キャメロットの古戦場【Camlot Schlacht】   作:タマモ猫
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白刃 嶺ってなんか霧ヶ峰みたいですね。


白刃 嶺という少女。

「...高い」

 

「ん?そうでしょ。こんなビルの屋上なんて来れないもんね」

 

思わず覗きこんでしまうが、腰が抜けてしまうかのような高層ビルの屋上。下に広がるのは無数の夜を照らす電灯と行き交う車、電車、そして...あまりにも小さく見える人々。

 

「人が来ない場所じゃないと話せないからね。強引だったのは謝るよ」

 

彼女はごめんね?と手を合わせ片目を閉じる。返り血を浴びた彼女の姿は、勿論可愛く見えるはずもなく。ただただ狂気に囚われているようにしか見えなかった。

 

「いえ...ありがとうございました。助けていただき」

 

「いやいや。ワケわかんなかったでしょ?巻き込んで悪かったね」

 

それでも、彼女には助けてもらったのは事実。何とお礼を言ったら良いか。

 

「...」

 

「?ふふ、事情を聞きたいって顔だね」

 

「...えぇ、まぁ」

 

「気になるよねぇうんうん。男の子なら刀とか銃とか憧れるよねぇ」

 

いや、僕が気になったのはそこじゃない。いや、かっこいいかどうかと言ったらかっこいいからそこは気になるけども。違う、僕が聞きたいのは。

 

「...先ほど、スマホを見たらこんなメッセージが入っていました」

 

ポケットからスマホを取り出し、彼女に見せる。

 

『ようこそ、ハイバ様。キャメロットの古戦場へ。今日も、楽しい戦闘にしましょう』

 

「...君にも来たか」

 

「...ということは、あなた方もこれを?」

 

「うん。あたしも一緒さ」

 

彼女も同じようにスマホを取り出し操作する。

そしてその画面を僕に見せてくる。そこには、【キャメロットの古戦場】と書かれた黒い画面が立ち上がってるところだった。

 

「これはアプリでね。君にも同じのが来てるはずだよ」

 

「さっき確認しました。これは、一体...」

 

「...Camlot Schlacht(キャメロット シュラハト)。【キャメロットの古戦場】は世界各国で行われてる大規模戦闘シミュレーションゲーム...だったはずの物さ」

 

「だったはずの?」

 

「うん。今じゃ、あたしやさっきのあいつみたいに...武器を、装備を、力をこの世界に顕現させる事が出来る」

 

彼女は、腰の鞘に挿してある身の丈と同じ程の刀を抜く。金属が擦れ合う音と共に、月光に照らされた白銀の刃が輝く。

 

「名刀、物干し竿。かの剣豪佐々木小次郎(ささきこじろう)が振るったとされる太刀。あたしの武器はこれ」

 

ふっと刀を回転させながら振るう。空気を切り裂くかのような音、それでいて全く重さを感じさせない。片手だけで刃が空中を舞っている。

 

「モチーフ:ヒューマン/ブレイド。あたしの武器はレベル3になって()が与えられた。あたしのアームドの名は、佐々木小次郎。あの最強の剣客の名が与えられるなんてね」

 

「ちょちょちょ、待ってください!理解が...」

 

「...あぁごめんごめん。つい熱くなっちゃった。順を追って説明するね」

 

 

 

【キャメロットの古戦場】は某国で始まったアプリゲームの総称だった。プレイヤーは武器を選んで、実際の街を模した大規模な戦場で戦い合う。敵と遭遇し戦い、勝つと敵の強さに応じてポイントが貰える。そのポイントを武器の強化に使うと武器に名が与えられ、大幅な強化が施される。

しかしある日を境に、このゲームはネット上ではなく、リアルの世界(・・・・・・)で行われてるようになる。詳しい理由や原因は分かっていないが、プレイヤーの多くは数分、数時間、数日とまばらだが記憶の混濁、喪失が見られた。

現実での武器の顕現には、身体能力への補正も含まれ、常人では考えられない力を発揮する事が出来る。男があの銃を、彼女があんなに長い刀を振るう事が出来るのはこれに由来する。

 

「...つまり、負ければ死ぬと?」

 

「いいや?降参機能もあるし、進んで殺人したいって訳じゃない奴はポイントだけぶんどってどっか行くよ。降参させると多くポイントが入る上、敵からポイントが奪えるから一石二鳥なのさ」

 

ふむ...しかし実態は掴めた。常人では考えられない、人智を超越した力を、手にいれられる...。

 

「君にも、メッセージが来たなら...()()()()()()()

 

「...っ」

 

そうだ。そうだ。僕にも、これが来たんだ。僕にも...彼や、彼女のような力が、手に入る。命の危険を伴い、負ければ死ぬかもしれない、この戦場に生きる事が出来る。

 

「...まぁ、君はこんな道を行く道理も理由もないと思うけど」

 

「いいえ」

 

そんなわけないじゃないか。

 

「?...ふーん」

 

()()だ。これを特別と言わず何と言うんだ。この広い世界で、こんな事ってあるか?ゲームが現実になる、それには命の危険を伴う...凄い、凄い事だ。偶然でも運命でもどちらでもいい。これをやれば僕は...特別になれる...!!!

 

「...やるに決まってるじゃないですか。こんな魅力的なもの、蹴る理由がないです」

 

「...ふーん。そういう顔するんだね」

 

にまーっと怪しい笑みを浮かべる彼女。...どういう顔だろう。自分では分からない。

 

「んじゃあ始め方は簡単だよ。アプリを開くだけ。ユーザー情報は勝手に入力してくれるし、あたしのみたいな武器も勝手に出てくる。君にあった最高の武器が来るよ。...じゃあ、あたしはここで」

 

「え!?この屋上に置いてくんですか!?」

 

「あはは大丈夫大丈夫。...君の武器が助けてくれるよ。んじゃ次は...戦場で会おうね」

 

ひらひらと手を振って刀に手を掛ける。一度跳躍して屋上から一気に上空に身を投げる。端から見れば身投げ自殺しているようにしか見えないが...空中で笑みを絶やさず、体勢を保ちながら落ちていく彼女を見ると、それが当たり前の光景に見える。

 

「...僕の、武器」

 

このアプリを開けば、もう戻れない。戦場に身を投じ命を賭けた戦いと向き合う事になる。

それでも...僕は高揚している。これは、選ばれし者の戦いだ。誰にでも出来る事じゃない。もう、普通の人間ではない。

 

「...ふーっ...」

 

『...ユーザー情報確認。アカシックレコードのデータを参照し、照らし合わせます』

 

アプリをタップすると、機械質な女性の声が聞こえる。

 

『灰羽 京。17歳。身長174cm、体重59...』

 

どんどん個人情報が入力されていく。通っている学校や、生年月日...何故このアプリは知っているんだ?アカシックレコードって何だ。それって...情報の全てが統合されている世界の図書館じゃないのか?

 

『情報入力完了。レコードデータと一致しましたので、ユーザーを承認します。ようこそ、ハイバ様。キャメロットの古戦場へ。まずは、あなたに合った最高の武器をプレゼントします』

 

一瞬画面がブラックアウトし、画面の中心にあるロゴが表示される。黄金の円盤の中に、12本の剣と、その中に不自然に明けられたスペース。そこにあるはずの13本目の剣が、わざと引き抜かれたように。これは...円卓物語を模したロゴか?確かにキャメロットは円卓の騎士達の物語が繰り広げられる場所の名だ。

 

『...アーム照合完了。アームを展開します。コードネーム"エヴォル"』

 

「...っ、な!?」

 

突如スマホが光出す。ショートしてしまうのではないかと思う程の熱量と共に激しく振動する。

 

『顕現完了。アーム、"エヴォル"。これで正式にユーザーと承認されました。さぁ、楽しい戦闘にしましょう』

 

思わず手からスマホを放り出してしまう。すると、スマホの中から黒い物体が出現した。光が放出され終わると、その全貌が明らかになる。

 

ベルト型の長い部品の中心には、謎の機械が取り付けられている。黒く長方形に近い。青い線が幾つも光っている。中心にはモニターが取り付けられ、幾つものスイッチが内蔵されている。

そしてもうひとつ。それは不思議な形状をしている。僕の握り拳程の幅、まるで殴られた後のような拳の跡型の形状の裏面。表面には幾何学的な紋様が青く光る線で描かれておりますます謎だ。

 

『アーム、"エヴォル"は変身型のアームです。"フィストトランス"を殴りつける事で、バックルが呼応し、全身を形成するスーツ型アームです。主武装はなく、掌甲、踵に取り付けられたブースターが副武装となっております』

 

何故主武装がないんだ。

 

『その他は...データがありません』

 

「は!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()新しいアームです。只今データを照合し確認を取ります...応答がありません。ハイバ様、あなたのアームは...unknown codeを持つ武装として承認されました』

 

「なん...は!?」

 

ちょっと待ってくれ、どういう事だ。全知の書庫に記載のない武装?つまりこれは...運営の手の届いていない、未知の武装...ということか。

 

『ではこれにてユーザー案内を終了します。ハイバ様のこれからの健闘をお祈りしております』

 

「あっ、おいちょっと!!」

 

...返事がない。くそ、何も分からないままこの武装を使えってのか。

 

「...これを殴るって言ってたな」

 

ベルトを腰に装着し、フィストトランスと呼ばれた部品を拾い上げる。...本当だろうか。もしかして全部騙されていたんじゃ...いや、今のとこあり得ない事の連続だ。これも例に漏れず。

 

「...くっく、望んだ果てが幼い頃の憧れとそっくりとはな」

 

幼い頃憧れた、仮面ライダー。誰にもその正体を、その活躍を知られる事なく立ち向かう正義の味方。それにそっくりじゃないか、これは。

 

「...ふーっ。変身」

 

フィストトランスを空中に放り投げ、拳を構える。空中から落ちてきたそれを思いきり殴りつける。

 

『Evol trance Ready go!!!』

 

機械質な音声と共に、殴りつけたフィストが青白い光を放つ。すると、元の形状とは似ても似つかない程にそれは多方面に広がる。身体に引っ付き、それはより拡がっていく。

 

「う、うぅ...!」

 

得体の知れない感触に恐怖を感じる。しかし、それをぐっと堪える。身体中に拡がっていく青と黒の波。これが...僕の...!!!

 

身体を覆う蒼黒の鎧。中心に真っ直ぐ蒼く発光する線2本が引かれ、腕には計4本上下左右に線が引かれる。胸部には蒼いプレート、腕には掌甲から肘もとにかけて部品が取り付けられ、噴射口と思われるマフラーが搭載されている。脚部には獣の爪を模したかのような鋭い刃が脚甲に取り付けられ、踵には腕のブースターと同じ物が搭載されている。

 

本当に...変身した...!!!

 

「...ふっはは!!凄い!!本物だ!!やった、やったぞ...!!!」

 

僕は感情を抑えきれず、真夜中で大声で笑う。これが笑わずにいられるか。心の片隅にあった、形の保っていない幻想の願望。それが、今叶ったのだ。非現実だと思っていたものを、自分が今体現している。それが嬉しくて堪らない...!!!

 

「僕はもう、普通なんかじゃ...ない!!!」

 

踵のブースターを点火し、彼女と同じように空中へ跳躍する、そのままビルの屋上から地上へと急降下していく。分かる、武装と使い方が、身体の使い方が!!!

 

「見返してやる...何もかも!!!」

 

ここからだ、僕はこの世界でのしあがってやる。誰も彼も、僕を認めさせてやる。

 

これは僕の戦いだ。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

『良かったのか?あれは相当危険だぞ』

 

「いいジャーン。仲間は多い方が良いって」

 

『あれが仲間になるかどうかだがな』

 

真夜中の公園、ジャングルジムの一番上でかがみこむ少女。黒いフードを被り、腰には黄色の線が入った黒い長方形の武装を下げている。

 

『ミネ、あまり軽率な行動をするな。こちらの管理が行き届かん』

 

「ごめんって“ニュートン“。でも彼...面白いよきっと」

 

『...ふん。彼を見つけたら速攻でこちらに引き入れろ。いいな』

 

「はいはーい...いざとなりゃ力づくだよ」

 

『物騒な女だ』

 

通話が切れる。スマホを腹ポケットにしまい、そのまま手を入れる。

 

頭上には都会の光に隠れ、光を失いつつある無数の星空。そしてそれらを照らす白い月。

 

「...いらっしゃい、京。次は...戦場で、だね」

 

にこりと微笑む彼女。その表情は誰もが見蕩れる、美しい少女の笑顔。

 

しかしもうそこには居らず、煌々と輝く夜空が、当たり前のようにあるのみだった。




仮面ライダー好きなんです。実はエヴォルもそこから取ってたりするんです。色々考えた結果ですけど。


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