それと、今回の記念物語はトゥルーエンドが、バットエンドのようなものなので「ハッピーエンドが見たい!」と言う方はブラウザバックを推奨します。
それでも、良いと言う読者の皆さんはごゆっくりとご覧下さい!
小学三年生の夏休み、家でゴロゴロしていた百合に父親である
「百合、家族が増えるって言ったらどうする?」
「……新しいお母さんが来るってこと? …だったら、少し嫌だな」
百合の母親である
亡くなってから数日間は泣き続けていたが、龍雅の励ましで立ち直り今に至る。
しかし、彼女の心の中には未だに聖が居る。
だからこそ、先程の答えなのだろう。
そんな娘の言葉に、龍雅はゆっくりと首を横に振って話の補足をしていく。
「家族ってのは、お前と変わらないくらいの女の子だ。その子にも色々事情があってな、うちで引き取ることになった。前に言ってただろ? 妹が欲しいって」
「…言ったけど。その女の子ってどんな子なの?」
龍雅が百合の質問に答えようとした時、玄関のチャイムが鳴る。
その音を聞いた龍雅はニヤリと笑い、からかうように百合に言った。
「自分の目で確かめるといいんじゃないか? ほら! もう来たぞ」
「えっ? 嘘、もう呼んでるの? そういう事は早く言ってよ!」
急いで玄関に走り、スライド式のドアを開ける。
そこに居たのは、
「えっと、夢神って言う人の家で合ってますか?」
「は、はい。うちが夢神です。……名前聞いてもいい?」
「私? 私は燕結芽。よろしく!」
「私は夢神百合。こちらこそよろしく!」
白のワンピースに麦わら帽子。
腰まで伸びた綺麗な桜色の髪、透き通る碧色の瞳。
ニッカリと笑った顔は、何処か小悪魔を連想させる。
これが、百合と結芽の
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あれから三年、綾小路武芸学舎の初等部に入学した二人は寮暮しをしていた。
いつも早く起きるのは百合だ。
朝の稽古を終えて、シャワーを浴びた所でようやく結芽が起こされる。
入学した当時は、
その所為で、朝はギリギリまで寝て過ごすようになってしまったのだ。
いつも通り、結芽を起こす為に布団を剥がす。
今日は結月に呼ばれているので、早めに行かなければいけないのだ。
「う゛〜、ね゛〜む゛〜い゛」
まだ寝足りないのか、愛用のイチゴ大福ネコの抱き枕を抱いて二度寝につこうとする。
だが、そんなことを百合が許すわけもなく、容赦なく抱き枕を取り上げられて起こされる。
恨めがましい視線が突き刺さるのを無視し、小さな化粧台の前に座る。
シンプルなデザインの箱に、収納されているネックレスを取り出し首に掛ける。
そのネックレスは聖の遺品であり、
至る所に小さなアメジストが埋め込まれた物で、百合のお気に入り。
それ以外でも、スマホに結芽と色違いでお揃いにした、イチゴ大福ネコのストラップがお気に入りだったりする。
「ゆり〜、準備出来たよ〜。髪結んで!」
「はいはい、ここに座って」
親友であり姉妹でもある二人の仲を引き裂けるものは、この世の中でも数えられる程しかないだろう。
……例えば、不治の病。
結芽と出会って一年を過ぎた時、百合は今の日本の最先端医療でも治せないほどの難病を患った。
……けれど、一ヶ月の入院の後に百合は退院。
何故かって?
そんなの病気が治ったからだ。
いや、治ったと言う言葉は正しくない。
正確には、入院して二週間が経った頃の、二回目の精密検査時には、「病気そのものにかかって無かったのではないか?」と、言えるほどに健康体だったのだ。
明らかに可笑しいが、結芽と龍雅は歓喜した。
治らないかもしれないと言われていたのに、何故か治ってしまったのだから。
喜ばない訳が無い。
その何故に疑問を持ったのは医者だけで、病状が改善しても通院して再度検査を行ったが、それ以来異常な点が見つかることはなかった。
「はい、終わったよ。うんうん、今日も良い感じ」
「そう? やっぱり持つべきものは優しいお姉ちゃんだね!」
「褒めてもイチゴ大福しか出てこないよ。ほら、早く行こ? 学長を待たせるのは失礼だし」
「はいは〜い」
そう言って、二人は寮の自室を出て学長室に向かった。
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適当な強さでノックし、扉の中に入る。
百合と結芽が来た頃には、既にもう二人が先に来ていた。
前年度の御前試合で準優勝を果たした
どちらも、
百合は少し嫌な予感がした。
御前試合の予選と本戦は約一週間後、寿々花は間違いなく出場する筈だ。
なので、本来なら今週は御前試合に向けて最終調整に入っていないと可笑しい。
そんな寿々花が呼ばれている。
それに加えて自分たちの存在。
百合と結芽は初等部の中でも、頭一つどころか二つも三つも抜けている。
その実力は、初等部にも関わらず前線に駆り出されるほど。
高等部である寿々花とミルヤも、二人の強さを認めて一戦力として扱っている。
結月の最初の一言により、百合は自分の感が的中したことを確信した。
「済まないが、ここに集まった四人には明日から任務に出てもらう」
「具体的な情報は? あるんですの?」
「厄介な荒魂が出たとしか情報が来ていない。……しかし、先日討伐に向かった部隊が、壊滅状態にまで持って行かれた。幸いにも死者は出なかったが、これは由々しき事態だ。至急、特別討伐隊が組まれることになった。そのメンバーがお前達だ」
結月が組んだ討伐部隊が弱かった訳では無い。
臨機応変に対応出来るよう、柔軟性のある部隊に任務を出した。
それが、この結果だ。
相手がどんな荒魂なのか?
討伐隊の隊員は殆どか意識が戻っておらず、荒魂の情報を探る為に送った偵察機も、念入りに壊されて映像の解析が不可能。
それと、結月が言うには
合流場所は、荒魂が発見された場所の近くに指定されており、そこから調査を始めていくとのこと。
「態々、神奈川から来るんですか?」
「…ああ、悪いがこの任務は任意ではなく強制だと思ってくれ」
結芽はアイコンタクトで「行きたくない!」と言ってきている。
百合からしたら、結月の頼み事を断るのは気が引ける。
その理由の大部分は、結芽がお世話になったからだ。
アイコンタクトで結芽に対して「ごめんね」と、謝って今回の任務を受諾する。
「分かりました、その任務をお受けします」
「私も受けますわ」
「私も問題ありません。任務を受けます」
「三人とも感謝する。…結芽はどうする?」
意地が悪い結月は、結芽の方を見て問う。
彼女も彼女で、「ぐぬぬ!」と言いながら結月を睨みながら、任務を受けた。
「分かったよ、相楽学長。その任務、受ければ良いんでしょ? 受けるよ! ゆりが居ないと学校つまんないし」
「助かるよ。くれぐれも問題を起こさないようにな?」
薄く笑う結月に怒る結芽を他所に、話は進んでいき。
翌日から、任務に着くことになった。
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朝七時から電車に揺られて現場に向かった。
現場は京都府京都市の右京区。
そこは主に住宅街であり、それ故にそこに現れた荒魂は、市民の生活を守る為にも早急に退治しなければいけない。
待ち合わせ場所には、先客が三名。
連絡では二名の筈だが、一名多い。
百合は不思議に思ったその時、結芽が不意に後ろから声をかけてきた。
「ゆり? 一人多くない?」
「そうだね。何かあったのかな?」
「獅童真希と糸見沙耶香以外の援軍は居ないはずですが…。夢神百合の言った通り、不測の事態があったのでしょうか?」
「さぁ、聞くのが手っ取り早いですし、聞いてみたら良いのでは」
そう言って、寿々花はドンドンと進んで行き。
真希たちと何やら話をして戻って来た。
「寿々花先輩? 何か分かりましたか?」
「ええ、糸見沙耶香のお守りだそうですわ」
なんとなく、全員が納得した。
この場に居る者たちで、百合と結芽は沙耶香とは少なからず面識がある。
寿々花かミルヤも、沙耶香の様子を見て察しが着いた。
沙耶香は落ち着いているが、感情の起伏が乏しい。
それに、百合と結芽は、沙耶香が鎌府の
合流した後は数度会話を交わして、沙耶香のお守りで来ていた三人目が
自己紹介は省き、任務の話に入ろうとした瞬間、真希が百合や結芽、沙耶香たちのことを見てこう言った。
「出来るなら、彼女たちは戦わせたくない。此処にいる時点で実力者なのは分かるが、それとこれとは話が別だ。任務の中で調査に協力してもらうのは良いが、戦闘時はボクや此花、木寅に皐月がやる方針でいきたい。どうだい?」
「何? 私とゆりや沙耶香ちゃんが足でまといだって言いたいの!」
怒りの形相を顕にする結芽。
真希も真希で譲る気は毛頭ないのか、毅然とした態度で構えている。
そんな二人の間に入ったのは百合ただ一人。
他の者たちは、行く末を見ているだけだ。
「はいはい、結芽はこれ食べててね〜」
「んっ?! 甘〜い!」
「獅童先輩。誠実なのは分かりますが、私たちは刀使です。荒魂を鎮めるのが目的。なら、実力があれば年齢は関係ありません。そうじゃないですか?」
「…それもそうだな。すまない。出過ぎた物言いになってしまった」
「いいえ、構いません。沙耶香ちゃんもこれどうぞ」
「良いの?」
「うん、今食べてていいよ」
結芽を棒付きキャンディで、沙耶香をクッキーで静かにしてから任務の話をしていく。
決まったことは、二人一組になって調査をするというものだ。
荒魂出現場所の大体の位置が分かっているので、その周辺を捜索・調査し任務を進める。
もし、荒魂を見つけた場合は、連絡を取り合い仲間が来るまでに倒せるなら倒し、倒せない場合は防戦に徹して仲間が来るのを待つこと。
その事を念頭に置き、調査が始まった。
百合と結芽はミルヤと共に右京区の東側を、真希と寿々花は西側、沙耶香と夜見は南側。
残った北側は担当区分が終わった組から、調査に向かう。
だが、お昼を過ぎても荒魂のあの字も出てこなかった。
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お昼を過ぎて一時半頃、担当区分が終わった百合たちは、北側に移動しようとしていた。
そこで、見逃していた場所を見つけた…路地裏だ。
回収用のゴミ箱が倒れており、あまり長居したくないが仕方ない。
「木寅先輩」
「分かっています。燕結芽、行きますよ」
「ええー!? ここ臭いしあんまり行きたくないんだけど」
「我慢しなさい。もしここに潜伏していて見逃していたとなると、私たちの責任は重大ですよ」
圧を掛けるようなミルヤの言い方に、結芽はあまりいい顔はしていない。
けれど、反論できる部分がないので何も言い返せない。
目線で百合に助けを送るものの、自分が言い出した手前今更「止めましょう」などと言える訳もなく、百合は苦笑いで返す。
「此処に荒魂が居なければ良いんだから、もう少しだけ頑張ろう? ね?」
「…わかった」
不貞腐れたように頷く結芽の頭を撫でながら、路地裏に足を踏み入れていく。
最初は特に違和感なく入っていったが、奥の行き止まりまでもうすぐ、といった所でどうしようもない悪寒を感じた。
御刀に手を掛けようとした時、上から荒魂が降ってきた。
「嘘っ! スペクトラムファインダーが反応しなかった?!」
「ゆり! 状況を整理してる場合じゃないよ! どんどん降ってくる!」
「夢神百合と燕結芽は荒魂の対処! 私も報告を済ませたらすぐに参戦する!」
「了解です!」
「りょーかいっ!」
降ってくるのは小型個体ばかりなので、あまり苦ではない。
殆どの敵をテンポ良く倒していく。
それでも、敵の数は一向に減る気配が見えない。
それどころか、「増えてるんじゃないか?」とさえ思える。
五分程で真希や沙耶香たちも増援に来たが、状況は変わらない。
(敵の親玉みたいのは…ダメだ。数が多すぎて、よく周りが見えない)
親玉ポジションの敵を倒せば、事が上手く進んでいく気がしたが、そう簡単にはいかず、逆に隙を生んでしまう。
背後から襲いかかってくる敵が二体、正面からくる敵が三体。
後方の二体を後ろ回し蹴りで吹き飛ばし、正面からくる三体をタイミングを少しづつズラして対応する。
一度攻撃を受け止めたら、今度はタイミングをズラさず右薙に一閃し、荒魂を真っ二つに切り裂く。
ミルヤの適切な指示が飛び回る中、段々と落ち着いてきた思考で観察を始める。
ミルヤのような状況を見る目ではなく、脅威となるものだけを捉える目をフル活用。
そうして、ようやく……
「見つけた! 木寅先輩! 一時の方向、十一メートル先に親玉らしき敵を発見しました」
「良くやった! 夢神百合はそのまま行け! 他のもので彼女が通る道を確保しろ!」
『了解』
仲間が開けた道を最大限利用した、親玉への最短ルートを計算する。
ある程度分かったら、射の構えを二刀流で行う独特な持ち方で体制を整える。
呼吸を落ち着かせ、一気に突く。
「そこっ!!」
一段階からシフトさせ、最終的に三段階まで上げた迅移で突っ込む。
二本の御刀を使った刺突は、一本は弾けても二本目は弾けない。
親玉も一本は弾けたものの、二本目は弾けず深々とノロで構成された体に突き刺さった。
親玉の姿は人型個体、珍しいもので腕を鋭く変形させて戦っていたらしい。
百合は、その荒魂を見てたった一言呟いた。
「ごめんなさい」
その言葉を最後に、任務は終了した。
親玉を倒し終わった後の、小型個体は流れ作業に近く存外呆気なく終わってしまった。
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ノロの回収も終わった後、百合が作って来たお弁当を食べて、特別討伐隊メンバーは撤収した。
持って行ったお弁当は、簡単なおむすびと漬け物、それ以外にも数種のおかずが入った物。
夜見と沙耶香はおむすびを黙々と食べて、真希や結芽、ミルヤも美味しいと感想を貰えて百合は喜んでいた。
若干名、感想が可笑しい者も居たが、問題は起こらないで平和に幕を下ろした。
その約三週間後に、結芽と百合が第四席と第五席として親衛隊に加入。
時は残酷に進み続ける、
次回もお楽しみに!
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結芽の誕生日は……
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