百合の少女は、燕が生きる未来を作る   作:しぃ君

44 / 76
 今回のお話は大分意味不明な所があります。
 私の文章力ではこれが限界ですので、頑張って読み解いて頂けると幸いです。

 本編をどうぞ!


二十一話「堕ちていく百合、燕は無知のまま」

 タキリヒメの防衛に失敗し、早くも一週間が経っていた。

 任務と言えば通常の荒魂退治のみ。

 可奈美たちには焦りが出てきていた。

 それを吐き出すかのように、食堂で話しているのを百合たち親衛隊は見つける。

 あまり宜しくない雰囲気を見兼ねた真希が、会話の中に入っていった。

 

 

「居場所さえ分かれば…」

 

「切り掛るか? あの時のように?」

 

 

 タギツヒメの居場所。

 それさえ分かれば、彼女たちは何時でも飛び出していくだろう。

 それがどれ程危険で愚かしい行為か、真希は身をもって知っていた。

 

 

「当然だ。タギツヒメを野放しには出来ない」

 

「気持ちだけで何とか出来ると思っているのか? 浅はかだな…」

 

「なっ!?」

 

 

 止めるにも言い方があるだろうに、真希の言い方は煽るようであまりいいものでは無い。

 百合の顔色はあまり良くない。

 百合からしたら、親衛隊と可奈美たちには仲良くしてもらいたいのだ。

 椅子を立って、怒りを露わにする姫和を百合と舞衣が宥める。

 

 

「姫和ちゃん!」

「姫和先輩! …真希先輩も言い方を考えて下さい。こうなるのは分かっているでしょう?」

 

「…半年前は紫様が肉体の自由を奪われながらも、内側からタギツヒメの力を抑えてくれていた。だが、今は違う。タギツヒメは紫様と言う枷から解き放たれた。君たち六人、いや…ボクたち親衛隊を合わせて十一人で掛かったとしても…」

 

 

 真希も真希で思うところはあるのか、言葉が止まる。

 そんな真希を正すのは寿々花の役目だ。

 

 

「あら、そういう誰かさんも、一人でタギツヒメを斬ろうとしてたのではなかったかしら?」

 

「どんな人か見てみたいな〜、真希おねーさん?」

 

「ああそうさ。あの時は、刺し違えてでもタギツヒメを切ろうとしていた。けど君に頬を打たれて、百合や結芽に抱きつかれて目が覚めた」

 

「…結構ですわ」

 

 

 嬉しそうに笑う寿々花と結芽、少し照れたように笑う百合、一瞬だけ頬を緩めた夜見。

 親衛隊が少しづつ戻り始めている証拠で、百合はそれが無性に嬉しくて、それと同時にどうしようもなく悲しかった。

 

 

「だからこそ言えるんだ。今はまだ動くべき時じゃないって」

 

「今はって…何時までこうしてれば良いんですか?」

 

 

 可奈美の語気が強く感じるのは…恐らくだがタキリヒメのことを思ってか。

 この中で一番焦っているのは、恐らくだが彼女だろう。

 表情もいつもと違い真剣で、刺すような冷たさがある。

 

 

「状況に変化があるまでですわ」

 

「そんな悠長な…」

 

「…相手はあのタギツヒメです。恐らくですが近い内に何かあるかと」

 

 

 夜見の言葉は、数時間も経たないうちに現実のものとなった。

 

 -----------

 

 百合はテレビに映る光景に困惑していた。

 

 

「なんですか、これは…」

 

『我の名はタギツヒメ。お前達人間が言うところの荒魂である。我は人間との共存を望み、それを実現するためにここに居る』

 

「人間と…共存」

 

「アイツの目的は人間への復讐だろ?」

 

 

 薫の言う通り、荒魂としての根源的な目的は人間への復讐。

 自分たちを身勝手に生み出した人間への憎悪を糧に、復讐を行う。

 タギツヒメの目的も本来は復讐の筈だ。

 何かが可笑しい、その場の誰もがそう思っていた。

 

 

「もしかして、タキリヒメと融合したことで何か変化が?」

 

 

 舞衣が出した最もそうな意見を、否定したのは可奈美と百合だった。

 

 

「違う。あの目、タキリヒメとは違う。タギツヒメは人間を見ていない」

 

「…はい。最期に可奈美先輩を見つめていた目は、もっと温かいものがありました。あれは違います…!」

 

 

 テレビに映るタギツヒメに、二人の言葉が届くはずもなく、タギツヒメは言葉を続けていく。

 

 

『しかし人間の中には、荒魂との共存を望まぬ者が居る。荒魂の討伐を名目に、大いなる力を手にしている者たち……刀使だ。彼女たちは対話を求める我の声を無視し、言葉を解さぬ荒魂同様に討ち滅ぼさんとした。我はただ、身に降りかかる火の粉を払おうとしたに過ぎん。それが二十年前の真実だ』

 

 

 その言葉は、百合の逆鱗に触れるにはあまりにも簡単な言葉だった。

 死んでいった姫和の母である篝や、可奈美の母である美奈都、自分の母である聖。

 最期に、二十年前、苦渋の決断の果てに荒魂を受け入れた紫に対する冒涜だ。

 腹のそこから湧き出てくるドス黒い感情は、憎悪。

 

 

 これ以上、タギツヒメにこの感情を向けてはいけないと分かっていても…

 これ以上、この感情を持っているのが危険だと分かっていても…

 憎悪せずにはいられない。

 百合からしたら、偽りを語り自分を正当化しようとするタギツヒメが憎くて堪らない。

 そんな彼女を見兼ねたのか、中にいるナニカが止めに入る。

 

 

(百合、それ以上は止めなさい。私に体を乗っ取られたいの?)

 

(分かってる、分かってるよ! でも…!)

 

 

 彼女が自分の内で葛藤している中、会見は続いていった。

 

 

「今の話を裏付ける証拠はあるんでしょうか?」

 

 

 ある記者の質問が放たれた瞬間、先程まで見えていたタギツヒメの姿が消えていく。

 タキリヒメが姿を隠していた時に使っていたすだれで、タギツヒメも姿を隠した。

 その代わりに、ある男性が出てきた。

 キッチリとしスーツを着た、どこか見覚えのある男性。

 

 

『それについては、私が保証しましょう』

 

「誰だ? このオッサン」

 

「何言ってるんデスカ、内閣官房長官デスヨ」

 

「まさか、こんなお偉いさんまで…」

 

「米軍と裏取引した日本政府にも、大災厄の責任がありますから」

 

「それをネタに脅したってことか」

 

 

 責任を負いたくないがために、こんなことをしているのか? 

 人間の醜さ、それを直視させるような現実。

 タギツヒメに向いていた憎悪が遥かに大きくなるのを感じる反面、人間にも塵のようにちょっとづつ憎悪が溜まっていく。

 結芽も様子には気が付いていたのか、そっと百合の手を握る。

 それのお陰か、幾らか憎悪は和らいだ。

 

 

『そして本日はもう一人、詳しいお話を出来る方をお連れしました。鎌府女学院学長、高津雪那氏です』

 

 

 なんとなくは分かっていた。

 だが、こうも堂々と出てくとは思わなかった。

 誰もが…目を見開いていた。

 

 

『確かに二十年前、タギツヒメは大災厄をもたらしました。しかし、彼女はそれ以上の被害を望まず、刀剣類管理局による拘束を受け入れました。その後も彼女は暴力に訴えることなく、ただ静かに対話を求めました。その姿を目にし、刀使の中にも考えを改めるものが現れました。人は対話することで文明社会を気付き上げた。ならば、対話を求める荒魂との間にも信頼関係が築けるのではないか、と。私もその一人です。しかし、折神紫は違いました』

 

 

(…人間とは、ここまで愚かになるものなの?)

 

(………………)

 

 

 自分の内側からくる言葉に、百合は答えなかった。

 否、答えられなかったのだ。

 必死に腹の底から湧き出る憎悪を抑えている百合には、中のナニカの問に答える余裕がない。

 

 

『タギツヒメの声を無視し、監禁を続けたのです。そしてあれが出現した。……イチキシマヒメ。人間への疑念から生じた、もう一人のタギツヒメです』

 

「いよいよ本題が…」

 

『タギツヒメから分裂したイチキシマヒメは、鎌倉からの脱出を試み。結果として、関東一円にノロが撒き散らされてしまった。しかしその混乱の中でも我々は綾小路の相楽学長の下、綾小路の刀使たちを中心に編成した近衛隊と共に、タギツヒメをお救いしたいのです』

 

「近衛とはまた仰々しい名を付けたものですわね」

 

「タギツヒメを女王にでも担ぎ上げるつもりか?」

 

 

 限界はすぐそこまで来ていた。

 腹の中でグチャグチャになっていく感情。

 顔色が段々と悪くなる百合を見て、結芽は余っていた手も使い、両手で強く彼女の手を握りしめた。

 

 

『脱出を阻止されたイチキシマヒメは、今も管理局の手の中にあります。彼女の目的は人間への復讐、それのみです。もし彼女が力を解放したら、これまで以上の災厄がもたらされるでしょう。そんな危険な存在を、折神紫は未だに手放そうとしていないのです。惨劇を防ぐには、イチキシマヒメとタギツヒメを再度融合させるしかありません。その為にも、我々刀剣類管理局維新派は、ここ東京を拠点に決起します! その上で要求する。折神紫、並びに刀剣類管理局は一刻も早く我々にイチキシマヒメを引き渡せ。これ以上、国民を危険に晒すと言うのであれば、実力を持って対処する!』

 

 

 この言葉を最後に、テレビは消えた。

 真っ黒になった画面。

 それに対して、百合は本気の拳を叩き込んだ。

 助走なしで、棒立ちのままからの一撃。

 彼女はその拳一つで、テレビ一台と壁を、見るも無惨な形で破壊した。

 

 

 テレビは中央部分に穴が空き、そこから真っ二つに。

 壁には、百合の拳と大差ない程の穴が出来ていた。

 その場にいた全員が目を疑った。

 百合が常人離れしていることは知っていたが、御刀の力なしでここまで出来るなど知らなかったのだ。

 

 

 結芽は慌てて百合に駆け寄り、叩き付けた右手の拳を見た。

 幾ら百合とは言え、怪我の一つや二つしてても不思議ではない。

 だが…

 

 

「嘘…傷がない」

 

「…私、夢神の刀使失格だ」

 

「いきなりどうした?」

 

「私、タギツヒメのことを憎んでしまいました。憎んではいけないのに」

 

 

 夢神の刀使は、荒魂を被害者と見て祓う。

 荒魂の思いを受け止め、自分の思いをぶつける事で祓うのだ。

 彼らがどれ程の行いをしても憎んではならない。

 ……不完全な形で夢神流を免許皆伝した百合でさえ、分かっていること。

 

 

「彼女たちは被害者だ。彼女達がした行いに、私が憎しみを持ってはいけない。でも…でも…許せないんです! 篝さんを、美奈都さんを、お母さんを、紫様の努力を馬鹿にする行為がどうしても許せないんです! 挙句の果てにイチキシマヒメに罪をなすり付けるなんて……。普通に攻撃されるだけだったら良かった。なのに、なのに、彼女はあろう事か人を利用し、人同士の醜さを使って攻撃してきた! だから、私はタギツヒメを許せないし、憎んでしまう」

 

 

 己の内で暴れ回る感情を吐き出す。

 だが、百合は決定的なミスを犯してしまった。

 最低なミスを。

 

 

「…どうして、人間と言う種はこれ程までに愚かなのでしょうか」

 

「…あなた、本当にゆり?」

 

「……当たり前だよ? いきなりどうしたの? …ごめん、少し可笑しくなってたみたい。今日は休むね。先輩方もすいません、変に所を見せてしまって」

 

 

 百合の中で、大切なナニカが音を立てて壊れ始めていた。

 

 -----------

 

 あれからまた時間が経った。

 百合たちが以前乗っていたノーチラス号と言う潜水艦は、米国見捨てられ国籍不明の潜水艦になってしまった。

 それに乗っているのがイチキシマヒメと紫と言うことが割れてしまい、百合や可奈美たちが確保に動くことになった。

 

 

 未だに調子が可笑しい百合を行かせることに結芽は反対したが、百合が構わないと言ったせいでその話はおじゃん。

 結局、親衛隊は親衛隊で、可奈美たちは可奈美たちで分けて捜索することになったのだ。

 

 

「累さんからの報告によると、銚子海岸で分かれた姉とイチキシマヒメは、人目を避けて北上してるとの事です」

 

「既にタギツヒメ側が先んじて接触したことを確認したが、政府や世論の手前、流石に連中も人目のつく状況で無茶は出来ないと思われる」

 

「と言うことは、私たちも人目を避けて、迅速に確保する必要があるということですね」

 

「そうだ。あぁ! 後ついでに、累も確保してやってくれ」

 

「ついでって…」

 

「るいるい、就職先にも上司にも恵まれない人生でしたね」

 

 

 その後は、しょうもないコントがあったが百合は見て見ぬふりをして、遠くの空を見上げた。

 何となく、本当に何となくだが、結芽やみんなとの別れが間近まで迫ってる気がした。




 なんやかんやで、次回がこの物語一番の山場になりそうです。
 まぁ、山場というより修羅場になりそうですが……

 次回のタイトルは「咲くはクロユリ、燕はまた泣く」でしょうか。
 お楽しみに!
 アンケートの方もよろしくお願いします。
 アンケートの結果次第では明日にでも次の話を投稿しますよ!

結芽の誕生日は……

  • X年後のイチャラブ
  • 過去のイチャラブ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。