ある王は目の前に佇む魔物を見て、騎士達に注意を呼び掛けます。
「あの魔物は狂暴で危険だ。鋭い牙を持っている」と
それを聞いた騎士達は笑い転げます。
それもその筈、目の前の魔物とやらは、可愛らしい兎だったのですから。一体誰が、剣と盾で武装した騎士達に敵うと思うのでしょうか?
騎士達の反応を見た王は、半ば諦めた表情で続けます…
「本当に狩られるだけの存在ならば、とうに駆逐されているべきだ。戦場、魔窟に潜む存在はそれだけの意味を持っている」と
騎士達は笑いながら兎に剣を向けます。
………王のその言葉が最後の警告だったと言うことに…一体何人の騎士が気付けたと言うのでしょうか?
~生体培養層~
白色の照明に反射し鈍色に染まる鉄製の床、水色に塗装されたタンク、爆発の余波でチラツク炎と壁にぶちまけられた返り血が赤のコントラストを醸し出している。
穴だらけになった壁、床には100発を軽く上回る薬莢、そして横たわる虫の息の
その瀕死状態のG生物の傍らで
~アルバート・ウェスカー ~
Gウイルスを保持する
入手したサンプルをまじまじと見つめ、保冷ケースに保管しようとした時だった。突然の銃声、撃ち抜かれる腕、転がるサンプル。
そして、頭上から凛とした声で語りかけられる。
「やぁ、ジョージ。」
いつから居たのかは分からない。4mはあるだろう、巨大なタンクの上に腰掛けクスクスと笑いながら話す少女が其所にいた。
「おや?挨拶を返してはくれないのかい?
それとも、私が知らない人だから?私は白兎。」
白兎と名乗った少女はタンクから飛び降り、サンプルを拾い上げる。
「生憎、お遊びに付き合ってあげるほど暇ではないのだよ。お嬢さん。「そして貴方はアルバート・ウェスカー」」
「ほら、……知らない人ではなくなった。」
名前を呼ばれ、此方の微かな反応を確認した少女は笑みを深める。口元は笑っているのに目線だけは鋭く、此方を射抜くかのようだ。
「元特殊部隊STARS隊長、元アンブレラ幹部、スペンサー館事件で死亡。そして今は、アンブレラと敵対する製薬企業HCFの幹部」
ギリッと奥歯が鳴った。洋館事件以来、表舞台から姿を消した為、自身の存在を知っているのは極僅かな人間のみの筈だ。目の前の少女が精確な情報を掴んでいるという事は・・・それはつまり・・・・
(誰か
残念な事に心当たりのある人物は複数存在する。誰しもが途中から入ってきた新参者が、苦労して手に入れた自身の立場を危うくする存在ならば面白くはないだろう。
(ボロが出ないか、少し無駄話でもして引き出すか。)
「ほぅ・・此処に俺が居る事に驚かないのかね?」
「来るか来ないかは賭けではありました。
ですが、
それに・・・{死者が歩く}・・・そんなこと
(流石に簡単には聞きだせそうにもないか・・・)
ならば、この会話に費やす時間は無駄なものでしかない。
「無駄話は終わりだ。
いつの間にか復帰したG生体は、ダクトを落下してこのエリアを離脱している。故に、サンプルを奪い返すしか方法は残されていない。
「あぁ・・・これが欲しいのかい?勿論欲しいよねぇ?
貴方には後が無いものね。何より貴方のプライドが
HCF幹部に担架を切った上で、アンブレラが管理するデータの奪取を失敗したものね。
なぁ・・・・
ウェスカーは会話に夢中の少女に狙いをつける。後は持ち前の身体能力を生かした速度で、ホルスターから銃を抜き放ち、引き金を引くだけだ。
「それと・・・・時間が無いでしたっけ?
大丈夫ですよ、貴方の為に用意した
少女は嗤う。
優雅にカーテシーを行う
~ルフィーナ~
ゲームや映画で度々行われる〔格上狩り〕内容は大半が油断している敵に、渾身の一撃で倒すというものだ。だが現実では簡単に行えるものではない。生と死が隣合わせの現代戦では
(初めは手軽な銃撃ね)
今まで使う機会が無かった〔ドローンディフェンダー〕を起動し、即座に対応できる様にしておく。
デェフェンダーの最低動作保証時間は30秒。それはSMGやLMG等で集中砲火を対処した場合の時間だ。彼の持つ拳銃の弾を打ち落とす程度の負荷なら、3分以上の動作は見込める。
あえて銃撃を誘う様にカーテシーを行い、隙を見せる。直後、銃声とディフェンダーから放たれるソニックエミッターで、弾道を外された銃弾が壁に着弾する音が響く。
(これで彼は、銃撃は無効化されると気付く。デェフェンダーの動作時間など知るはずが無いから無駄な銃撃を控えるようになる。)
ウェスカーはピクリと眉を動かした後、銃をホルスターに収める。
(次は接近戦、攻撃方法は恐らく・・・劇場版でやったようにサングラス投げからの高速接近、心臓への掌打か手刀。)
「ほぅ・・・面白いものを持っているな。」
「欲しくなった?」
左手の93Rをトンファーのように逆手に持ち替え、更にガバメントを抜く。
「いや・・・もっと
私の視界を遮る様に投げられるサングラスは、直撃すると判断したディフェンダーによって空中で迎撃され、天井近くまで高々と打ち上げられる。既に彼の姿は見当たらない。ルナはガバメントで自身の前方足元に射撃しつつ、左足を半歩後ろへと引き、半身になりつつ左手を縦に構える。直後、左手に伝わる衝撃、飛び散る93Rの部品。
踏み込もうとした矢先に太股を撃ち抜かれ、充分に加速されなかった彼の手刀が目視出来ない速さで自身が先程まで居た場所を貫く。
93Rの残ったフレームで更に手刀の軌道を逸らし、ルナ自身も力の奔流に逆らわないように・・・まるでレールの上を滑る車輪の様に、伸ばされる手刀の上を回転しながらウェスカーに接近する。
抱きつく程の距離、この距離ならば一々狙いを付ける必要性もない。如何に自身の銃を奪われる事なく閉所で素早く射撃できるかという事に重点を置いたC.A.R System構えだ。半身で銃を胸の前で持ち素早く引き金を引く。
2発の45ACP弾が彼の胸を貫く、4発目ウェスカーはバック転で回避する、ルナは素早く通常構えに移行して照星をバック転では回避できない位置に合わせ引き金を引く。5発目、ダンッ!という力強い踏み込みの音と共に、宙に舞った彼の元に弾は届かない。
(本当に無駄に格好良いな・・・でも、地から足を離したのは失敗だったね。)
バック宙・・・彼の視点が天井を向いた時を見計らって、着地地点に2回続けて引き金を引く。
「な・・・・に!?」
着弾して驚愕に染まる彼の頭部にマガジン最後の弾頭を叩き込む。
(
弾切れでスライドがロックしたガバメントに弾倉を叩き込み、宙に舞ったサングラスをキャッチし
「調子にのりやがって・・・兎らしく隅で震えておけばいいものを!」
眉間に穴が開いているのにも関わらず消耗は感じられない。
(此処からが本番か・・・)
ため息をつきたい本心を隠しつつにこやかな笑顔を見せる。
~ウェスカー~
最初は不意を付かれたと思う。二度目は偶然だとも………だが、3度4度となると話が変わってくる。まるで此方の動きが見えてるかのように精確な射撃でダメージが徐々に蓄積されつつある。私がウイルス適応者であるにも関わらずだ。
Tウイルスは細胞を変化させる、再生と分裂を繰り返す事で通常では考えれない耐久性を得る。その過程で肉体が耐えられなかった者達は変異し、自我を失う。
だが、適応者は違う。適合しなかった者とは比べ物にならない耐久力、圧倒的な身体能力を自我を残したまま手に出来る。そう・・・適応者とは人間風情が感情論でどうにか出来るなどというレベルに留まってはいない、そのはずだった。
(未知の銃と装備、此方を完全に補足している動き。
アンブレラやHCFと同等の科学力を持つ組織が作り出した、未知のウイルスの適応者といったところか。
ならば、此方も全力で掛からせてもらうだけだ。)
此方がダメージを負っているのに対して
ウェスカーは更に速度を上げて
~ルフィーナ~
彼は恵まれていた。企業幹部に抜擢される頭脳、特殊部隊の隊長を勤める程の戦闘技術、1千万人に1人の確率であるウイルス適応者。
故に、彼は恵まれていなかった。自身の能力を完全に発揮できるほどの
そして、対等と思える存在に会った時、自身と同じ
彼の速度が上がる。
数発わざと外し、相手に速度を上げた事による効果を実感させた上で、至近弾、直撃と速度に対応した様に偽装する。
本来の彼なら気付いていたかもしれない。移動する自身を狙っているのでなく、通過もしくは立ち止まる位置に弾丸が
接近されないようにMP7で
(流石にこの速度を捌くのは厳しいか・・・)
彼の攻撃を一撃でも貰えば即死亡、割に合わない。
焦りを悟られてはいけない。
正面の私に集中する彼の背後から2機のドローンの機銃が襲う。
・・・悟られてはいけない・・・たった今、彼が着弾した上で回避行動を行い、背後からの攻撃を
正面の私からMP7とガバメント、彼の背後からは2機のドローン。銃撃を回避しながら接近するウェスカー。
(次は接近してからの回し蹴り)
彼が予備動作に入る前から回避行動を行う。バック転を行う私の眼前を強烈な蹴りが通過する、回避と同時に背後に展開していた3機目のドローンで彼を射抜き、更に回避先、その次の回避先に向けて引き金を引く。
接近されたままだと分が悪い。引き離すように弾幕を張る。
~ウェスカー~
ダメージが重なり徐々に体が重くなっていくのが実感できる。そろそろ撤退を考慮しないといけない頃合かもしれない。
「貴方の言った通り、私は脆弱よ。」
激しい銃撃の中、少女が話し始める。
壁の上を走り、追い立ててくるドローンの追跡をふりきる。
「私には他を圧倒する格闘術も怪力も生存技術もない。
弱弱しい臆病者よ。」
前方のMP7とガバメントの銃撃を壁を蹴って宙を舞うことで避ける、背後のドローンを空中で身を捻り、回転することで回避する。そのまま右にフェイントを入れつつ彼女の背後に回りこむ。
「だからこそ、その
振り返る暇は与えない。彼女の頭に銃口を突きつける。この距離ならディフェンダーが弾丸を打ち落とす事は不可能だ。
「チェックメイトだ「
強烈な衝撃が側面から伝わる。少女の頭部から銃口がズレる。発射された弾丸は少女が掛ける、自分のサングラスのふちを破壊するだけにとどまった。
(一体何処からの銃撃だ!?)
攻撃を受けた方向へ視線を向けると、タンクの間を縫うように設置された大口径のタレットの姿があった。
気をとられた隙に、振り向きざまに右手で銃撃を見舞う少女、その射線から外れる様にステップを行う。だが、その回避先を狙う様に向けられた5つの銃口に気付いたのは、彼の足が地面を離れた瞬間だった。
死を覚悟した為か、大量のアドレナリンが分泌されているようだ。走馬灯の様にスローに感じる時間の中で、両目を閉じた彼女の顔が目に入る。
(……成程、
「化け物め………」
己の敗北を認めた上で、本心を溢した。
・
・
・
~ルフィーナ~
[彼、迎えに来るって言ってたね。]
「ええ、私が
ウェスカーは致命傷となりうる50口径の弾丸を回避することだけに専念し、他は被弾覚悟で回避を行った。
[逃がしちゃって良かったの?]
「お互い決着がつかないから
彼が逃走した扉を見つめ、頭を振る。
「気持ち悪くて吐きそうです。」
[ドローンのカメラ標準を3つ、高速で切り替えながら射撃と移動指示を行えばそうなりますよ~もっとも貴女以外、出来る人間なんて存在しないですけどね。]
[ウイルスサンプル、坑ウイルス剤、アンブレラの活動報告書を入手完了、言うこと無しね。撤退しましょう。]
ルナは頷き荷物搬入用エレベーターに乗り込む。
[そう言えば、さっきのキャラはもう止めたの?]
「あれは、相手に余裕を見せるために演じていただけです。」
[そう?本当に?]
「………何か?」
[何でもない……]
「私は普通の少女ですよ?」
[はいはい~]
「解せぬ(……解せぬ)」
ゆっくりと閉じ行くエレベーターの扉の隙間から、
・
・
・
[[ウイルスの不正持ち出しを検知、各フロアのアクセスを制限し処理を行います。職員は誘導に従い下層フロアへ集合してください。]]
ウエストエリア貨物エレベーターから物資搬入口用大型エレベーターに乗り換えた時だった。アナウンスが流れエレベーターが一時停止したが、即座にエマが管理プログラムを
「映画みたいですね。」
[いよいよクライマックスだよ!逃げ遅れないようにね!]
ゆっくりと下がり行くエレベータの中で、H2Rの暖気運転をしながらのんびりと下層へ到着の時を待つ。
(このエレベーターの降下速度なら、もしかするとクレア達の方が先に進んでるかもね・・・)
「焦ってもしょうがないですしね~。そろそろ切り札を切りましょうか。」
[本当に必要?]
「必要ないときは別の場所に落としましょ。」
[了解~]
・
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~合衆国海軍工廠大砲試射場~
[ブラボー・リマ・シエラ・エコー・チャーリー・キロ・ユニフォーム・ケベック・エコー・パパ・エコー・リマ・タンゴ・ヤンキー]
無線から若い女性が、坦々とフォネティックコードを告げている。
合衆国設立以来、決して使用されたことの無い措置が今、行われようとしている。
[[国家非常事態特別援護措置]]
大統領や上層議員、国の方針を決める中枢が機能しなくなった場合、もしくは国家を転覆させかねない緊急の非常事態時に派遣されるエージェントからの応援要請だ。要請を受けた施設は、施設の防衛・維持にマージンがあれば議会上層部の判断を待たずに速やかに支援を開始するという措置である。
(我々の知らないところで脅威が迫っているのか・・)
戦争・内戦やテロなどの情報は入手していない。変哲の無い平和な日常、勿論この施設にはマージンがある為に措置に従い支援を開始しなければならない。
「認証コードを確認、〔トールハンマー〕を開始する。」
(問題は、何もしらない部下に何と説明するやら・・)
施設の管理者は頭を痛める。
・
・
・
「これより実戦を想定した、最大負荷試験を行う!弾種はGPS砲弾、これから指定する座標に24発、2分間内に撃ち切れ!」
一斉に従業員達が作業に取り掛かる。
「上官!その座標は内陸です!370Km離れた自国の地に砲弾を落とすのですか?」
「自国の地だからこそだ!貴様は能力が実証されてない兵器を戦場に送り込む気か?それとも自国の土地を300Km買い占めて射撃場にする気か?該当区域の閉鎖は完了している。遠慮なく撃ち込め!」
「「Sir、yes、sir.!」」
電力充填が整い、炸薬とは異なる砲声と衝撃波の音を残して順次砲弾が放たれる。初速マッハ7、着弾弾速マッハ5と従来の砲を大きく上回る速度で撃ち出された150mm砲弾は高度152kmまで上昇し6分後、370km離れた場所へ着弾する。
「全弾発射完了、弾着まで残り4分。砲身の冷却を開始します。」
「時間になれば目標物が通過する、データ収集を怠るな。」
・
・
・
~NEST B4~
施設焼却まで残り3分のアナウンスが流れる。自爆の為に極限にまでエネルギーを蓄えられた圧力タンクの中には、時間を待たずに自壊を始めるものもある。搬入エレベーターが下層へ到着した頃には、天井から瓦礫が落下し始め周囲は焔の赤で埋め尽くされている。
「綺麗・・・・[この状況でその感想!?]」
[・・・トールハンマーを開始したわ。初弾の着弾まで残り5分。弾種はGPS砲弾・・・本当に5分後にターゲットが其処を通過するの?]
「何いってるんですか?そんなの分かる訳無いじゃないですか。
[はい!?何言ってるの?]
「列車が通るのは保障します。ですが移動目標ですからね~。衛星から送られる座標データを上書きするなり方法はお任せするわ~出来るでしょ?」
[あぁぁ!もう!
出来ますよ!やってやりますよ!
帰ったらルナちゃんをイチャイチャ・ニャンニャンしてやるんだから覚悟しなさいよ!]
「あ~あ~聞こえない~[砲弾、ルナちゃんに落とすわよ?]ゴメンナサイ、ジョウダンデス。」
笑いながら前輪ブレーキしたままH2Rのアクセルを入れてホイルスピンさせてタイヤを暖める。
「それじゃ、
ブレーキから手を離し、圧倒的な加速に身を任せる。速度計が一気に100km/hを表示し、その後も勢い衰えることなく上昇し続ける。そして4秒後には200km/hを超し背後に迫りつつある爆炎を置き去りにしていく。
線路を中央にして両端にある点検作業員用の通路の上を疾走するバイク。
[前方、右に緩やかなカーブ!]
通常であれば居眠りしなければ衝突することのない緩やかなコーナー・・・通常の速度であらば。ルナは体を傾け重心を移動、更に片方の膝を広げる事で空気抵抗をも利用する。
[左カーブ!速度落として!]
H2Rは中央線路を飛び越え、左側通路の
「これ!映画で見たことある~!」
[・・・・・]
・
・
・
[着弾まで残り2分、前方に
主人公達が乗る列車に追いついた様だ。3両編成、後ろの車両の天井付近の窓からはマズルフラッシュの光が見えており、原作通り物語が進んでいるのだと実感した。
「列車の走行速度は80km/hを維持、後ろの2両がターゲットです。最前の車両に当てないように終端誘導をお願いします!」
[了解、最終調整を行う。着弾で衝撃波が予想されるからその列車から離れてて「了解。」]
列車の中から銃声の合間に「弾が好きなんでしょ?遠慮は要らないわ。」という声を聞きながら、再びバイクを加速させ離脱する。
[私、時々思うんです・・・・貴女は未来が見えているんじゃないのかと・・・]
長いトンネルを出て離れた位置にバイクを停車させる。長い夜が終わり、朝日が昇り始めている。
「私にそんな能力はありませんよ。出来る事といえば銃を撃つ事、ドローンの操縦、それと・・・未来を少し
主人公達を乗せた列車がトンネルを抜けて姿を現す。
[・・・カウントを始めます。着弾5秒前・・・4・3・2・1・・・着弾、今!]
秘密裏に開発され、実用レベルまで昇華されたレールガンと呼ばれる電気の力で弾丸を飛ばす大砲。
放たれた砲弾は300kmの長い距離を6分かけて滑空し・・・
たった今、神を冒涜し命を弄んだ愚か者に
マッハ5で飛来した砲弾は鉄製の車両と逞しいGの肉体を軽々と貫通し衝撃を残す。元より外れかけていた車両の連結器は無事に外れ、後部車両だけが脱線し宙を舞う・・・・そして、容赦なく立て続けに後続の砲弾が着弾する。
「
[生体反応ロスト、目標の沈黙確認。]
「念のために合衆国が処分予定にしてるナパームをここで使ってもらいましょう。」
[そうね、連絡入れとくわ。さぁ、撤収しましょうか。]
・
・
・
・
~日本 京都~
ラクーンシティーが消滅して早6年。企業に狙われる恐れのあるアネットとシェリーの保護を政府に依頼し、自身も大統領直轄のエージェント組織「DSO」 (Division of Security Operations)に所属し生物兵器に関する動向をおっていた。
[どう、レオン?目的の彼女は見つかりそう?]
エージェントの同僚、オペレーターのハニガンから無線が入る。
「いや・・・正直、自分でも見つかるなんて思っていないさ。」
[ならばいい加減諦めたら?リタ・フィリップスは偽名だったし、街を脱出した生存者リストにも無かったんでしょ?]
ラクーン脱出後、エージェントの訓練の合間に生存者名簿を探し、本人に会いに行った時の事を今でも鮮明に思い出せる。リストに名前を発見し、喜びながら先輩の自宅を訪問した。だが、扉を開けた人物は署内で出会った銀髪のクールな少女ではなく、金髪の犬のような印象を受ける女性だった。署内で本人の日記を読んでいたこともあり、こちらがリタという人物なのだとその時に悟ったのだ。
その後、壊滅前のラクーン住人のリストを可能な限り集め、生死問わず調査を依頼したが特徴の一致する女性はヒットしなかった。
「先輩・・・・あんた一体何者だったんだ?」
自身が訓練を受けて初めて気付く先輩と呼んでいた人物の異常性。
隙の無い立ち回り、無音で走り、狙いを付けず精密射撃を行う、合図など交わしていないにもかかわらず此方の次の動きが分かってるような連携。DSO内にも卓越した戦闘技術を持つエージェントはいるが・・いずれも彼女のレベルまで達しているものなどいない。
「Old soldiers never die, they simply fade ... 」
老兵は死なず。ただ消え去るのみ・・・少女の銃に刻まれていた文字を思い出す。
役目を終えた少女は、誰にも知らせることなく表舞台から姿を消す・・・未来を自身の後に続く者に託して・・・
「ハハハ・・・如何にも貴女らしいな、先輩。」
名前も居場所も、エージェントの情報網を使っても知ることは出来なかった。今、日本に居るのも先輩が日本のコトワザを良く使っていたのを思い出した程度に過ぎない。
[レオン。休暇中で悪いのだけど仕事よ!VIPの娘が誘拐されたらしいわ。迎えを向かわせるから集合して。]
「泣けるぜ・・・」
「気をつけてね・・・レオン」
懐かしい声が微かに聞こえた。
振り向いた先には銀髪の女性の後姿が見え・・・
通行人がレオンの前を通過した瞬間、姿は見えなくなっていた。
「・・・すまないハニガン。今手持ちの武器が無い、銃器と弾薬をたんまりと用意してくるように回収係に伝えてくれ」
[了解・・・どうしたの?]
「いや、心配性の知り合いの事を思い出しただけさ。」
(・・・・分かってますよ・・先輩。ちゃんと準備していきます。)
紅葉が並ぶ石畳、観光客で混雑する道の中レオンは振り返ることなく真っ直ぐと歩く。
時が経てば悲しみも憎しみも薄れていくものだ。それを良いとも悪いともいえないのが現状ではあるのだが・・・100,000人以上の犠牲者を生み出したラクーン災害も薄れ行く記憶の一つだといえる。
今となっては生物災害の恐ろしさよりも、Tウイルスが生み出したユニークなモンスター達が面白可笑しくメディアで取り上げられる程度だ。・・・それが情報操作されたものとは誰も気付かずに・・・。
モンスター達はユニークな物ばかりだ。歩く屍を筆頭に、生皮向かれた目の無い怪物、巨大化したミミズ、トカゲの兵士、コートを着た大男等々。
中には、公衆電話を持ち上げ投げつけるゴリラ、スキンヘッドの不死鳥、北斗神拳の伝承者などユニークな怪物も実在したとかしないとか・・・
特にイタズ好きな子供達を躾ける時に使われるモンスターはとても平凡が故にユニークである。
・
・
・
「あら、ジェーン。まだ寝てなかったの?」
「うん、この漫画が面白くて~」
「もう、早く寝ないと白兎が迎えに来るわよ?」
母親が子供に言いつけるときに良く使われる怪物、白兎。
日本で言う鬼やナマハゲのようなニュアンスである。
「ママ、前から思ってたのだけど何で白兎なの?全然怖くないよ?」
母親は暫く考えた後、言葉を繋げる。
「白兎はとても弱くて臆病なの。」
「ほら、全然怖くないじゃん~「だけど、案内人でもあるの。」」
「案内人?」
「そう・・・」
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~オフィスビル地下 ゲスト用NEST直通エレベーター前~
腹に大穴を空けた男は足を引きずりながら歩く。
先ほどNESTの自爆コードが開始されたようだ。この場にと止まっていてはNESTの爆発によって地下が崩落し、また穴の底に逆戻りとなってしまう。
先程の戦闘ダメージが大きすぎて回復には数日掛かりそうだ。任務は失敗となってしまうが・・そんな物はどうにでもなる。
「出来たばかり、成功するか分からない物よりも完成品のほうが価値がある。」
Gウイルスなど傷が回復してからアンブレラ施設に殴りこみ奪えばいい。そんな物よりも未知のウイルスを宿した適応者の確保が優先だ。自身の体にそのウイルスが適合するなら最高の結果となる。合わないとしてもタイラントのようにクローン量産すればいい。戦闘力は身をもって実証済み。
Gウイルス回収という任務は失敗こそしてはいるが今後の目的が見え笑いたくなるくらい気分がいい。
上機嫌でビル1階ロビーへ向かうウェスカー
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・
「白兎は臆病。その臆病者が正面から敵と向き合っていると言う事実に気付かないといけないわ。」
「??」
母親は我が子の頭を愛おしそうに撫でる。
「駆逐されるだけの存在ならば当の昔に狩られてるの。その場に逃げずに居るということは・・・その兎にとって敵は、己に害を与えれる存在ではないと言う証拠なのよ。だから、白兎が目の前に現れた時点で地獄への案内が確定しているの。」
「それに・・・・」
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・
ロビーへと到着したウエスカーは絶句する。
これまで多くの凶悪犯罪現場や生体兵器の実験場を見てきたが、これほどまでの殺戮現場は初めてだった。
床一面に両断された感染者の亡骸。中にはリッカーやハンター、Gウイルス確保の為に追加で投下されたタイラントの死体まである。
壁や正面ゲートの大型ウインドウにも大量の血が付着しており、徐々に顔を出しつつある日光と相重なってロビーを赤く、赤く染め上げていた。
その中に佇む黒衣を着た男。
「お嬢さん、そんなに急いで何処へ向かうんだい?」
ウェスカーは逃走経路探そうと見回すが、そんなものは存在しない。
「白兎から案内されなかったか?お前の為のパーティー会場は此処だと」
男は圧倒的な絶望を携えて此方へと歩きながら刀を抜き放つ。
・
・
・
「それに・・・白兎がいつも一人ぼっちだとは限らないでしょ?」
我が子の反応が無いと思い覗き込んでみるとガタガタと震える幼い我が子の姿があった。
(ありゃ・・・やりすぎちゃったか・・)
「大丈夫よ!貴女は悪い子ではないでしょう?」
「うん!!」
「それじゃ、早く寝ましょうね?」
「うん!」
母親は微笑みながら子供部屋の扉を閉めた。