百合の少女は、燕が生きる未来を作る   作:しぃ君

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 少し短いですがご容赦を。
 

 少し、イマイチな感じがするのでもしかしたら書き直すかもしれません。
 その時は、ごめんなさい


六話「緋色の燕、百合は萎んでいく」

 先程の報告が信じられない。

 百合が謀反し敵に寝返ったなど、きっと何かの間違いだと思った。

 百合が自分の傍から離れるはずない、絶対に勘違いに決まっている。

 そう頭の中で決めつける結芽。

 そうでもしないと、少女の心は耐えられなかった。

 

 

 事実、少女の心には既に無視できない程のヒビが入っていた。

 

 

「そ、そんなの、嘘に決まってるよ! きっとゆりにも何か理由があって……」

 

「そうでしょうね? 何か理由があったんでしょうね。例えば……老い先短い友人に愛想が尽きて、新しい友人の所に行ったとか? 

 

「ち、違う! ゆりはそんなことしない! そんなこと……」

 

 

 思い出す過去の記憶。

 自分を愛してくれた両親は、自分を認めてくれた大人は、次々と消えていった。

 その中で、彼女だけは欠かさず病院に見舞いに来てくれたのだ。

 学校も休み、結芽のカルテ片手に色々な病院を駆けまわっていた。

 その時、彼女が言った言葉を今でも覚えている。

 

 

「ごめんね結芽。私、友達なのに何にもできてないや……」

 

「別に良いよ…傍に居てくれればそれで」

 

「うん、ずっと傍に居るよ。約束する!」

 

「アハハ、ゆりはホントに真面目だね」

 

 

 約束……。

 

 

(ゆり? ……何でなの? ……どうしてなの? 私との約束を…破るの?)

 

 

 そんな筈はないと、心が否定して。

 なら何故連絡の一つもしてくれないのかと、脳が問いかける。

 信じたい、でもトラウマの所為で疑ってしまう。

 混ざり合う感情。

 心のヒビが広がっていく。

 

 

「違う……ゆりは……ゆりは……」

 

「あなたみたいな欠陥品と居るのが苦痛なんじゃない?」

 

「欠陥……品……」

 

「雪那ちゃん!?」

 

「雪那‼言い過ぎよ!」

 

 

 いろはと江麻が結芽を庇うが、結芽は今それどころじゃない。

 怒り、悲しみ、憎しみ、苦しみ、混ざり合う感情が涙なって外に溢れる。

 居なくなったことが悲しくて苦しくて。

 裏切られたことで激怒し憎悪する。

 

 

(もう…信じられないよ…)

 

 

 心のどこかで、結芽は思っていた。

 もしかしたら、百合は自分のことを疎ましい存在だと思ってるんじゃないかと。

 もうそろそろ頃合いなのだろう。

 

 

 少女の心は、百合への好意を怒りと憎しみよってに歪めてしまう。

 夜見を苦しめて、私との約束も奪った。

 

 

(約束を破るユリなんて要らない…おねーさんたちを傷つけるユリなんて要らない…。あなたを殺して、昔のゆりに戻せばいいんだ! 待っててねユリ、あなたをきっとゆりに戻してあげる)

 

 

 少女の想いは狂気に変わる。

 いや、これでは少し誤解が生じる。

 変わったのではなく、変えたのだ。

 そうすることで、彼女は心を守った。

 

 

 心などとっくに壊れてしまったというのに……。

 

 

「もう大丈夫だよ」

 

 

 そう言って、指令室を出ていく。

 その顔は先程とは打って変わって、とてもいい笑顔だ。

 けれど、少女の碧かった瞳は薄く緋色に輝いていた。

 

 -----------

 

 百合へのフェニクティアを説明を終えた後に、フリードマンは自分が舞草として行動している経緯を語る。

 

 曰く、戦後、日本はアメリカと共同でS装備の開発をしていたが、なかなかうまくいかなかった。

 しかし、20年前の「相模湾岸大災厄」という事件以降、折神紫がノロの一括管理を行ったことで技術レベルが急激に上昇し、紫がもたらした技術によりS装備が完成した。

 それ以前は、ノロは各地の神社に分散する形で管理されていたとのこと。

 しかし、紫のもたらした急激な技術革新は、科学者の眼から見るとあり得ないものだった。

 折神紫は人ならざる力を持っているのではないか、と疑いの目を向けたフリードマンは同調するものを集めて舞草を組織し、姫和の母、十条篝にも協力を求め、紫への反逆の準備を進めていた。

 

 

 そして、いよいよ紫への反逆の準備が整ったまさにその時、姫和が勝手に紫に暗殺を仕掛けて失敗し、舞草の綿密な準備もすべて水の泡となってしまった。

 

 

「ひよよんのお陰で水の泡になってしまったのデース」

 

「私は私の果たすべきことをしたまでだ」

 

「姫和ちゃん」

 

「……話はここらへんで終わりにしよう。後は舞草の本部に着いてからだ。百合くんは少し席を外してもらって良いかな? もう眠いだろうし」

 

「すいません、先程から眠気が酷くて。先にお休みさせてもらいます」

 

 

 百合が出ていってから数分。

 少し間を空けてから、フリードマンは話始めた。

 

 

「みんな、百合くんから目を離さないでほしい」

 

「まだ信用してないってことか?」

 

「ノンノン、心配なんだよ彼女のことが」

 

「心配?」

 

 

 可奈美は頭の上に疑問符が浮かんだような顔で、姫和も同じような顔をしている。

 エレンと薫にねねも何のことか分かっていない様子だ。

 そんな彼女たちを見て、フリードマンは答え合わせに入る。

 

 

「彼女は恐らく、ここにいる刀使の中で一番強いだろう。でも、精神……心の方はどうかな?」

 

「心……精神的な面で見るということか」

 

「そう。例を挙げるなら、頭があまり良くない人や運動が出来ない人は比較的にあまり精神が強くない。自分を卑下してしまうことが多くあるからね。逆に頭の良い人や運動が出来る人は、向上心や自信が溢れている為に精神が強い。だけど、頭があまり良くない人や運動が出来ない人でもポジティブで精神が強い人は居るし、頭が良い人や運動が出来る人でもネガティブで精神が弱い人が居る」

 

「ええ~っと、つまりそれって?」

 

 

 可奈美はまだ分からないのか、更に疑問符が増えている。

 フリードマンは苦笑しながらも、最後に残していた回答を言った。

 

 

「僕が思うに、百合くんは強いが人一倍心が弱い」

 

「でも、百合ちゃん凄く善い子であんまりそんな所想像できない……」

 

「善い子ちゃんだからこそだろ? 想像できないように隠してんだよ」

 

 

 この翌日に、結芽に襲われた沙耶香と舞衣に合流し舞草の本部に行くことになった。

 少しづつ見えてくる真実と、歪んでいく世界。

 運命は刻一刻と形を変えていた。

 




 次回もお楽しみに!

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結芽の誕生日は……

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