出直して来ていいですか?   作:ブルーな雛菊

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~9/27 0:00 ○○シティ(作戦区域上空~

 

空挺降下、暴徒化した市民が降下中の隊員を狙撃するリスクを最大限に減らす為にギリギリまでグライダーの展開を遅らせる。短い降下時間の中で徐々に鮮明に見えてくる街の景色は予想を上回るものだった。乗り捨てられた車やベッドや食器棚が乱雑に積み上げられ、あちらこちらに簡易的なバリケードが作られている。メインストリートには溢れんばかりの暴徒化した市民と思われる人影で埋め尽くされており、いたるところから絶え間なく銃声や悲鳴が聞こえてくる。

 

(私達は最悪を想定して訓練されたけど…これは予想以上ね)

暴徒の数は街1個分かと思える程の量で、これを鎮圧するのは流石のエージェントでも単独では不可能だ。

(当初の予定通り、治安部隊と合流して対策本部を設置、ライフラインを確保して状況が鎮静化するのを待つしか方法は無さそうね。)

 

グライダーを展開して降下地点を探す。警察署に降りることが出来ればわざわざ移動する手間が省けるのだが、既に大量の暴徒に包囲されているのを確認出来た為、少し離れた地点へと着地した。身動きがとれない状況で集中砲火されれば一秒持たずに蜂の巣になってしまう…やむ終えない。

(運よく誰にも気付かれていないみたいね)

「此方ガーランド、作戦区域に侵入した。生存者を保護しつつ警察署に向かう。オーバー」

 

「了解。ウイルスの脅威は未知数だ、生存者への接触は十分に注意せよ。これより本機は帰投し、エージェント第二派投入の準備を開始する。無線機が確保でき次第SHD本部へ状況を報告せよ。オーバー」

 

「了解した。アウト。」

 

上空のヘリとの無線を切り最新鋭ガチェットの動作確認とセーフティーを解除する。

 

ガチェットは現在の最先端の軍事技術が採用されている。いくつか例を上げると、タレットと呼ばれる自動で敵を識別し迎撃するセントリーガンや、ハンドボールくらいの大きさの球体で自動追尾し炸裂するマイン、機銃を装備した軍用ドローンや即座に消耗したアーマーを回復する薬剤を注入したランチャー、分かりやすい物で言うと携帯式で7.62mmの弾丸を耐え抜く高性能の盾など様々だ。

 

エージェントはこれらを使いこなす事で、単独でも多数のゲリラや訓練された特殊部隊をも相手にとることが可能だ。勿論、エージェントの中には小道具に頼らずに敵を圧倒する猛者も居たりするのだが……

 

私が今回持ち出したガチェットは2種類、銃撃戦を想定してドローン・ディフェンダー[内蔵されたソニックエミッターによって迫りくる弾丸の軌道を逸らす]とアーマー回復材が注入されているケミランチャー・レインフォーサーだ。

ドローンは銃撃戦では優秀で、簡単に言うとマ○オのスター状態だ。相手の弾丸は此方に当たることはなく一方的な戦況を作り上げる事ができる。

(バッテリー消費が激しくて1分も持たないのが珠に傷なんだけどねー)

 

 

建物を一つ隔てた路地から悲鳴が聞こえた。

(任務は警察署の安全確保…だけど、さっきの悲鳴は近かったし先に生存者を救出しますか)

メインウエポンのG36[外観はSL-9風にカスタム]とMP7、サブウエポンのM1911ガバメント[6インチカスタム]の薬室に弾丸を装填し、作戦を開始する。

 

クイックピークとカッティングパイを使用しつつ、予期せぬ接敵を警戒しながら悲鳴の場所へと急ぐ。たどり着いた場所には血痕だけが残っており人影はない。路面に付いた血痕の跡を辿りながら更に暗い路地裏の奥へと進んで行く。

 

周りの建物の明かりはなく、分厚い雲のせいで月明かりすらない袋小路、血痕の跡は其所で途切れている。クチャクチャと咀嚼音をたてながらひたすら何かを貪り食っている男性を見つけた。

 

(おかしい…先程の悲鳴は女性のものだった。それならば、この男性は暴徒で女性に危害を加え食料を奪ったと考えるべきか)

目の前の男性への警戒度を一段階上げる。

マグライトの光を当てて男性を観察する。

(武装を所有している様には見えない…後ろ姿だけでは判断出来ない)

 

警戒しながら少しずつ正面へ回り込む

(何を食べているの?それにこの臭い…)

例えるなら腐った香りというのだろうか?アンモニアの様な鼻にツンとくる香りが漂っている。ウイルスの空気感染への対策として特殊なマスクを着用してるが、フィルター越しにでも感じ取れる異様な空気に表情が引き締まる。

横顔が確認できるかという位置でようやく男性が私に気付いたのか、立ち上がり此方を振り向いた。

 

食いちぎられた頬、剥き出しになった歯、血の気のない肌、白濁した瞳、血塗れの両手には紐の様な物が握られている。

「……腸」

 

男性とバリケードの影で隠れて先ほどまで見えなかったが。横たわった女性の足が物陰から見えた。

 

「……一応警告しておく。其所で止まれ!それ以上近付くなら敵勢力と見なし対処する。」

 

うめき声をあげながら止まる気配のない男性に対して、即座に5.56mmフルメタルジャケット弾が放たれる。

ライフリングにより回転しながら頭部に着弾した弾丸は、着弾と同時に回転の軸がズレる。体内で弾丸が横転することでよりダメージを与え、運動エネルギーをもて余した弾丸は後頭部から大穴を開けて排出される。ただの屍になった男性を眺めながら自身が見落としていた事柄に気付く。

 

(おかしい……これじゃあ…まるで…)

 

大通りにでて薬局を探す。エージェントたるもの如何なる状況でも冷静てなければならない

思考の末たどり着いた可能性を否定出来る証拠があるはず!

たどり着いた薬局…店のウインドウにはポスターが貼り出されている

[10歳若返る魔法のハンドクリームAQUA CURE]

……見覚えのある赤と白のロゴマークの横に社名が書かれている[アンブレラコーポレーション]

 

「…………」

エージェントたるもの如何なる状況でも動揺してはならない。一瞬の隙が命を喪うこととなる。

任務目的である警察署が見える位置…非常階段からアパートの屋上へ上がりG36の光学機器[スコープ]で建物を確認する。

 

ご丁寧にデカデカとライトアップされた[R.P.D.]の看板が見えた

(ラクーンシティ警察……)

 

つまり、アウトブレイクはアウトブレイクでもドルインフルではなくTウイルスで、私の敵は暴徒化した市民や反政府ゲリラではなくて生きる屍と言うことだ…私が持ってきたガチェットは2つともガラクタに成り下がってしまったという事で間違いないだろう…

しかも数日後には浄化作戦という名目で戦術核が投下されるというおまけ付き。

 

……エージェントたるもの如何なる状況でも…………

 

「……此方ガーランド、応答願います。」

 

[ザザザザザザ]

ヘリへの無線は繋がらない、作戦領域を離脱したようだ。

 

「此方ガーランド、出直して来ていいですか?」

私の呟きは虚しく、この街の喧騒の中に消えていった。

 




一応タイトル回収しましたし……完結でいいでしょうか?(笑
ゲームのバイオハザードクリアして続編が思い付きましたら追加で投稿いたします。

(実はゲームの方でドローン・ディフェンダーをまだ使った事がなかったり…性能が違うかもしれないのはご愛嬌で
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