぞ。」
俺はそのままをモカを寝室へ連れて行った。部屋に入り電気をつけようスイッチを押そうとした時、ドアの方からカチッと鍵がかかった音がした。振り向くとドアを背にしながら鍵を閉め表情が窺えないモカが立っていた。しかし口の笑みだけは見えており、少し不気味さがあった。
「モカ.......なんで鍵かけるの?」
「.........フフ。」
モカはそのままゆっくりと近づいてきた。まるで絶対にこの部屋から逃がさないというような気を放ちながら。今までの狂気染みたものとは少し違う。そのせいなのか俺はその場から動けないでいた。
「.........えい♪」
俺はそのままモカにベッドへ押し倒された。俺の体の上に乗られ、腕を押さえつけられ、全く身動きが取れなくなってしまった。
「リョーマ君///」
「ちょっと何してんだよ!どいてくr........。」
モカを見た瞬間驚いた。恍惚の笑みを浮かべながら俺の顔を見つめていたのだ。言葉を失ってしまい、すごく惹かれそうになってしまいそうだった。
「リョーマ君の胸、あったかいね。」
モカは俺の胸に顔をそっと当ててきた。俺の鼓動めっちゃ速くなってるの絶対にバレた。ていうよりこの状況で緊張しない方が無理がある。
「ねえリョーマ君///」
「な、何?」
「キス.......しよ////」
「.........は?」
顔を上げてしばらく見つめあった後、何を言うかと思えばとんでもない爆弾発言をしてきた。モカの言った言葉を理解するのに数秒かかってしまった。
「ねえ、しよ?」
「な、何言ってんだよモカ!ちょっと酔いすぎだ!離れてくれよ!」
「酔ってなんかないよ。本心で言ってるんだよ。」
「酔ってる人たちはみんなそう言うんだよ!早く離れてくれ!」
引き離そうにもずっと両腕両足を押さえられているので身動きが取れない。力の無い女性でも自分の体重と持ってる力を使えば男性でもある程度押さえることはできる。それに俺は部活をやってないからスポーツとか筋トレなどをすることがあまり無い。故に筋力が高くない。そんな俺を年上のモカからしたら簡単に押さえることができてしまうだろう。
「いいでしょ?」
「ダメだって!俺たち恋人じゃないし、キスだってしたことないし....。」
「私はいいよ、私の初めてのキス、リョーマ君にあげても。」
「何....言って...。」
モカの言葉に声が出なくなってしまった。潤んだ瞳と愛おしい物を見る顔、それだけで言葉が詰まるのには充分だった。モカは右手を俺の左頬に添え、そのまま唇を近づけてきた。
「リョーマ君///」
「.........やめろよ!酒の勢いでこんなことしたら絶対に後悔する!頼むからこんなこと......やめてくれ。」
俺は目を閉じて顔をモカから背け、しはらく沈黙の時間が流れた。モカが今何を考えているのか、目を閉じている俺は全くわからなかった。俺はそっと目を開けるとモカは顔を離し、何も言わずにドアの方へ重い足を運ぶように歩いて行った。
「ごめんね......リョーマ君。」
「モカ........なんで......」
「本当に......,ごめんね.....。」
そのままモカは俺の寝室を後にし、部屋へ戻って行った。
「......なんで泣いてたんだ?」
俺が疑問に思ったのは目を開けた時、一筋の涙を流しながらとても悲しそうな顔をしていたことだ。そもそも何故キスをしようとしてきたのか、酔っていたという割には理性ははっきりとしているようにも見えた。俺は寝転んだままその疑問についてしばらく考えたが、理由がわかることはなかった。
「........寝る....か。」
俺はそのまま瞼を閉じ、なかなか寝つけない夜を過ごした。
To be continued
今回はここで終わります。
こういう恋愛系を執筆してると、昔の恋していたことを思い出しますね。何も起きませんでしたけど(2回目)。