出直して来ていいですか?   作:ブルーな雛菊

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今更ながらオリキャラの紹介!

エマ
ルナのオペレーター。急な召集命令の為、初日の作戦には間に合わず警察署奪還任務後に合流した。(それまではライバックのオペレーターがチームに指示を与えていた)
専用回線を使って通信しているため[オーバー][アウト]など無線用語を省いて会話している。
ルナとエマは養成学校時代の先輩と後輩にあたり、戦闘訓練が苦手なエマは難なくこなすルナに憧れを抱いている。
情報戦、電子機器などに精通しており有能。echo解析、厳重な電子セキュリティーの手動解除、情報収集や分析など様々な支援を行う。

アイアンズ署長のifルートで1話書けそうな気が…
ここまで味のあるキャラは中々いないですよね~
いよいよ物語も終盤です。


6.神の前に我は誓う

~孤児院 ルナ~

「ご機嫌よう、クレア。取引をしようじゃないか。」

「どういう事?」

 

受話器からクレアの声が洩れてくる……。あの後、署長は私から奪ったM93Rで感染者を倒しながら孤児院までたどり着いた。…勿論、抵抗する事は出来たが、その時はシェリーも道連れとなってしまうだろう……拘束された私では感染者の群から子供を守りきる事は難しいと思えた。

 

「私の時間を無駄にする気か?ペンダントを持ってこい、シェリーが死ぬぞ。」

「ペンダント?何のために。」

 

署長はシェリーの持ち物が無いこと気付くと、私達を部屋に監禁し、自身はモニターで監視カメラの映像を凝視しているようだった。来るかどうか分からない生存者がまるで、その部屋に辿り着くのを確信してるような素振りだった。

(その生存者がクレアだったとはね…もし、レオンだったなら今回の交渉は上手くいかなかっただろうけど……。)

いきなり知らないガキが死ぬぞ!と電話がかかってきても質の悪いジョークとしか思わないだろう。

 

「ガキを死なせたいのか?」

「分かった。何処へ?」

「孤児院だ。」

「孤児院?何処にあるの?」

「近くにあるからすぐに分かる。」

 

(この人本当に交渉する気あるの?大事な物なんでしょ?バカなの?)

ペンダントが届かなければ困るのは署長だろう。でなければ、わざわざ交渉を持ちかける必要性がない。

 

「シェリーと彼女は無事?」

「………今はな」

「もし、指一本でも触れたら!」

 

一方的に通話を終了する署長。相手にヘイトを与えるには有効な手段だろう…受話器の向こう側でクレアが悪態をついてる様子が想像出来る。

 

「馬鹿なガキだ。あれを落とさなければ見逃してやったのに。」

「お前もだ!白兎。大人しくしていれば悪いようにはしない。」

(……………。)

 

 

目的の人物に要件を伝えれた安堵か、満足げに部屋を出ていく署長。

 

[……と言ってるけど、どうするの?]

署長の生体反応が遠ざかったのを確認したエマが話しかけた。小型無線機に署長が気付かなかったのは幸いだ。

 

「どうするも、こうするも…正体を隠す気の無い誘拐犯ほど説得力の無いものは無いでしょ?」

[だよね~。]

 

誰だって、いつ警官隊が突入してくるか分からない緊張の中で眠りにつきたいとは思わないだろう。本当に人質を解放する気があるのなら、指名手配を恐れて自身の顔は隠すだろうし、解放された人質から得た情報で監禁場所を特定される可能性もある。痕跡が発見されるリスクを減らすためにルートや拉致手段など、自身に繋がる証拠を出来るだけ隠したがるものである。

それをしないとなると、ガセ情報と笑って誤魔化せる権力者・既に指名手配されている大物テロリスト・始めから生きて解放する気の無い者くらいだろう。

署長は最後に残した言葉の通り、クレアを生かして返すつもりは無いようだ…無論、それは私達にも言えることだが……

 

私の手札は少ない。

戦う、逃げる、従うどれを選んでも生存確率は低いだろう。

戦うを選んだ場合、戦闘時は速度と体格を生かした小回りで補っているが私の筋力は女子の平均より若干上程度、筋力とリーチに勝る成人男性に取り押さえられたら為す術はない。銃やナイフがあるなら話は別だが現状ではとても現実的とは言えない。

逃げるを選んだ場合、署長に武器を奪われている。2階の窓から飛び降りて逃げる事は出来るが、シェリーは置き去りとなる。仮に2人で脱出出来たとしても丸腰で子供を守りながら感染者の群から逃げるのは不可能だろう。生きながら補食される未来しか見えない。

従うを選んだら……薄い本の展開があるかは知らないが、確実にコレクションの仲間入り。

 

(………詰んでるじゃん)

 

残された手段は……プライドが多少傷つくが…

「エマ…他のエージェントへ救出願いを頼める?」

[了解!ライバックが2時間圏内にいる。向かわせるわ「ありがとう」]

 

(きっと後でこの件でからかわれるだろうな……)

背に腹は変えられないとはこの事だろう。クレアも此方に向かっているのは確かだが、シェリーが人質である以上下手な行動は出来ない筈だ。対してチームメンバーは、署長に存在を知られていない。最適なタイミングで確実に相手を無力化してくれる筈だ。

 

(後は、私にどれだけ時間が残されているか…か…)

何故、私を拉致したのかは本当の所分かっていない。警官では無いことは既に気づいているとは思うが、エージェントであることはSHD組織の存在を含めて知らないはずだ。

 

(アンブレラの工作員と思われているか、それとも予想通り剥製にされるのか…)

前者は拷問、後者は……

どちらにせよ私にとっては嬉しくない状況にはかわりない。只、確実に言えるのはクレアが取引に此方へ来るまでは安全だと言うことだろうか。ルナは早速行動を開始する。

 

後ろで手首を縛られているが、方法はある。腕を背中位の高さまで持ち上げた後、尻の位置まで振り下ろす。その際、両腕を離すように……結束バンドに負荷がかかるように意識して行う。繰り返すこと3回、[パチッ]という音と共に解放された。欠点は自身の腕にも負荷がかかるため、それなりに痛いということだろう…これも背に腹は変えられないが。

 

段ボールで塞がれた壁の穴をくぐり抜けて隣の部屋へ、落ちてたヘアピンで扉の鍵を開けた。

 

(シェリーが居ない…センサーの感度からおそらく一階、署長と一緒か……)

署長と鉢合わせになるのは不味い。無理に脱出を決行せずに屋敷に潜伏して、クレアかメンバーが孤児院に突入した際にタイミングを合わせて署長を強襲するのがベスト、署長の不意をついてシェリーさえ救出してしまえば状況は好転するだろう。

 

(警察署から孤児院まで徒歩20分位の距離、クレアに連絡を入れた署長が短期間で再び様子を見にこの部屋に戻ってくる確率は低いでしょうね。)

 

2階で武器になりそうなものを探すが、孤児院という背景もあり刃物は見当たらない。無いよりマシだと、鉛筆を数本掴む。

(何だって武器になる。ベルトでもスーツでも、教官(運び屋のハゲ)を見習わなきゃ)

 

[…ねぇ、ルナちゃん。その格好で行くの?]

 

一階に降りようとしたときエマから呼び止められた。自身服装を見直すと、署長に強く引っ張られたせいか制服の前のボタンが弾けて胸元が露出までとは言わないが、はだけてしまっている。

 

「………いつの間に」

 

  ・

  ・

  ・

緊張感が無いのは重々承知しているが、敵地のど真中で衣服を漁っている……当然、子供服が多いのだが私に合うものが一つだけあったので拝借することにした。

 

[白のワンピース(後ろ側だけ少し長い)に黒のショートデニム、ロングブーツにアウターはジャケット……ちぐはぐね]

 

「これしかサイズが合うものが無いので贅沢は言えませんよ」

激しい戦闘では髪がバサつくので纏めることにする。ポニーテールはクレアと被ってしまう。ならばと自身の髪を結び直した。改めて自身の姿を鏡で確認する……そこには養成学校時代、[白兎]と呼ばれていたツインテールに結った自身の姿があった。

 

(映画版バイオハザードのアリスの服装みたい…白兎の私には皮肉がきいてる。)

 

 

一階に降りて正面玄関の施錠を確認するが案の定、鍵がかかっている。2階の部屋と違い厳重な物のためヘアピン程度ではどうにもならなそうだ。奥からクラシック音楽が微かに聞こえてくる。

 

[生体反応は音楽の方から2つ]

「脱出経路は確保してないけど、奪われた銃やシェリーの様子を見に行きます。」

 

廊下を通り扉をあける。奥の部屋にいるのだらうか、署長姿は見当たらない。ビリヤード台には女性の遺体が横たえられており、その付近で椅子に縛り付けられたシェリーが啜り泣いていた。鍵と銃は付近(ふきん)にない。署長が身につけているのだろう。

 

 

「シェリー、大丈夫?」

「お巡りさん?」

「静かにそのままで」

 

(武器と鍵は確保不可能、既に15分経過してる…2階の窓から脱出すればここへ向かうクレアと合流出来るか)

 

シェリーの縄を解いて手をとった時、玄関付近で破壊音が聞こえた。

 

「おっと!そのまま動くなよ白兎。()()()たくはない。」

 

間の悪い来訪者の音で、奥の部屋から様子を見に来た署長に発見されてしまう。

 

「なに、取引が終わればちゃんと解放してやるさ」

 

[廊下から生体反応1!]

(署長はクレアと思っているのだろうけどきっと違う…)

何かを感じ取ったのかエマの緊張感した声と、[ゴツ ゴツ]と響くあまりにも重い足音が物語ってる。

 

「署長……最後の警告よ……今すぐ銃を下ろして逃げなさい。さもないと……覗き込んだ兎の穴がどれ程深いか思いしる事になる……」

 

「お友達が来て強気になったか?残念だが貴様らの命は私の手の中にある。」

 

廊下へと繋がる扉から出来るだけ離れるルナとシェリー。

徐々に近づいてくる[ゴツゴツ]という足音が不安を掻き立てていた。

 

 

 

  ・

  ・

  ・

 

~警察署 クレア~

[ガチャツーーツーーツーー]

「信じられない!」

話の途中で電話を切られたクレアは、本日数回目になる言葉を口にした。孤児院の詳細な場所も定かではない。忘れてるかも知らないがクレアはこの街の人では無いのである。案内無しで、しかもバリケードが乱雑に存在する街中を探索するのは骨がおれる。

吊り下げられている駐車場ゲートのカードキーを力任せにもぎ取り、クレアは孤児院に向けて警察署を後にした。

 

  ・

  ・

  ・

 

~孤児院 クレア~

街中は今は閑散としていた。

(私の発砲音ですぐにゾンビが集まってくるだろうけど…)

コンビニから街の観光マップを確認して孤児院までたどり着いた。

 

(まさか、あのゲス野郎が街のヒーローなんてね……)

雑誌の特集[ラクーンのヒーロー]で街を発展させた人物として記事に取り上げられていた。市民の安全を第一に考え、親を失った子供達の為に孤児院を建設したと……実物を見たクレアにとって、まるで別人を紹介されている気分になる。

 

SMGとハンドガンの弾を確認して、孤児院の正面玄関の扉に手をかけた。

(開いてる?)

 

よく見ると鍵が力任せに破壊された跡がある。

「キャーー!」

 

左側の部屋から子供の叫び声が聞こえた。

「シェリー!……署長!その子に手を出したら唯じゃおかない!」

 

扉を蹴破りながら部屋に突入した。しかし、クレアの目に写った光景は予想に反するものだった。部屋に入ってすぐに飾ってあっただろう本棚や装飾品を壁ごと突き破ってある。ビリヤード台はなぎ倒され辺りは物が散乱、そして壁が無くなり見通しがよくなった部屋の中央では身長2mオーバーの巨漢が、署長と思われる服装の男性の頭を握り潰す場面だった。

 

  ・

  ・

  ・

~孤児院 ルナ~

皆さんにとってタイラントとはどういった存在だろう?何度となく復活する面倒な相手?ストーカー?もしくは馴れた歴戦のプレーヤー達は「あんなの只のカカシですな」と笑うかもしれない…勿論、私も以前はその程度しか印象はなかった。

だが、ゲームが現実となった今…アンブレラが総力を上げて造り出した最高傑作が本当にその程度の性能なのだろうか?幾つか例を上げていこう。

まず耐久力、防弾コートを標準装備していることもあり、各兵士が所持する小銃程度ではダメージと呼べるものを与える事も出来ない。仮に有効打を与えれても即座に回復する。

次に攻撃力、素手でコンクリートを軽々と破壊する。暴走状態では長い爪が出現し更に攻撃力が増す。ネメシスと呼ばれる個体では重火器を使用する事も可能だ。

知能を有し、任務を行うことが出来る。正に歩く戦車と言っても過言ではない。

 

その集大成といっていいのが映画ダムネーションで登場する戦闘用、スラブ共和国仕様のタイラントだろう。真正面から突進する戦車と取っ組み合い、タンクローリーの爆発でも仕止めきれない。特殊部隊を圧倒するリッカーの群れを軽々と一掃し、自身へ飛来するRPG7の弾を掴み取り、投げ返す。……結局、タイラントを排除した手段は戦車砲、A10のアヴェンジャー、ロケット弾など。兵士の携帯火器ではない。

 

(スラブ仕様ではなく量産型…耐久力や攻撃力は下だろうけどハンドガンごときでどうにか出来る相手ではないな。)

 

突如壁を突き破り署長を殺害したタイラント、その背後にはさっき到着したクレアの姿がある。位置は私、タイラント、クレア、廊下へと繋がる扉となっていてタイラントをどうにかしないと逃げることも出来ない。

 

素早くクレアとアイコンタクトを行い頷く。

クレアSMGで射撃を行い注意を逸らす。その間に背後をすり抜けてクレアの元に向かった。

 

「無事?」

「ええ、早く逃げましょ。」

射撃音で聞き取りにくいがクレアは此方を心配してくれてるようだ。廊下へと続く扉を開けようとした瞬間だった。

「伏せて!」

タイラントが投げたビリヤード台が背後から飛んできて通路に突き刺さり塞ぐ。

 

 

逃げ道を塞がれた為、ソナーを放ち脱出経路を探す。

[周辺状況をスキャン、付近に隠蔽された空間を検知]

 

「クレア!奥の小部屋に地下への隠し通路がある!「わかった!」」

 

シェリーの手を引き通路へ向かうクレア、タイラントの注意がそちらに向いた所で落ちてた小瓶を頭部へと投げつけた。

瓶が割れて中身が飛散する。薬品特有の刺激臭が部屋の中に蔓延し吐き気を催しそうになった。正面から被ったタイラントの皮膚は爛れて瞼を塞いでいる。視界が一時的に無くなっていると判断し、ルナは署長の死体から自身の銃を取り戻しクレアの後を追った。

 

  ・

  ・

  ・

蛍光灯が照らし出す地下通路。通路は数回の曲がり角の末に、エレベーターへと続いていた。昇降機は下の階に降りているため実質行き止まりになっている。

「早く早く!」

エレベーターのボタンを連打しているクレアだが、到着までもう少しかかりそうだ。

 

「お巡りさん!無事?」

「ええ。」

「アイツはどうなったの?」

「すぐに来ると思う……」

 

[ゴツゴツ]と重い足音が再び響き初め、時間のリミットを奏で始める。

 

(猶予は残り数十秒、撃退は不可能。エレベーターの到着はまだ……。逃走も……)

周囲を見回した後、シェリーを見つめる。無理な逃走経路はこの子がついてこれない。

 

「私が時間を稼ぐからエレベーターが来たらその子を連れて先にいって!」

 

「貴女は?「後で合流する!」」

 

短く用件を伝えた後、93Rで天井と床の照明を次々と撃ち抜く……。

「エマ、私の行動記録からマップをechoとして再生、周囲の構造物と同期して。次に生体検知センサーの索敵速度をそちらで一時的に上げてソナー代わりに。[了解!]」

 

周囲に灯りがない地下通路。立体映像記録とセンサーを代用して即席暗視ゴーグル代わりにする。

巨体が通路を曲がり、その巨体を現した時に最後の電灯を撃ち抜いた。

 

(相手は此方を見えない、だけど放置すればエレベーターの駆動音でクレア達の方へ向かう)

 

あえて発砲して自身居場所をタイラントへ教え、囮となる形でエレベーターから引き離す。

やがてエレベーターが下へと到着した音を聞いたルナは、射撃をやめて闇と同化した。闇雲に腕を振り回すタイラントだが数分後、諦めて別の地下へと続くルートを探してこの場を後にした。

 

[凌げたみたいね。]

 

「この戦闘データから改良型が生まれないことを祈るわ。サプライドロップの投下位置をこの孤児院の正面広場にして。」

 

[了解、10分後に投下できるよ。]

 

  ・

  ・

  ・

 

 

「My rifle and myself know that what counts in this war is not the rounds we fire, the noise of our burst, nor the smoke we make. We know that it is the hits that count. We will hit…♪」

この戦争で重要であるものは、放たれる弾丸、爆炎、硝煙ではない。我々が数えるのはそれが命中するかであることを知る。

 

[海兵隊信条…好きよね~ルナちゃん]

 

「好きって訳ではないのですけどね。子守唄代わりに聞かされていたので自然と口ずさんでしまうんです。エマさんはありません?」

 

[私の教官達はそんなことはしなかったな~]

 

警察署に一度戻り装備を回収後、再び孤児院へ戻ったルナ。動く者はおらず静まり返った孤児院の正面広場で、歌を歌いながら補給物資を開けてベストとバッグに弾薬を積めていく。

SHDの戦闘は常に激しい。ひとつのエリアを確保するのに300発以上、弾薬を消費する事も多々ある。その為、補給は欠かせないと言える。弾薬箱が都合良く落ちている事もなければ、時間経過で消費したガチェットが回復するわけでもない。

 

「例の件は上手くいきそう?」

 

[問題ないよ、実戦を想定した性能評価試験という名目で話を通してる。それと2日後、10/2にコードXXの発令が決定したわ。ルナちゃんは施設の調査後、この街を脱出して。]

 

「……了解。」

 

首尾は上々、最後の手札が揃った。後はパーティー会場に主賓が揃うのを待つだけだ。

 

「~~~~~~♪。………この信条を聞いていると、私達の日常が守られていると実感できる…どんなに厳しい戦場でも、戦っているのは自分だけではないと実感出来るんです。」

 

[……そう、ならば己の利益や権力、くだらない思想で国民の想いを、命を、当たり前の日常を踏みにじった奴等にたっぷりとお礼をしなくちゃね!]

 

SHDキャッシュをスマートウォッチに同期、新しいガチェットを待機モードに設定し、武器ケースに入れ直す。

XM109を取り出し弾を装填しながら静かに歌う。

 

「Before God, I swear this creed. My rifle and myself are the defenders of my country. We are the masters of our enemy. We are the saviors of my life.♪」

神の前に、我は、この信条を誓う。我と我がライフルは、祖国の守護者。我々の敵の征服者。

 

 

「[So be it, until victory is America’s and there is no enemy, but peace!!]」

それゆえに、勝利が合衆国のものとなり、敵が絶えなければ、平和は訪れない!!

 

ルナとエマの声が重なり最後の一節を紡ぐ。

これから赴く戦場は地下。物資の補給(出直し)は見込めない。

 

「さぁ、お茶会を始めましょう。」

 

獰猛な笑みを浮かべた白兎(ボーパルラビット)は夜の暗闇に静かにとけていった。

 

 

 

 




ボツ話
~レオン 下水道~

「………ッツ」
肩の痛みと共に意識が覚醒した。付近には誰も居らず、汚水の流れる音と悪臭だけが其所にあった。アネットの銃撃からエイダををかばった時に負った傷に顔を歪ませ立ち上がるが、見覚えのあるコートが自身に被せてあることに気付いた。

(エイダのコート、優しいのか冷たいのか分からないな。)

本日2回目の気絶だ。破損したレオンの銃の代わりに自身の銃を置いて居なくなった先輩、レオンを気遣う様に手当てだけして居なくなったエイダ。こんな状況で言うのも何だが、目が覚めたら膝枕をしてくれてて優しく微笑んでくれたりしてくれても良いでわないか!?
改めて自身の状況を振り返る。
立ち込める悪臭。汚水まみれの自身。痛む肩。固い床……

「……泣けるぜ。」

レオンの未来を暗示するかのようだった。

  ・
  ・
  ・

~下水道 某特殊部隊~
悪臭立ち込める汚水の中、男は辺りを警戒しながら無言で進んでいく。

[此方ナイトホーク、アルファ応答せよ。アルファ、聞こえるか?]
突如、回収部隊のナイトホークから無線が入った。

「ナイトホーク、此方アルファチーム、ハンクだ。」

[てっきり全滅したかと思ってた、探してたんだが…「K12に到着、回収地点の詳細を。」]

男は無線の会話を遮り要点だけを問う。

[なるほど、死神と呼ばれる訳だ。]
「回収地点の詳細を。」
[安心しな死神さん。ラクーン市警正門へ向かってる、其所でピックアップだ。]

「了解」

今回のアウトブレイクの発端となった一人、アンブレラ特殊部隊USS、アルファチーム隊長、通称死神ハンクは自身のチームが全滅したにも関わらず、単独で再び生物兵器の溢れる研究施設に侵入してGウイルスを回収していた。
任務は無事に生きて回収地点に辿り着くことだけとなったが、怪物の棲みかである下水道を限られた弾薬で抜けるのは至難の技である。
しかし、此方も死神の名は伊達ではない。ゾンビ達の背後を音もなくすり抜け、時には頭部を正確無比な射撃で無力化し、G変異体の足元に手榴弾を投げ込み、爆発で怯んだ隙を通り抜ける。長年の経験と其を実現する鍛えられた肉体は、地獄の様な状況にも関わらず、最適な行動を導いていく。

下水道、警察署地下施設を越えて地下駐車場に辿り着き、警察署正面ホールに行くために一階へと続く階段のある、射撃場横の扉を開ける時だった。
背後から微かな気配を感じとり行動を中断する。普段のハンクならそのまま無視し扉を開けて去っていただろう。だが、それが出来ないほど感じ取れる気配は異質だった。
例えるのならば殺気。それはチンピラが見せつける為に放つものとは一線を画するもの。達人の書いた奥義書を素人が理解出来ないように、自身に近い実力を持つ者のみが感じ取れる気配。重く冷たく、相手に悟られないように極限まで抑え込まれた薄い気配に息が詰まる。

(既に背後をとられている。応戦するのは困難…)
ハンクは冷静に状況を分析するが解決策は見つからない。タイムリミット(回収ヘリの離脱)への時間が刻々と過ぎていく。
体感ににして数分、実際は数十秒程度だろう。突然気配が消えてプレッシャーから解放された。

「………此方ハンク。ナイトホーク、その場を直ちに離脱後ヘリを処分。追跡に注意しろ。」

[何故?あんたはどうするんだ?]

「マークされている可能がある。私は自力でこの街を脱出する。」

[……了解、健闘を祈る。]

一瞬の会合で更に状況が厳しくなったが、作戦は続行可能だ。
何故、殺気の主は行動に移さなかったのか……心の中にある疑問に蓋を閉じ、ハンクは再び地獄の底を駆ける。





[……流石のルナちゃんも弾切れではお手上げか~]
「ええ、お手上げです。他の面子なら素手で圧倒したり、鉄パイプを引きちぎり投げつけたりするかもしれませんがね。」

ハンクとの邂逅はタイラントの追跡を振り切り、警察署へ装備を回収しに訪れた時の事だった。

(間違いなく彼の腕は一流。万全な体勢でも矛を交えたくない部類の人間です。)

「無駄だと思いますが、彼の回収用ヘリを衛星で追跡して下さい。」

[何故無駄だと思うの?]

「勘です……いいえ、彼なら間違いなくそうする。」
[初対面の相手に変な信用しちゃってるよ…]

少しズレてる様に見える友人をしっかりと守ろうと心に誓うエマであった。


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