本日、二万UAを突破しました。
記念に何かやりたいのですが、何かやって欲しいことってあるでしょうか?
因みに、五十話記念では、本編各話の解説(色々)をしたいと思っております。
十月上旬のある日、百合はいつも通り朝から道場にて鍛錬に励んでいた。
素振り、型の通しの順でやり始めて一時間が経とうとした頃、道場に真希が入って来た。
それに気付いた百合は振り返り、真希に挨拶をする。
「おはようございます。真希先輩」
「ああ、おはよう。ゆ……り?」
「どうしたんですか? そんな、子供が描いた落描きみたいな顔して」
真希の顔はへのへのもへじと同等かそれ以上の可笑しなものになっている。
保育園児でも、もう少しまともな顔に出来ると言うレベルで酷い。
流石に可笑しさを感じた百合は、自分の格好を確認した。
今朝は眠かったので、あまりしっかりと確認していなかったが、自分に何かしらの原因があるのは間違いない。
先ずは寝癖のチェック、頭の上まで手をやり髪の毛をぺたぺたと触る。
特段変化は無いように思えたが……一つ可笑しな部分があった。
柔らかいが、しっかりとした手触りと感触がある。
まるで、
「ん?」
二、三度触り直すが、確かに犬の耳擬きが自分の頭にある事が分かる。
何せ、普段の髪の毛には無いであろう、暖かさがあるからだ。
「んんんー?!」
慌てて臀部の方に手を回し、少しづつ確認していく。
ある筈がない、ある筈がない。
そう自分に言い聞かせながら、プルプルとした手で確認を進める。
ワサ、と人体の構造上有り得ない所から不思議な音が出る。
恐る恐る首を後ろにやると……
「し、し、し、尻尾ーー!!」
異常事態や非常事態に慣れている百合でさえも、脳の処理が限界に達したのか、ゆっくりと後ろに倒れた。
意識が埒外にあった真希も、百合の危機には気が付いたのか倒れる彼女をギリギリの所で支えた。
「……一体、何があればこんな事に」
自分一人の力ではどうにも出来ないと判断した真希は、兎も角百合の体を調べられるであろう、研究所兼病院に向かって百合を抱えて走り出した。
……興味本位で少しだけ百合の頭に生えた耳を触ったのは秘密だ。
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一通りの検査を終えて、ようやく百合が目を覚ました。
検査の結果を一言で表すなら……
仮説は立てられたのだが、仮説が仮説の域に達していない。
妄言と言っても過言ではないものらしい。
因みに、百合が寝ている間に結芽や特別遊撃隊のメンバーは全員集合していた。
「ゆり、大丈夫?」
「全然。何ともないよ」
「…ねねみたい」
「沙耶香の言う通りだな。流石に耳の形や尻尾の形は違うけどな…」
「そんな事はどうでもいいですわ。…問題はこの症状が治るかどうか」
「そうだね。ボクもそれが気になる所だよ」
「検査に参加した人の殆どが、分からないと匙を投げていました。しばらくはこの状態が続くことを覚悟した方がいいかもしれません」
それぞれが思ったことを言い合う雰囲気は、和やかなものではあるが少し暗い。
結芽は興味半分と善意半分で、雰囲気を変えるためにある行動に出た。
一瞬、小悪魔のような表情が見えたが決して見間違いではないだろう。
「ねぇ、ゆり?」
「な、何?」
「はい、お手」
「ワン!」
結芽が出した掌に百合は自分の拳を置いて、大きな声で『ワン』と鳴いた。
しかも、その時の顔は輝く程の笑顔だ。
周りに居る誰もが、その行動に驚いた。
百合なんて、みるみるうちに顔を赤くして、最終的に湯気が出始める。
「あ、あぁぁぁぁぁぁーー!!」
「ぷっ、ははははは! ゆりってば超可愛い! 最っ高!」
起こしていた体を再度倒し、先程まで寝ていたベットで羞恥心から転がり回る。
無意識だった、勝手に体が反応していた。
そうするのが当たり前なのように、結芽のお手に応えた。
応えたことは別にいい、犬っぽさが増している今ならしょうがないと割り切れる。
だが、問題はそこじゃない、そこじゃないのだ。
問題は、皆が見ている所でやってしまった事なのである。
特別遊撃隊のメンバーは色々と察したようで、そそくさと部屋を出た。
その後、羞恥に悶える百合をおんぶしながな結芽も自室に戻って行った。
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自室に戻ったあと、百合はベットで枕に顔を埋めている。
余程恥ずかしかったのか、結芽とも顔を合わせようとしない。
恥ずかしい所は色々と見られたと思っていたが、あれは経験の無いものだった。
いや、本来なら経験のしようがないものだった。
結芽が声を掛けてきているが、顔を枕から離そうとはしない。
「ゆり~。もう許してってば、プレゼントあげるからさ~?」
結芽の『プレゼントあげる』と言う言葉に、百合は反応を示した。
尻尾を可愛らしく振りだして、耳をぴくぴくさせている。
この仕草を見て、結芽は好機だと悟った。
そこで、捲し立てるように言葉を続ける。
「
「うぅ、ぐぅ」
「これつけたら、ゆり可愛いだろうな~」
「ず、ズルい!!」
百合は結局、結芽の言葉に抗うことが出来ず、枕から顔を離した。
顔を上げたら、結芽の声が聞こえた方を向く。
そこには、目をキラキラと輝かせた結芽が、可愛らしい
「ゆ、結芽。それ、チョーカーじゃないよね?」
「もっちろん! だって、
ジリジリと、結芽は距離を詰めてくる。
百合はベットの上で逃げられる場所がない。
逃げようと藻掻くが、結芽に壁まで追い詰められてしまう。
「ま、待ってよ。話し合おーー」
「問答無用!」
五分後。
飛び掛った結芽に、無理やり首輪を着けさせられたのは言うまでもない。
涙目になりながらも、百合は恨みが増しい視線を結芽に送る。
そんな視線に気付かない結芽ではない。
ニッカリと笑い、百合に近づく。
「ゆり~。自分の立場分かってる? 今のゆりは私のペットで、ご主人様は私なんだよ?」
「……私、ペットじゃないもん」
「はぁぁ~。しょうがないなぁ。…物分りの悪いペットには、体に教え込ませなきゃね」
またしても、ジリジリと近づく結芽。
だが、百合は動こうとしない。
自分が抵抗する姿が、結芽を焚き付けると理解したからだ。
…けれど、百合は失念していた。
結芽は、一切の抵抗を示さない相手に容赦がないことを……
真正面に辿り着いた結芽は、顎に手を優しく当てて顔を動かす。
キスがし易い角度を探しているのかもしれない。
十数秒ほどが経つと、顔を動かす手を止めてゆっくりと顔を近づけていく。
(…やっぱり、綺麗)
初めて会ったあの頃と変わらない。
強いて変わったことろを上げるなら、少し意地が悪くなったところだろう。
重なる唇。
結芽は一切の抵抗をしない百合の口内に自分の舌を侵入させ、彼女の舌で遊んだり、悪戯に犯し尽くす。
一分と言う短い時間の中で、二人は自分たちの世界に入り込んだ。
百合は瞳を蕩けさせ、うっとりとした視線で結芽の唇を見つめた。
唇と唇の間で、すっーと糸が繋がっている。
結芽も結芽で、獰猛な笑みで百合を見つめた。
一瞬前までの事など、二人にとっては指して意味の無いことに成り下がる。
我慢など出来ず、ブレーキなど使える筈もない。
もう一度、唇を重ねようとした瞬間。
唐突にドアが開き、ウザ喧しい声と共に二人の少女が現れた。
一人は女の子を愛して止まない山城由依。
準性犯罪者予備軍の噂が、出ているとか出ていないとか。
もう一人は、オシャレ少女の六角清香。
最近、好きな人が出来たとか出来ていないとか。
「結芽ちゃーん! 百合ちゃんにケモ耳と尻尾が生えたって言うから見に来た……よ?」
「由依ちゃん! ノックして入らなきゃダメ……だ…よ?」
見・ら・れ・た。
言い訳など出来るわけないほど、ハッキリと見られてしまった。
百合は羞恥心が限界を天元突破し、即気絶。
結芽は何ともないが、百合とのお楽しみを邪魔されたことにキレ散らかした。
この日、一番の被害を被ったのは百合ではなく……清香だったらしい。
結芽の誕生日は……
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