なので短めです。
──レミリア⋯⋯紅魔館、パーティーホールにて──
今日は私の500歳の誕生日。キリが良くて目出度いという理由から、いつも以上に賑わい、盛大なパーティーとなった。まるで昨日の事すら全て忘れられ、何事も無かったかのようにされて。
本当はフラン⋯⋯お姉ちゃんとずっと一緒に居れると思って、邪魔が入らないように紅魔館の住人以外呼んでない。だが、今回はそれが仇となった。紅魔館以外の人はお姉ちゃんの噂も何も知らないから他意は無いだろうけど、紅魔館の住人なら噂は知らなくても昨日今日の出来事くらいは把握してる。だから、昨日のフランの事も知ってるだろうし、絶対に雰囲気や空気が悪くなる。それにお姉ちゃんが耐えれたらいいけど、そんな空気の中でお姉ちゃんが楽しめる気はしないし⋯⋯。
「お嬢様。辛い気持ちは分かりますが、きっとフラン様は来てくださいますよ」
横では私の暗い表情を読み取ったのか、咲夜がそんな言葉を投げかけてくれた。私とフランの関係を知ってる人だからこそ言える言葉。昨日の後始末も結局は咲夜がやってくれた。一部の妖精メイドは現場を見てもそそくさと見て見ぬふりをして立ち去ったというから、全て自分からしてくれる咲夜には感謝してもしきれない。
「⋯⋯ええ、分かってるわよ」
口ではそう言っても心配だし、凄く不安だ。お姉ちゃんに拒絶されたのは初めてだし、こんな事件が起きたのも初めてだから。それでも、私はお姉ちゃんを信頼したい。お姉ちゃんは優しいから。お姉ちゃんと⋯⋯約束したから。
「⋯⋯お姉様」
「⋯⋯え? あっ⋯⋯!」
そんな事を考えてると、ふと背後から声が聞こえた。考え事に夢中だった私は誰の声かも気付かずに振り返る。すると、そこには気まずそうにモジモジとするフランが居た。
「フラン⋯⋯!」
「え、ちょっ⋯⋯! はー、もう⋯⋯」
来てくれるとは思ってたけど、あまりにも嬉しくて、思わずその身体に飛び込んだ。突然の事でお姉ちゃんはビックリしてたけど、よろけながらもしっかりと受け止めてくれた。
「良かった、本当に来てくれて⋯⋯!」
「うん、まあね。でも、ちょっと暑苦しいし、恥ずかしいから離れよ? ⋯⋯約束だから、ちょっとだけね。⋯⋯あまり長居すると、場の空気も悪くなっちゃうしね」
ちらりと周りを見渡すと、お姉ちゃんの表情が暗く沈む。視線に釣られて私周りを見渡すと、一部の妖精メイド達は怪訝な目でこちらを見て、ヒソヒソと話をしてる。お姉ちゃんほど私は耳がよくないから、何を言ってるか分からない。だけど、お姉ちゃんの顔を見てその大まかな内容は把握できた。
「⋯⋯うーん、やっぱりこうなるよね。じゃ、お姉様。もう行くね。邪魔してごめんなさい」
「え、あっ⋯⋯ま、待って⋯⋯」
自分でも驚くほど声が小さくか細くなる。遠く⋯⋯何処か、私には分からないような遠い場所に行きそうなお姉ちゃんを、私は声を大にして止める事ができない。昨日の約束は守ってくれたけど、それ以上にはならなかった。
だから、何をしても私じゃお姉ちゃんを止められない。そんな自信の喪失が、自然と私の足を、手を、勇気さえも引き止めた。
「⋯⋯お嬢様。よろしいのですか?」
フランが去った後、咲夜が隣で小さく声をかけてくれた。心配してくれてる、というよりは本当に疑問を持ってるような口調だ。
「咲夜。私、どうすればいいと思う⋯⋯? 私、フランを止めれないかも⋯⋯。もうこのまま、会えずに⋯⋯」
「そう思うなら、追ってはいかがです? 今からでも遅くないですよ」
「でも⋯⋯」
「お嬢様。失礼ながら、1つアドバイスを。──今のフラン様は不安定です。ですから、安心させてくれる人を待ってるのだと思いますよ」
それができれば苦労しない。そう思ってた事が表情に出たのか、咲夜は首を横に振る。
「お嬢様ならできます。いえ、お嬢様にしかできないのです。フラン様を今まで真正面から受け止め、周りの意見に左右されずにしっかりとフラン様を見ていたお嬢様にしか。そして、フラン様の唯一の心の拠り所であった、お嬢様⋯⋯いえ、レミリア様にしか」
鋭い紅色の眼差しが私を突き刺す。
「逆に、今を逃せばこれ以上進展する事も、フラン様が立ち直る事もないかもしれませんよ。もしかしたら、明日普段通りの笑顔を向けてくれるかもしれませんが、それは最早偽りの笑顔。貴方様を心配させないように強がって見せる笑顔でしょう」
「⋯⋯⋯⋯」
確かに、お姉ちゃんはいつも無茶したり無理する節がある。それに私に弱みを決して見せる事はない。ただ単に、強がって、カッコつけて、偏に私に心配させないために。
「それに⋯⋯姉に甘えるばかりではなく、たまには妹として姉の不満を聞いてあげてください。妹だからといって、いつまでも守られる立場ではない、と姉に思い知らせてあげましょう」
「⋯⋯うん。分かったわ。咲夜、ここお願い。明日までには戻るから!」
「ええ、行ってらっしゃいませ」
咲夜にその場を任せ、私はそそくさとフランの後を追う。もう、手遅れになる前に。間に合わなくなる前に────