百合の少女は、燕が生きる未来を作る   作:しぃ君

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 お待たせ!


四話「気が付かなかった(前回)と、気が付いた(今回)

 朝五時。鶏が鳴くにもまだ少し早い時間。

 百合は一緒に寝ていた結芽を起こさないようにベットから起き上がる。

 本当の百合の寝床は結芽のベットの上にあり、小さい梯子を使わなければいけない。

 二段ベットなのだ。

 二人の部屋は十二畳程で、二人部屋にしては少し手狭でこうでもしないと自由なスペースが取れない。

 

 

 他にも机や洋服タンス、テレビや冷蔵庫なども置いてある。

 寝間着を脱いだ百合は、脱いだ物を洗濯カゴに投げ込む。

 その後は、タンスから白い無地のシャツと紺色のハーフパンツを取り出し着替える。

 使えに掛けてあった御刀を取り、剣道場に向かう。

 この折神邸は、刀剣類管理局本部や鎌府女学院*1も兼ねているためそれ相応に広い。

 

 

 それこそ、東京ドームn個分何て言うフレーズが出てくるレベル。

 職員と兼用の大浴場や食堂、駐在する刀使や提携する機動隊の隊員達のトレーニングの為の施設などもあるのだ。

 それ以外にも、本部の指令室や紫の執務室。

 本殿白州や御前試合の予選会場。

 至れり尽くせりなのだ。

 

 

 その中に剣道場があると言うだけ。

 刀使が居るのだから、当たり前と言えば当たり前だが……。

 数分程廊下を歩き、剣道場を目指していく。

 廊下で出会う人に一々挨拶する彼女の姿は、真面目と上品さを併せ持つお嬢様に等しい。

 剣道場に着いてからは、入る前に礼をする。

 

 

 常識も良い所なのだが、稀にこれを怠る物が居る……結芽のことだ。

 軽く準備運動を済ませて、御刀を抜き写シを張る。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 ゆっくり息を吐き、写シの感覚を確かめていく。

 御刀を振り、一つ一つの動作に異常がないか確認を終えると型の練習に入る。

 丁寧さを保ちながら速さも忘れず、ただ振るだけでも本気で取り組む。

 よく言うだろう? 

 練習を本気で出来ない者に、実践や試合で本気は出せないと。

 

 

 彼女自身もそれを身をもって知っているので、このように一切手を抜かない。

 どれほどの時間が過ぎただろうか。

 太陽の輝きは、起きた時とは比べ物にならなくなっていることから、一時間以上の時が経ったことが分かる。

 壁に立て掛けてある時計を確認すると、時刻は六時半。

 朝の鍛錬に真剣になり過ぎたらしい、百合は急いで剣道場を後にする。

 

 

 勿論、礼は忘れていない。

 

 -----------

 

 大浴場のシャワーで素早く汗を流し、制服に着替えた彼女は親友を起こす為に自室に戻る。

 予想通り、結芽はまだ起きていない為、実力行使で起こしにいく。

 

 

「結~芽~、起きなさい。早くしないと遅刻しますよ!」

 

「えっ!? もうそんな時間なの!? 何だ起こしくれなかったのゆり~!」

 

「ごめん、嘘。時計見て見な」

 

「……ピッタリ七時……ゆ~り~」

 

 

 結芽から恨みがましい視線が送られてくるが、特に気にすることはなく結芽に制服を渡す。

 

 

「早く着替えちゃって、朝ごはん食べに行くから」

 

「む~~! はいはい!」

 

 

 むくれた顔はしながらも、言うことは聞くところを見るとあまり怒ってはいないことが分かる。

 百合は結芽が着替えている間に、備え付けの化粧台の前に座り髪を梳かす。

 出来るならシャワーを上がってすぐにやりたかったのだが、結芽のこともあって後回しにしていたのだ。

 少し時間を掛けながらも髪を梳かし、着替え終わった結芽の髪も梳かしてサイドテールに纏める。

 

 

「はい! 出来たよ」

 

「ありがと」

 

 

 そんな朝特有の年頃の女子のようなやり取りを交わしたら、部屋を出て食堂に向かう。

 食堂にも数分で着き、顔なじみのおばさんに料理を頼む。

 

 

「モーニングのBセットで。ドリンクはミルクティーでお願いします」

 

「私はCセットのドリンクは牛乳!」

 

「あいよ。百合ちゃんがBのミルクティーで結芽ちゃんCセットの牛乳ね。少し待っててね~」

 

 

 食堂には基本的にメニューが三つあり、それを選ぶ形式だ。

 朝に限ると、Aはご飯・お味噌汁・鮭の塩焼き・切り干し大根・漬け物。

 Bはサンドイッチ(日替わり)・ヨーグルト・サラダ。

 Cはパンケーキ・ヨーグルト・サラダ。

 因みにだが、Cは結芽が食べたいがためだけに作られたもので親衛隊の面々以外でCセットの存在を知る者は居ない。

 

 

 焼きたてなのか、パンケーキのバターやシロップの匂いがしてくる。

 これだけで食欲をそそられるが、百合の料理は違うものなので欲しくなる心を必死で我慢した。

 だが、結芽にはバレバレだったようで揶揄われるように言われてしまう。

 

 

「少しあげようか?」

 

「貰っても良い?」

 

「う~ん、おやつの時ににイチゴ大福食べていいならいいよ」

 

「……それでいいならいいよ」

 

 

 不満そうな言い方だが、顔は満面の笑みなので面白い光景だ。

 そんな二人の所に、真希と寿々花がやって来た。

 

 

「おはようございます先輩方」

 

「おっはよー! 真希おねーさんに寿々花おねーさん」

 

「おはよう二人とも、まぁボクらはあまり寝ていないけどね」

 

「そうですわね、この朝食の後も仕事がありますわ」

 

「大変そうですね……そうだ! 私に手伝えることはないですか?」

 

 

 真希と寿々花は顔を見合わせて笑う。

 百合は何か可笑しなことを言ってしまったのか、自分の言葉を思い出すが特に可笑しい所は見当たらなう。

 

 

「あ、あの、お二人ともどうしたんですか?」

 

「い、いえ、先程廊下で話していたことが面白いくらいに当たってしまったので……」

 

「そ、そうなんだよ。本当に百合は真面目だね」

 

 

 少し笑いながらも、二人は返事を返す。

 辺りを見渡して見たが他に食堂を利用している者は見当たらない。

 

 

(職員の皆さん、徹夜で作業してるんだ……コーヒーでも作って持ってって上げようかな……)

 

 

 朝食であるハムエッグサンドを頬張りながら、今後の行動を考えていく。

 

 

「そうだ、百合にいい仕事がある」

 

「そうでしたわ、すっかり忘れていましたが……報告書の作成をお願いします」

 

「分かりました! ついでに、指令室に居る皆さんにコーヒーでも持って行きますね」

 

「しょうがないから、私も手伝ってあげようかな~」

 

「ありがとね結芽」

 

「結芽さんにも仕事を割り振りたい所ですが、生憎雑務は殆どを百合さんがこなしてしまうのであまりないんですよね」

 

 

 結芽にとって不穏な一言が聞こえたが、今回は悪運が強かったらしい。

 結芽と百合が雑談をしていると、真希と寿々花は先に食べ終わってしまったのか居なくなってしまった。

 居なくなってからは、パンケーキを食べさせてもらったりしながら、二人でゆったりと朝の時間を楽しんだ。

 

 -----------

 

 給湯室、基本的には御茶菓子やティーバック、インスタントコーヒーがある。

 少し広いキッチンと大きめの冷蔵庫もあるので、百合は時たまここでお菓子を作ったり料理をしている。

 ある程度の物の場所は分かっているので、家庭用ティーサーバーを二個取り出す。

 本来ならお茶を入れるべき部分にインスタントコーヒーを適量ぶち込み砂糖も少々、その工程を二度行う。

 後は、IHで沸かしておいたやかんを取り例の場所にお湯を注ぐ。

 

 

 勿論、一個では足りないのでこちらも二個やかんを使い万事解決。

 最後に蓋を元に戻し、思いっきり振る。

 これで完成だ。

 

 

「はぁ……疲れるなぁ」

 

「そのやり方止めればいいんじゃない?」

 

「それは無理。だって断然こっちの方が速いし効率良いもん。味は気にならないレベルだし、誤差だよ誤差」

 

 

 ……彼女は天才なのかはたまた天災なのか、時たまこういう行動をしてしまうのだ。

 これを知ってる者は結芽だけである。

 結芽はため息を吐きながら、百合から預かった紙コップとトレー二枚を持って先に部屋を出る。

 それを追いかけるように、百合も部屋を出ていった。

 

 

 給湯室から五分程、指令室に着いた二人。

 百合と結芽は適当な所に家庭用ティーサーバーと紙コップ&トレーを置き、次々とコーヒーを注いでいく。

 ある程度の数になったら職員の方々に配っていく。

 

 

「お疲れ様です。お仕事引き続き頑張ってください」

 

「お仕事頑張ってね~」

 

 

 言葉は違えど、二人は出来るだけ疲れていそうな人の所から順々にコーヒーを渡していった。

 その時に、いろはと江麻に渡すことになった百合は些か緊張しているようだ。

 

「あ、あの、コーヒーをどうぞ」

 

「ありがとう夢神さん」

 

「ありがとな夢神ちゃん、助かるわ」

 

「いえいえ」

 

 

 出来るだけ会話を少なく終わらせたが、百合は少し疲れてしまったようだった。

 逆に結芽は、職員の方からお菓子を貰って喜んでいる。

 色々と疑問に感じる部分もあるが、それを気にすることはなく彼女は親衛隊の面々にコーヒーを渡す。

 夜見が居ないのを見ると、恐らくだが紫に付いているのだろう。

 結局、その後は二人とも大人しく自室に戻り、百合は報告書作成の作業で結芽はゲームを始めることになった。

 

 -----------

 

 あれから四時間ほど、丁度お昼になった辺り。

 

 

「結芽~、この報告書持って行っといて」

 

「ん~、分かった」

 

 

 出来上がった報告書を結芽に持って行ってもらうようお願いし、百合は椅子の背もたれに寄りかかりながら背筋を伸ばす。

 流石の彼女も、四時間も机に座りっぱなしは辛いのだろう。

 そっと息を吐いた。

 時刻は一二時半。

 中々に良い時間だ。

 

 

 一休みするために椅子から立ち上がろうとした瞬間、部屋のドアが三回規則良く叩かれる。

 一拍置いて、聞き慣れた声が響いた。

 

 

「入ってもよろしいですか?」

 

「夜見先輩? ええ、どうぞ」

 

「失礼します」

 

 

 入って来たのは、夜見。

 今日はまだ顔を見ていなかったのだが、いきなり何の用だろう。

 百合はそんな事を考えながら、夜見に用件を聞いた。

 

 

「何かありましたか?」

 

「どうしたの夜見おねーさん?」

 

「実は数分前に荒魂の出現確認がされました。急遽向かうことになったのですが、如何せん割ける人員が足りなくなってしまい。お二人に出撃命令が」

 

「私はともかく、結芽は良いんですか?」

 

「紫様からは問題ないと仰せつかっております。中々の強敵で討伐に困難してるようです」

 

 

 数分前に発見されたのに、もう対応している辺り。

 優秀な刀使が増えたと思う反面、それでも倒すことが出来ないと思うと微妙な気持ちになる。

 そんな気持ちは押し殺し、百合と結芽はその任務に就くことになった。

 

 -----------

 

 支度を済ませて即出発。

 荒魂が現れてもう十分以上が経過している。

 これ以上暴れられると被害が増えてしまう為、百合と結芽の二人はヘリで現場に向かう。

 すると、案外現場は近かったのかあっと言う間に着くことが出来た。

 現場は国道の大きな道路で、荒魂の傍には何台もの壊れた車が散乱していた。

 

 

 現場に着いた瞬間、そのままの勢いでヘリから飛び降りる。

 

 

「結芽! 私が陽動するからその内に」

 

「まっかせて♪」

 

 

 暇つぶしが出来たことが嬉しいのか、怖いくらいの笑顔で答える親友に、百合は恐怖を覚えた。

 

 

(……何時かどうにかしてこの子の癖直さないと)

 

 

 近くに居た刀使たちは既に撤退済み。

 今回の荒魂は、ムカデを巨大化させたような見た目で体長は二〇メートルほどもある。

 中々に巨大だが、そんなのどうだっていい。

 百合は宗三左文字と篭手切江の二振りを腰に固定してある鞘から抜刀し、迅移で陽動を開始していく。

 結芽も自分の御刀であるニッカリ青江を既に抜刀している。

 

 

 八幡力を使い、頭だと思われる部分にキックを喰らわせて自分自身に注意を向けさせ、結芽から気を逸らさせた。

 意地でも自分から斬るつもりはないらしい。

 前足の部分で薙ぎ払うような攻撃を迅移を使いながら躱し、時には受け流す。

 数度攻撃を受けた辺りになってようやく、百合も反撃を開始した。

 何回も見た薙ぎ払いの攻撃を紙一重で避けて、前足に左切り上げ喰らわす。

 

 

 自分の前足がいきなりなくなったことにイラついたムカデ荒魂は、体重で押し潰そうとしてくるが……遅い

 

 

「弱すぎ~!」

 

 

 結芽の声が響くと共に、ムカデ荒魂は輪切りにされてしまった。

 あまりにも早すぎる斬撃に驚く者も居るだろうが、結芽はこれでも本気を出していない。

 しかも、本来ならこのクラスの荒魂になるとS装備*2を使って討伐をするのだが……

 彼女たちには関係ないようで、二人はハイタッチを交わす。

 

 

「お疲れ」

 

「ゆりもね」

 

 

 結局この後は、本部にノロの回収を頼み任務を終えた。

 

 -----------

 

 任務を終えて帰還後は、諸々の報告を紫に行い自室待機となった。

 一応、昼食も済ませたため手持無沙汰だ。

 今は二人してベットでゲーム中である。

 

 

「あ~! ゆりズルい! そんなとこにショートカットの場所あるなんて気づかなかった~!」

 

「なんで私よりやり込んでるのに知らないの?」

 

 

 こんなことで若干結芽を煽りつつ、百合はゲームを楽しむ中。

 突然、結芽が咳をした。

 普通の人にとって咳は少し風邪気味なのかな? 

 という程度の甘い認識で済むが、結芽の場合はそうはいかない。

 

 

(前回)気付かない振りして現実逃避してた……けど……。(今回)は違う)

 

 

「ねぇ結芽? 大丈夫?」

 

「うん、平気平気!」

 

「……じゃあさ、左手見せて?」

 

「な、何で?」

 

「いいから」

 

 

 無理矢理左手を引き寄せて握っていた手を開かせる。

 さっき咳が出た時に抑えていたのは左手だった。

 百合がそれを見逃すはずはない。

 そして、開いた手の平には……

 

 

「これって……何で黙ってたの?」

 

「……心配掛けたくなくて、ゆりが悲しむと思ったから……」

 

 

 目を伏せて俯きがながら答える結芽の手の平には……血が付いていた。

 手で押さえてるところを見ると、既に何度か経験したことがあるのだろう。

 

 

「黙ってて、私が喜ぶと思ったら大間違いなんだからね!」

 

「ごめんなさい」

 

 

 そっと抱きしめる。

 壊れないように優しく、離さないように強く。

 零れた涙を、見せないように。

 

 

「お願いだから、もう隠し事はしないで」

 

「……うん」

 

 

 会話はそこで終わり、その後十分間抱きしめ合っていた。

 

 -----------

 

 夕食後、大浴場にて。

 体や髪を洗い終えた二人はゆっくりと湯船に浸かっていた。

 結芽は百合の股の間に収まる形で座り。

 百合はそっと、結芽を後ろから抱きしめる。

 

 

 最近何かと抱きしめてしまうのは何故なのか? 

 彼女には分からなかった。

 けれど、百合は不意に親友に対し質問を投げかける。

 

 

「結芽は…私が死んじゃったらどう思う?」

 

「ゆりが死んだら? ……考えたことなかったな~……。まぁ、もしゆりが死んだ原因が人の所為だったら……その人に対して怒るかな? 病気とかだったら、悲しくてずっと泣いてると思う」

 

 

 この質問は、自分の誓いに対して背く可能性があるものだ。

 なにせ、彼女はその身を懸けて結芽を救うと誓った。

 それは、自分の命さえ投げ捨てるものでもある。

 この子を泣かせたくないと思う心と、この子を生かしたい心。

 相反するわけでもないのに、ぶつかり合う。

 

 

 もし、今回の大荒魂タギツヒメの討伐で自分が死んだら……きっと彼女は自分を恨みタギツヒメを憎むだろう。

 その時、百合の目的の一つである結芽の生きる未来は守られるが、結芽が幸せに生きていける未来は守られるか分からない。

 逆に、今回の大荒魂タギツヒメの討伐で自分が全力を出さず結芽が死ねば、神様がくれたであろうチャンスを無駄にし自分の希望さえ失くすことになる。

 自分が全力を出しても生き残り、大荒魂タギツヒメも倒し、結芽も救う。

 この無理難題とも言える三つの条件を突破しないと、結芽が幸せに生きる未来は守れない。

 

 

 上手く思考が纏まらない。

 そんなこと本当に出来るのか? 

 諦めた方が良いんじゃないか? 

 今を楽しんで生きれば、それで良いのではないか? 

 自問自答が続く百合。

 

 

 そんな親友を見かねた結芽は、先程と同じ質問を返す。

 

「じゃあさ、ゆり。私が死んだらどう思う?」

 

「…………結芽は絶対に死なせない。結芽が居ない世界で生きていくのは、私にはきっと耐えられないから……」

 

「ふ~ん、そっか」

 

「そうなの」

 

 

 難しいことを考えるのは止めよう。

 今はただ全力で、この子が生きていける活路を見出そう。

 そう決意する百合だった。

 

 

 これと、ほぼ同時刻に可奈美と姫和の潜伏しているマンションが沙耶香に襲われた。

 

 ----------- 

 

 翌日、百合は指令室にて待機していた。

 そして、

 

 

「――横須賀基地から問い合わせが、南伊豆の山中に対してS装備の射出があったかと」

 

S装備(ストームアーマー)だと?」

 

「こちらが映像です」

 

 

 正面にあるモニターには確かにS装備の射出用コンテナが写っていた。

 しかも二機分。

 

 

「確かにS装備(ストームアーマー)の射出用コンテナのようだ」

 

「なんの報告も受けていない気がしますが」

 

「しかも、ありえないですわね。折神家管轄外のS装備(ストームアーマー)が存在するなんて……」

 

「折神家と管理局以外あれを開発・運用できる組織などいない。あるとすれば……」

 

舞草(もくさ)…ですか?」

 

 

 舞草、特祭対内部の反乱分子とも言われる存在。

 未だに、組織の正確な目的を把握はしていない。

 

 

「……『舞草』が噂通りの特祭対内部の反乱分子なら有り得なくわない」

 

「紫様はもしかして、十条姫和たちが彼らと接触すると踏んで泳がせていたのではないでしょうか?」

 

「その可能性は高いでしょうね」

 

 

 寿々花は癖なのかカールした毛先を指で弄りながら会話を続ける。

 未来通りなら、ここで親衛隊の百合たちに出動命令が下る筈だ。

 

 

「ならば、ここで一気にカタをつける事も考えられるが……」

 

「獅童さんに此花さん、それに百合さん」

 

「…夜見?」

 

「紫様より、我々親衛隊に出動命令が出ました。ご準備お願いします」

 

「――いよいよ…ですわね」

 

「あぁ」

 

「結芽は居残りですか?」

 

「えぇ、彼女が出ると不必要な血が流れますので……」

 

 

 ここまでは未来通り、ここからだ。

 ここから少しづつ未来を変えていく。

 可奈美たちと接触したことで、フラグは立っている。

 

 

(やるっきゃない!)

 

 

 百合は小ぶりのショルダーバックと二振りの御刀を持って、出撃待機する。

 バックの中には、結芽のカルテが入っていた。

*1
所在地は神奈川県で、関東全域と東日本の太平洋側での荒魂事件を担当している。特別刀剣類管理局の本部がある折神家と併設されており、本部との連携をとることも多い。事件発生率の高い首都圏の担当だけに、装備も最新のものが多く配備されている。御刀とノロに関わる研究所を有しており、様々な実験を行っている。エリート校で実践経験も豊富である。

*2
正式名称「ストームアーマー」。特別祭祀機動隊に配備された荒魂殲滅用の強襲装備。折神家の管理の元、DARPA(国防高等研究計画局)の技術協力を得て開発され、装着することで身体能力及び防御力が飛躍的に向上するが、稼働時間が短いという最大の欠点を持つため長時間の戦闘には不向き。




 次回もお楽しみに!

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結芽の誕生日は……

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