百合の少女は、燕が生きる未来を作る   作:しぃ君

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 二日ぶりですね!
 昨日、ぼーっとしながら、この作品の一話ごとのサブタイトル見てたら、以外にも二話に一回百合と燕って入れてたんですよね。

 
 狙ってやった訳じゃないんですけど、偶然って凄いなぁ~って思いました。
 失踪系投稿者しぃの独り言です。


 どうか、お気になさらず本編へ


十話「犠牲にするものはなにか」

 潜水艦での雰囲気はあまり良い物ではない。

 それどころか、最悪のものに変わりつつあった。

 

 

「長船と美濃関が…」

 

「平城も警察によって閉鎖されたようです」

 

「うちの学長は?」

 

 

 累は無言で首を横に振った。

 何があったのかは分からないが、芋づる式に舞草と関連していた所が潰されている。

 まるで、今までは掌の上で転がしていただけだと言わんばかりの行動。

 薫も薫で、「クソパワハラ上司」やら「非人道的脳筋上司」など言ってるわりには案外にも心配らしい。

 

 

「孝子さんたちどうなったんだろう」

 

 

 舞衣が言った言葉に、百合は変わり果てた親友の姿を思い出した。

 もう結芽ではないと分かっていても、姿は彼女そのもの。

 あまり気持ちの整理は着いていない……、けれどやらなくてはならないことがある。

 

 

「各地に潜伏中の舞草のメンバーも皆、折神家の監視が強化されて動きが取れなくなっているようだ。一気に窮地に追い込まれたね。だいぶ前から仕組んでいたんだろう」

 

「どうして里のことが知られていたのでしょう?」

 

「舞草内に内通者が居た痕跡はないし、あの里の情報は地図やネット、衛星からもリアルタイムでデリートし続けているからね。知られていたと言うより、何らかの方法で見つけていたんだろう。もしかすると、我々の今の位置も筒抜けかもしれないな」

 

「大荒魂は力を増しているようですね」

 

 

 生産性のない話だ。

 今は、こんなことを話し合うより未来を見据えて戦うほかないと言うのに。

 確かに、どうやって、どうして、知られたのかは重要だ。

 だが、それ以上に今後後手に回った自分たちがどう動くかの方が重要であることは確実。

 

 

「問題は邪魔者が居なくなった奴らが、次に何をするつもりなのか…だ」

 

「まさか、二〇年前のような?」

 

「それで済むかな? 今や折神家に集められたノロの総量は、あの時以上の筈だよ。まさにステイルメンと、打つ手なしだね」

 

 

 淀む空気の中、目に闘志を燃やす少女は居た。

 諦めきれない想いがあって、捨てられない友情があって……どうしようもない罪悪感があった。

 だからこそ、少女は――

 

 

 -----------

 

 刀剣類管理局本部、指令室にて。

 真希と寿々花は現状の整理をしていた。

 敵対して舞草はほぼ壊滅に追い込んだ紫の手腕。

 それに、少しの薄気味悪ささえ覚えながら。

 

 

「舞草と思しき者は全て掌握しました。これで事態は収束に向かいますわ。あれほど我々を悩ませた組織をほぼ一夜にして壊滅に追い込むなんて、えげつないほど鮮やかな手腕ですわね」

 

「現場に向かった機動隊員たちは、刀使の写シ対策の為の武器まで持って行っていたらしい」

 

「対刀使用の武器を態々開発していたなんて……、舞草対策だとしても少しの容赦もありませんわね」

 

「紫様は、十条姫和の起こした御前試合の一件からここまでずっと布石を打っていたんだろうか?」

 

「それ以前からという感じですわね。私たちの敗北も布石の一つ、だったのかもしれませんわね」

 

「たった一つ読めていなかったとしたら、百合さんの謀反でしょうか?」

 

 

 二人の会話に割って入ったのは、雑務を終わらせて大量の資料を運び終わった後の夜見だった。

 夜見の言葉に、二人が俯く。

 二人とも、百合が謀反を起こした理由は何となしに分かっている。

 仕事熱心で真面目、それに加えて律儀な面もある彼女。

 簡単な理由で恩のある紫に歯向かったりはしない、と言うことくらい付き合いの長い三人は分かっている。

 

 

 けれど、それを受け止められているのは夜見……いいや、一人も居ないだろう。

 

 

「結芽はいつ戻ってくる?」

 

 

 少しでも雰囲気を変えようと、話題を逸らす。

 

 

「綾小路の刀使たちとの引継ぎが終わればすぐに」

 

「一人で舞草の拠点を壊滅か……。手練れの刀使も随分居たと聞いていたが…。やはり……」

 

 

 何か思いやる表情を見せた後、ここ最近姿を見ない紫の事を聞く。

 

 

「紫様は?」

 

「祭殿でお務めです。ずっとお籠りになられたままですが……」

 

 

 重苦しい雰囲気は続いている。

 どこもかしこも、暗雲がたちこめていた。

 

 -----------

 

 潜水艦に備え付けられている簡易ベットに腰かけながら、七人の少女たちは無言で時を過ごしていた。

 その無言の静寂を破ったのは――舞衣だった。

 

 

「私、戦いたい……だってあんなの酷すぎる」

 

「舞衣ちゃん」

 

 

 舞衣が思い出すのは潜水艦の前で一人戦っていた百合の姿。

 罪悪感に潰されそうになりながらも、自分のやるべきことの為に戦った自分より小さい友達。

 それがどうしようもなく嫌だった。

 体は全くもって傷ついてなどいない……けど、心が泣いていた気がしたから。

 

 

「十条さん。私、あなたに戦う理由がないって言われてずっと考えてた。自分がどうしたいのかって。私は、可奈美ちゃんに追いつきたくて、沙耶香ちゃんを放っておけなくて、ここまで来た。ただぞれだけで、状況がどうなっているのかも、紫様のことも実感が無くて」

 

「舞衣……」

 

 

 心配する沙耶香の言葉が嬉しい。

 それでも、やらなくちゃいけないことがある気がした。

 

 

「でも、聡美さんや孝子さん。他にもお世話になった沢山の舞草の人が戦う姿を目の当たりにして、私より小さい百合ちゃんが心で泣きながら戦う姿を見て、改めて思ったの。これ以上、目の前の人たちが傷つくのは嫌だって。私の力では、全ての人を助けることは出来ないかもしれないけど。せめて、見える範囲の人たちだけでも助けたい。それが私の戦う理由だって」

 

 

 真っ直ぐな瞳だった。

 折れない心がある訳じゃなくて、小さな勇気が少しの後悔が彼女を前へと向かせる原動力となって、今戦う理由が生まれる。

 それに次ぐように、沙耶香も立ち上がった。

 

 

「私も」

 

「沙耶香ちゃん…」

 

「私にはそれしか出来ないから…」

 

「俺も里のみんなの敵を討つって決めた。このまま黙って居られるか」

 

「ちょっと待ってください! 残った刀使は私たちだけなんですよ? そもそもこの状態でどうやって」

 

「この艦を降ろしてもらって、孝子さんたちの無事を確かめます」

 

「それから鎌倉に戻る」

 

 

 エレンの意見は最もな正論。

 七人、数だけ見れば絶望的だ。

 並み居る刀使を倒し、親衛隊を倒し、大荒魂タギツヒメを祓う。

 文字にしてみれば、その難しさが簡単に分かるだろう。

 作戦は無謀も良い所で、勝ち目は薄い。

 

 

「敵は一人じゃありませんヨ? 大荒魂に辿り着くためにはきっと沢山の障害がありマス」

 

「十条さんは、一人でその障害を掻い潜り紫様に一太刀入れました」

 

「そこのペッタン女に出来て、俺たちに出来ない筈はない」

 

「ねー!」

 

「……エレン先輩の意見は正しいですよ。無茶無謀も良い所です。だけど、みなさんがそう言ってくれると信じていました。私も全力で戦います」

 

 

 百合のその言葉に、エレンは観念したかのようにため息を突き腰を上げた。

 

 

「やれやれデス。分かりました、六人だけでは頼りないですから、私も一緒に行きますヨ」

 

「ねね~~!」

 

「…善いのか?」

 

 

 姫和の言葉に全員が全員頷いた。

 言葉は違えど心は同じ、彼女たち七人は既に仲間で――友達だから。

 間を開くことなく、お腹のなった沙耶香の為に潜水艦内にある非常食を食べに行こうとした瞬間。

 七人の体が残像を生んだかのようにブレ始めた。

 

 

「なんだこれは!」

 

 

 それは、日本中で刀使や元刀使の者達だけに訪れた異変。

 明らかに普通ではない、異常で不可思議な現象。 

 この真相を確かめるべく、可奈美や百合たちはフリードマン達の居る場所に向かった。

 朱音や累も例外ではなく、その現象は起こっている。 

 

 

「これはなんデスカ?!」

 

「どうした…」

 

 

 その疑問にフリードマンが答える前に、現象は止んだ。

 だが、フリードマンはしっかりとそれを見た。

 彼の中には、自ずと答えが浮かんでくる。

 

 

「グランパは何ともなっていませんでしたね?」

 

「ああ」

 

「フリードマンさん、何か…知っているんですか?」

 

「この現象は刀使達にしか起こらない。以前、同じ現象が確認されたことがある。二〇年前のことだ。恐らく隠世でなにか大きな変化が起こったのだろう。そして、大荒魂が出現した」

 

 

 先程の現象は、波にも近いものだった。

 それを彼は知っていて、その後のことも覚えている。

 

 

「これは国家レベルの災害です。一刻の猶予もありません。すぐにでも人々に知らせなければ」

 

「どうするんですか?」

 

「横須賀に向かいます。報道陣を集められますか?」

 

「なるほど、マスコミを使うのか。今あなたが姿を表せば、国中の注目を集めるでしょうね」

 

「そこで私が全ての真実を語ります。折神家が隠してきたこと…そして、タギツヒメの事」

 

 

 一歩間違えれば、死ぬ可能性すらある。

 何せ、あっちからすればテロリストとして暗躍していた者たちが突然現れたのだ。

 拘束のために、手段を択ばなくなる可能性は十分にある。

 

 

「それが明らかになれば、もはやこの国だけでは済む問題ではなくなるかもしれないな。だが、折神紫がそれを許すとは思えん。最悪の場合もありえ――」

 

「あなたが死ぬことは有り得ません」

 

「えっ?」

 

「……私の言葉に嘘も偽りもないし、冗談でもありません」

 

 

 ここでは言えない、もし話して未来を変えてしまったら……

 ここまで頑張ったことや、掛けてきた迷惑が無駄になってしまう。

 

 

「ならば横須賀からは、私たちは別行動を取ります」

 

「何を…するつもり」

 

「折神紫を討てば全てが終わる」

 

「攻撃は最大の防御とも言いマス」

 

「そんな無茶な…」

 

「あなたたち」

 

「その無茶を可能にする手段は……あります」

 

 

 百合は話した奥伝である『悪鬼羅刹』のことを。

 そのデメリットも条件も含めて。

 

 

「結芽の御刀であるニッカリ青江があれば、私一人でもタギツヒメを討つことが可能です」

 

「ちょっと待って! 百合ちゃん、今の本気で言ってるの?!」

 

 

 可奈美が止めに入る。

 自分の命と勝利を天秤に掛けるような行為。

 朱音より……いいや、それ以上の危険がある。

 

 

「私が戦う理由は全てあの子の為です。あの子が生きていける未来を作る、それを為すためだったら私は――この身を懸けても構わない」

 

 

 それは幼い少女の覚悟。

 その覚悟は、幼い少女がするには重すぎて、今にも潰れそうなもの。

 

 

「大好きでした。大切でした。失いたくなくて、どこかに行って欲しくなくて、あの子が笑える未来が欲しくて、これまでずっと足掻いてきました。だから――」

 

 

 その言葉を続けようとした瞬間、可奈美の平手打ちが百合に当たる。

 御刀で斬られるよりも痛い、そう思うほどのものだった。

 

 

「づぅ…」

 

「痛いでしょ? 私も痛いよ、心がすっごく痛い。ねぇ? 百合ちゃんにとって私たちってどんな存在? ……私は友達だって思ってるよ?」

 

「私…も、私も友達だって思ってます」

 

「だったら、約束して死なないって」

 

「それは……」

 

「いいから! そうしないと、百合ちゃんは連れてけない」

 

「…約束します」

 

「うん」

 

 

 嬉しい言葉だった。

 優しい言葉だった。

 親衛隊の仲間や紫、後は聖以外には言われたことのないような温かいものだった。

 だから、彼女は少しだけ誓いを変えたんだ。

 思い出したんだ。

 

 

 自分が生きていないと、あの子が笑えないことに。

 自分が死んだら、あの子が泣いてしまうことに。

 運命の分岐点にて、彼女は最善の道を掴み取った。

 希望への道はそう遠くはない。

 

 -----------

 

 少女は夢を見ていた。

 幼き日の夢。

 強くなりたくて、必死に資料を漁っては鍛錬を繰り返していた時期。

 そんな中で一つの本が目に入った「力を付けるには」と言う、簡潔で分かり易い本のタイトル。

 エッセイなのかなんなのか? 

 

 

 その時の少女には分からないが、すぐさま本を手に取って読み始めた。

 この時すでに、百合の国語の知識は高校生レベルにまで及んでいた。

 なんせ、古い資料は本当に古く、古典ででてくるような表現や文章も少なからずあったためだ。

 今はそんなことはどうでもいいだろう。

 目次の中に気になるものが見つかった。

 

 

 本で言う起承転結の結の部分。

 所謂締めの話、その項目題名は「力を付けるための近道」。

 雑に扱わない程度に、少女は急いでページを捲っていく。

 あまり厚い本ではない為に、数秒もしない内に目的のページに辿り着いた。

 書いてある内容はこうだった。

 

力を付ける為の近道。

それは、何かを犠牲にすることだ。

人間は弱い、何かを犠牲にしなければ力を付けて強くなることなど不可能。

だからこそ、何かを犠牲にしなければいけない。

しかし、それをするにあたって忘れてはいけないこと、犯してはいけない掟がある

 

 

 引き込まれていくように、少女は読み込んでいく。

 その先が気になって。

 

家族を、親族を、恋人を、友達を、仲間を、他人を犠牲にしてはならない。

 勿論動物や植物も。

 命あるものを犠牲にするな、犠牲にして良いのは己の時間だけだ。

 友達と仲間と遊ぶこと、それは時間を犠牲にして友情を育んでいる。

 家族や親族、それに加えて恋人と触れ合うことで犠牲にする時間は愛を育んでいる。

 他人と居る時間の犠牲さえも、何かを生み出して育んでいる

 

 

 人間は犠牲失くして成長は出来ない。

 友達と遊ぶことは自分と友達の時間を犠牲にしている。

 家族や親族、恋人と過ごし触れす時間は、自分と家族、親族や恋人の時間を犠牲にしている。

 意味は違うが、消費社会の小さな縮図だ。

 

 

どの時間を犠牲にするか? 

 それは私が決める事ではない、これを読んでいるあなたたちが決める事だ。

 結局、犠牲が一番少なくなる方法なんてない。

 あらゆる方法の中で、何を選んでも結果は平等。

 等しく何かを犠牲にしなければいけない。

 良く考え悩むと良い、君の考えを貶す人も否定する人もいるだろうが聞かなても別に構わない。

 自分の心に正直に、そうすればきっと君の望んだ末来が手に入る筈だ

 

 

 それでページは終わっていた。

 可奈美の言葉を思い出した、聞かなくても良かったのだあの言葉を。

 だけど、この本は命を犠牲にするなと言っていて……

 混乱はあるが、自分が考えを変えた切っ掛けは……自分の心がそうしたいと思ったからだと気付いた。

 百合は少しだけ微笑んで、この夢を見せてくれたであろう存在に感謝した。

 

 

「ありがとう、お母さん」

 

 

 その言葉を最後に目が覚めた。

 

 -----------

 

 可奈美が起きて数秒後、百合が起きると同時に、累が横須賀への到着を伝えに来た。

 みんなが御刀を持ち、気持ちを纏める中で可奈美が終わった後の話をし始めた。

 

 

「ねぇ、大荒魂を倒したら、みんなで美味しいものを食べに行かない?」

 

「ねね~~」

 

「可奈美先輩は死亡フラグっぽいの立てるの好きなの?」

 

『い、今、敬語が……!?』

 

 

 あのエレンの語尾の変化が無くなるレベルで、全員が驚いていた。

 全員が声を揃えた所為で、驚かせた本人の百合も驚く。

 

 

「な、何? 何事? 私なんか変なこと言った?」

 

「それデス!」

 

「それだよ!」

 

「ねねーー!」

 

 

 ねねにまで指摘されるレベルで変らしい。

 ため息を吐きながらも、口調を元に戻し話を進めさせた。

 

 

「ま、まぁ、気を取り直して。さっきの話、そういうことなら私が御馳走してあげる」

 

「オオー! 累っぺお腹太いデ~ス」

 

「わざと間違ってるだろ」

 

「やったー! 姫和ちゃん、もちろんデザートはチョコミントアイスだよね」

 

「人をチョコミントがあれば良いみたいに言うな」

 

「コース料理は確定なのか…」

 

 

 士気が着々と上がっていく中……最期に累が言葉を振り絞った。

 

 

「みんな、無事に戻ってきてね? 美味しいお店屋さん探しておくから」

 

 

 声を揃えて返事をする。

 今の百合の心中はどうなのか、分かる者など居ない。

 だけど、表情で分かる。

 あれは何もかも諦めていない顔だと。

 

 

「十条さん?」

 

「お前が全体の指揮を執ってくれ。お前の指示があればきっと折神紫の下に辿り着ける」

 

「え…」

 

「お前にはその力がある。孝子先輩たちも言っていただろう」

 

「十条さん」

 

「姫和で良い。舞衣、後ろは任せたぞ」

 

「うん! 姫和ちゃん!」

 

 

 二人が笑い合うのを、可奈美と沙耶香は無言で見守っていた。

 他の者も同様に。

 

 -----------

 

 朱音と演説の効果はあり、多くの者が横須賀港に集中した。

 その隙を突き、S装備の射出用コンテナを使い全員を飛ばす。

 作戦は見事に成功。

 だが、S装備が一人分足りず百合が着ないことを志願した。

 理由は明快、結芽(ユメ)との勝負に余計な物は使いたくなかったから。

 

 

 可奈美のコンテナに無理矢理入り込んだ百合は先に外に出て様子を伺う。

 前回と同じなら、ここに結芽(ユメ)が来るはずだ。

 辺りを確認して少しばかり確認し、ある程度の安全が確認できたタイミングでみんなを呼ぶ――筈だった。

 言葉を発しようとした瞬間、感じたことのある悪寒と共にそれはやって来た。

 

 

「ユリーーー!!」

 

「―っ!?」

 

 

 前回と同じく、二本の御刀をクロスして防ぐ。

 だが、前回の攻撃よりも圧倒的に重く速かった。

 可笑しい、通常時の結芽を遥に超える力を最初の一撃から感じ取った。

 それからの行動は早かった。

 

 

「みなさん! 急いで下さい! この子は――ユメは私が相手をします。だから早く!」

 

「うん、百合ちゃんの行動を無駄にしないで! 可奈美ちゃんと姫和ちゃんを先頭に横を突っ切って」

 

 

 可奈美と姫和がユメを警戒しつつ、右側を通り抜ける。

 けれど、ユメはなんの反応も示さずただ百合を見つめ続ける。

 

 

「追わないんだ」

 

「うん。ユリを殺して、ゆりを助けなきゃいけないから」

 

「そっか……。結芽に二本目を使うのは……前回を合わせて二回目だね」

 

 

 いつも通り喋ってるように見せても、警戒は怠らない。

 今ここに、怪物(天才)狂人(天才)の最悪の戦いが幕を開けようとしていた。




 次回予告 十一話「ゆりとユリ、結芽とユメ」
 お楽しみに!

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結芽の誕生日は……

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