一応、複数の「」を使ってますのでこの小説での使い分けを・・・
「」会話など人物が声にだしたもの
()思考や心の中の声
[]オペレーションシステムや入手した物など説明などに関するもの
~9/27 am1:00 警察署前 アパート屋上~
息を吸い込み気合いを入れ直す。
(ウジウジしててもしょうがない。私もプロらしく集中しよう。)
ルナの纏う空気が一変し、冷たく重いものへと変わっていく。任務遂行に必要のない感情に蓋をしキリングマシンが出来上がる。
[周辺状況のスキャンを開始……解析中……]
SHDウォッチを操作し周辺の建物の配置や屋外で反応する熱源などを解析する。
[解析完了…周辺に熱源なし。マップの更新を行います。]
(目の前に大量の感染者がいるのだけど反応なしか…タレットも使い物にならないようだね。)
タレットのセンサーは熱源感知式になっており、センサーの範囲に入った物を迎撃する仕組みとなっている。通常、エージェントの脅威となるものは熱を発するものだ…人であれ動物であれ、機械ですらエンジンやモーターなどの動力部では熱が発生する。現在の状況があまりにも…あり得ない事なのだといえる。
(今の武装ではガチェットの相性も、あれを相手にするための弾薬も足りない。)
歩く屍は銃を撃たないし、アーマーの有無など関係なくウイルスに感染した時点で死亡が確定する。現在持ってきている物は銃撃戦を想定していたため、物量任せで接近してくる脅威には無力だ。
(突入をかける前にセーフルームに立ち寄り態勢を整えるか…)
セーフルームへのルートをSHDウォッチで検索しナビを開始するとコンタクトレンズの液晶にガイドが表示された。
(時代は変わるものだねー)染々と時の流れを感じる。
「おいおい、やっこさん腐ってるぞ?いつからハロウィンになったんだ?」
共に街に降り立ったメンバーからの無線が入った
「マクレーン、無線を使うときはルールを守れ。丁度いい、現在の状況を報告しろ。オーバー」
「はいはい。此方マクレーン、水道施設を確保したが飲料水のタンクで感染した仏さんが水浴びをしているようだ。汚染された水が広まらないように街への給水を停止する。オーバー」
「此方メイトリックス。現在交戦中、発電所施設の状況は現在確認出来ていない。終わり次第、設備の状況を連絡する。オーバー」
「了解。マクレーン、施設停止後メイトリックスの応援へ迎え。」
(激しい銃撃の音が聞こえていたがきっと大丈夫だろう、なんせあの人だし。)
「お嬢ちゃん、そっちはどうだ?」
「現状警察署前。感染者が包囲しているため、一度セーフルームで装備を整えてから突入を開始します。尚、感染者は生存者を捕食している模様。スキャンでも熱源を感知出来ず…文字通り歩く屍となっていると思われます。オーバー」
「無理はするなよ、入手したウイルスの情報を伝える。ウイルスは感染者の唾液など血液感染するようだ…接近された際には十分気を付けろ。感染した場合初期症状は全身の痒みと空腹感、やがて死亡し数時間後…ハロウィンメンバーのお仲間入りだ。この街の汚染が何処まで進んでいるかわからないが、状況によっては最悪ともいえる判断を司令部が下すかも知れない。プランBとして各人、脱出ルートを確保しておけ、オーバー」
「「「了解」」」
「迅速に行動しろ、アウト」
(最悪の判断…つまり核による浄化ね)
バイオハザードというゲームの予備知識があるから理解できるが、Tウイルスは人だけではなく全ての生物に感染する。犬やカラス、ノミや地中に生息するワームまで…今でこそ近くに餌場があるためこの街にとどまっているが狩るものが無くなった時、街の外へ感染した生物が流出し始めたら軍ではとても止められない…世界が崩壊する。
こうなってしまった以上、核による浄化は免れないだろう。
(その前に生存者を集め脱出する。まずは警察署の確保)
私もこの街と共に滅びるつもりなど、さらさら無い。
ルナはガイドに従いセーフルームへと歩きだした。
~9/27 am3:00 セーフルーム付近~
(無駄に時間がかかった…)
途中、感染者の大群やバリケードで道が塞がれていた為迂回せざるおえなかった……流石に現在の装備で全部、相手する程の余裕はない。
(セーフルーム…近くにあるはずだけど……)
SHDエージェントが非常時に使用する予備の銃器、弾薬、食料などが備蓄されている建物、又は部屋だ。ロックが掛かっているため、エージェントしか入室出来ない様になっている…一般人にとっては開かずの扉なので怪しまれない場所に設置されている事が多い。マンションの非常階段からしかアクセス出来ない屋上の小屋であったり、レストランのスタッフルームから地下に梯子が降りていたりと様々だ。
今回向かうセーフルームはどうやらブティックのようだ…店内に入る。ガイドラインは更衣室へと延びていて鏡の掛かっている壁の中へと延びていた。
(ゲームだったらバグにしかみえないよね…これ)
目的地が壁の中、役に立たないナビ……ゲームあるあるだ。勿論、現実ではそんなことはない。SHDウォッチを鏡にかざしながら調べていると[ピッ]と電子音が鳴った後、鏡の掛かっている壁が開き地下へと続く螺旋階段が現れた。
~9/27 am3:05 セーフルーム内~
10人入れば狭いと感じてしまいそうな部屋・・非常時に備え食品、弾薬、銃器、ガチェットと通信設備が用意されている。
(本部との連絡はとれそうね)通信設備とSHDウォッチを同期すれば離れた場所からも本部との連絡が出来るだろう。PCの電源を入れて現在の状況を確認すると、最後にこのセーフルームに食品などの物資を運んだのは2年前という事が確認出来た。
[認証コードを入力……装備保管庫のロックを解除]
行動支援AIが面倒なロック解除をしてくれるので助かる。
ガチェットの予備を探すとタレットとシールドを見つけた。タレットは熱源感知式の為、ゾンビ達に自動照準・迎撃は出来ないが何も射撃が出来ないわけではない。マニュアル照準に切り替える事で自身の指定した位置へ射撃を行える。照準は自身の視線をコンタクトレンズが読み取る為、タレットでの攻撃中は対象から視線を離せなくなるのが欠点だが…その代わりといっては何だが、自身が敵の脅威を察知しトリガーを引くので、現状支給されているタレットのセンサーよりは柔軟で素早い対応が可能となる。
(
弾薬箱から自分の使う弾を探すがMP7で使用する4.6×30mmの弾薬は見当たらない。
(比較的新しい銃だし仕方ないか)
タレット用の22LR弾と給弾ベルト、5.56と45APC……それとMP7の弾薬を使いきった時のために保管庫からM93Rと9mmParabellumを取り出し、空きマガジンに弾込めを行っていく
(地道よね~映画みたいにポンポン使い捨て出来たらな~)
9mmの弾込めを行っている最中にふとカートリッジのリムに刻まれた文字に目がいく
「Si vis pacem, para bellum……」
(汝平和を欲さば、戦への備えをせよ………装備を整える為にセーフルームに出直した私にとっては皮肉よね…)
一人、苦笑いを浮かべながら黙々と作業を行っていく……カチッカチッカチッと弾を込める音だけが響く部屋、それはまるで嵐の前の静けさを感じさせるものがあった。
ルナちゃん黙々と作業してます(心の中は賑やかですがw
メイトリックス(交戦中)・・・この人なら放置してても大丈夫!弾が無くなっても農具があれば数人は殺れる!
MP7・・・要人警護などに開発され専用弾薬4.6x30mm弾を使用する。
本作ではSHD内でもまだ浸透しておらずラクーンへの配給には間に合わなかった
M93R・・・こちらも要人警護むけ。コンパクトであり比較的入手しやすいと思われる9mmを使用する為ルナがチョイスした
Si vis pacem, para bellum・・・汝平和を欲さば、戦への備えをせよ
これは戦う為の準備ではない、(自身の尊厳を)守る為の準備だ
という言葉があります。本来の意味は相手が簡単に手出し出来ないようにするという抑止力的な意味合いが強いかと思います。