なおチョコボの木乃伊はいないものとする
最初に異変に気が付いたのは調査隊の一人、銀の髪を肩のあたりで切り揃えた少年兵だった。
彼は今回の調査隊に特例として同行した護衛だ。
事前の情報では現地で敵対勢力との戦闘は無し、ただし輸送時に襲撃の可能性アリとのこと。低い可能性ではあるが戦闘になった場合の敵勢力の排除。
またミッションとして承った内容は調査隊に同行し対象を新羅まで輸送することである。ようは何かあった場合の保険だった。
彼の思惑として2000年ほど前に死んだ女の木乃伊をミディールに見に行いって持って帰ってくるお気楽な観光旅行を科学班と仲良く一緒になんてということは反吐が出そうだが仕事ならば仕方がない
不満を飲み込んで周囲の気配を探る。敵はいない。
聖女の入ったマテリアに目を移す。まぁ木乃伊は思っていたほど見目悪くはなかったが、しかしこれと一緒に輸送機に乗るのはぞっとしない
調査隊の内調べていた科学班のひとりが「やはり一度新羅へ」と言うと周りも同意した。漸くここでできることは調べつくて新羅でさらに詳しい調査をするということで結論がでたようだ
教会内部の気配がひとつ減ってひとつ増えた
「あれ、あいつがいない」
「トイレにでもいったんじゃないか?」
「外にしかトイレはないし扉はずっと締まっていたからどこかに隠れているんじゃないか?」
「そんな馬鹿みたいな悪戯・・・」
悪ふざけとかいい加減にしろよ子供じゃあるまいし、調査隊は苦笑いしつつ異常事態に冷や汗を流すものもいる。
ホラーじゃあるまいしこんな密室で事件が起こるはずがない
教会という日常と隔絶された空間での出来事。自分たち以外躯しかいないというホラーにおあつらえ向きの雰囲気ではあるが自分たちが何等かの事件の当事者になるとは思ってもいない。
先ほどまで話していた相手が突然居なくなった。思い浮かぶのはミディールでの集団失踪。
皆はまさかと思う。
教会内部は異様な緊張感に包まれる。ナニかが起こるかもしれない。これはここにいる全員の共通意識だ。
すでに日は沈みつつあり教会は電気も止められてしまったのか照明はつかない。しかも間の悪いことに強い光で痛むものもあるので照明器具は持ちこんでいなかった。
目の前の誰かの顔も見分けがつかないほどここは暗く人の眼では物の輪郭程度しか分からないだろう。この暗闇で平常時と変わらず行動できるのはソルジャーかもしくはモンスターとなる
故に科学班という一般人では一瞥したところで何があったかなど分からないのだ
「ギャ!」
「おいどうした!」
殺気に加えて血の臭いが充満する
狩りが始まった
ソルジャーである彼はまだ年若くはあったがすでに何度か戦場やモンスターの討伐を行っており、それなりの経験は積んでいた。
だが今回は異様にすぎた。そのため一瞬行動が遅れる。
護衛対象である科学班と回収対象のどちらを優先すべきか迷ってしまった。
「なんだあれ・・」「おい、あれって・・・」
科学班のひとりが指をさして異常を知らせる。そこにあったのは壁に沿って並べられていた守護聖人の遺体が持ち上がりこちらを見つめている。
落ちくぼんだ眼孔は光を移さないもののこちらを伺っているようだ。
よくよく見ると木乃伊からは管のようなもが床へ向かって繋がっている。
本体は地下か?あちらがどう動くか分からないがここには壊せないものが多すぎる。さてどうするか・・
木乃伊に気を取られていて後ろから近づく存在を見落とした。とてつもない速さで鞭のような触手がこちらへ攻撃をしかけてきた
鞭で払われる者、絡め取られる者、逃げれた者それぞれ必至だ。
とある触手は科学班の一人に突き刺しチュルチュルと血を肉を啜る音が聖堂に響く。
触手に絡め取られた他の男は真っ青な顔をしてそれを眺めている。
そして全てを吸われた男はまるで早回しのように生気を失い悲鳴さえ漏らさず哀れな犠牲者は絶命した。
「いやだ死にたくない!!
「助けてくれ!」
一瞬で恐慌状態に陥った科学班達は出口に殺到する。
非戦闘員である彼らはここでは無力だ。
「おまえソルジャーだろ!あれをどうにかっ!!」
最後まで言葉を放つことができなったか男は触手に絡め取られて天井付近まで持ち上げられた後触手を突き刺され他の者と同じ運命をたどる。
こちらも何本か触手を切ってはいるが何せ数が多すぎる
魔法を使おうにも自分の魔法は威力はあっても精度がイマイチで下手に打つと人間に当てかねない。
何本も鞭をあやつりこちらへ攻撃をしかけるモンスター。
どうにか出口まで逃げれた科学班は外へ出る。無事な人間はほとんど聖堂から居なくなった。
「ブリザラ!!」
外へ逃げろ!少年が叫ぶが聖堂に残ったのは死者か負傷者ばかりで動きはない。
触手を凍らせて一時的に攻撃が止まる
しかし下から振動が起きて教会が崩れ始める。少年はまだ比較的無事な負傷者をかかえ聖堂の外へ出た。
無数の触手は無造作に聖堂を破壊して瓦礫や埃が際限なく舞う。
教会の輪郭がほぼ無くなり基礎から爆破されたかのような酷い有様となった。
地下から巨体が現れる
巨大なモンスターは形は蜘蛛のようだ
頭も尾もない胴体から足と触手が生えている。
圧倒的質量。圧倒的レベル差。生き残った科学班から絶望が感じられる。
こんなものを相手に俺一人でやれだと?!
それ以上に足手まといの科学班の保護と回収対象の確保もしなければならない
ミッション費用をケチりすぎだ。誰だ予算を組んだバカは・・!!
〝ミッション失敗”
という言葉が頭をよぎる
しかしその思考は突如聞こえた声によって遮られた
「せっかく熟睡できるほど快適なベッドだったのに叩き起こされるとはな」
銀の魔女が目を覚ました
銀髪の少年は一体なんィロスなんだ・・
オネショタァ