陰陽師 創譚ノ巻   作:生野の猫梅酒

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続、むしめづる姫・下

 

 桜の木の下から、露子の屋敷までの道すがら、桔梗と露子は並んで歩いていた。

 牛車は使わない。桔梗にそのような備えはないし、露子は自ら歩くことを苦としない。

 露子の従者であるけら男と、目元を隠した黒衣の少年がその後ろをついていく。桔梗の式である大鷲の風丸が、その頭上を舞っていた。

 桔梗の方が、露子よりも少しだけ背が小さい。そして今の露子は白い狩衣を来て、長い髪を烏帽子の中に隠しているから、さながら男性のようにも見える。

 思わず道行く人がふり返ってしまうような、女性のごとく美しい男性──それが今の露子だった。

 傍目からすれば、やんごとない貴族と、その愛人が昼間から逢瀬しているようにも思える。

 

 しかし二人の間で交わされる言葉は、睦言とは程遠いものだ。

 話題はちょうど、露子のもう一人の従者である、黒丸の話だった。

 

「では、その黒丸は赤蚕蟲(せきさんこ)なのですね。まさか蟲毒によって生まれた式が、それほどまでに美しくなるとは。よほどあなたの心はお綺麗なのですね、御見それしました」

「黒丸が羽化したとき、もしわたしが誰かを殺してやろう、なんて考えていたら、きっとそのように行動していただろうと晴明様は仰っていたわ。だからそうならなくて良かったのだけど、そう衒いなく褒められるのも恥ずかしいわ」

 

 珍しく、露子が照れたように頬を染めた。

 黒丸──赤蚕蟲とは、多数のイモ虫を入れた壺に動物の血を注ぎ、最後に残った一匹を式とする蟲毒の呪いである。 

 法術というよりは呪術、呪詛の類なのだが、黒丸の様子からは微塵も負の印象は見受けられない。

 それだけ、露子の純粋な心に感応したのだ。

 

「どのような経緯でその式を手に入れたかは存じませんが、どうぞお大事になさってください。なにかございますれば、この桔梗めがあなたのお力となりますので」

「ありがとう。そう言ってくれるだけでも心強いわ」

 

 まだ出会って一日と経っていないのに、二人の間には既に友情が芽生えていた。

 

「桔梗は、播磨からこの都へと来たようだけど、どうして陰陽師をやっているの?」

「それしか生きていく術が無かったから、ですかね。どうやら、この天地の理に関わる素質は、人並み以上であったようで。特に篳篥と鏡を用いた術には、自信がありますよ」

「まあ、それは是非見てみたいわ!」

「お望みでしたら、すぐにでも」

 

 そう言った桔梗の視線の先には、立派な門と塀に囲われた屋敷がある。

 露子の屋敷だった。

 懐から篳篥と鏡を取り出し、何やら一言二言唱えてから、露子へと向き直る。

 顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。

 

「これは想像ですが、おそらく露子は、この屋敷を無断で抜け出したのではありませんか?」

「あら、やっぱり分かってしまうかしら。ええ、そうよ。そこのけら男と黒丸以外、誰もわたしが抜け出したことは知りません」

「であれば、戻るのにもこっそりと、でしょう。良いですか、私が笛を吹いている間、誰も一言も喋ってはなりませんよ」

「え、ええ」

 

 唐突な言葉に押されながら、露子がゆっくりと頷いた。けら男と黒丸も同様だった。

 さらに呪らしきものを唱えてから、桔梗はゆるゆると篳篥に唇を当てた。

 微かな、されど明確に耳へと届く楽の音が、昼の大気に溶け込んでいく。

 夏の空気と一体化して、消えるような、溶けるような……なのに、しっかりと音は残っているのである。

 それから、おもむろに桔梗は門へと歩き出した。慌てて露子たちも着いて行く。

 門の傍には見張りがいた。なのだが、近づいてくる桔梗にまったく気が付かない。どころか、露子たちの存在にも気が付かない様子だった。

 息をひそめ、喋らずに門を通過していく露子たちを、門番は何処か呆けたような視線で見送った。

 門を越えて、しばらく行った先の庭の木の影に隠れたところで、ようやく桔梗は篳篥から唇を離したのだ。

 

「いかがでしたか、我が法術は?」

「とってもすごかったわ……! 桔梗、あなたってとても良い腕前の陰陽師なのね!」

「ありがとうございます。でも、私などまだまだですよ。この都には別格の方が多すぎますから」

「それでも、わたしにとってはすごかったわ。今のはどうやったのかしら?」

「鏡を用いて、誰もいない門の様子をあの門番に見せたのです。それだけだと違和感を覚えられる可能性もあるので、笛によって少しだけ意識を乱します。これで、誰にも認識されずに門を潜れたのです」

「へぇ……わたしには、想像もできない世界よ」

 

 感嘆したように、露子が呟いた。

 

「では、首尾よく屋敷に戻ったところで、件の五つ頭を持つ蛇を見せていただいてもよろしいでしょうか?」

「こっちよ、着いてきてちょうだい」

 

 勝って知ったる庭の中を、露子の先導の下で歩いていく。

 庭の中には、露子によって集められたたくさんの虫たちがいた。

 蜻蛉。

 甲虫。

 鍬形虫。

 螳螂。

 蝶。

 他にも他にも──

 多くの虫たちが、思い思い庭に息づいているのである。

 だが、草木や水辺はよく整えられているから、雑多な印象を受けない。自然のままでありながら、見栄えもよい。そんな庭であった。

 

「良いお庭ですね」

 

 桔梗の口から、何気なしに賞賛の言葉が零れた。

 露子はただ、嬉しそうににっこりと笑った。

 その間に、一行は小さな池の傍へとやって来ていた。いったい五つ頭の蛇はどこにいるのか、桔梗が辺りを見回す。地面に蛇の這ったような跡はあるが、近くにはいない。

 

「本当にここなのですか?」

「ええ、そうよ。あの子はなんでも食べてしまうから、今頃は魚でも獲っているのではないかしら──」

 

 露子がちょうどそう言ったとき、池の方から水飛沫が上がった。

 見れば、水の中から蛇の頭が顔を出している。それが、五つ。緑の双眸を揺らしながら、桔梗たちをじっと見ているのだ。うち二つは、獲ったばかりだろう小魚を咥えていた。

 それだけなら、五匹の蛇が水中から身体を出しているだけにも思える。だが、蛇たちが岸へと近づくにつれて、その奇妙さが浮き彫りとなった。

 水から露わになった頭たちは、根元が一つの太い胴に集っているのだ。

 まるで、神話の中から抜け出してきたかのよう。

 露子が描いた絵そのままに、その奇怪な蛇はあたかも五頭龍のごとき威容を晒していた。 

 

「なるほど、これがその奇妙な蛇ですか」

「五つ頭がある以外は、今のところ至って普通の蛇なのよね。よく食べて、よく寝るわ。でも、これが成長したらどうなるか分からないし、黒丸みたいに収まる保証だってないから、相談を持ち掛けたの」

「賢明なご判断です。しかしこれは……」

 

 戸惑った様子で桔梗は五頭の蛇を眺めた。明らかに困惑している様子だ。

 その困惑が、ただ知らない生物に出会ったからでないことを、露子もそれとなく理解していた。

 

「なにか、心当たりでもあるのかしら?」

「……これはもしかしたら、鼠牛(そぎゅう)法師の式やもしれません。いえ、だとしても、どうしてそのようなものが露子姫の下へ贈られたかが分かりませぬが」

「鼠牛法師? お知り合いなの?」

「まぁ、師匠の一人と言いますか、少々教えを請うたことがあります。もっとも通りの良い名は──」

 

 言おうとして、桔梗は不意に口を閉ざした。

 どうしたの、そう露子が訊ねても首を横に振るだけだった。

 

「あまり確証のない内から、その名を出すのは止めておきましょう。あの方は気紛れな方ですが、果たしてここまで腰が軽かったかどうか、自信が持てませぬ」

「まあ、あなたも晴明様のように勿体ぶるの? お楽しみは後に取っておく、というのも分からないでもないけれど、それでは答えがとても気になってしまうわ」

「申し訳ありません。なにぶん、我ら陰陽師にとって言葉とはもっとも身近な呪なのです。不用意に言霊にしてしまえば、それだけで呪にかかることもありますゆえ」

「ふぅん……分かった、それなら仕方ないわ。でも、この子の正体に心当たりはあるのね」

「それは、まあそうですね」

 

 歯切れも悪く桔梗が答えてから、口元で小さく呪を唱えつつ五頭の蛇へと手を伸ばした。

 すると、蛇は静かに桔梗の指に触れると、そこで大人しくなった。

 桔梗は五つの頭を優しく撫でると、囁くように言う。

 

「露子姫の下で、もう十分にくつろいだでしょう? あなたはあなたの主の下へ、速やかにお帰りなさい」

 

 その言葉を、蛇は過不足なく理解したらしい。

 しゃー、しゃーと呼気を漏らしながら、身体を這って進みだしたのである。

 五頭の蛇はそのまま門の方へと向けて、草むらを這って行く。

 

「まあ、あの子はいったいどこへ向かうのかしら」

「これから嫌でも分かるでしょう。わたしはこれからあの蛇を追いますが、一緒にきますか?」

「ええ、もちろん。けら男、あなたはここで待っていなさい。もしお父様から訊ねられたら、桜法師と共にいると伝えてちょうだい」

「わ、分かりました。その、黒丸の方は」

「つれていくわ」

 

 簡潔に答えてから、露子は桔梗と共に蛇の後を追いかけたのである。

 

 

 五頭の蛇は門を出て、すぐに西の方へと向かいだした。

 あたかも人目を避けるように、影から蔭へと蛇は進んでいく。その後ろを、桔梗と露子、それに黒丸が追いかけていくのである。

 やがて蛇は西の方の、破れ寺へと入っていった。屋根には草木が茂り、所々の柱は朽ちて今にも倒壊しそうな佇まいだ。

 その中へ、物怖じせずに桔梗たちは足を踏み入れる。この程度では怯むような可愛げなど持ち合わせていない。

 内部もやはり荒れ放題の様子だったが、そこには既に先客が二人いた。

 一人は、白髪白髯(はくはつはつぜん)の老人だった。襤褸のような黒い水干を纏い、黄色の炯眼をぎょろりと桔梗たちへ向ける。深い皺の刻まれた顔は鬼のようにも思えるが、どこか愛嬌を感じさせもする。

 もう一人は、この場に相応しくない小綺麗な装いの青年だった。やってきた桔梗たちを見て、諦めたかのように息を吐いた。

 

 床に寝転がっていた老人の方が、桔梗を見てにたりと笑う。

 その手には既に、あの五頭の蛇が絡みついていた。

 

「ほう、この一件、わしは晴明が出張ってくるかと思うていたが……主が来たかよ、桔梗」

「……そうだろうとは考えておりましたが、やはりあなたでしたか、蘆屋道満(あしやどうまん)さま」

 

 その言葉に、道満は”ふふん”と鼻を鳴らしたのである。

 蘆屋道満の名は、この都においては知る人ぞ知る陰陽師であった。安倍晴明にも匹敵する法術を操り、噂では地獄との行き来すら自由自在だという。表立って依頼できないような薄暗い仕事も、道満ならば条件次第で簡単に受けてくれる。そういう男として、京の者には認識されているのだ。

 だが、桔梗のような播磨の陰陽師にとっては他にも大きな意味を持つ。

 道満は、播磨陰陽師たちを纏める者として側面もある。その影響力は計り知れず、播磨出身の法師は例外なく道満を慕っているとされる程だ。

 それは桔梗とて同じだが、この場合は、もう少し意味が異なる。

 

「いつぞや、術を教えていただいた際に、あなたは戯れに式神をいくつか教えてくれました。その際に、あの五頭の蛇を見た覚えがありましてね。それでほぼ、道満様が噛んでいると確信しました」

「くくっ、そのような些末事を覚えていたとはな。つくづく、主は抜け目のない奴だ」

 

 くつくつと、愉快そうに道満が笑った。

 その様子を、露子は目を丸くして見ていた。

 

「先ほど桔梗の言っていた鼠牛法師とは、もしや道満様のことだったのかしら?」

「ええ、その通りです。この方は時折、そのようなつまらぬ名乗りをするものでして。それよりも露子姫こそ、道満様とお知り合いなのですか」

「黒丸の件でご縁があったの。それ以来、たまにお顔を合わせることがあるわ」

「なるほど、それでこれほどの赤蚕蟲を……謎が一つ解けましたよ」 

「桔梗め、仮にも師を前にして”つまらぬ名乗り”とは、言うてくれるな」

 

 ま、否定はせぬがな──道満は短く呟くと、横になっていた身体を起こした。

 手で”座れ”と示してきたので、桔梗と露子は程よい距離を取って荒れた床へと腰を下ろした。

 桔梗と露子、道満と青年で向かい合うような形になった。

 最初に口を開いたのは、露子である。

 

「あなたが、近ごろお手紙と贈り物をくださった平右馬之介様でしょうか?」

「はい、その通りでござります」

 

 右馬之介は頷いた。

 その顔には、後悔と賞賛が入り混じった複雑な色が描かれていた。

 だがすぐに覚悟を決めたような顔つきとなると、滔々と語り出したのである。

 

「最初は、ほんの出来心でございました。虫愛づる姫君のお噂をきき、どのようなお方なのかと、居ても立っても居られなくなってしまったのです。だから、少々驚かせてやろうとあの歌と作り物の蛇をお贈りしました」

「とてもよく出来ていたわ。わたしやお父様も、本物かと見違えたくらいだもの」

「そこで姫からの返歌をみて、いよいよわたしはあなたに心を奪われてしまったのです。ですが、どうしてもわたしは姫が虫や蛇に心奪われているのを我慢ならなかった。なればと本物の蛇を贈っても、姫はより喜んでしまう始末で……勝手なことながら、わたしは途方に暮れてしまったのでした」

 

 為人は良いのに、どうしてもその趣味が理解できない。

 だからと虫嫌い、蛇嫌いになってもらおうとしても、まったくの逆効果である。

 困った右馬之介であったが、そんな時に道満と出会ってしまったのだ。

 

「そこで、このわしが偶々関わってしまったのさ」

 

 道満が言った。

 

「なにやら面白い悩みをしているようだから、酒を対価に聞いてやればあの橘実之の娘の話ではないか。これは愉快と思うてな、()()()()を差し向けることにしたのさ。我が赤蚕蟲すらてなづけた露子姫ならば、まさかあれらを無碍に扱うこともないだろうとな」

「あの奇怪な五頭の蛇を見れば、さしもの姫も恐れてしまうだろうと、わたしは喜んであなたへ贈りました。ですが……どうやら、その様子ではまったくそうはならなかったようで」

「とっても素直で可愛い子たちだったわ。あと一日お家にいたら、名前も考えてあげようと思っていたのだけれど」

「なるほど……やはり、あなたの御心は変えられなかったようだ」

「だから言うたのになぁ、右馬之介よ。あの姫を虫嫌いにしてしまうなど、生半可なことで不可能だと」

「ならばどうして、道満様はこのような余興をなされたので? まさか、本当に酒の対価だとでも?」

 

 桔梗からの問いに、くつくつと道満は笑う。

 露子と右馬之介を二人だけで話させながら、自分は桔梗の方を向いた。

 それから、右肘を膝にのせて頬杖を突くと、面白そうに言うのだった。

 

「退屈しのぎが一つ、露子姫は風変わりな方だからな。その動向を見るのはよい暇潰しじゃ。酒の礼が一つ、元よりこやつの思惑が叶わぬとは分かっておったが、それで止めようとするにも見えなかったのでな。最後に、たまには式の機嫌もとってやらねば、大事な時に反抗されても敵わん」

 

 特に、こいつの場合はな──

 そう言って、道満は五頭の蛇を優しく撫でた。

 いや、五頭の蛇はもうそこにない。道満が撫でているのは、肌色をした、男性の右手首であるらしかった。

 

「五本の頭は、それぞれ指を表していたのですね」

「おうよ。我が式の中でもこれは特別の品ぞ、なにせかつて朝廷に弓引いたあの男の右手首であるからな。そこらの陰陽師にでも差し向ければ、立ちどころに喰らうてしまうだろうさ」

「そのような恐ろしいものを、よく露子姫に贈りましたね」

「言うたであろう、姫ならばまさか無碍に扱うまいと。手荒にされればどうなるかは分からぬが、見よ、この姿を」

 

 道満がその右手首を差し出してきた。

 人の手が、それだけで生きているかのようにうねうねと動いている。

 不気味だが、どこか愛嬌もある。まるで喜んでいるかのようだった。

 

「よほどしっかり世話をされたらしい、わしはそのような些末事はしない故な、よい息抜きになると考えたのさ。こやつも随分と上機嫌よ」

「……なるほど、そのような理由がありましたか。道理で、簡単にこの場所が分かったはずです。もし道満様が本気であるのなら、わたし程度ではとても太刀打ちできなかったでしょうから」

「主は素質こそあるが、経験がまだまだ足りぬな。人の世に飽かねば、この天地の法は見えてこぬぞ──」

 

 それから、道満は何かに気が付いたように頭を掻いた。

 どこか照れたような、考え違いを披露するように呟く。

 

「てっきり晴明が出てくると思うて酒をあてにしていたが、桔梗が相手では酒は望めぬか。これは参ったな……」

「ああ、酒ならばここにありますよ」

「なに?」

 

 怪訝そうな道満の前で、桔梗は小さく口笛を吹いた。

 空から、翼のはためく音がした。

 見れば朽ちた屋根に開いた穴から、一羽の大鷲が飛びこんできたのである。

 桔梗の式神、風丸であった。

 その爪には栓のされた瓶子が一本、吊り下げられている。

 

「蛇の怪異を払うなら、大鷲の風丸を用いるか、はたまた孔雀明王(くじゃくみょうおう)陀羅尼(だらに)か、それとも素戔嗚尊(すさのおのみこと)に倣って酒で酔わせる手法が良いかと考えておりましたが、どれも使わずに終わってしまいましたので。いかがですか?」

「くくく、気が利くではないか。酌をしろ、桔梗」

「はい」

 

 道満から差し出された(かわらけ)に桔梗が酒を注ぐ。

 それを道満は上手そうに干してから、唇の端についた酒を舐めとった。

 

甘露(かんろ)……良き酒ではないか」

「秘蔵のものであったのですがね。まあ、道満さま相手なら仕方ありませぬ」

「ではこの酒の肴は、そちらの二人で決まりだな」

 

 道満の見やった方では、露子と右馬之介がまだ話をしている最中だった。

 

「ごめんなさい、わたしは虫を愛でる心を変えることはできないの。もしあなたがそれを止めさせようというなら、あなたとはお付き合いできないわ」

「……それは、とても残念です。ですがこうして姫を直に見て、思いましたよ。やはりあなたは、とても綺麗なお方だと。そんなあなたに相応しい男性は、誰もいないことでしょう。このわたしを除いて、ですが」

「まぁ、御上手ね」

 

 楽しそうに露子が笑った。

 右馬之介もつられて、顔がほころぶ。

 道満はその光景を肴に酒を飲み、桔梗も微笑みながら酌を続けた。

 五頭の蛇ならぬ、五指の手首は、そんな桔梗たちの周囲を楽しそうに走りまわるのだった。




Q. 結局この蛇になってた右手首はなんなの?
A. 日本版名前を言ってはいけないあの人の右手首です。詳しくは原作陰陽師の瀧夜叉姫を読んでみましょう!

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