百合の少女は、燕が生きる未来を作る   作:しぃ君

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 とじみこのアニメを見て。興奮した翌日に書いたものなのでガバガバ部分があります。

 本作品は基本的にアニメの内容に沿って進んで行きますが、カットが多くなると思いますのでアニメを視聴することを推奨します!

 て言うか、みんなアニメ見よう!

 行き当たりばったりなこともありますので、何卒ご容赦ください。


胎動編
一話「百合と燕」


『刀使』

 正式名は特別祭祀機動隊であり、警察組織に属する。

 組織の内外ともに刀使と呼ばれるのが一般的である。

 御刀を所持する神薙ぎの巫女であり、女性にしか務まらない。自らが寄り代となって御刀の神力を引き出し、荒魂を斬って鎮める。

 彼女たちのほとんどは成人前の学生で、伍箇伝を中心とする専門の学校に通って刀使としての技術を学ぶ。

 

 

 若いほど御刀との相性が良い。

 どの御刀を持つのかは相性によって決まり、自分の御刀が変わることもある。

 他人の御刀を使った場合、神力を引き出す効率が悪くなる。

 

 

『御刀』

 特殊な力をもった日本刀。

 神聖な希少金属「珠鋼(たまはがね)」から作られる。

 刀使が持つことにより、珠鋼に秘められた隠世と呼ばれる異世界から様々な物理現象を引き出す力を介して、様々な超常の力を引き出し使役できる。

 荒魂に対抗できる唯一の武器でもある。御刀の原料には神性を帯びた砂鉄が必要となる。

 この砂鉄は日本でしか発見されていない。

 

 

 この物語は、運命を変えるために奔走する、愚かにも優しい百合の少女のお話し。

 

 -----------

 

 ここは、ある霊園。

 そこをふら付いた足取りで歩く少女。

 少女の名前は夢神百合(ゆめがみゆり)

 手入れをしていないのか、紺色の髪はボサツキ、肌はカサカサ。

 目元にも隈が浮き出ている。

 

 

 その他にも、綺麗だったであろう藍色の目も充血の所為で霞んで見えてしまう。

 身体つきも年頃の少女とは違いメリハリがあるものだ。

 元はさぞ可愛らしい少女だったのだろう。

 服装は旧折神家親衛隊の物。

 腕の立つ刀使なのは間違いない。

 

 

 やがて、百合はあるお墓の前で足を止めた。

 墓石には「(つばくろ)家」と書かれている。

 持っていた花束を置き、線香を上げる。

 手早く墓参りを済ませた百合は墓の裏手に回った。

 その後は、ゆっくりと墓石に背中を預けるように腰を下ろす。

 

 

 こうしていれば、彼女の温もりを感じられる気がしたから。

 だが、そんなことはなくて、感じたのはただただ冷たい石の感触だけだった。

 空を仰ぐ。

 雲一つない晴天だ。

 

 

「結芽……」

 

 

 結芽、この墓の下に眠ってる少女。

 起きることのない、想い人。

 頬を涙が伝う。

 少し、昔のことを思い出したのだ。

 

 

 結芽の最期を。

 

 -----------

 

 走る、走る、走る。

 親友である結芽に、部屋に縛り付けられて足止めされてしまった為、百合は一足遅く現場に訪れていた。

 折神邸の中、構造や場所は把握している。

 しかし、百合は紫や襲撃者の下に向かうのではなく、結芽の下に向かっていた。

 体中を焦燥感が支配していく。

 

 

 焦っても何も意味はないのだが、どうしようもないほどの感情が体に駆け巡る。

 焦燥感に次ぐ恐怖。

 

 

(大丈夫……結芽はきっと……)

 

 

 彼女の希望的観測は、木の下に横たわる結芽の姿を見て呆気なく砕け散った。

 

 

「結芽‼」

 

「……ゆ……り……? ……どうして…ここに…?」

 

「結芽が心配だからに決まってるじゃない‼待ってて今すぐ病院に――」

 

「……止めて……」

 

 

 自分を抱え病院に運ぼうとした百合を、結芽は制止させた。

 百合は、結芽の言葉が信じられないような顔をしている。

 彼女がそんな顔をするのは当たり前だろう、なんせ今の言葉は自分の命を諦めてるのと同意義なのだから。

 

 

「な、何言ってるの! こんな時に冗談は止めてよ!」

 

 

 親衛隊の服は口から出た血で紅く滲んでいて、とても大丈夫には見えない。

 幼くして御刀に認められたため神童と謳われていたが、病を患って以降は入院生活が続いた。

 回復も見込めず両親から見放され、ただ死を待つだけの日々を送る抜け殻状態となっていた時に紫からノロのアンプルを与えられる。

 それにより精気を取り戻した彼女は親衛隊入りを果たした。

 根本的な病は治ってはおらず、無理に体を動かすと病状が悪化してしまう。

 

 

 ノロ*1を入れて無理矢理延命していた体に限界が来た証拠だ。

 彼女が親衛隊に入ったのも、結芽が心配だったから。

 けれど百合も百合で、幼くして御刀に認められたため神童だった。

 だが、夢神家はもう何代も刀使を排出しておらず、百合のことを化け物と蔑んだ。

 一定の暮らしはしていたが家族の誰にも干渉されず、認められるために剣術を学び始めた。

 

 

 夢神家の昔の資料を読み漁り、一人で新たなる夢神流剣術を作る。

 あらゆる剣術の長所だけを抜き取り、短所を排除した。

 その末に完成したのが、新夢神流剣術。

 短所と言う短所は殆ど無く、強いて言えば要求されるスタミナが多いと言うだけだ。

 それでも、彼女が家族から認められることは終ぞなかった。

 

 

 そんな中、二人は出会ったのだ。

 片や神童と呼ばれて称賛される結芽、片や化け物と呼ばれて蔑まられる百合。

 対のような関係。

 決して交わることのない二人。

 結芽がこんなことさえ言わなかったら。

 

 

「ねぇ、試合してよ! あなたも強いんでしょ♪」

 

「……いいよ」

 

 

 その試合の結果は引き分け。

 結芽は相当に悔しがっていたが、試合が終わった後にこう言った。

 

 

「ねぇねぇ名前は? 私は燕結芽」

 

「夢神百合」

 

「ゆりか~、さっきの試合凄かったね! 私引き分けになったの始めて」

 

「…………」

 

「ゆりって凄いんだね!」

 

 

 その言葉を聞いて、涙が止まらなかったのを今でも覚えている。

 初めて自分を認めてくれた人。

 それが、百合にとっての結芽。

 トントン拍子で仲良くなって、病気の事を知った。

 毎日お見舞いに行ったが、結芽のお見舞いで百合が他のお見舞客に会うことはなかった。

 

 

 これが、過去の話。

 時は経ち、今に至る。

 先程も言ったが、ノロは延命の一環に過ぎないのだ。

 現に百合は親衛隊に入ってはいるが、ノロは体内に入れていない。

 

 

「冗談じゃないよ……ゆりだったら、分かるでしょ……?」

 

 

 分かっている、そんなこと。

 だからこそ、聞かなければいけない。

 

 

「……どうして……そんなこと言うの……」

 

「私は……多分だけど。もう少しで死んじゃうんだ……自分の身体だもん、なんとなく感じるの……」

 

「そっか……」

 

「もうおしまいかぁ…まだ全然足りないのに…もっとすごい私を…みんなに焼き付けたいのに…なんにもいらないから…覚えていてくれてれば…それでいいんだよ…」

 

 

 結芽の瞳から涙が零れていく。

 百合も耐えられなくなって、涙を流す。

 ポタポタと、涙が結芽の服に落ちていく。

 

 

「私は覚えてる! 絶対に忘れたりなんかしない! だから……だから……お願いだから生きてよ!」

 

「…………」

 

「またみんなで花見に行こうよ! 夏は花火して、秋は紅葉狩りに行って、冬は雪合戦とか……。もっと……もっと……結芽と一緒に居たいよ……」

 

「……ゆり、最期にお願い聞いてくれる……」

 

「何?」

 

 

 聞き逃してはいけない、この言葉を悲しみの所為で聞き逃したら一生後悔するから。

 

 

「……私が死んだら……私の身体を処置して。ノロを入れた私が……こんなこと言っちゃダメなのは分かってるよ。……でも、荒魂になって……真希おねーさんや寿々花おねーさん、夜見おねーさんやゆりを……襲ったりしたくないから」

 

「……うん、任せて」

 

「ありがと……最期にゆりに会えて良かった」

 

「……苦しいでしょ、もう休んでいいから」

 

「……ゆ……り……大……す――」

 

 

 結芽の瞳から光が消えていく。

 最期の言葉は、続きを聞かなくても分かった。

 手首を掴み脈を測る。

 続いて、口に耳を当てて呼吸を聞く。

 

 

「脈……なし。……呼吸もなし」

 

 

 燕結芽と言う少女の人生は、十二年と言う短過ぎる時間で幕を閉じた。

 結芽がこの世を去ってから、数分後。

 真希と寿々花がやって来た。

 

 

「百合、結芽は……?」

 

「…………」

 

 

 真希の質問に、百合はただ首を横に振る。

 真希が顔を伏せ、寿々花も同様に顔を顰めた。

 

 

「……そうですの……百合さんそこを退いて下さいまし。あなたには辛いでしょう? 荒魂になる前に、私が処置します」

 

「荒魂になれば……結芽は……」

 

 

 百合は真希の発した言葉を聞いて、今にも絞め殺しそうな勢いで掴み掛かる。

 彼女の顔は、色々な感情がごちゃ混ぜになったようなもの。

 泣きながら、怒りをまき散らした。

 

 

「ふざけないで下さい! 結芽は最期までみなさんの事を心配して、私に処置を任せたんです! ……それなのに、それなのに……!」

 

「……済まない、ボクは冷静じゃなかったみたいだ」

 

「百合さん……」

 

 

 ようやく収まったのか、百合は結芽の下に戻っていく。

 

 

「…先輩方は先に行ってください。私はここで処置を」

 

「ああ、結芽を任せた」

 

「……ごめんなさい」

 

「別に先輩が謝ることじゃないのに……本当に優しいなぁ」

 

 

 頬を伝う涙を、服の袖で拭い。

 処置を実行する。

 終わらせた後は、結芽の御刀である『ニッカリ青江』を抱き寄せた。

 

 

「うぅぅぅあぁぁぁぁぁぁーーー‼‼」

 

 

 世界を呪った、何もしない神を憎み恨んだ。

 何も出来なかった自分が、殺したくて殺したくてしょうがなかった。

 これが、結芽の最期だ。

 

 -----------

 

 今思い出しても、本当に辛くて涙が止まらない。

 だから、百合は願った。

 

 

「ねぇ、お願いだよ神様。憎んだことも、恨んだことも、全部全部謝るから。……結芽を返してよ……」

 

 

 届かない願いを口に出し、叶わない幻想を祈る。

 泣き疲れたのか、意識が深く深く落ちていく。

 

 

(叶うなら……このまま……結芽の所に……)

 

 

 神の気まぐれか、その願いは違う意味で叶えられることになる。

 

 -----------

 

「……起き……ゆ……ないと……くすぐる……」

 

 

 何故か、結芽の声が聞こえた。

 気のせいだろうと思い、最近あまり寝られなかった分を取り返すように二度寝に入ろうとした。

 しかし、脇腹に感じるむず痒い感覚が彼女の目を覚まさせる。

 

 

「も~、一体何なのよ。寝ている人の身体をくすぐるなんて非常識……よ……」

 

「どうしたのゆり? 私の顔に何かついてる?」

 

 

 見間違える筈がない。

 綺麗な桜色の髪、碧く澄んだ瞳、童顔で小悪魔の様な表情。

 自分の目の前に居るのが、燕結芽だと分かるのに少し時間が掛かった。

 あまりにも突然過ぎて、脳の処理が追いつかなかったのだ。

 

 

「……結芽、今日ってなんかあったかな」

 

「ゆり、なんか変だよ? 今日は御前試合の当日で、紫様の警護でしょ?」

 

「あはは、そうだったね! すぐ着替えるよ」

 

「早くしてよね~、折角早起きしたのに私まで遅刻しちゃうよ」

 

 

 軽口を言いながら寝間着を脱ぎ、親衛隊の制服に着替える。

 伍箇伝のどの制服とも違う、選ばれた物だけが着ることを許される服。

 百合も折神紫親衛隊第五席に座っている。

 

 

(……過去に戻った? 記憶を保持したまま? ……なにがなんだか分からないけど……これは好機(チャンス)!)

 

 

「絶対に変えてみせる」

 

 

 理不尽な運命を。

 この身を懸けて。

 

 

*1
荒魂の正体ともいうべき物質。珠鋼を精製する際に砂鉄から出る不純物で、これがたくさん集まり結合することで荒魂が生まれる。




 主人公紹介

名前:夢神 百合
容姿:紺色の髪に、藍色の瞳。12歳にしてはそこそこメリハリのある体付きをしている。
所属:折神紫親衛隊(第五席)
年齢:12歳
誕生日:1月10日
身長:150cm
血液型:B型
好きなもの・こと:結芽・剣術
御刀:宗三左文字・篭手切江(荒魂相手には二本使うが、基本的に宗三左文字の一刀流)
流派:新夢神流


 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

結芽の誕生日は……

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