「ようこそ、不思議の国(地獄)へ」
1、長い夜の始まり
~9/29 ラクーンシティー郊外 夜~
新人警官のレオン・S・ケネディは、ラクーンシティーに向かって愛車のジープを走らせていた。時刻は20:00を回り既に日の光はない。今日が初出勤となるのだが、数日前から自宅待機命令が下りそのまま音信不通となっていた。出勤当日となった今日も警察署の電話は繋がらず、流石に不審に思い直接出向く事にしたのだ。
ラクーンシティーまで、後数十キロ…燃料は残り僅か。一旦ガソリンスタンドに立ち寄る必要がありそうだ。
~遡る事、10分前~
女子大生、クレア・レッドフィールドはラクーンシティーに向かってバイクを走らせていた。夜間の運転、しかも激しい雨が降っており、彼女の体力と集中力をみるみる削ぎ落としていた。普通の雨でも、時速60kmで走行するバイクの上で浴びるとなるとそれだけで正直痛い。州を跨いだ長距離運転だ、クレアは安全運転の為に一旦、前方に見えてきたガソリンスタンドで休憩してから街に入る事にした。
「ええ、もうすぐ街に着く。」
[あのラクーンシティーなんでしょ?最近人喰いとか変な噂が流れてくるけど大丈夫?]
「だから平気だってば~」
[気を付けなさいよ!あんた美人なんだから。]
「はいはい、わかった。クリスに合ったらすぐに街を出る。それじゃ…もう切るね。」
スタンドにあった公衆電話を切る。ラクーンシティーに住む兄のクリスに長いこと連絡が付かず、心配になった彼女は直接様子を見に、街を訪れる事にしたのだ。心配性の大学の友人に無事に街までたどり着きそうと連絡したところ、今度は変質者が出るから気をつけなさいと忠告をいただいた。これでは、まるでオカンだ。
「もう…皆心配性なんだから~」
思わず自分の口から小言が漏れていた事に気付き、クレアは苦笑いを浮かべてしまった。
[ガシャン]
「えっ?何?」
スタンドの売店の方から何かを倒す物音が聞こえた。店は日没して周囲が暗くなっているのにも関わらず、明かりはついていない。スタンドにはエンジンがつけっぱなしで放置された警察車両があり、不穏な空気が流れている。
「誰?」
不安な気持ちのせいか、思わず口から言葉が漏れた。
恐る恐る彼女は店に近づき様子を伺う…店内は、棚から落下した商品が床に散乱している。そして、血痕……一・二滴ではない、この量では少なくても、手首や腹などをナイフで刺さない限りは起こり得ない。
「あのう誰か居ませんか?居ないの?」
返答はない。足元に不自然に放置された懐中電灯を拾い上げて店内を探索する。店の奥、飲料水が陳列されている場所に男性が座り込んでいるのが見えた。
「大丈夫?」
走りより様子を伺うクレア。男性は首を押さえており、その手からは血が溢れてシャツを赤く染め上げていた。話す余裕もなく、店の奥…スタッフルームへ続く扉を指差す男性。奥からは揉み合っているのか、物を倒すような音が聞こえる。
「待ってて見てくる。」
男性の横を通り抜け、奥へ進む。数秒後、先程通り抜けた扉が閉められる音が背後から聞こえてきた。
(!?……なんで閉めたの??)
心の中でツッコむクレア…その間も前方から揉み合っている音が聞こえる為、仕方なく前へ進む。
「じっとしてろ!」
男性の声が聞こえる。通路の先、スタッフルームへの扉を開けると、警察と私服の男性が揉み合っている姿が見えた。
「あの大丈夫?」
問いかけるクレア。
「大丈夫だ!さがってろ。」
此方を振り向きながら、即答する警官。だが、掴み合いをしている最中に振り向いたのは不味かった。拘束の力が弱まった一瞬の隙をつき、警官の後ろから押し倒す男性。警官の首筋に噛みつき、思いっきり引き千切る。
「なんなの!?離れて!聞こえないの?早くはなれて!」
クレアの静止を聞かずに、凶行は行われる。頸動脈が切断されたのか、警官の首筋から大量の血液が流れだし…やがて抵抗していた警官の悲鳴も消えた。
仕止めた獲物の肉を咀嚼しながら、此方に顔を向ける男性…血塗れの口元、白濁した瞳。ふらつきながら立ち上がり、此方に向かって歩いてくる。
「それ以上近寄らないで!」
クレアは後退りしながら叫ぶ。もときた通路を引き返し店内の扉を開けようとするが、店内側からロックされているのか、その扉が開くことはなかった。
「来ないで!撃つわよ。」
少しずつ近寄る異常者、追い詰められるクレア。護身用のリボルバーを引き抜き警告するが、聞く耳を持たない男性。クレアは仕方なく足へ銃撃したが…痛がる素振りも、怯む様子もない。
「嘘……」
目の前で警官が殺されている。正当防衛は十分成り立つのだが、彼女は命を奪うのが怖かった。だか、そうも言ってられない。逃げ場がなく徐々に追い詰められている。
[タン!]
一発の銃声が鳴り、続いて物が倒れる音が響いた。眉間に穴の空いた男性の死体…奥には首を噛みきられた死体。後で警察に連絡するにしても、この死体のある部屋からクレアは出たかった。人を撃ったショックで吐き気を抑えながら、クレアはカウンター裏に続く扉の鍵を探した。
「嘘でしょ……」
そして、クレアは見てしまった。眉間に穴の空いた男性が再び立ち上がる後ろ姿を。急いで扉の鍵を解除して、店内を出るクレア。外に出るための扉を開いた先には銃を構えた男性がいた。
「待って!撃たないで!「伏せろ!」」
クレアの背後から襲おうとした異常者に、男性は容赦なく発砲した。
「ありがとう。」
「例を言うにはまだ早い、囲まれている……ここを離れよう。こっちだ!」
いつの間にかスタンドに群がる異常者の群れをくぐり抜けて、エンジンのかかっている警察車両に乗り込み発進させた。
「貴方警官?」
「ああ、警官だ。俺はレオン。」
「どうなっているの?」
「さぁ?警察署にいけば解るかもな。」
2人を乗せたパトカーは更なる地獄へと突き進む……長い夜になる、その事を2人はまだ知らない。
[クレアが頭部を撃ったのにゾンビが立ち上がった理由]
ゾンビは脳の大分を占める大脳の機能を停止してます。その為、例え脳を攻撃しても決定打になりえない場合もあります。
対してルナは生命維持活動、神経が密集している、小脳・脳幹を的確に破壊している為、一撃で無力化しています。
今回のクレアは大脳を射撃し、なおかつ頭蓋骨に当たり運悪く弾道が逸れた為、頭部を撃ったにも関わらず無力化出来なかったと言うことです(という設定w)