兄というのは苦労するが、やり甲斐はある   作:P&D

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どうもP&Dです。
最近はコロナウイルス騒動ですごいですね。
皆さん、手洗いうがいを徹底して人が多いところにはなるべく近寄らないようにしてください。


-41話- 人に心配はかけないようにしよう。

「朝か.........。」

ある日、俺は目が覚めると鳥のさえずりが聞こえた。どうやらもう朝のようだ。今日もいつものように学校から帰ったら仕事をしながらココアやチノに甘えられて、それで2人が喧嘩して俺がそれを止めて2人を甘えさせるという日になるんだろう。

そう思いながら俺は起き上がろうとした時、何だか布団に違和感があった。

 

「ん?なんだ?」

 

俺は恐る恐る布団をめくるとなんとチノが俺の胸辺りに頭を乗せ俺を覆うように抱きしめて幸せそうにすやすやと眠っていたのだ。これにはすごくびっくりした。てっきりよくテレビで見る布団をめくるとそこには幽霊がいたみたいな展開になるかと思った。

 

「ちょっ!?チノ!?おい起きろ!」

 

「ん~.....お兄ちゃん?」

 

慌ててチノを起こしたが、まだ眠たげな目を擦っており半分寝ているような様子だ。それに比べてこっちは驚きで心臓がバクバク状態だ。なんで朝からこんな思いしないといけないんだよ。俺はホラー映画の主人公か?

 

「なんでここで寝てるんだ!?昨日の夜自分の部屋で寝てただろ!?」

 

「え~と.....たしか......昨日1人で寝てるとすごく寂しくなったので夜中にお兄ちゃんの部屋に忍び込んで、お布団の中に潜り込んだんです。お兄ちゃんのお布団の中すごく温かかったです!」

 

ふにゃっとした笑顔で言ってくる。めっちゃ可愛い笑顔だから怒るに怒れない。でも一応注意しておく必要はあるな。

 

「チノ、一緒に寝たくなったら言ってくれ。夜中にそんなことされるとびっくりしてこっちの身が持たん。」

 

「はい!わかりました!」

 

まだ半分寝ぼけてるようだけど本当に大丈夫だろうか?また同じことが起きて『そんなこと言ってましたっけ?』って言われると言葉が出なくなるぞ。

 

「それよりお兄ちゃん、もうちょっとハグさせてください!」

 

俺の注意を聞き終わるとチノは何の迷いもなく抱きついてきた。今のチノを見てると初めて出会った頃の面影は0%だ。随分と甘えん坊になったな。

 

「お兄ちゃんおはよー!」

 

ココアがドアを勢いよく開け部屋に入って来た。しかし俺の部屋には今、俺と俺を抱きしめているチノがいる。この光景を見たココアが文句を言わないわけがなく。

 

「も~~チノちゃんずるい!私も!」

 

「ココアさん来ないでください!お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなんです!」

 

「元は私のお兄ちゃんだよ!いいから離れて!」

 

「そんなの知りません!」

 

こうして本当の兄のように思ってくれると1人っ子の俺にはとても嬉しい。今全力で2人に抱きしめられてちょっと痛くて苦しいけど。もし俺に本当に妹がいたらこんな毎日を送っていたんだろうか?

.......ってそんなこと考えてないで止めないと。

 

「2人とも喧嘩するな。」

 

「だってチノちゃんが離れないんだもん!」

 

「ココアさんが離れないからです!」

 

互いが互いを譲らないといった感じで全然埒が明かないぞ。厳しくしすぎるのは良くないし、かと言って甘やかしすぎるのも良くない。この絶妙なバランスを取るのが本当に難しい。よくこの状況になるのは甘やかしすぎたからなのだろうな。計測器で計ったら甘やかしすぎの方に針が思いっきり傾くこと間違いなしだな。

 

「このまま喧嘩するんだったら、今日1日甘えるのは禁止にするからな。」

 

「「ヤダ!!!!!」」

 

ほとんどズレがなく大声量のハモりだった。そんなに禁止にして欲しくないのか2人とも涙目だった。まあチノは3回経験してるからわかるけど。

 

「おねがい!禁止はイヤ!もう喧嘩しないから!」

 

「そうです!もうあんな思いしたくないんです!」

 

2人は俺の体を揺らしながら頼み込んできた。これ、2人が喧嘩した時に止めるのに使えるかも。

 

「だったらもう喧嘩はしないこと。喧嘩さえしなかったら禁止にはしないから。わかった?」

 

「うん........。」

 

「はい........。」

 

2人ともしゃんとした顔をしてしまった。このままだとなんだかぎこちないというか空気が悪いというか、とにかく元気付けた方がいいなこれは。

 

「じゃあこうしよう。今日1日喧嘩せずにいられたら今日はいっぱい甘えていいぞ。」

 

「ほんと!?」

 

「じゃあ今日はハグしながら寝てもいいんですね!?」

 

2人とも一瞬で元どおりになった。互いに喜び合ってるし良しとするか。ていうかちゃっかりと一緒に寝るのは確定してるんだな。

 

「ほらもうすぐ学校に行く時間だから早く着替えてきな。」

 

「はい!」

 

「さっき言ってたこと忘れないでね!」

 

2人はそのまま部屋を出て更衣室へと向かって行った。朝からハプニングの連続だがこれが日常茶飯事だからすっかり慣れてしまった。もちろん最初は確かに対応に困ったけど。慣れって怖いな。

 

「さてと俺も着替えるか。......あれ?」

 

ベッドから立とうとした瞬間視界が歪み突然眩暈に襲われ膝をついてしまった。急に立ち上がったからだろうか?それにいつもより少し力が入らない。

しかし1分ほどそのままの状態でいると次第に眩暈は治まり、力も戻っていた。

 

「疲れてるのかな俺?」

 

今まで疲れても眠ればいつも通りに戻っていたので俺は睡眠不足だろうとあまり気にせず制服に着替えココアたちと一緒に登校した。

 

 

 

 

 

 

「はぁ......はぁ......」

 

学校に到着し、1限目が始まる10分前になったが体の様子がだんだんおかしくなってきた。体中が熱くて汗が出ているのに尋常じゃないほどの寒気を感じ、震えが止まらない。

 

「皆さーん!席に座ってください!授業を始めますよ!」

 

体の異常に耐えているといつの間にか1限目が始まろうとしていた。とりあえず1限目は耐えて終わったら保健室に行くことに決め授業を受けることにした。

 

「ではまず教科書の47ページを開いてください。今日の数学はこの公式を使っていきます。」

 

しかし授業が始まっても耐えるのに精一杯で全然先生の話が頭に入ってこない。次第に息が荒くなり手の震えは増していき汗の量も増え、頬から顎へ汗が伝い、開いたノートへポタポタと落ちていった。

 

(しっかりしろ俺!)

 

心の中で自分に言い聞かした所で治るはずはなく、かなり無理をしている所為で頭痛までしてきた。

 

(落ち着け。焦ると余計に苦しくなる。)

 

俺はゆっくりと目を閉じ、深く深呼吸をした。気休めにしかならないがほんの少しだけ楽になった。だが時間が経つと再び苦痛が返ってきた。そうなると当然俺は再び苦しむ事となる。俺の席は外の景色が見える窓側の一番後ろの席で、あまり人の目の行き渡らない所だ。平然を装っているからかも知らないが俺の様子に気付く人は1人もいない。時計を見てみると授業が終わるまであと20分ほどだ。あと少しの辛抱だ。授業が終わったらすぐに保健室へ急ごう。

 

「この式の答えを出せたらその答えをこの公式に代入します。」

 

いつものように授業が進んでいく。時計を見るとまだ5分ほどしか経っていない。いつもならあっという間に時間が進んでいくのに苦しい状況だとものすごく時間が遅く感じる。頻繁に時計を見ている所為なのだろうけど早く終わってほしいと思っている俺には時計を見ずにはいられなかった。

 

(まずい。なんだか意識が.........。)

 

気を抜いてしまうと一瞬で気を失ってしまいそうになる。ボーッとしてしまい意識を失いそうになった時にハッと我に返る。何回もそれを繰り返しやがてその間隔が短くなっていく。もう無理だと思ったその時、周りからチャイムの音が響き渡った。

 

「はい!では今日の授業はここで終わります!」

 

号令をかけやっと授業が終わった。これほど時間が長く感じたことはなかった。体はもう限界だ。

 

(早く保健室へ行かないと。)

 

俺は保健室へ急ごうと席を立った瞬間朝の時と同じ眩暈に襲われた。しかも今は体中の熱さ、頭痛、寒気もあり、気を失ってしまうのには充分な状態だった。

俺は視界が歪んだまま倒れ込み、周りから悲鳴や騒ぎの声が聞こえたのが最後に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

「...........っ!!」

 

目を開けると見慣れない天井が見えた。辺りを見てみると手首の辺りには点滴が打たれており、ビーチチェアみたいな腰辺りから30°ほど傾いたベッドに寝かされていることがわかると病院にいるのだとすぐに理解した。壁にかかっている時計を見ると16時を過ぎている。学校が終わった頃かな。

 

「おや?気が付きましたか?」

 

右にある出入り口のドアの方を見ると白衣を着たこの病院の先生らしき人が入ってきた。病院に運ばれるなんて人生で初めてだったのですぐに状況を聞くことにした。

 

「あの、俺なんでここに?」

 

「あなた学校で高熱で倒れたんですよ。それですぐに病院に運ばれたんです。」

 

詳しく聞いてみると俺は1限目の授業が終わった後、俺は倒れたらしい。そこまでは記憶にあるのだがそこから先の記憶がない。先生が言うには39度を超える高熱だったらしく、すぐに救急車で搬送され点滴などを打ち今に至るみたいだ。原因は疲れから出た高熱みたいで、今はもう熱はかなり下がったみたいだが今日一日安静にしているようにとのことだそうだ。

 

「そうだ!この事みんなに言わないと。」

 

「それでしたら大丈夫ですよ。あなたの生徒手帳をお借りしてお電話をしておきましたからもうすぐ来るでしょう。」

 

「そうですか。すみません迷惑をかけてしまって」

 

「お兄ちゃん!!!」

 

突然バタンと勢いよくドアが開く音が響き渡った。見てみると今まで見たことがないくらい血相を変えたココアが入ってきた。

 

「お兄ちゃん大丈夫っ!?タカヒロさんからお兄ちゃんが倒れたって聞いて!」

 

ココアは恐怖に直面したみたいな顔をしている。それほど心配させてしまったみたいだ。俺がしっかりしないといけなかったのに申し訳ないことをしてしまったな。

 

「ああ、まだほんの少し熱はあるけど、あとは安静にしてるだけでいいって先生が言ってた。」

 

「うぅ........よかったぁ.........よかったあああぁぁぁぁぁ!!!」

 

ココアは心の底から安心したみたいに大泣きをしてしまい、そのまま俺の胸に顔を埋めるように抱きついてきた。先生は空気を読んで席を外しますみたいなジェスチャーをして病室を出て、しばらくの間2人だけにしてくれた。

 

「ごめんな心配かけて。」

 

「怖かったぁ!!........お兄ちゃんが........死んじゃうって.........死んじゃうんじゃないかって.......本当に怖かったぁぁ!!」

 

ココアは泣きながらなんとか喋ろうと必死だった。俺は何も言わずに頭を撫でながら抱きしめて何も言わずに聞いていた。

 

「ごめんなさい!」

 

「なんでお前が謝るんだよ。」

 

「だって看護婦さんから.........疲れが原因だって........私.......いつもお兄ちゃんに迷惑ばっかかけて.........ごめんなさい.........ごめんなさい.........ごめんなさい!!!」

 

ココアは抱きしめながらずっとごめんなさいと言い続けている。完全に自分が原因だと思ってしまっている。

 

「お前は何も悪くないよ。体調管理をしっかりしなかった俺が悪いんだ。」

 

「でも...........でも......」

 

「じゃあココアが泣き止むまで俺を抱きしめてくれるか?1人で少し寂しかったからさ。」

 

うん..........うんっ!」

 

俺はココアを泣き止ますための傍から見たら誰でもわかる噓をつき、しばらくこのままでいることにした。俺の胸辺りからはずっと泣き声が聞こえ、静まる気配が全くない。小さい頃は泣いてる所を何度か見たことはあったがこんなに泣くココアを見たのは初めてだ。

 

そして15分ほど経つとようやく落ち着きを取り戻したようで、俺はココアを近くにあった椅子に座らせた。

 

「私、今日はお兄ちゃんのお世話する!」

 

「え?嬉しいけど今日1日安静にしてれば大丈夫だし明日には退院できるから無理しなくてもいいぞ。」

 

「いや!帰ったらお兄ちゃんが心配で不安になっちゃう!だからお願いお世話させて!」

 

ココアは俺の右手をギュッと握り俺の目を見つめてきた。不安そうな悲しそうな顔をしながら。

このまま帰してもココアを不安にさせてしまうだけだろうし、面会時間ギリギリまでいてもらおう。その方がココアも安心すると思うし。

 

「......わかった。じゃあお願いしていいか?」

 

「うん!お兄ちゃんありがとう!」

 

こうしてココアからの世話時間が始まった。ココアは少し待っててほしいと言い残して病室を出て行った。その間何もすることがない俺はココアが戻ってくるまでベッドに横になり、ぼーっと天井を見つめ待つことにした。すると携帯電話からいくつかのメールが届いた。開いて見てみるとリゼ達からのメールだった。大勢で押しかけるのも悪いということでメールを送ってくれたみたいだ。俺は1人1人に返信を終えた直後、突然電話がかかってきた。画面にはチノの名前がありすぐにチノからの電話だとわかり出ることにした。

 

「もしもし?」

 

「お兄ちゃん大丈夫ですか!?今お父さんからお兄ちゃんが学校で倒れて病院へ運ばれたって聞いたんですけど!」

 

突然の超大声の電話で耳が千切れるんじゃないかと思った。すごく耳がキーンってする。

 

「ああ、でももうだいぶ楽になったから今日1日安静にしてれば明日には退院できるから。」

 

「.....ひぐっ......よかったぁ........よかったです.......」

 

電話越しからすすり泣く声が聞こえる。心配の泣き声ではなく安心の泣き声だ。みんなには本当に申し訳ないことをしてしまった。もうこんな心配はかけないように心掛けようと思った俺はそのままチノに話を続けた。

 

「心配かけてごめんな。」

 

「もう.....大丈夫なんですか?」

 

「ああ、もう熱は下がったし今日1日安静にしてれば明日には退院できるよ。」

 

「そうですか。本当に良かったです。」

 

心底安心したような声だった。なんだか今のチノの姿が想像できる。

 

「じゃあお兄ちゃん。帰ってきたらいっぱい、いっぱい甘えさせてください!私を心配させた罰です。絶対に受けてください!」

 

なんかちょっと可愛い罰の受けさせ方だな。心配させてしまったしここは喜んで受けよう。

 

「もちろん!だからいい子で待っててな。」

 

「はいっ!」

 

電話を終えた俺は携帯電話を閉じ、再びぼーっと天井を見つめ待つことにした。それにしてももう20分くらい経つのにココアは何をしてるんだ?時計は17時を回っている。

少し心配になった俺はココアに電話をかけようとした時。

 

「お兄ちゃんお待たせ!」

 

元気よくココアが病室に入って来た。手には買ってきた物であろう物が入った袋を持っている。

 

「お帰り。遅かったな。」

 

「うん、病院にある店が急な事情で閉まってたから近くのスーパーに行ってたんだ!」

 

そう言いながらココアは買ってきたものを机に出していった。プリンやゼリー、果物、インスタントのスープがあった。買ってきたものを出し終えたココアは椅子に座りものすごく褒めて欲しそうな目をしている。

 

「ありがとなココア。」

 

「えへへ~。どういたしまして。」

 

俺は感謝を込めて頭を撫でると気持ちが伝わったのか安心した顔で微笑み返したきた。そしてココアは何故かスプーンを取り出し、買ってきたゼリーの蓋を開けゼリーを1掬いすると俺の口に差し出してきた。

 

「はいお兄ちゃん、あ~ん。」

 

「え!?いやいいよ!気持ちは嬉しいけど自分で食べれるから!」

 

「も~!さっきお世話するって言ったでしょ?それに病人は人の言うことを聞くものだよ!」

 

ココアはぷくっと頬を膨らませてきた。確かに世話を頼んだのは俺だし、それにまだほんの少し熱がある所為かココアが大きく見える。ここは素直に従おう。

 

「わかった。わかったからもう怒るな。」

 

「じゃあはい!あ~ん♪」

 

俺はゆっくりと口を開けスプーンに乗っているゼリーをパクっと食べた。恥ずかしすぎて顔を上げれない俺は俯いたままゼリーを飲み込んだ。まさかこんなことされるなんて。

 

「どう?美味しい?」

 

「...........恥ずかしすぎてわからない。」

 

「あはは!お兄ちゃんこういうの慣れてないもんね!」

 

言い返したいが紛れもない事実だから何も言えない。人に食べさせられるなんて俺の記憶の中じゃ小さい時にモカにされたのが最後だぞ。この歳になって食べさせられるなんて恥ずかしくてどうにかなりそうだ。

 

「はいお兄ちゃん、もう1回口開けて。」

 

ココアは再びスプーンでゼリーを掬い俺の口に差し出してきた。

 

「え?まさかこれ全部食べさせる気か!?」

 

「今日は私がお兄ちゃんをお世話するんだから当然だよ。プリンも果物もちゃんと食べさせてあげるからね!」

 

「...........はい。」

 

どうやら1口だけではなかったみたいだ。この後俺は全部食べ終わるまでこの繰り返しだった。プリンも掬って食べさせられ果物も食べやすいサイズに切って食べさせられ、さすがにスープは自分で飲ませてもらえたが、人生の中で1番恥ずかしい時間だった。そんな恥ずかしさに埋め尽くされた俺とは逆にココアは嬉しさに埋め尽くされていた。この病室に誰もいなかったのが幸いだったけど、ココアが満足してくれたならそれでいい。全部を食べ終えた頃にはもう19時半を過ぎており、面会時間もそろそろ終わりだ。

 

「ココア、そろそろ面会時間終わりだからもう帰りな。」

 

「うんそうだね。じゃあお兄ちゃん今日1日安静にしててね。」

 

「ああ。今日は本当にありがとな。」

 

「えへへ、どういたしまして。また明日ね!」

 

「ああ、気を付けてな。」

 

ココアはそのまま病室を出ていき、ラビットハウスへ帰って行った。

 

「.........いつも思うけど1人になると寂しくなるな。」

 

ココアが帰ったことでシーンと物音1つ無い空間となった。恥ずかしかったけど、1人になるともう少しだけいて欲しかったなと思ってしまう。ココアがいなくなると特にだ。そう思うとココアはそばにいてくれるだけで場が和むのだということを実感する。ココアからたまに、いつも勉強教えてくれて助かってると言ってくれるけど、俺が思っている以上に俺もココアに色々と助けられてるのかもしれない。

俺は明日退院したら改めてココアにお礼をしようと決め、何もすることがなくなったのでゆっくりと目を閉じ眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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どくんっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「まただ.....。」

 

病院からの帰り道、私は時々起こる変なドキドキになっていた。いつからだっけ?お兄ちゃんを見たり考えたりするとこんな気持ちになるようになったのは........。

たしか、前に仕事が終わった時に熱で倒れてしまって、その時にお兄ちゃんが必死に私を看病してくれた時からだったような。

 

「何なんだろうこれ。」

 

あの日以来、こんなドキドキに悩まされる日がある。お兄ちゃんに抱きしめてくれたり、頭を撫でてくれたり、勉強を頑張って褒めてくれたり、一緒に寝てくれた時にそうなる。それにこんな気持ちとは別にヤキモチみたいな気持ちになることも時々ある。特にチノちゃんがお兄ちゃんに甘えてるところを見ると嫌な気持ちになる。もちろんチノちゃんが嫌いなわけがないけど、お兄ちゃんに甘えないで欲しい、私だけが甘えれるお兄ちゃんがいいって思う時がある。

 

「私.........どうかしてるのかな。」

 

そんなことを考え始めると私はもしかしたら良くない方へ進んでいってるんじゃないかと不安になる。だって大好きなチノちゃんがお兄ちゃんに甘えてるところを見ると嫌な気持ちになるなんて絶対におかしい。こんなことチノちゃんやお兄ちゃんに相談できないし、チヤちゃん達に相談して変に思われたら嫌だしどうしたらいいんだろう。

 

「........ううん、考えてもわからないんじゃ仕方ないよね。早く帰ろう。」

 

私は気持ちを切り替えるために頭を振り、少し早歩きで帰ることにした。本当にわかりたくなった時は遠慮せずに聞くことに決めて。

 

 

 

「........そうだ!帰ったら少しだけ勉強しようかな。そしたら明日お兄ちゃんにいっぱい褒めてもらおうっと♪」

 

 

To be continued




今回はここで終わります。
コロナ騒動の所為でマスクが全然手に入らないです。



........とほほ。

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