~9/27 pm6:00 ラクーンシティ警察署~
マービン警部視点
既に警察署は包囲され、脱出は困難な状況になっていた。反撃出来る技量を持つ特選警官隊は署長の指示の元、各地に駆り出され肝心な時に警官署内に残る者は必要最低限。しかも、大半の者が今まで平和に過ごしてきた一般人ばかりで、署を守る警官は10名程度だ。更に、長距離通信の出来る無線設備は破壊され外部との連絡は取れない。
古い署内の地図から発見した…女性が一人、通れる程度の隠し通路から婦警のリタを脱出させたのはいいが、彼女が襲われずに無事に応援を呼んでこれるか…それまで、この警察署が持ちこたえられるのかも神頼みだ。
「マービン!正面のバリケードが突破される。」
息を荒いながら叫ぶ同僚、直後鳴り響く金属音。例えその場に居なくてもその音が何を意味するのか容易に想像出来た。
「正面ゲートが突破された!敵がなだれ込んでくるぞ。戦える者は武器を持ってロビーに集まれ!」
「女、子供、負傷者は堅牢な作りの押収保管庫へ避難させろ。エリオット!地下駐車場の下水道から包囲を抜けて、地上に出れないか偵察を頼む。」
一気に指示を飛ばす。これが、現在出来る限りの最善だと信じて。
「我々に退路はない。何としてでもここで食い止めろ!」
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シンディ視点
その日私は、バーでウエイトレスをしていた。日々の業務、いつもの常連さん、焼き回しの毎日。そんないつもと変わらない日常…いつまでも続くと思っていた平和は無情にも、呆気なく終わりを告げた。
異変は、一人の酔っぱらいがバーに入店した時から始まる。席を案内しに近づいた同僚の首筋に噛みつき押し倒したのだ。常連の警察官……ケビンさんが即座に店の外へ不審者を放り出したが、それで終わったわけではない。店の扉に貼り付き、こじ開けようと扉を叩く不審者、それは時間と共に数は増えてきている。私はケビンさんに手を引かれるような形で、他の生存者と共に店を脱出した。より安全だと思われる警察署を目指して、何回も道を迂回しながら。
警察署には既に多くの生存者が集まっていた。最初こそ安全だと思われていた署内も、時間経過と共に周囲を包囲する不審者が増えており、逆に私たちが逃げる事が出来ない状況にまでなっていた。
そして甲高い金属音と共に警察官の怒号が飛ぶ。
「正面ゲートが突破された!…」
(あぁ…神よ……)
「戦闘が始まります!安全な場所に避難しますので子供、女性の方、怪我をされている方は私についてきて下さい。」
市民を誘導する声が聞こえる。ケビンさんに視線を向けると険しい顔で頷くのが見えた。
(本当は一緒に居たいけど、私も足手まといになるわけにはいかない。どうかご無事で…)
私は押し潰されそうな不安と胸を指すような感情を無視して、他の生存者と共に誘導に従った。
避難場所となる押収物保管庫は、西側廊下を通らなければならない。廊下は多数の窓があり外の様子を伺える…侵入を防ぐという意味では非常に頼りなく感じてしまうが、窓の外には警察署を囲む様に頑丈な塀と柵があり、感染者程度の力では柵を隔てた此方側まで来ることは出来ない筈だった。
[ジャリッ]
ヒールがガラスを踏んだ音で気がついた。
(窓が破られている…)
柵と塀は依然として健在であり、窓の近くには感染者の気配はなかった。
(どうして…?)
異変は感じているが、何が原因か検討がつかない。そんな形の無い不安だけが募っていく。そして、良くない想像は良くない物を引き寄せるとよくいうものである……皆の不安が最悪の形となって実現してしまう。
[ドチャッ]
背後で粘性を持った重い物が地面に当たる音に気付き振り返ると、人間の皮を剥ぎ取ったようなグロテスクな物体が、市民と最後尾を守る警官を別つかたちで其所にあった。
それは感染者の様な腐り始めた肉体ではなく、むき出しの筋肉繊維は瑞々しい上に太く、一目で強靭と判断できる。長い爪に鋭い牙、3mはありそうな舌、極めつけは頭部の大部分のスペースが剥き出しの脳で占領されて目が無い顔だ。
「化物……」
息を飲む警官と私…だが、それは私を襲うことはなかった。まるで周囲を見渡すようにキョロキョロと、目の前に居る私達に気付いていないかの様に探し回っているようだった。
(見た目通り、目が……見えていない?)
音を立てない様にゆっくりと後ずさる。もしかしたら、このままやり過ごせるという希望を持ち始めたとき…それは絶望に変わった。
「ば……化物」
気付いた他の市民の絶叫に反応して化物が動き始めた。
「私達が引き付けます!早く部屋に入って施錠してください!」
市民の誘導・護衛をしていた警官2人の発砲音を背中で感じながら市民は押収物保管庫にたどり着き鍵をかけた。
薄暗く狭い保管庫…中には女・子供・そして噛まれて負傷した者……
近くから、遠くからも発砲音が絶え間なく聞こえる。
(応援は……助けは来るのだろうか…?あの怪物を倒して私達を此処から連れ出してくれる人はいるのだろうか?)
狭い部屋に響く、幼い少女の嗚咽が未来を示しているかのようだった。
「大丈夫よ、神様は私達をちゃんと見守って下さるの」
絶望的な状況で気休めにしかならないと理解してはいるが、少女の心が恐怖で塗り潰されないように…私達の魂が安らかに最後の時を迎える事ができるように……
「歌を歌いましょう?神様に届くように…」
頷く少女、声を合わせて口ずさむ。
[Silent nightーHoly nightー]
やがて部屋に居る市民達も歌い始める
[[[All is calm, all is bright,]]]
~ロビー ケビン視点~
「クソッ! 数が多すぎる!」
ケビンは感染者の眉間を正確に撃ち抜いていく。S.T.A.R.S.採用試験にはその性格が災いして数回に渡り落ちているが、その実力は確かなものだ。一体一体確実に無力化していくがその速度を上回る速度で感染者が押し寄せて来る。弾は署内に分散しており、限られた時間で回収出来たものはほんの一部でしかない。
「リロード!カバー!」
弾込めの間周囲の同僚に援護を頼む。
「クソッ!チクショウ!焦ったら負けだ!」
予備のマガジンはない。一発ずつ弾倉に装填していく…眼前に迫る感染者。装填を中断し弾倉を銃に叩き込む、組み付かれる前に蹴りを放ち間合いを確保し銃を構えるが、引き金を引く前に側方からの銃撃で感染者は無力化された。
「ケビン!ぼさっとするな!」
「恩に着る…マーク!」
警備員のマークだ。普段は反りの会わない2人だが協力しあわないと明日まで生き残れない。
……銃撃の合間に遠くで歌声が聞こえた気がした。
[[[Round yon Virgin Mother and Child]]]
「ケビン!これを!」
マービン警部から丸い物が投げ渡される。足元には傭兵の感染者の死体があり、其処から拝借したようだ。
(聖なるピンを抜き数を数えよ)
ピンを抜き3秒数える。
(2秒でも4秒でもない、3つ数えたら手に持った聖物を汝の敵に投げ渡せ)
「Frag out!」
振りかぶり密集した場所へと投げ入れる。
(さすれば汝を脅かす脅威から救われる)
炸裂音と共に感染者達が豪快に吹き飛ぶ。
「リタ!襲撃されている!長くは持たないぞ、急げ!」
マービンが無線に怒鳴っているのが聞こえる。
「なんとかなるさ…少なくてもこんな所で死ぬつもりはないぞ」
「当たり前だ!全員で脱出する。」
戦いは始まったばかりだ。
~地下駐車場 エリオット視点~
脱出経路を確保するために、下水道へ繋がるこの場所へ来ていた。本来なら作戦を立て情報収集、援護などバックアップがあった上で決行されるであろう作戦だが今回は時間がない。突入して可能なら脅威を排除、不可能ならば逃げ帰り情報を伝えるという威力偵察の様なかたちで退路を確保するしかない。
マンホールを開けて下水道に突入する。
[[[Holy Infant, so tender and mild,]]]
何もないと思っていた場所から、突然手が延びて引き倒された。
「糞が!」
ゴミ溜まりに紛れて沈んでいた感染者に銃口を押し当てて引き金を引く。木霊する銃声…その音が合図となってしまった。次々と上がる水音…包囲されている……
「ふざけやがって…」
何度となく銃声が反響した。
~押収物保管庫 シンディ視点~
[[[Sleep in heavenly peace]]]
私達を助ける為に囮となった警官2人の銃声は、もう聞こえてこない。無事に逃げ切れたのか…それとも……
(ありがとう…ごめんなさい。)
[ガリガリ]
怪物がこの扉を壊そうとしているのだろう。
[ドゴン!ドゴン!]
重い物を扉に叩きつける音が響く、長くは持たないだろう。
(それに、噛まれた者がどうなるかを私は知っている。)
[[[Sleep in heavenly peace]]]
(生きたまま喰われるのは、きっと地獄の苦しみだろう。幼い子供達が受けるべきものではない。そうなる前に…私が…この手で……)
バーを出るときにケビンに渡された銃のグリップを握りしめる。
[ガン!]
鍵が破壊され、扉が勢いよく開いた音を背中越しに聞く。
「あぁ…神よ…」
私は少女に向けて引き金を引く。
押収保管庫へ警官2名
下水道に1名
残り+戦える市民は正面で応戦
~発電所~
「ホーリー!ホーーリーー!」
タンクトップで名前を呼ぶ男性が一人
「お前の嫁さんはこの街には居ないだろう?」
「ハウス!」
「いや……誰だよ!?」
突っ込む筋肉モリモリマッチョマン、此方も何故か上半身裸だ。
「メイトリックス、応援に来たぞ!誰か残っているか?」
「いえ、死体だけです。」
「………あっ………はい……」