みらねこさん☆10
えみなさん☆9
高評価ありがとうございます!
百合が起きた場所はだだっ広い真っ白な空間だった。
何もないのか?
そう思い辺りを見渡すと、何故か地面に御刀が刺さっていた。
ふと気が付くと、腰に差していた御刀がいつもの二振りに戻っていることに気付く。
ここは何処なのか?
地獄にして小綺麗過ぎて、天国と言うには殺風景すぎる。
そんな空間だった。
死後の世界……その言葉が何となく心に深く突き刺さった。
自分は……死んだのだろうか?
それとも、まだ微かに息があるのだろうか?
そんなあやふやな問いに答える者は居らず、ここが境目に見えた。
死後の世界の手前、生に近いからこそ御刀がある。
死と生の境界線。
取りあえず、何もすることはないので何となしに近くにあった御刀を見つめる。
よく見ると、千鳥だと言うことが分かった。
それ以外にも、小鳥丸や孫六兼元、妙法村正に祢々切丸、越前康継等々。
何故か一本づつ等間隔で地面に刺さっている。
奥の方に刺さっている御刀は良く見えない為に判別できない。
だが、何故か不思議と奥にある御刀が何かも分かった。
刺さっている御刀は百合に縁のある者が持ち主の者ばかり。
舞草の人たちの御刀もあることからそれが伺える。
百合は試しに、一番近くにあった可奈美の千鳥に触った。
その時、走馬燈のように、これまでの可奈美との思い出が頭に浮かんできた。
百合は急いで、他の御刀にも触っていく。
何となく、この場所の意味が分かった。
この場所は思い出を巡る場所……これ辿っていけばきっと……
「在った……ニッカリ青江」
最後に現れた御刀はニッカリ青江。
ニッカリ青江の先には桜色の扉があって、その色合いは結芽を彷彿とさせるものだった。
ゆっくりと、覚悟するように目の前の御刀を触った。
思い出が頭に浮かんでは沈む。
あまりにも多すぎて脳が追いつけない。
だけど、百合がそれを見逃すことはなかった。
見逃すことなど有り得なかった。
全てを見終えた百合は、その扉のドアノブを握り捻って開ける。
扉を潜る前に、この
死してなお、自分のことを気に掛ける
「ありがとう、お母さん」
そうして、白い世界は崩壊していった。
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その病室に居るのは二人だけ。
大荒魂・タギツヒメ討伐から一ヶ月目を覚まさない夢神百合と、その親友である燕結芽。
結芽は今日を起こった面白いことを百合に話す。
夜見と寿々花はノロの摘出の為にある施設に居て見舞いに来れず逆に結芽が見舞いに行っているし、真希は時々現れるが百合の顔を見てすぐに消えてしまう。
そんな結芽の退屈を紛らわせてくれるのは百合とのお喋りと、可奈美たちとの立ち合いだった。
「――でねでね! 新しくイチゴ大福ネコの冒険って言うアプリがスマホで配信されたの! 昨日の夜中からずっ~とやってたんだよ! 協力プレイも出来るから、ゆりも一緒にやろうね!」
明るく振る舞っているが、胸が痛いのは隠せない。
……フェニクティアを使い、一命を取りとめたは良い。
しかし、体は既に癒えているにも関わらず百合は起きない。
泣きそうになるのを必死に我慢して、また話を再開した。
「それでね、このイチゴ大福ネコの冒険は――」
「へぇ~、そんなの出たんだ。私のスマホにも入れといてよ」
「分かってるって! そんなこともあろうかと、もうゆりのスマホに………嘘……ナースコール‼‼」
結芽は百合が起きたのに驚きながらも、急いでナースコールした。
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翌日、百合の病室には何人かの見舞客が集まっていた。
可奈美たちに加えて、現刀剣類管理局本部長を臨時で務めている紗南も来ていた。
「取り敢えず良かったよ。あの戦いで大怪我したのはお前だけだったからな、冷や冷やしたよこんな歳で聖先輩の娘を死なせたらあの世で散々扱かれそうだし」
「あはは、そうですか。それで、あの後何があったんですか?」
「そのことか、待ってろ資料も見せるから」
そう言って紙の資料を見せながら、紗南が今の被害やこの国の状況を事細かに話し始めた。
可奈美や百合たちによって倒された大荒魂は、隠世に逃れるために自らの一部を切り離し、空高く打ち上げた。
荒魂は高高度で飛び散り、関東一円に降り注いだ。
世間一般には折神家の貯蔵施設で起こったノロの大量漏洩・漏出事故と報告されており、刀剣類管理局や刀使たちへの風当たりが強くなるきっかけとなっている。
「……何となく状況は分かりました。真庭本部長が言いたいことも」
「やれる時間は二週間。その間に以前と同じかそれ以上になって戦線に復帰してもらいたい。因みに燕の方は十日前から戦線に参加している。しばらくの間お前たちを遠征に行かせることはないし、お前たちを引き離したりはしない。どうだ?」
「二週間でしたよね? その任務お受けします」
「ちょっ! ゆり! いくらなんでも無理だよ! 真庭のオバサンも意地悪しないで!」
「大丈夫だよ結芽」
優しく結芽を撫でながら、窓から空を見上げる。
晴れた空。
太陽は雲に隠れることなく、この世界を照らし続けている。
この世界は奇跡の世界。
結芽が笑って生きていける世界なのだから。
「私は
結芽が笑って生きていける世界で、みんなが生きていける世界。
それを守りたい。
一番と二番の差が短くなったからこその言葉で、一番が変わっていない言葉でもあった。
そう百合は、作ることが出来たのだ。
「
その言葉を誰が言ったのか?
分かる者は居なかったが、良い表現だと思ったことは確かだった。
作った未来を守るために、百合の少女はまた走り出す。
次回からは何話か日常系の話を挟んでから波瀾編に入るつもりです!
まだまだ終わりませんので、お楽しみに!
誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!
感想もお待ちしております!
p.s.
作者のしぃは頭が悪悪なので、分かりやすい伏線を多々使用しています。
と言うか、伏線にも満たないナニカを使っていたりします!
結芽の誕生日は……
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