~9/27 am10:00 ラクーンシティ警察署~
地下駐車場シャッターが上がると同時に、けたたましいサイレンの音と共に多数の警察車両が隊列を組んで出撃する。当然、署の前には夥しいほどの歩く屍が居るが、バンを先頭にした車列は速度を緩めることは無い。先頭のバン・・・8.4LーV10エンジン搭載のベアキャット装甲車は屍の山に突っ込み紅い絨毯を残しながら悠然と進む。これまで数々の凶悪犯の弾丸から乗員を守り続けてきたその装甲は最早軍用LVといっても過言ではない粋に達している。重量10トンを越える車体の前に、いくら人が立ちはだかろうと止めれる要素など何一つ無かった。
署長がラクーン市警の精強さを民衆にアピールする為に大枚はたいて購入した車両がこれ以上ないまでに活躍していた。
「こんな時にS.T.A.R.Sの連中やケビンがついて来てくれたら頼もしいんだがなー」
「ケビンのやつは仕方ない、署内に残る生存者を誰かが残って警護しなきゃならんだろう・・・S.T.A.R.Sは・・・そうだな、誰か一人でも真面目にあいつらの話を聞いてればこんな事には・・」
「ああ、この町に異変があった時には既に生き残りのS.T.A.R.Sはこの町を離れていたって話だ・・・今思うと正しい判断だよな。」
乾いた自嘲気味の笑い声が車内に響く、きっと生きてはこの町を出ることは出来ないと乗員達も薄々感じ始めているようだ。この車の行き先はメインストリート。署長の出した作戦は生存者の保護と脱出経路となる大通りの安全確保だった。確かに大通りにはバリケードは設置されていない為、装甲車以外でも通れるように安全確保できれば脱出経路となりうるが・・・
(いや・・・正確には突如現れたゾンビの大群にバリケードを設置する暇さえなかったが正しいか・・脱出出来るだろうよ!今も蠢き犇くゾンビ共をどうにか出来ればな!)
皆が知っている、大通りには既に生きている者など居ないという事を、自分達が向かうのは希望ではなく絶望だという事を・・・
~9/27 am11:00 メインストリートから1km周辺地域~
[周囲に熱源感知]
準備を終え警察署に向かう途中、唐突にアイザックから生存者を意味する報告が入った。数十秒後、車列が通りを猛スピードで駆け抜けていく。
(警察車両・・・彼らか・・・行き先は検討はつく。)
酷く気は進まないがルナはため息をつきながら進路を変え車を追う。
~am11:10メインストリート~
車を停車させ盾にするような形で速やかに隊員達が配置につく、選別警官隊と呼ばれるだけあり一切無駄な動きはない。眼前には大量の人だったもの達・・・・
彼らのうめき声と共に檄鉄は落とされた。
前方で発砲音が聞こえた
(既に始まったか・・・こっちは走りだというのに!)
警官隊とルナの距離は200mほど、その20m先にはゾンビ達が行進していおり、圧倒的な物量差で既に押され初めている。前日にアンブレラが雇った傭兵部隊U.B.C.Sが数時間で壊滅したように、今でこそ警官に死者は出ていないがそれも時間の問題だった。
(よく無謀と勇敢は紙一重という。他者が見れば彼らの行動は前者と捉えられるだろう・・・愚かだというだろう)
G36のセーフティーを解除し、走りながらセミオートで精確にゾンビ達の頭部を打ち抜いていく・・・
まるでフルオートのような速度で次々放たれる弾丸は前方に居る警官や車両の間を一発も当たることなく標的だけに着弾していく。ルナの精確な狙撃で前列のゾンビは一掃されるが、すぐに後詰めがその屍を越えて近づいてくる為、警官とゾンビとの距離は変わることない。
(だけど、私はそうは思わない)
(誰かが立ち向かわなければならない、誰かが助けを求める者に手を差し伸べなければならない、彼らは運命に抗った・・・)
(私は彼らを愚かだとは思わない。)
警察車両のボンネットの上をまるでスライディングするような形でダイブし最前線へと降り立つ、その際にボンネット上に置き去りにしたタレットを起動し装填された22LR弾が怒涛の勢いで発射された。
22LR弾・・・エージェント内でも威力不足の声もある。だが、少数精鋭のエージェントをサポートする上ではやむおえない事だった。タレットは前方の敵に集中放火を浴びせる他にも、背後・側面に設置して迂回して挟撃を狙う敵を牽制する際などにも使用する。リロードする際は一旦回収しないとならない為、大量の弾薬を装填できる22LRが採用されたというのが背景にある。それに小口径・低反動故にその発射レートと命中率は高い。
そして、非力とよばれるがアーマーを着ていない標的にはそこそこ有効であり、過去10数人の死者を出した銃撃事件も実はこの弾薬が使われていた事もある。
視線で標準を合わせ発射命令をタレットに指示しながら並行して別の標的を自身のG36で射撃を行っていく。視線はタレットのマニュアル射撃の為にタレットの標的からは外す事が出来ない、その為一瞬だけ敵の位置を確認し、敵の向きや動作から予測される位置に一切そちらに視線を向けることなく射撃を行う。
ルナが幼い時に身につけた技能だった。訓練した相手は同じ訓練生や現役軍人、そして先輩エージェントにあたる教官達、それらを圧倒する為に生み出した技、それはゾンビだけでなく対人戦にも適応される、一度視界に納めた敵から次に予想される敵の動きを予測する、銃口から発射タイミングと弾道を読み取り即座に回避行動をとり反撃を行う。相手が物陰に隠れようとも反撃の為に身を乗り出した瞬間、銃を構える前に一瞥をもくれることなく即座に撃ちぬく。コンセプトは某映画のガンカタに似ているとは感じている。
唯一の弱点は視認できないほど離れた遠距離からの狙撃、そちらはアイザックにあらかじめ網を張り感知してもらう、最悪の場合はドローン・デフェンダーを展開して狙撃された銃弾を着弾前に叩き落すことで対処している。
タレットとG36、手数は2倍になった程度だが警官隊とは違い一発たりとも無駄弾なく頭部に撃ちこんでいるので殲滅速度は先ほどまでの比ではない。前方の群れをほぼ一人で押さえ込んでるため、手を止めあっけにとられてる警官も居るほどだ。
だが状況は変わる、銃声を聞きつけたゾンビたちが左右の建物からなだれ込んできたのだ。すぐさまMP7を引き抜き3方の敵を同時に対処する、背後を包囲されつつある為、時より一回転ターンし敵の情報を更新する。
MP7を真上に放り投げG36の弾装が空になる前・・・一発だけ薬室に弾丸を残した状態で弾薬が装填されたマガジンに交換することでコックする手間を省く、MP7をキャッチし射撃を再開する。
派手に暴れている分、警官達よりもこちらに向かってくる敵が多いように思える。(ありがたい事だ)
G36の弾が切れると共に地面に伏せる、直後背後からタレットが掃射し自身周囲の敵をなぎ払う。
(タレット残弾0・G36はマガジンに装填してるものは切れた)
M93Rを引き抜き射撃を再開する、相変わらず囲まれているが既に付近の敵は100を切っている。
全方位を射撃しながら太股に縛ったむき出しのマガジンを銃底に叩き込むようにリロード行う。前方から掴みかかろうとする敵を半身で避け、すれ違いざまに頭部に一撃、勢いをそのままに背後の敵に肘で頭部を強打し怯んだ敵を掴み左側の敵へ投げ飛ばす。コートの襟元を掴まれた際は相手の肘に銃撃を行い関節を破壊して拘束を逃れる。カニバサミで相手を引き倒しそのまま足だけで拘束して一体を無力化、前方の敵に集中砲火後、拘束してる相手にトドメをさし立ち上がる。
(残りは左右の10体か)
胸ポケットからMP7とM93Rのマガジンを取り出し宙に投げた。
空中で左右の銃に弾倉を叩き込みそのまま左右の脅威を排除する。
暫しの沈黙、誰も唐突な乱入者に対して口を開こうとはしない。屍で埋め尽くされた道路、感染者がまだ残っているが、かなり距離があるため放置していても問題なさそうだ。
ルナは黙々と地面に転がっている使用し空になった弾倉を拾い集めていく
(めんどくさい・・・でもタナトスを目の前にして「焦ったら負けだ」とか言いながら弾込めしたくないしな・・・)
(G36残弾120・MP7残弾0・M93R残弾60・タレット0・・・タレットは廃棄するか)
SHDウオッチからタレットの自壊プログラムを作動させ、とても小規模な爆破解体を行った。
(ガチェットを回収されるわけにはいかないからね)
最新技術の詰まった装備を第三者に回収・解析されるわけにはいかない。
(MP7・・・荷物になっても自分の装備は絶対持ち帰る!「お前の友達はライフルだ!」って軍曹も言ってたもん!)
「お・・・おい・・あんたは?」
「私ですか?私は昨日まで一般市民として平和に過ごしていましたよ?(今は違う)」
問いかけた警官は微妙な表情をしている・・・そりゃそうだ
(私達はこの国にとって最後の矛であり盾である・・・我々は・・・デビジョン)
ルナは心の中で静かに返答した。