~9/27 pm4:00 メインストリート~
「クソッ!ダメだ!」
選抜警官隊はメインストリートを確保後、未だに移動することが出来ずにいた。強固な装甲を持つベアキャット装甲車だが、幾度となく感染者を撥ね飛ばしており、その際に飛び散った肉片がインタークーラーにへばりつきオーバーヒートをおこした為である。
エージェントは端末操作や銃撃だけではなく、運転や修理などあらゆる状況でも柔軟に対応出来るように訓練されているが、私から見ても完全にアウトだった。
「焼き付いてますね…」
つまり、要オーバーホールだ。予備部品も時間もないので勿体無いが捨て置くしかないだろう。
「時間が惜しいです。警察署は現在手薄なのですよね?当初の目標も達成してますし、早く戻った方が良いかと思いますが…」
「そうだな、署まで送って行く。車に乗ってくれ。」
警察車両の後部座席に案内される。
(前世で速度違反してお世話になった時以来だ……)
懐かしい様な…だけども全く嬉しくないような…何も悪いことはしていないのだけど何故か落ち着かない…そんな気分になる。
エンジンがかかり血の海と屍の山を残して、撤収が始まった。
~pm5:00~
メインストリートこそ感染者の進行が早かった為、バリケードが間に合わなかったという経緯があるが、その他の道はと言うと……
「次、右折してください。その先また右折」
「それじゃUターンになってしまうじゃないか?」
「バリケードがあるので若干戻った方が早いです。」
至る所にバリケードが設置されており迂回しなければならない。最初こそ黙って運転を見守っていたが、待てども待てども警察署に辿り着かないのでアイザックを使用して案内をかってでた。
「すまない、お嬢ちゃん。助かるよ。」
「……ところでお嬢ちゃん、名前は何て呼べばいい?」
(この一件が終わったら、きっとまた平和な日常に戻る事になるだろうね…ならば…)
「
「HAHAHA。教える気ないなこのやろう!」
「長い付き合いにはならないから問題ないです。」
「…つり橋効果で俺に惚れてもいいんだぜ?」
「だったら良いところ見せてくださいよ。」
「うぐっ……」
空のマガジンに弾を込めながら、同乗した警官達と軽口を言いながらドライブを楽しむ。
[誰か……誰か、応答してください。]
車両に搭載された無線機が誰かの声を傍受した。
[此方、選抜警官隊!そちらの状況を詳しく教えてください。]
[婦警のリタです。警察署を防衛していましたが、感染者に包囲されています。バリケードもいつまでもつか…署内に残る市民達の避難の為、力を貸してください!]
署内の無線機は破壊されている為、脱出出来たリタさんが短距離無線で救援を呼んでいるという事なのだろう。
[了解、署に急行します。貴女を回収して向かうので現在地を教えてください。]
[私は今~~]
車内で選抜警官と署内から脱出した婦警との会話が進む。
(既に原作とは変わってる。よい方向に進むと良いのだけれども…)
「すみません。警察署は現在、包囲されているようで安全とは言えないようです。これより我々は、署内に残る者を救出に向かいますが…出来れば力を御貸しください。」
無言で頷くルナ
(元よりそのつもりだし。)
車両は速度を上げて突き進む。
~警察署前 pm6:20~
車のエンジン音とは別に自身の向かう方向から何重にも重なった銃声と炸裂音が聞こえてくる。
[全車、これより我々は警察署に突入し正面ゲートを確保する。署内に残る者達と感染者を挟撃する形となる為、味方への誤射には十分気をつけろ。署内の生存者を確保後速やかに離脱する。]
[[[了解!]]]
開けっ放しの正面ゲートを次々と警察車両が通過し、最後尾のバンがその車体の大きさを生かして、ゲートギリギリに停車して簡易バリケードを作った。
「Go!GO!GO!GO!GO!」
掛け声と共に警官隊が車内から飛び出し交戦を開始する。MP5から繰り出される9mmの連続した炸裂音、12ゲージの重い銃声が叫び声と唸り声の蔓延る戦場に、新たに加わった。
「ジェーンさん!我々はゲートを防衛するのに手一杯です。署内に残る市民の救助をお願いします。」
「了解。」
ルナはSHDウォッチを操作しスキャンを開始する。無暗に突入して探し回るより場所を特定してから行動した方が効率が良いためだ。
[周囲に生態反応複数]
建物の地図と生存者が居る場所が更新されマッピングされていく。
[危機に瀕した市民を確認]
生態反応が低下しつたある場所にマーカーが設置された
(此処から行った方が良さそうね)
場所は地下駐車場、ルナは走り出した。
~地下駐車場~
途中、感染者は複数いたが相手にせずに指定の場所へ急いだ。
たどり着いた駐車場には生存者の姿はない。それどころか感染者もいないという状況だった。
(マーカーは此処だけど…いったい何処に…)
[付近にechoを探知]
echo…エージェントが活動した履歴を周囲の電子機器等に分散して記録することで、後に訪れるエージェントがそのデータを解析・復元して当時の状況、情報を収集出来るという仕組みだ。ディビジョン以外でも隊員にカメラを装備させている部隊もあるが、カメラや死体が消去されれば痕跡が掴めなくなるのにたいして、echoは場所に自身の痕跡を残す為、完全にエージェントの痕跡を敵が消そうとするのは困難になるという仕組みだ。
ウォッチを操作し解析を許可する。その時、停車されていた車両の影から物音が聞こえた。
「誰か居るの?」
銃を構えながら問いかける…返事はない、警戒しながら近づくと開けっ放しのマンホールが見えた。
(まさか……)
ルナは慌ててマンホールに近寄り覗き込むと其所には梯子を登りかけの警官と、それにまとわり付く5人程の感染者達がいた。
ルナが手を差し伸べるが警官はその手を掴む事はなかった。かわりに自身の持つ銃を…此方にグリップを差し出す形で持ち上げている。
「頼む……」
苦しそうな警官の声、ルナが銃を受けとると警官は満足そうな笑みを浮かべて下水道の下へと落ちていく。
下水道に反響する悲鳴と咀嚼音…
「ごめんなさい…助けられなくて…ごめんなさい」
一発の銃声が鳴る…ルナは駐車場から下水道で群がる感染者の隙間を縫って、警官を苦しみから解放した。
「……」
[解析完了、復元したデータを再生します]
空気を読まないアイザックが解析を終えたechoを再生し始めた。
立体ホログラムが浮かび上がり当時の状況を再現する、エージェント名はエドワードと表記されている。音声が再生される。
[[署長!あんた、こんな状況の時にいったい何処にいたんだ!?それに、あんたが出した作戦では署内が手薄になる。これでは防衛すらも出来ないぞ!]]
[[……]]
それに対する返答はなく静寂が流れる
[[もういい!俺達が独自で指揮を執る]]
振り返ったエドワードに署長は背後から銃を構え発砲した。
[[クックック…何故?って顔してるな?冥土の土産に教えてやるよ。]]
「グルルルル」
echoの再生音ではない唸り声が駐車場に響く、振り返ると奥の扉から3匹…血塗れの警察犬が此方に顔を出すところだった。
[[この街は私が作り上げ育てた私の王国だ!]]
この間もechoは空気を読まず再生されている。
警官に手渡されたブローニングハイパワーを握りしめ引き金を引く。腐り始めているとはいえ、ゾンビ犬の速度はゾンビ達の速度を軽く上回る…1匹、2匹と処理するがみるみる間合いを縮められていく、3匹目を処理するがルナが最後に処理した犬の影に隠れた4匹目の犬に気付いのは、犬が飛びかかる寸前の予備動作に入った時だった。
[[それをアンブレラの奴らは滅茶苦茶にしやがった]]
飛びかかる犬…ルナは犬と自身の間にある停車されている車両の後部ドアを開き、盾とした。激しい衝撃とガラスを破る音。犬はドアのフレームに胴体が当たった事で失速し、ガラスを破った後は落下するように此方側に落ちる。
[[せっかく俺がS.T.A.R.S.が漏らす情報を処分してやってるのにだ!]]
ルナは犬の頭を蹴り上げて車のドアと車体の隙間に挟み込み、思いっきりドアを勢いよく閉める。
[[こうなりゃ、全員道連れだ!警官も、市民も、研究所の奴らも皆…皆ぶっ殺してやる。]]
犬の足がまだ動いている。ルナはドアを閉めたまま、体重をかけた回し蹴りを犬を挟んだドアに放つ。
echoは再生を終えて、立体ホログラムは最後の瞬間の映像を映し出していた。地を這うエドワードと笑いながら銃口を向けるアイアンズ署長。
「グルルルル」
ルナは奥歯を噛みしめホログラムの署長の頭ごと、車両の屋根の上に乗り唸っている5匹目の犬の頭を撃ち抜いた。
下水道の銃を手渡すシーンはアウトブレイク2の表紙ですね。
アウトブレイクでは初期装備で誰もが持っている筈のハンドガンすら持ってなかったりと、今までのバイオハザードを覆す様なインパクトを受けた記憶があります。
命の次に大事な武器を、他人に託すという思いが伝われば…と思います。