アフターストーリーもそこまで長くありません。
リクエスト箱も置いてあるので、なにかあったらご意見をどうぞ!
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After1「溢れる想い」
隠世から三人が帰還して数日が経ったある日。
粛々と御前試合の学校別予選が行われる中、百合は寿々花や夜見が入院していた研究所兼病院に来ていた。
理由は勿論…
「はーい、少しチクッとしますよ」
「っ……」
検査のためである。
現状、百合の体に異常はない。
……異常がないことが異常と言うべきなのだろうが、そんなことを言って変に気を遣わせる訳にもいかない。
なので、朱音は百合の中にあるクロユリの調査をしたい。
そう言って、彼女を呼び出したのだ。
一通りの検査を終え、先程の採血が最後の検査だった。
数時間にも及ぶ拘束だったが、百合は嫌な顔一つせずに研究員や医者の言うことを聞いていた。
……分かったことは……
「よく分からない。そう言うしかありません」
「そうですか……」
「でも、獅童さんや此花さん、皐月さんの体にあるノロを取り除く研究は順調です。今後も、夢神さんにご協力して欲しいのですが。よろしいですか?」
朱音の言葉に、少ししょぼくれていた百合の顔が花咲く笑顔に変わる。
その後は、研究に協力できそうな日があれば教えて欲しいと頼まれ、百合は二つ返事で了承した。
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研究所兼病院から帰ってきた百合を待っていたのは、親衛隊……もとい特別遊撃隊の面々。
薫を隊長として、真希・寿々花・夜見・結芽・沙耶香が隊員として在籍している。
百合も帰還そうそう、特別遊撃隊に入隊。
綾小路に帰ることも出来たが、紗南の懇願と結芽の我儘に負けて、未だに刀剣類管理局本部に居る。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ」
「すいません。にしても、全員が揃ってるなんて…何だか珍しい光景ですね。薫先輩は今頃、花見でもしながらサボってると思ってました」
「百合の指摘は間違ってないよ。何せ、益子はつい十分前まで花見をしながら本当にサボってたからね」
「全く、これで隊長だと言われるとなんとも言えませんわ」
「自重して欲しいものです」
「薫おねーさん、私よりサボってるもんね〜」
「薫、任務をサボるのは良くない」
「だーー!! うるさいうるさい〜! そもそも、何で俺の責任で御前試合の運営を特別遊撃隊がやらなきゃいけないんだ!」
約一週間後に迫った御前試合。
それの運営を任されたのが特別遊撃隊。
何故任されたのかは不明。
だが、凡そのことは分かる。
あえて口には出さないが、某パワハラクソ上司さんの所為だ。
薫は何とか自分から意識を逸らすために、百合に話を振る。
「そう言えば、百合の方はどうだったんだ? 検査」
「……まだ詳しいことは分からないみたいです。まぁ、今の私の体を完璧に理解してるのなんて、私しか居ないんですよ。当たり前ですけど……」
「取り敢えず異常はなかったんだよね?」
「一応ね」
彼女たちに言うか迷った。
結芽には、会ってすぐに全て話せたが、他の仲間には話せていない。
紗南や朱音も諸々のことは報告の中で伝えてあるため、刀剣類管理局のお偉いさんの中には百合の体の異常性を知っている者も居るだろう。
食事も睡眠も必要とせず、やろうと思えば何時でも荒魂化出来る。
世界を滅ぼす程の力を百合は有している。
言うべきだ。
そんなこと分かっているのだが………
心配させたくないし、受け入れられるかなんて分からない。
自分は拒絶したのに、拒絶されるのは嫌だなんて身勝手だ。
(……どうすれば)
俯いたまま黙ってしまった百合を見かねた結芽が、ゆっくりと手を握る。
指と指を絡めて、しっかりと繋ぎ止めるように。
私が居るよ、そう言ってくれているようでとても嬉しかった。
後ろ向きになっていた心が、前向きになり閉じていた口を開いた。
「実はーーー」
結局、百合はみんなを心配させてしまったが、拒絶されることはなかった。
……壊れてしまった心が、少しづつ修復されていく。
隣に居てくれる存在がとても頼もしく感じた。
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午前は検査で、午後は御前試合の準備運営。
忙しい一日を終えた百合と結芽は、夕食やお風呂を済ませて寝室に入っていた。
化粧台の前で結芽の桜色の髪を梳かす百合。
慣れた手つきで、櫛を使って髪を流すように梳かす。
梳かした後は交代し、今度は結芽が百合の髪を梳かす。
「結芽、あの時はありがとね」
「……なんのこと?」
「とぼけないでよ。私が体のことを話す前。私の手、握ってくれたでしょ? ……嬉しかったんだから」
頬を少しだけ朱に染めて嬉しそうに微笑む百合を見て、結芽もにっかりと笑った。
リボンで結んでいた髪を流した百合の姿は、パジャマなのにも関わらず上品さと美しさがある。
艶、肌触り、色合い、どれをとっても一級品。
こうやって落ち着いて見るのは初めてかもしれない。
慣れすぎて忘れていた。
夢神百合と言う少女の魅力に、惹き込まれていく。
既に奥の奥まで来たかと思っていた結芽だったが、まだまだ奥があることに気付いて、少しだけ表情を変える。
「ねぇ、ゆり?」
「? どうかしーーんっ」
髪を梳かしている途中で呼ばれたので、何かあったのかと考え百合は結芽の方に振り向いた。
だが、言葉の最後を言う前に唇が重なり、最後の言葉は言えなかった。
「……ぷはぁ。ごめん、我慢できなくて。だって、ゆりが悪いんだよ? …一緒に居ればいるほど、どんどん好きになっちゃうんだもん」
「うぅ〜〜!!」
何時ものイタズラっ子……もとい小悪魔の表情はどこえやら。
そっぽを向きながら、拗ねた子供のように言い放つ。
あまりにも破壊力抜群のギャップ萌え。
百合も百合で真っ赤にした顔を手で隠している。
お互いがお互いに、破壊力抜群の攻撃をする所為でなんとも言えない雰囲気が漂う。
この雰囲気を破ったのは百合。
先程の言葉に噛み付きながら、自分で地雷を踏みに行く。
「そ、それを言うなら結芽だって。私を救ってくれた時、すっごくカッコよかったよ! あの言葉がなかったら、私はここに居なかった」
『私が好きなのは
『もし、みんながゆりの事を否定したら、私がゆりの事を肯定するよ。もし、みんながゆりの事を祓おうとしたら、私がゆりの事を守るよ』
この二つの言葉が百合を救ってくれた。
こんなことを言われたら、好きになるなと言う方が無理な話である。
思い出した結芽は、顔が熱くなるのを感じた。
もうこうなったらヤケクソである。
彼女も彼女で、過去の言葉を蒸し返す。
「なら! ゆりだって! 私が私じゃなくなった時に言ったじゃん!」
『苦しい思いをさせてごめん。辛う思いをさせてごめん。悲しい思いをさせてごめん。一人にしてごめん……約束破ってごめん』
『苦しかったよね? 辛かったよね? 悲しかったよね? 寂しかったよね? ……怖かったよね?』
罪悪感があって、それ以上の温かな優しさがあった。
全てを包み込んでくれるような温かな優しさが、ユメの心を癒して結芽を救った。
あの時の言葉は今でも忘れていない。
あんなこと言われて、落ちない少女は居ないだろう。
どこまで行っても、自分のことを想ってくれた彼女のことを好きにならない筈がない。
二人とも何時の間にか恋に落ちて、泥沼のように恋に溺れていった。
どちらも相手のことを想っている。
「……や、止めようかこの争い」
「……だね」
「でも、私の方が結芽のこと好きだから。それだけは忘れないでね?」
「ふふん、私の方がゆりのこと好きだもん。それだけは忘れちゃダメだよ?」
言葉を発した直後、顔を見合わせてクスリと笑った。
約一週間後に迫った御前試合を忘れて、その日は少しだけ夜更かしをした。
みにゆりつば「愛してるよゲーム!」
愛してるよゲームとは、二人以上居れば行える簡単なゲーム。
ゲーム内容は、単に「愛してるよ」と交互に言い合うだけ。
言われて照れてしまっり、笑ってしまったりした方が負け。
進め方としては、最初の人が「愛してる(わ・よ)」と言う。
言われた方はそのまま次の人に「愛してる」と言ってもいいし、言った側に「え?」「今なんて言ったの?」「もう一回言って!」などと言い返してもOK。
「愛してる」に変化を加えても構わない。
そんなゲームを、百合と結芽は二人でやろうとしていた。
本当は特別遊撃隊のメンバーでやろうかと考えたが、暇な人が居なかったので二人でやることになった。
百合からしたら、結芽と二人きりの方がやりやすいので内心安心していた。
「じゃあ、ゆりからね」
「うん。…いくよ?愛してるよ」
「誰よりも好きだよ」
「…貴方だけを愛してる」
「だ〜い好き!」
「…小悪魔みたいな笑顔が可愛くて好きだよ」
「少しバカっぽい所も好きだよ」
この後も勝負は続き、十分が過ぎた。
二人とも案外律儀に「愛してる」と言うだけだった。
時折変化球じみたものもあったが、完全に脱線することは無くゲームは進む。
そして、このゲームに終止符を打ったのは……結芽だ。
いきなり百合の耳元に近づいて、小悪魔の如く声で犯すように「愛してる」と伝える。
「…愛してる」
「ひゃぁ!…ちょ、ちょっと耳元はやめてよ!」
「わーい!私の勝ち〜!」
けれど、このやり方には流石の百合もカチンときた。
結芽を無言で壁の方に追い込む。
彼女も段々と焦り出すが、百合は止まらない。
ゆっくりと優しく、顔の横の壁に手を着く。
そして、淫魔の如く甘い声で「愛してる」と囁いた。
「悪戯好きな結芽も愛してる。でも、罰は必要だよね…?」
「ひゃ、ひゃい!」
百合は結芽の腕を強引に掴むとベットにーーー
後日、やけに顔が潤った百合と、少しだけやつれた結芽が同時に出勤した。
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ベットにーーーの後はご想像にお任せします。
もしかしたら……しちゃったかもしれませんし。
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信じるか信じないかはあなた次第!
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結芽の誕生日は……
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