笑顔の法則 作:lotus
「ねえ、貴方はどうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?」
太陽よりも眩しい瞳の少女は問いかける。
「何を言っているの?俺は別に悲しい顔なんかしてない。ほら、こんなに笑えてるだろ?」
俺は目の前の少女に笑顔で答える。
「いいえ、今の貴方は心の底から笑えていないわ。本当に笑えているなら貴方の目はどうしてそんなに辛そうな色をしているのかしら」
まるで心の中まで見透かされたような気分だ。
今ここで顔を合わせただけの彼女に僕はそんな感覚を覚える。
「君にはそう見えるのか」
キラキラした瞳の彼女を見ていられなくて、俺は視線を外しながら呟く。
しばらく沈黙が続き、そろそろ移動しようとした時だった。
少女は何かを思いつたかのように俺に話しかけてくる。
「いいこと思いついたわ!貴方の笑顔になれる方法を探しましょ!」
「は?」
これが俺、浪川柊斗と謎の少女、弦巻こころとの出会いだった。
────────────────
授業終わりのチャイムが鳴り響く。
部活に行く生徒達は大きなカバンをもって教室を出ていき、俺のような部活に所属してない奴は帰宅の準備を始める。
「おい柊斗!今日どっか寄ってかね?」
中学からの友人である西元陽人に呼ばれる。
「悪いな陽人、今日は予定入ってんだよ」
「マジかよ。それなら途中まで帰ろうぜ」
「おう」
カバンに教科書と必要なプリントを入れ、陽人と共に昇降口へと向かう。
靴を履き替え校門を出ると陽人が話しかけてきた。
「最近さ、クラス委員長が俺に対して文句言ってくるんだけどさー、アイツも言うほど仕事してないんだよ!マジでムカつくわー」
「そうなん?俺は委員長があせあせと動いてるとこしか見たことなかったからな」
陽人は時々、誰かしらの悪口というか愚痴というか、そういうのを俺に吐いてくる。
もちろん溜め込めばいいってもんでもないから吐くのは大いに構わないけど、自分は悪くない雰囲気で話してくることもあるため、陽人の相手に対して同情してしまう時もある。
そして最近はその傾向が強く、アイツの話に少し疲れてきている所もある。
「え、なに?柊斗は委員長の肩を持つわけ?」
「別にそう言いたいわけじゃないよ。ただ、俺とお前の見てる場所が違うから一概にお前に賛成できないだけ」
「ふーん」
「わかってくれると助かる。んじゃ俺こっちだから」
「おう、おつかれ」
普段一緒に帰るT字路で陽人と別れ、予定を済ませるためにいつもと違う道に進む。
その予定というのも、学校の先輩に誘われたバイトで、しかもよりによって子どもが多いところらしい。
「まったく子どもに怖がられたらどうするつもりなんだあの人は……」
俺は強面とまではいかないものの、不機嫌そうな顔のため周りからはあまり人にいい印象を与えてない。
ましてや子どもに近寄ったりすると大概は泣かれるのがオチだ。
そんな俺の顔を知ってるはずの先輩がどうしてこんなバイトに誘ったのか。
まぁ断らなかった俺も悪いが。
そんなこんなで歩いていると指定されたイベント会場に到着した。
辺りを見渡すと先輩の特徴とも言えるクセ毛が見えた。
「先輩、着きましたよ」
「おお、その声は不機嫌少年じゃないか!今日は良く来てくれた!」
「俺帰りますね」
「ちょっと待って!ごめんごめん謝るから、お願いだから帰らないで!」
コントのような会話だが、俺は真面目に帰ろうとしてた。てか帰りたかった。
「それで今日はなんのバイトなんです?」
「よくぞ聞いてくれた。今日はアイツをかぶって子どもたちに風船を配ってほしいんだ」
そう言われて指さす方を見ると、そこには目の輝くクマの着ぐるみがあるではないか。
「なるほど、あれなら顔を見られずに済みますね」
「そういうこと!ということでもうすぐ始めるからあとは係りの人に聞いてくれ。なに、このバイトは遅くても2時間後くらいには終わるから安心しておくれ」
そう言い残して先輩は別の係りのところへ走っていった。
ここでぼうっとしてるわけにも行かないので、とりあえず着ぐるみの近くにいる人に声をかける。
「あのー今日臨時で呼ばれた浪川と申します。僕はコイツ被ればいいんですか?」
「そうですね。これからライブが終わるまでの間、会場にくる子どもたちに風船を配ってください。配り終えたらお仕事は終わりですので帰るなりライブを見るなりご自由に。お給料は紹介者の方にまとめてお支払いしますので」
「分かりました」
スタッフの方に言われたとおりに目の前の着ぐるみを着る。案外重たい上に自由が効きづらいがこればっかりは慣れるしかない。
そう言い聞かせて、重たい体を動かし風船を握って会場の入口へと向かう。
俺が入口に着く時には既にたくさんの人が来ており、子どもたちは俺を見つけるとものすごい勢いで駆けてくる。
中には駆けてきた勢いのまま突進してくる子や恥ずかしがりながら後ろにいる子と、様々な子どもたちが見受けられる。
「クマさん風船ちょうだい!」
「僕も!」
「私にも!」
「はいはい、いっぱいあるからそんな焦らないでー。はいどうぞ」
子どもたちに翻弄されながらもなんとか風船を配り終え、ノルマを達成したので着ぐるみを脱ぐ為に会場入口を後にする。
「世界を笑顔に!ハッピー!ラッキー!スマイルー!イェーイ!」
着替えているとライブ会場のものと思われる歓声が聞こえてくる。
変な掛け声だなんて思いながら着替え終え係りの人に挨拶を済ませる。
自由にしていいと言われてるので、折角だからライブを見ていくことにした。
席はどこも埋まっており、俺が見れたのは一番後ろのほぼ道路に近い電柱の側からだった。
「ライブっていうよりは発表会みたいだな」
柄にもなくそんなことを呟いしまうあたり、なんだかんだ楽しめていたのかもしれない。
しばらくしてライブが終わり、帰ろうと思ったら着信音が鳴る。
発信相手は先輩からだったのですぐに出る。
「はい」
「あー柊斗くん?ちょっと話あるからまたさっきのところまで来れる?」
「大丈夫ですよ」
そんなわけで呼び出しをくらい先輩の元へと駆け足で向かった。
「おつかれー。君の評判良くてさ、また今度やらないかってこの人から言われてさ」
「君の仕事っぷりがあまりに良くてね、もし良かったらこれからも来てくれると有難いのだが」
「あーえっとー……時間がある時なら」
「それで構わないよ。もし参加する時はそこの先輩くんか私まで直接連絡してくれ」
先輩のもとに着くや否やそんなことを言われ、うまく言葉を返せなかった。
とりあえず電話番号の書かれた紙を渡される。
「また働いてくれることを祈ってるよ。それじゃお疲れ様」
「お疲れ様でした」
「おつかれでーす」
挨拶を交わし、今日のところは解散となった。
先輩は終わった途端に用事といい、即座にこの場を去っていく。
一人取り残された俺はとりあえず帰るためにこの場を離れようと方向転換をした。
すると振り返った先に周りをキョロキョロ見回す怪しい金髪が目に入る。
金髪の持ち主がこちらの視線に気づくと、全速力でこちらに駆け寄ってくる。
「貴方、今日一番後ろで見てた人ね?」
「そうですけど、よく覚えてますね」
「それはもちろん、会場の中で貴方だけが笑顔ではなかったもの!よく目立っていたわ」
え?俺が目立っていた?彼女はこの会場いたたくさんの人間の中から俺を見つけたというのか。
「そんな貴方を探していたの!私たちのライブは楽しくなかったかしら?」
「いや、むしろ楽しかったですよ。あんなに色んなことをやっていろんな音が聞こえて。演奏してる人も会場のみんなも楽しそうで、俺も一緒に楽しんでました」
素直に見ていた楽しかったライブだった、そう返した。しかし彼女はまだ納得していない様子で。
「それは良かったわ!でも私たちはあなたを笑顔にできなかったわ」
「そんなことは……」
「あるわ。だって貴方はこうして話してる間、一度も笑顔じゃなかったわ」
「え?」
金髪の少女は僕の表情の変化を常に見ているように感じる。その上でこの発言をしているならものすごい観察力だと思う。
そんな彼女から一つ質問が投げられる。
「ねえ、貴方はどうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?」
太陽よりも眩しい瞳の少女は問いかける。
「何を言っているの?俺は別に悲しい顔なんかしてない。ほら、こんなに笑えてるだろ?」
俺は目の前の少女に笑顔で答える。
「いいえ、今の貴方は心の底から笑えていないわ。本当に笑えているなら貴方の目はどうしてそんなに辛そうな色をしているのかしら」
まるで心の中まで見透かされたような気分だ。
今ここで顔を合わせただけの彼女に僕はそんな感覚を覚える。
「君にはそう見えるのか」
キラキラした瞳の彼女を見ていられなくて、俺は視線を外しながら呟く。
しばらく沈黙が続き、そろそろ移動しようとした時だった。
少女は何かを思いつたかのように俺に話しかけてくる。
「いいこと思いついたわ!貴方の笑顔になれる方法を探しましょ!」
「は?」
何を言ってるんだコイツは。
たかだか会場に一人だけいた笑顔じゃなかった俺を探し出した上に俺を笑顔にする方法を見つけるだって?
並の人間が考えることじゃない。
なんて思ってる間も少女の計画は進んでいるようで。
「そうだ!貴方とお友達になれば何かいい方法が見つかるかもしれないわ!私とお友達になりましょう!」
「え、ちょっ、まっ」
「私は弦巻こころ!貴方の名前は?」
「俺は、浪川柊斗だけど」
「柊斗ね、よろしく!これからは貴方を笑顔にしてみせるわ!」
こうして俺は弦巻こころと出会い、友人になったのだった。