百合の少女は、燕が生きる未来を作る   作:しぃ君

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 終焉編、開始!!!


壱話「百合散る報せを燕は聞いた」

 新年も明けて、二週間が経ったある日。

 任務のなかった百合は自室で一人、イスに座り、膝にブランケットを掛けてマフラーを編んでいた。

 素材から道具まで全て自分で買いに行った事で、一つ作るのに値段の桁が少しズレてしまったが問題はないだろう。

 大切な結芽に贈る物は、最大級の愛を込めるべきだと百合は思っていたからだ。

 

 

 久しぶりにできた一人の時間を有効活用し、今日も今日とて愛を編む。

 寒冷の波が最高点に達したこの季節。

 マフラーの一つがあるだけでも全く違う。

 しかも、手編みのマフラーなら尚更だ。

 少々値は張ってしまったが、結芽の動きでも解れず破れにくい素材を買った。

 

 

「ふっふっふっ〜、ふんふんふん〜」

 

 

 微笑に鼻歌混じりでマフラーを編む姿は、国宝級の芸術品のような美しさがある。

 故に、今日一日。

 彼女の部屋には、誰一人としてやって来ていなかった。

 何時もなら任務のない特別遊撃隊のメンバーか、可奈美たちが来ている所だが、お生憎様なことに全員任務の遂行中。

 

 

 百合の身近な友人たちでフリーな者は一人も居ない。

 ……いや、沙耶香はフリーだが、呼び出しが掛かってから連絡がないのだ。

 遊びに行くかも、と聞いていた彼女も少し寂しさは感じたが、任務ならしょうがないと割り切っている。

 

 

「…………みんな、今頃どうしてるのかな?」

 

 

 それぞれが別々の任務をこなす中、百合は一人自室に籠って愛を編む。

 大切な想い人が帰ってくるのを、今か今かと待ちわびながら……

 

 -----------

 

 編み始めてから何時間経っただろうか? 

 ぼーっとそんな事を考えるも、動かす手は止めない。

 マフラーを編むこと自体は、一週間ほど前からコソコソやっていたが、今日はどれくらいやっていたのか少し気になった。

 朝の九時から始めて、今の時間はーー

 

 

「…十四時を少し過ぎたあたり…か。ちょっと、休憩しようかな?」

 

 

 机の上に道具と作りかけのマフラーを置き、イスを立つ。

 そのまま、トコトコとドアの前まで歩き、外に出ようとした瞬間……

 

 

『特別遊撃隊副隊長・夢神百合。至急、指令室までお越しください。繰り返します。特別遊撃隊副隊長・夢神百合。至急、指令室までお越しください』

 

 

 ……妙な胸騒ぎがした。

 行ってはいけないと、脳が警報をうるさく鳴らしている。

 けれど、百合は刀使。

 指名して呼ばれるなんて、緊急事態以外ありえない。

 

 

 急いでドアを開けて、指令室まで走り出した。

 普段なら、廊下を走るなと注意する側の百合も、今回ばかりは見逃して欲しいと心から願う。

 顔見知りの人に会釈する時間も惜しいくらい、百合は急いでいた。

 

 

 指令室に着くと、一も二もなく重いドアを開けて中に入る。

 中は慌ただしく職員の人たちが動き回っており、紗南も声を張り上げて指揮を執っていた。

 空気が違う。

 よくよく指令室に入る百合だからこそ分かる。

 何時もの落ち着いて冷静な雰囲気が欠片もない。

 

 

「真庭本部長? 一体これは……」

 

「百合!? 良く来てくれた! 休みの所悪いが、緊急の任務が入ってな。それをお前に任せたい」

 

「構いませんけど。任務の内容は?」

 

「…近頃、刀使の失踪が噂されているのを聞いた事があるな?」

 

「確か、綾小路の方ですよね? 京都寄りの」

 

 

 刀使失踪の噂。

 最近はある地域での急激な荒魂の出現率低下と合わせて、問題となっている。

 荒魂の出現率低下地域も、刀使失踪の噂が出ている場所と同じく京都付近。

 

 

 どちらも謎に包まれている部分が多く、迂闊に手を出す事が出来なかった。

 ミイラ取りがミイラになる…なんて事が起きれば、たちまち世間は刀剣類管理局を叩きにくるだろう。

 ようやく落ち着きを取り戻してきた所なのだ、下手な手を打てばまた信用の取り直しに時間を割く羽目になる。

 

 

「何か分かったんですか? 確か、そこは荒魂の出現率低下地域でもありましたよね? ……もしかして、関係性が分かったんですか!?」

 

「いや残念だが、まだそこまではいけていない。だが……これだけは分かった。刀使の失踪には、ある組織が関与している」

 

「ある…組織?」

 

「舞草と並び、刀剣類管理局の裏で隠れて動いていた組織だ。元々は舞草と同じ目的と思想を持って動いていたが……去年起きたタギツヒメの一件以来、目的も思想もリーダーも替えて動いている」

 

 

 顔を顰めて言う紗南の様子から、彼らが掲げる目的や思想が真っ当なものではないと、百合は察する。

 そして、その組織に捕まったかもしれない刀使や、討伐された荒魂。

 外道な事をされていても、可笑しくはない。

 百合は拳を強く握り締めた。

 

 

 綾小路武芸学舎には、百合の旧友が居る。

 離れていても結んだ縁は確かにあるのだ。

 ……もし、縁を結んだ友人たちが外道な事をされていたなら、助けなければいけない。

 一友人として、一仲間として。

 そして、最後に荒魂たちも……

 

 

「……目的や思想だけで言えば、奴らはイチキシマヒメと似ている。だが、タギツヒメとほぼ同じやり方で、同士を増やしている」

 

「冥加刀使の量産…ですか」

 

「そうだ。ヘリは手配してあるし、場所も大体は特定した。あとは足での捜査だ。……糸見は既にヘリポートで待機している」

 

「了解しました! その任務、全力で遂行します」

 

「くれぐれも気を付けてな」

 

 

 その言葉を最後に、百合は一礼して去っていく。

 結芽がこの場に居たなら、間違いなく百合を止めていただろう。

 何故なら…彼女も百合と同じく、離れた場所で胸騒ぎを感じていたからだ。

 

 -----------

 

 ヘリで現場に向かったのは良いが、着いた時刻は夕暮れ時。

 特定された場所は、嵐山の山間部中腹。

 大雑把ではあるが、情報が全くないよりはマシだ。

 ヘリから落ちるように降りた百合と沙耶香は、周囲の警戒をしながら山間部の獣道を進む。

 

 

「百合……。ここ、何だか嫌な感じ」

 

「私も、沙耶香ちゃんと同じだよ。変な寒気がする。ただ寒いって言うのとは違う……不気味な感じ」

 

 

 荒魂の気配は百合でも確認できない。

 もっと奥に居る可能性が高いのだろう。

 二人は御刀にすぐ抜刀できる準備をしながら、捜査を進める。

 十分……いや二十分ほど経っただろうか、一向に荒魂の気配がない事に、百合は違和感を感じ始める。

 

 

(……クロユリ、反応はないよね?)

 

(ええ。…恐ろしいくらい静かよ。誘い込まれてるみたい)

 

(……まさか!?)

 

 

 クロユリとの会話で何か気付いたのか、百合は周囲を良く確認する。

 すると、生い茂った周囲の木が、上空を完全に隠しきってることが分かった。

 胸のざわつきが最高潮にまで達し、動悸が早くなる。

 来る。

 ナニカは分からないが、得体の知れないナニカが来ている。

 

 

「百合。……ナニカ、来てる?!」

 

「……沙耶香ちゃん。御刀を抜いて。相手が誰であろうと油断しちゃダメ」

 

「ん…」

 

 

 小さく頷いた沙耶香は御刀を抜き写シを張る。

 チラリとそれを見やった百合も、二振りの御刀、宗三左文字と篭手切江を抜いて写シを張る。

 警戒心をMAXまで引き上げた二人は、何時でも戦闘態勢に入れるように腰を低めに落としていた。

 

 

 足を止めてから約数分。

 気に止まる小鳥の鳴き声以外聞こえなかったその場に、葉と枝を踏む音が複数届いてくる。

 

 

(…一…二…三…四…五…六…七…七人)

 

(気を付けなさい。全員、体にノロを入れてるは……しかもあの時の冥加刀使より多く)

 

「…沙耶香ちゃん。気を付けて、多分全員冥加刀使だよ」

 

「今後の行動は?」

 

「倒して、情報を貰う。その一択かな。闇雲に探してたら、この襲撃を何回も喰らう事になっちゃう。あんまり、同じ刀使は斬りたくないし……」

 

 

 罪悪感が含まれた声は、少し震えているのが沙耶香でも分かった。

 彼女は、一層御刀を強く握り締める。

 友人が、これ以上苦しまなくて良いように。

 

 

 早い段階で、敵を片付ける。

 決意は一種の誓となり、迫り来る敵を視認し睨みつけた。

 

 

「御足労感謝します。夢神百合に糸見沙耶香。ようこそ、私たち黒桜(こくさ)の隠れ家に。……私のことは薔薇(ばら)とでもお呼びください」

 

 

 そう言ったのは、優に百七十を超える長身の刀使。

 十代後半ほどだろうか、漆黒の髪は適当な長さで腰の辺りに揃えられており、朱殷(しゅあん)の瞳が百合たちを見据えている。

 体付きも、程よく鍛えられていることが分かる。

 

 

 ……加えて、彼女たちはS装備を纏っていた。

 ただのS装備ではない……珠鋼搭載型S装備。

 沖縄での実験以来開発を凍結されていた筈の代物を纏っているのだ。

 しかも、七人全員が……

 

 

「珠鋼搭載型S装備…ですか。聞くことは多そうですね」

 

「あら、これを知っていらっしゃるのですか? だったら、大人しく降伏しませんか? 真っ当にやり合って勝てる勝算はありませんよ?」

 

「…簡単に負ける気はない」

 

 

 無念無想を発動した状態の沙耶香が、近くに居る冥加刀使に突っ込んだのを皮切りに戦いが始まる。

 百合もリーダー格らしき冥加刀使に迅移で接近し、宗三左文字を振り下ろした。

 しかし、彼女は構えぬまま、自動発動した金剛身で身を守り、カウンターの薙ぎ払いを返してくる。

 

 

 龍眼による未来視で体を背けて避けるが、他にも居る冥加刀使が体制をズラしている百合を見逃す筈ない。

 三人同時に迅移で接近し斬りかかった。

 幾ら二刀流とも言えど、三箇所からの同時攻撃を、体制をズラしたまま凌ぐのは至難の業だ。

 

 

 だが、百合はそんなの苦ともせず、ノールックで放った後ろ回し蹴りで後方から来る一人を吹き飛ばし、正面左右から来る二人の振り下ろしをギリギリの所で受け流す。

 その後も、受け流されただけの二人は攻撃を続ける為に、切り上げる。

 

 

 けれど、連続攻撃を易々と受けるほど甘くはない百合は、二人より早い神速の切り上げで、写シを斬り裂いた。

 写シを外された冥加刀使は、意識を失いかけているのか、地面に膝の手を着いたまま動こうとしない。

 蹴りを喰らった冥加刀使も、大木に打ちどころ悪く頭をぶつけたのか意識を失っている。

 

 

 確かに彼女達の珠鋼搭載型S装備は五段階の金剛身を発動したが、百合も五段階の八幡力を発動していたので相殺されてしまったのだ。

 

 

 残るは……

 

 

「残ったのはあなただけですね…」

 

「それはどうでしょうか?」

 

「……っ!?」

 

 

 いきなりどこからが放たれた注射器は、百合が一瞬前まで居た地面に突き刺さる。

 突き刺さった後は、自動的に中のナニカが注入されてーー荒魂が出現した。

 

 

「ヴァァァァウ!!」

 

「ちっ! 沙耶香ちゃん、冥加刀使の相手は後回し! 今はこの荒魂を……」

 

 

 自分と数メートル離れて戦っていた沙耶香を見やると、そこには……

 写シを剥がされて地に伏せる沙耶香の姿が。

 助けようにも、目の前の荒魂は熊型の巨大荒魂。

 目を離そうものなら、一撃でやられるだろう。

 かと言って、沙耶香を放置している訳にもいかない。

 

 

 倒れた彼女の近くに居る冥加刀使は二人。

 一人は何とか倒せたらしいが、二人同時に倒すことは不可能だったらしい。

 

 

(…流石に、五段階の八幡力と金剛身が使える相手を二人は難しいよね。……一人は何とか速さで倒せたって感じかな)

 

(あなたや結芽、可奈美のような才能の塊はこの世にそんなに居ないわよ)

 

(ごめんなさいクロユリ。あなたの力借りるよ!)

 

 

 大荒魂の力を解放し、白と黒にオレンジが合わさった姿に変化した百合は両の瞳に違う輝きを宿すと、四段階迅移で移動し沙耶香を確保。

 ついでと言わんばかりに、熊型の大型荒魂を斬り倒し、離脱しようと試みた……が、何者かに行く手を阻まれた。

 

 

「…また、あなたですか」

 

「悪いけど、その力貰うわよ?」

 

「お生憎様。この力を譲渡する気は毛頭ありません」

 

「あらあら、誰も譲って下さいなんて頼みませんよ。ねぇ、皆さん?」

 

 

 彼女ーー薔薇がそう言うと、あらゆる方向から注射器が飛んできた。

 普段の百合なら避けられただろうが、今の彼女は沙耶香を担いでいる身。

 ノロが入っているであろう注射器など放たれたら、第一に自分の身より沙耶香の身を案じて行動を起こす。

 全神経を集中させ、沙耶香に当たる注射器と自分に当たる注射器を叩き壊していく。

 

 

 だがしかし、完璧に壊しきれる筈はなく、三本の注射器が荒魂化した百合の体に刺さり、自動的にノロが注射されている。

 

 

「ヴゥゥゥゥウ!! ア゙ァァァァァア!!」

 

 

 血が沸騰するように熱さを増し、体中を駆け巡る。

 灼熱の炎に焼かれるような痛みが、百合を襲う。

 そして、ノロの注入により、彼女の中にいたクロユリの穢れの度合いが高くなり、異形化が始まる。

 

 

 ……薔薇はこれこそを狙っていた。

 表面的に、クロユリが現れるのを。

 御刀を構えた薔薇は、皮を剥ぐような剣捌きで百合の半分である大荒魂(クロユリ)を削り取った。

 

 

 刹那、百合の体は人間として普通の状態に戻り、焼くような痛みも治まったが、急速に体が冷え始める。

 凍えるような寒さだ。

 まるで、体中の細胞が死滅していくかのような。

 

 

「ありがとうございます。夢神百合。あなたのお陰で、私たちの目的に一歩近づいた」

 

「クロユリの力で……何…を」

 

「決まっています。新世界の創造ですよ!! 荒魂と人間の融合、それが起こることによって、人間は新たなレベルに進むことができる。…誰も、荒魂によって死ぬ事は無くなる。最高の世界じゃないですか!!」

 

 

 狂ったように笑う薔薇。

 その笑い声を最後に、百合の意識は深く…深く堕ちてった。

 

 -----------

 

 任務を終えた結芽は、いつも通り百合が待つ自室に戻る最中だった。

 先日の夜からの任務、お陰で丸一日ほど百合に会えなかったのだ。

 ウキウキとスキップしながら自室に向かうのも無理ないだろう。

 だが、結芽の待つ至福の時は、その日訪れなかった。

 

 

 自室のドアを開けて中に入ると、真っ暗だったのだ。

 もう、電気を付けてないと何も見えない時間だろうに。

 頭に疑問符を浮かべながらも、結芽は部屋の奥に進んで行く。

 すると、百合が編んでいたであろうマフラーを見つけた。

 綺麗な桜色で、桜の刺繍まで入れられている。

 

 

 ほぼ完成品に近いのだろう、今すぐにでも使いたい衝動を抑えながら部屋を見渡す。

 電気をつけて見易くしたが、百合は見当たらない。

 

 

「おっかしいなぁ〜。今日帰るって、言ってたのに……。もしかして、お風呂かな?」

 

 

 あらゆる可能性を考えようとベットに腰掛けた瞬間、スマホが軽快な音を鳴らして電話がきたことを報せる。

 ……電話の相手は結月だ。

 

 

『もっしもーし。どうしたの、相楽学長〜?』

 

『結芽。落ち着いて聞いてくれ……』

 

『いきなり何? 何かあったの?』

 

『実はな……』

 

 

 電話越しでも分かる、結月の少し震えた声。

 昼過ぎにも感じた胸騒ぎに近いが、それ以上のものにも感じた。

 とてつもなく、嫌な予感がする。

 聞かない方が、良いかもしれない。

 

 

 だが、電話越しの結月に結芽の思いが通じる訳はなく、結月は重い口を開くかの如くゆっくりと言った。

 

 

『百合が倒れた』

 

『……えっ?』

 

 

 スマホを持つ手から急に力が抜けて、ブラりと垂れた。

 続いていた平穏は、続いていた幸せな時間は、その日に砕けちてしまった。

 




 みにゆりつば「○○しないと出られない部屋」

 朝、目が覚めたら、二人は見知らぬ部屋にいた。
 ドアは二つしか見当たらず、他に出口はない事が一目で分かるような部屋だ。
 しかも、その内の一つは御手洗。
 ベットが一つに、冷蔵庫が一つ。
 キッチンも有り、冷蔵庫の中の食料を使えば一週間は持つレベルだ。


「ここ、何処だろうね?」

「さぁ、何処かなんて分かんないよ。それより、スマホが圏外で、イチゴ大福ネコの冒険が出来ないんですけど〜!!」


 閉じ込められたことより、ゲームが出来ない方が怒るとは……
 何とも結芽らしい、と思いつつも百合は必死に出る方法を探す。
 ……十分程探すと、出口らしきドアの上に小さく文字が書いてあった。


『尊さをオーバーフローさせれば開きます』

「と、尊さをオーバーフローって何?」

「ん〜? すっごく可愛いって事じゃない? それか癒される〜とか?」


 二人であーでもないこーでもないと話していると、ベットの上にナニカが落ちた。
 話していてもそれくらいは気付くので、百合と結芽は警戒しながらも落ちたナニカに近付く。


 ……落ちてきたナニカとは? 


「バニーガールの衣装? ……しかも、一着分だけ」

「しっかりウサ耳カチューシャもあるし、尻尾も服にくっ付いてるタイプだね〜。……ゆり?」


 目を怪しく光らせた結芽は、カチューシャとバニー服を持ってゆっくり歩み寄る。
 …百合は覚えていた。
 犬耳が生えた時、結芽に首輪を(無理矢理)付けさせられたことを。


「ゆりも私も寂しがり屋だし、どっちもウサギで間違いはないけど〜。ゆりは飼ってもらう側、だよね〜」

「ゆ、結芽、ちょっと待ってよ。ジャンケン、ジャンケンで決めよう!!」

「だーめっ」


 小悪魔のように魅惑的な笑顔と、肉食動物のような獰猛な瞳で百合に迫る結芽。
 数分も掛からずに、制服を剥かれてバニーガールに変身していた。
 網網タイツに、体のラインがピッタリでるバニー服、最後にウサ耳カチューシャで完成。


 可愛い可愛い、百合ウサギだ。


「ゆりは、今。私が飼ってるウサギちゃんだよね? だったらさぁ、私の言う事。ちゃーんと聞けるよね?」

「は、はいっ!」

「へぇ〜、ゆりの中でウサギの鳴き声はそれなんだ〜。ふ〜ん。出来ないなら、私が鳴かせてあげようか?」


 身長差があるにも関わらず、百合は力なくベットに押し倒される。
 紅潮した頬、荒い吐息、潤んだ瞳。
 それでも逃げようとしないのは、真に結芽が好きだからこそ…だろう。
 二人を遮るものは何もなく、一度目の口付けを行う。


 一度目は触れるだけ、二度目は少し長く、三度目は少し舌を入れる。
 焦らしながら、百合からの言葉を誘う。


「……ゆり? もっと、もーっと凄いキス…したくない?」

「………………」


 何も言わず、コクリと頷くだけ。
 それだけではダメなのだ。
 それだけでは意味が無いのだ。
 しっかりと彼女の口から言葉が出なければ……


「私さぁ、最近目が悪いんだぁ。言葉で、ハッキリ、伝えてくれないと…分かんないなぁ?」

「……したい」

「なぁに?」

「…もっと凄いキス…して欲しい…です」

「そっかそっか、じゃあ。いただきまーすっ!」


 ゆっくりと迫る唇。
 思考回路がショート寸前の百合は、結芽の行動全てを受け入れてしまう。
 だからこそ、必然として唇は重なるーー筈だった。


 ドゴォンと音を立てて、出口らしきドアが壊れ外から真希や寿々花たちが入ってくる。


 ……この後、寿々花にこっ酷く怒られたのは言うまでもない

 -----------

 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

 感想もお待ちしております!

結芽の誕生日は……

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  • 過去のイチャラブ

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